ハリケーンブロッサム   作:びしゃもん

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第20話です。
偉大なる先輩『μ's』の曲に『さようならへさよなら!』というものがあります。
それだけです!どうぞ!


またね

ーーー嵐花vs鞠莉・少女・梨子ーーー

 

ゲームが始まった。

嵐花の一撃は容赦なく砂をえぐるが、鞠莉と梨子に当たる瞬間だけしっかりとスピードを落としていた。

基本少女が猛スピードの球を受け、梨子が上げて鞠莉が打つ。

 

「取ったずら!」

「オーケー!鞠莉ちゃん!」

「ナイス!スマー…!」

 

シュ!

 

嵐花は、風の力を使えば身体に触れなくてもボールを捕ることはできる。

だがそうはしなかった。

身体を宙に滑らせ、舞うようにしてボールに肉薄し打ち上げる。

続けてイルカのように跳び上がり、オーバーヘッドで打ち付ける。

鞠莉は動けなかった。

 

「ビューティフル…。」

「すごい…!」

「未来ずら…。」

 

思わず見惚れてしまうような動きだった。

だが、ここで負けているわけにもいかない。

 

「まだまだこれからだよ!梨子!花丸!」

「うん!鞠莉ちゃん!……嵐……。」

 

鞠莉に鼓舞された梨子は一度言葉を切り

 

「花丸ちゃん!」

 

確かにそう言った。

驚く鞠莉。そして花丸は

 

「マルも頑張るずら!鞠莉ちゃん!梨子ちゃん!」

「うん!…うん…!」

 

熱いものが鞠莉の中から込み上げてくる。

本当は自分自身が一番自分に自信が無くて、失敗しないために策を弄して生きてきた

それが一大企業のトップのやり方だから

今回の作戦は、自分を納得させるために用意した『最後の手段』だった

万が一花丸を助けられなかったとしても《やれることは全てやった》と思い込み、自分を納得させるための最低な作戦

だけど、

梨子が、花丸が、…そして嵐花が、そんな自分の背中を押してくれる。

そんな自分のことを信じてくれている。

鞠莉は自分の頰を思い切り叩く。

 

「絶対に勝つよ!!」

「うん!」

「ずら!」

 

気合いを入れ直す3人。

 

【…。】

[これでいいんだ…これで…。]

 

そんな3人を見て、嵐花は微笑む。

 

【こっちだって…負けないから!】

 

ーーーーーー

 

登りきった日も西に傾き始めた頃、鞠莉たちはあることに気がついてしまった。

 

(しまった…!点数数えてない!!)

(そろそろ限界…。)

(いつ終わるずら…?)

[今何時だろう…。]

 

気持ちが高ぶりすぎて最も基本的なことを忘れていた。

一旦プレーを中断し、鞠莉は無駄かと思いながらも他の3人に訊いてみる。

 

「ねぇ…今…何点くらい?」

「え、鞠莉ちゃんも数えてなかったの…?」

 

梨子も覚えていない。

 

「やっぱり…。花丸は?」

「ん〜…同点くらい?」

 

花丸もいまいち自信がないようだ。

ならばと3人揃って嵐花を見る。

 

【えっと…。】

 

嵐花は少し考えた後、

 

【同点でいいんじゃない?】

 

嵐花は途中まで点数を数えていたが、拮抗状態が長く続いたため数えるのを放棄していた。

 

「そうね。じゃあイーブンから始めて、2点先取で終わりにしましょう!」

 

嵐花の意見を受け、鞠莉が提案する。

 

「了解!」

「燃えてきたずら!」

【私の2点先取で終わりね!】

「なに言ってるの嵐花。私たちに決まってるじゃない!」

 

そんな冗談を言いながら、4人とも配置に着く。

嵐花は、この時が永遠に続けばいいと思った

だけど、いつか終わりが来ることも分かっている

だから、嵐花は今のこの時を永遠に忘れない

次に目覚める時は、きっとみんなはいないからーー

 

ーーーーーー

 

なんとなくそう呼ばれていた気がする。

その名前で呼ばれたとき、そう感じた。

 

「花丸!」

「花丸ちゃん!」

「ずらっ!」

(なんだろう…この感じ…。)

 

ふわふわと楽しかった感覚は薄れ、段々と別の感情が湧き上がってくる。

 

(確か…マルは神社に行って…。怖くて、悲しくて…。そこで…。)

 

今までの出来事がフラッシュバックする。

その時抱くはずだった感情が波のように押し寄せてくる。

独りになってしまって本当はとても寂しかったこと

鞠莉たちと再会できて、本当はとっても嬉しかったこと

梨子が危ない目にあって、本当は自分に一番腹を立てていたこと

そして今ーー

 

(今…今…!!本当に、楽しいこと!!!)

 

花丸が地面に足をつける。

鞠莉は自分の目を疑った。

自分の全てを投げうって助けたかった少女が目の前にいる。

 

「花丸…?」

「鞠莉ちゃん…。」

「鞠莉ちゃん?」

 

梨子だけはこの状況を理解できていない。

 

「花丸っ!!」

 

鞠莉が花丸に抱き着こうと駆け寄る。

しかし。

その体は空を切った。まだ完全には戻っていないようだ。

それを見て嵐花は渋い表情になる。

 

(やっぱりまだーー)

 

その視線はもう1人の少女に向けられていた。

2人は気づいていないが、梨子の記憶は戻っていない。

ただ名前を呼んだだけだ。『鞠莉が嵐花に付けたニックネーム』を。

 

(でも、もうここまで来たら私にできることは何もない…。)

 

見守ることしかできない。でも不思議と不安はなかった。

 

(鞠莉ちゃん、笑ってる。)

 

不敵な笑みを浮かべてこちらを見る鞠莉。

 

(忘れかけてたーー)

 

そう。まだ勝負は続いている。

嵐花はニヤリと笑うと、転がっているボールを手に取る。

その身体は徐々に薄くなっていた。

 

ーーーーーー

 

「やっぱり、強いわね…。」

 

鞠莉は思わず呟く。

鞠莉たちはアドバンテージを取られながら、ギリギリでイーブンに戻すということを繰り返していた。

3人の強い絆がなければここまでは戦えなかっただろう。

しかしその均衡は突然崩れる。

 

【あれっ】

 

初めて鞠莉たちがアドバンテージを取った。

嵐花は自分の身体をまじまじと見る。

もうその身体はほとんど形を成していない。

 

【もう…限界か…】

「どうしたの?嵐花。」

 

鞠莉が心配そうに嵐花を見る。

嵐花は笑顔で言った。

 

【そろそろお別れみたい…。ほら、花丸の体を見て…。】

「お?おお?」

 

花丸の身体が質量を取り戻す。

砂につける足跡がしっかりしたものになる。

潮風に吹かれくしゃみをする花丸。そしてーー

 

「あっっっっっつ!熱いずら〜!!」

 

日が沈む前とはいえ、暑い太陽の日差しを燦々と浴びた砂は熱く、裸足の花丸は跳びはねて海の方へと向かっていた。

 

「あっ花丸!」

「花丸ちゃん!」

 

鞠莉と梨子は花丸に駆け寄り、跳ねすぎて転びそうになった花丸の手を取る。

 

「花丸…!」

 

鞠莉は花丸の手の柔らかさを感じた。

 

「よかった…!本当に…よかった…。

よかったよぅ…!!」

 

そして花丸の存在を確かめるように抱きしめる。

 

「く…くるしぃ…。鞠莉ちゃん、苦しいずら…。」

「Oh!ソーリー!」

 

強く抱きすぎたらしい。

ともかくこれで目的は達成した。

ビーチバレーをしていた砂浜に戻り、鞠莉はお礼を言おうと嵐花を探す。

 

「あれ?嵐花?」

 

だが、いくら見回しても、嵐花は見当たらない。

 

「あ、鞠莉ちゃん、実はねーー」

 

花丸がそのことについて説明しようとすると、どこからともなく声が聞こえてきた。

 

【あ〜楽しかった!さよならっ!】

「嵐花!待って!」

 

鞠莉が引き止めようと声をかける。

しかし、返事はなく、代わりに風が優しく吹くだけだった。

 

(ありがとう、嵐花。)

「さようなら…か…。」

 

西に沈みかけた太陽に向かって、鞠莉は深く黙祷した。




第20話『またね』いかがでしたでしょうか。
このまま最終話も連続投稿します。併せてお楽しみください。
前書きの想い、伝わっていれば幸いです。
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