ハリケーンブロッサム   作:びしゃもん

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最終話です。
あとがきに次回の物語の予告を挟みますので前書きで色々語ります。
ここまで読んでくださった方、お付き合いくださり本当にありがとうございました。
そして、Twitterの告知などで完結を知り、読み始めてくださった方も本当にありがとうございます。
頭の中で妄想した物語を、こうして文字に起こすことがどれだけ大変なことなのか、今回の長編で痛感しました。
投稿している間、「これは本当に面白いのか」と、書いてる間はさして思わなかったことも気になり始めて悶々としましたが、なんとか最後まで投稿できました。継続して読んで下さった方、本当にありがとうございます。
ここで『ハリケーンブロッサム』の物語は終わりですが、CD曲はあと3曲!グループもあと3組、いるはずですよね?
曲の順番通りに書いているので、次は当然、あの娘たちです。
また長い執筆活動に入りますのでしばらくお別れですが、まあ気長に待っていて下さい。その内投稿しますので(笑)
というわけで、長い前書きでしたが、ここからは本編をお楽しみ下さい!またね!


おかえり。

ーーー鞠莉・花丸・梨子:大瀬崎ーーー

 

全てが終わり、鞠莉、花丸の2人は帰路につくことにした。

梨子はまだ海を見ている。

2人はビーチボールを回収し、コートを片付けて戻ろうとする。

 

「梨子?行くよ〜。」

「梨子ちゃーん!」

 

声をかけても梨子は動かない。

 

「梨子〜?」

 

不審に思った鞠莉が梨子に近づく。

すると梨子は振り向いて笑顔で言った。

 

「私もそろそろ行かなくちゃ。またね!」

「えっ」

 

言うや否や、海の方へと歩き出す梨子。

 

「ちょっとちょっと待って待って…どうしたの?梨子。」

 

梨子の手を掴み引き止める鞠莉。

そんな鞠莉をキョトンとした表情で見返す梨子。

 

「え?だって…もう行っちゃったでしょ?だから私も行かなくちゃ。」

「え?………え??」

 

だんだん梨子の力が強くなる。

戸惑う鞠莉に花丸が手を貸す。

 

「鞠莉ちゃん、手伝うずら。」

 

海へ行こうとする梨子を全力で止める花丸と鞠莉。

梨子の手を掴みながら、花丸は語り始めた。

 

「鞠莉ちゃん、これはこの土地の土地神ずら。そして梨子ちゃんはその生贄なの。」

「急に何の話?花丸。」

 

突拍子のない話に戸惑う鞠莉。

構わず花丸は続ける。

 

「昔…マルたちが生まれるよりもずっと昔、沼津には4つの神様がいた…。ーー

 

 

1つは嘆き続ける虎の神

1つは角の生えた馬の神

1つは燃える鳥の神

そして1つは…

優しく吹く風の神

神様たちは寂しがりやで、何年かに一度、生贄を捧げないと人間界に現れてイタズラをしにきてたずら

ある時は疫病、ある時は大災害、大津波…

今では信仰する人も少なくなって、そこまでする力はないけど、何百年かに一度4体揃って沼津へやってきて、依代を1人、生贄を1人連れて行ってしまう…

 

 

ーーそんな話をあの子の中で聞いたずら。マルたちが出会ったのは風の神。依代と生贄にはマルと梨子ちゃんが選ばれた…。」

「そんな…。」

 

にわかには信じがたい話だが、実際、梨子は何度か危ない目に遭っている。

それも『生贄』になったせいだとしたら納得がいく。

 

「それじゃあどうすればいいの…?花丸が戻ってきても治らないなんて…。」

 

生贄は絶対なのではないかと、鞠莉は不安がる。

しかし花丸は力強く言った。

 

「同じずら。」

「え?」

「マルが戻ってこられたのは、鞠莉ちゃんと梨子ちゃんが一生懸命マルのことを呼んでくれたからでしょ?

だったらマルたちも梨子ちゃんのことを呼び続ける。それだけずら。」

「…!」

(あ…そうか…。)

 

花丸の言葉を聞きながら、鞠莉は嵐花のことを思い出していた。

どうして本来花丸とは『神と依代』という関係の嵐花が突然自分たちを助けてくれたのか

あの時から、嵐花は鞠莉のことをずっと励ましてくれていた

梨子と鞠莉以上に、花丸のことを助けようと頑張ってくれた

もしかしたら嵐花を変えたのはーー

 

ーーーーーー

 

梨子は海の方へ行こうとしているが、2人の手を振り払おうとはしない。

だが、このままではジリ貧だった。

花丸が声を上げる。

 

「梨子ちゃんはまだ迷ってると思うずら…!何か…何か決め手があれば…!!」

「決め手…。」

 

鞠莉はここに来てからのことを思い出す。

 

(3人でバスに乗って…海で泳ごうとして怒られて…)

 

花丸の呻き声を聞きながら、鞠莉は思い出す。

 

(神社に寄って…ストラップをカバンに……ん?)

ストラップ!!

「うわあ!びっくりしたぁ〜…。」

「Oh!ソーリー!」

 

一筋の光明を見出した鞠莉。

しかしすぐにその表情は曇った。

 

(ここから荷物の置いてあるショップまではそんなに距離はない…ないけど…。)

 

ストラップを取りに行く間、花丸は1人で梨子を抑えなくてはいけない。

迷う鞠莉。

そんな鞠莉の心を見透かしたかのように花丸は言った。

 

「行って。」

「え?」

「いいから行って!鞠莉ちゃん!もう…梨子ちゃんを助けるためにはそれしかないずら!!梨子ちゃんは、マルが絶対に止めるから…!!」

「……う、うん!頼むわよ!花丸!!」

「任せるず…うおぉぉぉ…!!」

 

花丸の言葉に背を押されて、ダイビングショップの方に走り出す鞠莉。

鞠莉が離れて、すぐに梨子に負けそうになる花丸だったが、気合いで持ちこたえていた。

 

(ごめん…!すぐに戻るから…!)

 

振り返ることもなく一心不乱に走る。

ダイビングショップに着くと真っ先に自分のバッグのストラップを外す。

次に花丸の荷物を探した。

 

「どこに…?」

 

探っていくと、中に1冊の本が入っていた。

そのブックカバーに、ストラップが付いている。

 

「あった…!」

 

急いで外すと、次は梨子のバッグを探し始めた。

 

「ない…ない…ない…!」

 

バッグの底まで見たが、それらしきものは見当たらない。

 

(早くしないと…!)

 

焦る鞠莉。

このままでは梨子は花丸もろとも海に沈んでしまうかもしれない。

しかし全て中身を出して隅々まで見ても、ストラップは無かった。

 

「どうして…!?」

 

自分のバッグも、花丸のバッグも全てひっくり返したが見つからない。

 

(他に…他に探すところ………)

 

2人で泊まったホテルが思い浮かんだが、すぐに思い直した。

 

(ダメ…間に合わない…。)

 

今まで行ったところを思い浮かべて、ストラップのある場所を予想しようとしたが、すぐに無駄だと頭では理解できてしまう。

 

(………。)

 

とうとう鞠莉は思考停止状態になってしまった。

 

「えっと…えっと…どこに…行けば…?

そうだよ。梨子は言ってたじゃない…もう諦めないって…。

花丸だって、梨子のことを諦めずに頑張ってる…。

私が諦めちゃいけない…いけない…の…。」

 

ストラップを握りしめ、悔しさに涙をにじませる鞠莉。

本当に、これで打つ手は無くなった。

その時

フッと風が吹いたかと思うと、鞠莉の頰に撫でられるような感覚があった。

 

【うふふ…】

「嵐花…?」

【こっち!】

 

何かの声がする方へ釣られるがままに走り出す鞠莉。

それは梨子と花丸が待っている場所だった。

 

「鞠莉ちゃん!ストラッ…!み…見つかったずら?」

 

花丸は梨子を海から押し返そうと頑張っていた。もう腰まで海に浸かっている。

 

「いえ…2つしか…。

嵐花、そこなの?」

「え?」

 

そう言うと、鞠莉は唐突に梨子の水着のポケットに手を突っ込んだ。

その中から、防水ケースに入った梨子のスマートフォンが出てくる。

そこにはーー

 

「…あった。」

 

梨子のモチーフである、ピアノのストラップ。

花丸のものと鞠莉のものを揃えて、鞠莉は梨子の目の前にそれを突き出す。

 

「梨子。これを見て。」

 

ずっと遠くを見ていた梨子だったが、鞠莉の声に反応してその手元を見た。

 

「…………それは………?」

「梨子が私たちに作ってくれたアクセサリーよ。

私はキラキラシャイニーのモチーフ。花丸は満点花丸マーク。そして梨子は…

大好きなピアノ…でしょ?」

「………あ。」

 

そこで梨子の歩みは止まり、花丸は梨子から離れ鞠莉の隣に立つ。

鞠莉は花丸に花丸のストラップを渡すと、梨子にピアノのストラップを差し出した。

 

「ほら、持って!これは梨子の分!」

 

鞠莉が笑顔で言うと、梨子はそれを受け取る。

ストラップをまじまじと見ていた梨子だったが、間もなくその瞳から止めどなく涙が溢れ出した。

 

「あ……あ……。」

 

笑顔で梨子を見つめる鞠莉の目にも涙が光る。

それは花丸も同じだった。

 

「鞠莉ちゃん…花丸ちゃん…!!」

 

2人を見て、名前を呼ぶ梨子。

何も言わずに、2人にハグをする。

 

「おかえり…梨子!」

 

そしてーー

 

「花丸!」「花丸ちゃん!」

 

おかえり…!!

 

「うん…!鞠莉ちゃん、梨子ちゃん!

ただいま…ずら!」

 

ーつづくー




次回予告
『インフェルノフェニックス』

花丸たちが大瀬崎に着いた頃、黒澤ダイヤ、黒澤ルビィの2人は学校の生徒会室で言い争っていた。
「もう!お姉ちゃんこっちにきてから生徒会のお仕事ばっかり!『一緒に作ろう』って言ってたのにこれじゃあ何もできないよ!」
「ルビィ。まだここには来たばかりよ。それに、これもAqoursの活動と同じくらい大切なこと!ただでさえ人数が少ない中で学校を存続させるために努力しているのだから、休みの日だからってサボるわけにはいかないでしょう?これが終わったら手伝うから、先に衣装をーー」
「もういい!そんなの分かってるもん!!
だけど…!だけど……!!」
目に涙を浮かべて言葉を詰まらせるルビィ。
「ルビィ…。」
「もう…!お姉ちゃんのバカっ!!!」
「ルビィ!!」
そのままルビィは生徒会室を飛び出していってしまった。
そのまま椅子に座り込み、ため息をつくダイヤ。
「はぁ…。
『バカ』か…。
確かに、そうなのかもしれないわね…。」
目の前にある書類を見つめて、それからルビィの書いていた(はず)の曲のノートを見に行く。

『お姉ちゃんとのデュエット曲!必ずお姉ちゃんと一緒に最初から最後まで作ること!』

「ルビィ…」
ノートの1ページ目にはそんなことが書いてあった。
自分の机に戻ると、拳を握りしめて机を叩く。
「本当に…私は……。
大馬鹿者だわ…!」
目の前の書類を睨みつけたあとで少し冷静になるダイヤ。
(とりあえず、今のこれだけ終わらせれば少しは余裕ができる…。
それからルビィに謝って、一緒に曲を作ろう。これは私たちの曲なんだから)
そう思い、猛スピードで書類を片付けていく。

ーーその頃ルビィは、学校の廊下で悪態をついていた。
「もう!お姉ちゃんて昔からそう!いつもいつもルビィのことは二の次で、お稽古とかお仕事とかそんなことばっかり!
せっかくお姉ちゃんと一緒に曲が作れるって思ってすごく嬉しかったのにそんな時なのになんでこんな…こんな…。」
でも本当は分かっている。ダイヤがどんな想いで今あの部屋にいるのか。
『こんなこと』なんて言葉で片付けてはいけない。本当に大切なことなのだ。ダイヤにとっても、浦の星のみんなにとっても。
それが分かっているから、分かっているからこそ、ルビィは心のモヤモヤが抑えきれなかった。
(お姉ちゃん…)
「ひどいこと、言っちゃったかな…。」
急に冷静になったルビィは、さっき自分がダイヤに言ったことを振り返る。
(お姉ちゃん、今も1人でお仕事、してるんだよね…。学校のため…そして何より…)
ルビィのために。
スクールアイドルを続けられているのも
お稽古をしなくても怒られないのも
門限を過ぎても許されるのも
こうしてAqoursとして一緒に活動できているのも
全部全部がーー
「お姉ちゃん…。」
(謝らなくちゃ…。そして一緒にーー)
ルビィは生徒会室に戻ろうと振り返る。
その時ふと、窓の外に違和感を感じた。
(あれ?)
校庭が妙にゆらめいて見える。
今日はまだそこまで暑くないはずだが、あそこだけ何かがおかしい。
「なんだろう…。」
ルビィは走ってげた箱に向かい、靴を履き替えて外に出る。
そこでルビィが見たものはーー

to be continued...
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