私が考えるに、特に2人で会話することはないと思っています。仲が悪いとかではなく。
ほら、熟年夫婦とかの、あの会話がなくても縁側でのんびりっていうシチュエーション、憧れありません?ありませんか。皆さん女の子同士のイチャイチャの方が盛り上がるのかな?
まあ今回は状況が状況なので、2人ともお互いの体温を感じて、噛み締めているんです。変な意味ではなく。
というわけで、それを経ての第7話です。
時刻は20時を回っていた。
社務所の人は気が済むまで居ていいと言ってくれたが、いつまでも好意に甘えているわけにはいかない。
「こんなに遅くまで…ありがとうございました。」
「大変ご迷惑をおかけしました…。」
社務所を出て、ビーチの方へ歩き出す2人。
さすがにこの時間になると人はなく、浜辺は静けさを取り戻していた。
まだ体が痛む梨子を支えながら、鞠莉は道を歩いている。
「大丈夫?梨子。」
「大丈夫です。ありがとうございます。」
鞠莉の問いに対して、生真面目に返答する梨子。
そんな梨子に鞠莉は膨れつらを見せて言う。
「んもう!そ・れ・のどこが大丈夫なのよ〜!
I'm perfect. System all greenくらい言ってくれないと〜!」
「オールグリーンって…私は機械ですか?」
変な顔をする鞠莉に、苦笑する梨子。
鞠莉はその表情を見て、満足気な顔をする。
その時、ダイビングショップの方から声がした。
屈強な男性が爽やかな笑顔でショップの入り口に立っている。梨子はその男性に見覚えがあった。今朝出会った(というか鞠莉がダイビングスーツ姿で話していた)男性だ。
隣で鞠莉が笑顔で手を振っている。思わず関係性を疑ってしまうが…。
(いやいやいや、鞠莉さんに限ってそんなことは…。…でも、あり得るのかな…。)
勝手に色々な妄想が梨子の中で広がっていく。海で出会った2人…触れ合うことで深まる愛…どんどん膨れ上がっていく熱い情熱…。
2人が夜の街へ消えていったところで、鞠莉が自分の顔を覗き込んでいることに気がついた。
「どうしたの?梨子。」
「いえっ、なんでも…。」
顔を赤らめて全力で鞠莉から視線を逸らす梨子。
鞠莉は怪訝な顔をしながらも、再び男性に笑いかける。
ダイビングショップに着くと、男性が話してくれた。
大瀬崎のみんなで、花丸を探してくれていること。 ー未だに見つかっていないことー
自分がいなくなって、鞠莉が方々を走り回ってくれたこと。
…男性が、鞠莉の友人であること。
梨子はほっと胸を撫で下ろす。
「そっか…そうだよね…。」
「?」
しかし同時に、まだ花丸が見つかっていないことも気にかかっていた。
大瀬崎には森がある。とは言ってもそれほど広くはない。これだけ探せば見つからない方がおかしい。
やはり花丸はどこか別の場所にいるのかもしれない。
そう考え、梨子は再び考える。
(あの空間…、異様ではあったけどとても空気が澄んでいて穏やかだった…。
悪いものじゃないと思う…んだけど…)
考え事をしていると、鞠莉に頭を小突かれてしまった。
「こーら!梨子!また難しい表情になってる!スマイルスマイル!」
「スマイル…って、言われても…。」
インストラクターの男性は、肌の色に似合わぬ白い歯を見せて笑う。
鞠莉が梨子を見つめる表情も優しい笑顔だった。
「笑う門には福来る!覆水盆に返らないんだから、果報は寝て待て!
…今私たちができることは、花丸が戻ってきたときにとびっきりのスマイルで迎えてあげることよ。今の梨子みたいにしかめ面してちゃ、花丸も不安になってしまうわ。」
「とびっきりのスマイル…。」
言われた梨子は、精一杯の笑顔を鞠莉に作って見せる。
それを見た鞠莉は、にっこり笑って言った。
「宿題ね♪」
「えぇ〜!?」
梨子が抗議の声をあげ、頰を膨らませる。
「…っぷ、あはははは…!」
「な、なんで笑うんですか!?」
「だって、今の梨子の顔、面白かったんだも〜ん!So funny!」
「はぁ〜!?」
笑う鞠莉を見て、呆れる梨子。
ひとつため息を吐くと、鞠莉の笑顔に釣られて笑い出す。
「…やっぱり、梨子は笑ってる顔の方が素敵だよ。」
「ん?何ですか?」
「なんでもない!ほら行くよ!」
梨子の気持ちがほぐれてきたことを感じた鞠莉は、ダイビングショップを後にすることにした。
第7話『…違うよね?』いかがでしたでしょうか。
梨子は花丸が自分のせいでいなくなって、自分のせいで二度と会えなくなるかもしれないという不安を抱えています。
そんな梨子の気持ちになってこのお話を読むと少し違って見えてくるかも…?
次回をお楽しみに。