僕の友人がヤンホモだった。 作:ぐ腐腐
翌日。
教室に入ると、なぜか僕に視線が。
恐らく昨日の一件で目立ちすぎたのだろう。
まあ、仕方ないか。
視線を気にせず席に座ると、一人のクラスメイトが近づいてきた。というか、比企谷君だった。
「おはよう咲人」
え、あ、うん。おはよう。
昨日からの急な接近に少し驚く。比企谷君、こんなに距離近かったっけ?物理的な距離も心なしか近く感じるが、友好関係的な意味でも近くなっている気がする。だって、昨日僕のこと名前で呼んでなかったし。
「まだ先生来るまで時間あるし、喋ろうぜ」
いいよ。何話す?
「そうだなぁ……咲人はさ、好きな人とかっているの?」
え?
比企谷君から飛んできた言葉は意外なものだった。僕の好きな人とか聞いて得になるのだろうか。というか、先程から何故かは分からないが比企谷君から変な色気のようなものを感じる。
好きな人か……今はいないかな。
「そ、そっかぁ…」
僕がそういう相手はいないと答えると比企谷君は何故か安堵の表情を浮かべる。
そういう比企谷君こそ好きな人とかいないの?
「えっ!?あっ、俺は……その……まあ、いるけど…」
へぇ、いるんだ。誰なの?
「な、内緒だよ」
ふうん?折本さんとか、その辺り?
最近比企谷君とよく喋っている折本さんは充分可能性としてあるだろう。
ほら、折本さん活発でいい子そうだし。
そう思い比企谷君に言ってみると、
「は?なんでそこで折本が出るんだ?」
ガチの表情でそう返された。
え?あ、うん。なんかごめん。
どうやら勘違いのようだ。これは比企谷君にも折本さんにも悪いな。
ご、ごめ、
「なあ、咲人は折本のことが好きなのか?」
比企谷君は僕の言葉を遮り口を開く。
その表情は何かに怒っているようで、とても怖いものだった。
え、いやそういうことじゃないんだけど…
「そうだよな、咲人が折本なんか好きになるわけないよな。そうだよ、咲人は……」
なんだか雰囲気も冷たい。
というかこのクラス、こんなに雰囲気暗かったか?昨日のガキ大将の一件の時より更に悪く感じるほどだ。
これはまるで、何かに恐れているような…
「なあ咲人」
うん?
「今日、俺の家来ない?」
え?今日?
またまたいきなりな話でビックリしてしまう。距離の詰め方が凄い。凄い勢いで深めようとしてくるな比企谷君。
まあ別に、今日は特に用事もないし別に家に行くくらいならいいだろう。
「ダメか…?」
全然いいよ。じゃあ今日は一緒に帰ろうか。
「…!お、おう!」
比企谷君の誘いに乗ると、比企谷君は控えめにガッツポーズをして喜んでいた。
なんか、少しだけ可愛いと思ってしまった自分をぶん殴りたい。
***
そして時は過ぎ放課後。
昨日と同じように終礼のチャイムが鳴った後、直ぐに僕のところにきた比企谷君に案内され、現在比企谷君の家に遊びにきていた。
結構立派な一軒家で僕の家からあまり距離が遠くない位置にあったことにも驚いた。
「はい、お茶だよ」
お、ありがとね。
「大丈夫。俺が誘ったんだし、これくらいはするよ」
比企谷君…なんていい子なんだ…!
比企谷君の律儀さに感動していると、比企谷君は僕が座っているソファの隣の席に腰をかけた。
ひ、比企谷君。なんか…近くない?
「嫌なの?」
え?
「 嫌 な の ? 」
そういうわけじゃ…
「じゃあいいよね?」
は、はい…いいです…
こ、怖ひ…
離れるように言おうと思ったのに比企谷君の声のトーンが怖くて言えなかった。なんであんなに低いトーンで囁くんだよ、怖いよ。
「ねえ咲人」
ん?どうしたの?
「咲人はさ、なんで俺を助けてくれたの?」
え?なんでって?
「……だって、俺なんかを助けても何の得にもならないよ?」
得…?
「うん。だって俺が咲人に何かしてあげられるわけでもないし…ていうか俺、根暗でぼっちだし…」
比企谷君がそこまで言って、ようやくここまで距離感が近い理由が分かった。多分比企谷君は僕のために何かをしてあげようと頑張ってくれていたのだろう。僕のことを聞いて、それに応えようと。
でもな比企谷君。それは違うよ。
……比企谷君。僕はね、比企谷君に何かしてほしいから助けたんじゃないよ。だから、無理して何かをしようとしなくてもいい。
「で、でもそれだったら何で俺を!咲人は『好きでやった』って言ったけど、あれは本当は違うんだろ!?」
違くなんかないさ。僕は君を助けたいと思ったから助けた。……と言っても、あのガキ大将の話を聞いててムカついたってのもあるんだけどね。
「…………」
……まあその、だから比企谷君はいつもの比企谷君らしく接してくれると嬉しいなって思……!?
僕が何かを求めて比企谷君を救ったわけではないと説明していると、突然比企谷君から抱きつかれた。慌てて離そうとするが、身体が少しだけ震えているのを見てそれを止める。
ひ、比企谷君…?
「咲人……あのさ、俺の話聞いてくれるか?」
うん。勿論。
それから比企谷君はポツポツと話し始めた。
自分は親から愛されていないこと。
親の愛情はほとんど妹に行っていること。
だからいじめに遭っても相談できずにいたこと。
そして、僕という存在がとても心の拠り所になったこと。
最後の辺りは僕も思わず比企谷君を抱き返してしまうくらい、声も震え身体も震えていた。それくらい辛かったのだろう。
「咲人……今日だけ、今日だけでいいから…甘えていいか?」
僕なんかで良かったらいつでも甘えていいよ。
だったらせめて、少しの間だけでも安心できるようにしてあげよう。
僕はそんなことを思い、僕の胸に顔を埋める比企谷君の頭をそっと撫でてあげた。
***
咲人。
咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人咲人。
頭の中で彼の名前を想像するだけで心が満たされる。
そしてそれを口にすると、余計に幸福感で満ち溢れていく。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
彼を思えば思うほど気分は高揚し、胸がドキドキしてくる。
今日だって思わず彼に抱きついてしまい、そのまま心の奥底にあった汚い感情をぶちまけてしまったが、咲人はそれを笑って受け止めてくれた。僕なんかで良かったらいつでも甘えていい、とまで言ってくれた。
やっぱり俺の運命の相手は咲人だったんだ。
咲人ともっと仲良くなりたい。咲人の全てを知りたい。咲人と…繋がりたい。
同性相手にこんな感情を抱くのはおかしいかもしれない。
けど、それほど魅力的な咲人が悪いのだ。
俺は咲人が口にしていたお茶が入ったコップを取り、咲人が飲んでいた場所に口をつける。
「〜〜〜っ!」
あぁ。幸せだ。
咲人の唾液が、俺の唾液と混ざりあっている。咲人が、咲人の一部が俺の中に入ってきている。
「はぁ…好き、好きだよ咲人。大好き。愛してる」
何度も何度も何度も何度も、コップに口をつけて愛を囁く。
「きっと咲人もわかってくれるよな?」
咲人なら、俺のこんな感情も受け止めてくれるはず。そうだろ?咲人。
想いが重いよ(激寒)
ということで、なんか前の時より重くなってる比企谷君でした。