僕の友人がヤンホモだった。   作:ぐ腐腐

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みんな大好きなあの子の登場です。


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 またまた時は過ぎ数ヶ月後。

 僕らは無事に二人とも総武高校に受かることができた。僕も比企谷君も受験前の模試で充分合格圏内だったため、あまり心配はしていなかったがいざ終わってみると受かって良かったと心から思う。

 

 あれからというもの、比企谷君がいつも以上に積極的になってきたことと、小町ちゃんが事あるごとに僕に甘えてくるようになった以外は特に変わらない日々だった。

 え?小町ちゃんから甘えられるようになった理由?……知らないし、分からないです。僕の写った写真にキスしていた小町ちゃんなんて見てないです。見てないったら見てない。

 

 ……あ、それともう一つ。ショッピングモールで犬に吠えられビクビクしていた女の子を助けてお礼をされたことくらい。

 

 まあ思い出に浸るのはこれくらいにしておこう。

 明日はいよいよ総武高校の入学式だ。今日は早めに休んで明日に備えよう。

 

 

 

 ***

 

 

 さてやってきました入学式。

 支度を終え、玄関を開けると比企谷君が待っていた。比企谷君は僕が出てきたのを見つけると嬉しそうに笑いながら手を振る。

 それに僕も手を振りながら近づいていく。

 

 

 

 おはよう比企谷君。

 

「おう。おはよう咲人」

 

 どれくらい待ってた?

 

「そこまで待ってないぞ。五分くらいか?」

 

 そっか、結構待たせちゃってたんだね。ごめん。

 

「いやいや、そんなに待ってないから気にすんな。それより早く行こうぜ」

 

 そうだね。入学式から遅刻とか洒落にならないし。

 

 

 そんなことを言いながら僕が歩き出そうとすると、比企谷君から制服の袖をちょこんと掴まれた。何事かとそちらを見てみれば、こちらに右手を差し出す比企谷君が。

 

 

 あー、忘れてた。

 

「やっぱり……」

 

 ごめんごめん。

 

「むぅ…まあいいや。ほら、早く行こうぜ?」

 

 

 比企谷君に急かされ、僕は比企谷君の右手を握った。比企谷君が身体をピクリと揺らすが、次の瞬間には嬉しそうに破顔させていた。

 ……言い忘れてたけど、こういうスキンシップもあれから多くなった。まあ不思議と嫌な気持ちはしないから別にいいんだけど。

 

 

 そうしてしばらく歩いていると、同じくらいの歳の女の子がパジャマのような服を着て犬を散歩させているのに目が付いた。

 なんか、あの子凄い犬から引っ張られてるけど大丈夫なのかな。

 そのまま心配しながら女の子を見ていると、

 

「咲人…?もしかしてあの雌豚に一目惚れでもしたのか…?」

 

 

 いつかのように低いトーンで僕の耳元に囁く比企谷君が。

 だから怖いって。

 比企谷君はかなりの嫉妬深い性格のようで、こうやって他の女の子とかに現を抜かしていると直ぐに機嫌が悪くなる。

 

 

 そんなわけないでしょうが。というか知らない女の子のことを雌豚とか言わないの。

 

「うっ…ごめん」

 

 

 相変わらずな比企谷君に困りつつも、どうしてかあの女の子が気になってまた目を向けた。気になるといっても比企谷君が言ってたみたいに一目惚れしたわけじゃなく、あの女の子が引き連れている犬が道路に出そうなため気になっているだけだ。

 

 

「うわ、目の前で赤信号に変わるのって結構悲しいよな」

 

 ははは…確かに。

 

 

 赤信号。

 そして、今にも道路に飛び出しそうな犬。

 なんだか嫌な予感がする。

 

「キャッ!ちょ、ちょっとサブレ!?」

 

 くそっ…やっぱり…!

 

 

 僕は昔から嫌な予感だけはかなりの確率で当たっていた。なんだかあの女の子と犬を見て嫌な予感がしていたため、もしかしてと思っていたが本当に飛び出すとは。

 

 女の子はいきなり飛び出した犬の勢いを止めれず、リードを手から離してしまう。

 そして自身を拘束するリードを離された犬は静止することなく道路に飛び出して行った。

 信号は先程比企谷君も言った通り赤信号だ。このまま行けば、あの犬は間違いなく助からない。

 

 そして不幸なことに既に犬に向かって高級そうな車が向かってきていた。

 

 

「咲人!?」

 

 

 気付いた時には、僕も道路に飛び出していた。僕だって死にたくなんかないが、目の前で動物が死ぬ光景だって見たくない。

 

 僕はこれまでの走りの中で一番のスピードを出し犬を回収する。抱きかかえた犬は暴れているが、しっかりと離さないように強く抱き止めた。

 後は車を避けることだけ…!

 

 

 そう思い向かってきているであろう車に目を向けると、

 

 

 

「咲人!」

 

 

 

 ゴンッ!と何かが音を立てて僕の身体が宙に投げ出される。瞬間、理解する。僕は車に轢かれたのだと。

 アスファルトに強く打ちつけられ、身体中に鈍痛が走った。

 

 

 ぐ…ッあッ…!

 

 

 上手く呼吸が出来ない。

 身体も動かない。

 

 

「ーー!ーーー!!!」

 

 

 比企谷君が僕に駆けつけ何かを言っているが、強烈な眠気で何を言っているのか聞こえてこない。

 僕が轢かれた車の運転手の人も慌てて携帯で何かを話している。

 

 

 ごめ…ひきがやく……

 

 

 今にも泣き出しそうな比企谷君の顔を見たのを最後に僕は意識を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 意識が浮上する。

 未だに身体を走る痛みはあるが、轢かれた直後に比べれば大したことはない痛みだった。

 そのまま目を開ければ、そこは知らない天井が。

 

 

 病院か……

 

 

 取り敢えず生きていることに感謝しよう。本当に死ぬかと思った。

 僕は身体をゆっくりと起こし、自分の状態を確認する。どうやら右手と左足が骨折しているようでギプスで覆われていた。

 

 

「さ、咲人!起きたのか!?俺のこと覚えてるか!?」

 

 

 そしてタイミングよく病室に入ってきた比企谷君が驚きながら僕に詰め寄ってくる。比企谷君の後ろに小町ちゃんもいることから、比企谷君も小町ちゃんも相当心配してくれたのだろう。

 

 

 うん。覚えてるよ。比企谷君に、妹の小町ちゃんでしょ?

 

「ほっ…良かった……じゃなくて!なんであんなことしたんだよ!」

「そうですよ!小町心配したんですよ!」

 

 

 僕が記憶喪失ではないことを伝えると、今度は二人揃って怒りだした。

 本当に申し訳ないです……

 

 

 心配かけてごめんね。なんか身体が勝手に動きだしちゃってて…

 

「はぁ……咲人は優しすぎるんだよ…」

「もう!咲人さんは小町がいないとほんとにダメなんですから!」

 

 あはは……返す言葉もないです……

 

「もう二度とこんなことするなよ。本当に心配したんだからな」

 

 うっ…ごめん…

 

「まあまあお兄ちゃん!咲人さんもあのわんちゃんを助けたくて飛び出したわけでしょ?今回くらいは許してあげよ?」

 

 小町ちゃん……!

 

「まあ夫が何をしてもそれを受け入れるのが良い奥さんってものだからね♪」

 

 ……奥さん?

 

「はい♪」

 

 ………

 

 触れないでおこう。

 

 

「というか、良く飛び出せたよな。俺だったらその場で見てることしか出来なかったと思うぞ」

 

 ああそれね…確かに僕も怖かったけどさ、あの時あのままわんちゃんを見殺しにしてたら後悔すると思って…そう思ったらもう勝手に身体が動いてたんだ。

 

 

 これは本当だ。

 それに、飼い主の女の子も目の前で大切にしている家族同然のペットが亡くなるなんて見たくないだろう。

 

 

「咲人……!」

「流石小町の旦那さん…!」

 

 だから、僕は少し不謹慎だけどわんちゃんの代わりに僕が轢かれて良かったと思う。結果論だけど僕はこうして生きてるし、あのわんちゃんも助かった………うん?そういえばあのわんちゃんどうなったの?

 

「え?ああ、全然ピンピンしてたぞ」

 

 あ、それなら良かった。轢かれた甲斐があったね。

 

「あの女子も感謝してたぞ。助けてくれてありがとうって」

 

 あはは、そっか。

 

「………そろそろ暗くなるから俺たちは帰るからな。あ、それと先生が退院は直ぐに一週間後だそうだぞ」

 

 分かった。何から何までありがとね。

 

「ぶーぶー!小町も咲人さんのこといっぱい、いーっぱい心配したんですよー!」

 

 うん。小町ちゃんもありがとね。

 

 

 横で頬を膨らませていた小町ちゃんの頭をいつも比企谷君にしているようにして撫でてあげると、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 

「咲人さんはずるいです……小町のことをこんなにかき回して…」

「はいはい。ほら小町、さっさと帰るぞ」

「あ、待ってよお兄ちゃん!」

 

 

 比企谷君が急かすように言い病室から出て行こうとすると、小町ちゃんも慌ててそれについていった。

 さて、僕もまだ眠たいし少し休もうかな。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 俺たちが病室から出ると、入り口の近くに茶髪の女が気まずそうに立っていた。

 こいつは…あの犬の飼い主の女だ。

 

 

「咲人に何か用か?」

「え、あっうん」

「……さっきの話聞いてたのか?」

「うん……」

 

 

 俺は思わずため息を吐いてしまう。

 それはこいつの表情が時折小町が見せる表情に似ていたからだ。

 こいつもか…こいつも咲人は魅了してしまったのか。

 

 まあ良く良く考えれば、家族同然の犬を助けてもらったあげく、『助けたことに後悔していない。逆に助けなかったほうが後悔していた』なんてことを言われれば惚れるのも仕方のないことだろう。

 

 

「まあ好きにしろよ。お前が咲人のことを好きになろうが俺にとっちゃどうでもいいことだ。それに、あんなことされたら惚れるのも無理はないしな」

 

 

 だって咲人は絶対に俺を選ぶのだから。

 俺が言った言葉に驚愕の表情を浮かべる小町を無視して、俺は女から遠ざかっていく。

 

 

 ……にしてもあいつ胸大きかったな…あの胸で咲人が誑かされなけばいいんだが。

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 佐々木咲人君。

 私の家族を助けてくれた男の子。

 颯爽と現れて、サブレを助ける様子はまるでお伽話の王子様のようだった。

 

 簡単に言ってしまえば、私は彼のことが好きになった。我ながら単純だとも思う。けど、それを彼と一緒にいた男の子は「惚れるのも無理もない」と言った。

 

 ……そうだよね。

 惚れちゃうのも仕方ないよね。

 

 

「佐々木君…」

 

 

 病室のベッドで目を瞑っている彼を見ていると、変な気分になってくる。これが恋なのだろう。

 

 

「ふふっ、可愛い寝顔」

 

 ん……

 

 

 居心地悪そうに唸る佐々木君。

 その全てが愛おしい。

 

 

「………」

 

 

 佐々木君が起きたら色々と話そう。

 家族を助けてくれたお礼、それと……私をメロメロにした責任もとってもらおう。

 

 

 きちんと責任とってね?佐々木君。

 

 

 

 

 

 

 




書き終えて、由比ヶ浜さんチョロインすぎない?と思いましたが原作でも八幡が助けた時点で八幡に好意を寄せていたのでまあ大丈夫だよね?
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