東方四面楚歌   作:ソーヤー麺

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はい22話です。

今回の話は少し暗いお話なので注意です。
さしずめ鬱注意です、死にます、いろいろ死にます、とくに美少女が。



ではどうぞ!




三人目の男 悲しみと怒りの感情は紙一重

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィクトリアちゃんと出会ってから十数分、ボクたちはまだ湖の周りに居た。

ヴィクトリアちゃんを見ると、どうやらかなりお疲れの様子で、肩で息をしてる。

 

「…大丈夫、じゃなさそうだね」

 

「…すみません、ずっと歩きっぱなしで…走って逃げたり…何も食べてないし…水も……」

 

「そっか……ちょっと休もう」  

 

「…そう、ですね…すみません」

 

何処か休めるところがないか辺りを見渡してみる。

すると古ぼけた洋館が目に入った。

 

「あそこ、古い屋敷かあるねぇ…行ってみようか」

 

屋敷を指差してヴィクトリアちゃんを見る。

ヴィクトリアちゃんは小さく頷いて再び歩き始めた。

 

「…ゴーストハウスって感じがしますね」

 

「幽霊屋敷でもお化け屋敷でも屋根があるならなんでも良いよ、大丈夫大丈夫」

 

「……そう、ですか」

 

 

この時、その屋敷に入らなければ良かった。

騒霊屋敷と呼ばれるこの屋敷に…

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー騒霊屋敷門前

 

不気味な屋敷の前に来たと同時に、ポツポツと雨が降って来ていた。

衰弱している体に冷たい雨、更に冷たい風とあってはボクはともかくヴィクトリアちゃんにはツラい事だろう。

ボクは門を開くと屋敷へと通じる扉に手を掛けた。

 

「……スンッ…スンッスンッ…」 

 

「…どうかしましたか?」

 

「……スンッ…臭い…血腥(ちなまぐさ)い…」

 

「……そうですかね…スンッスンッ…私は臭いませんが…」

 

「…嫌な予感がする…」

 

鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ、すると確かな血の匂いがボクの鼻腔を刺激した。

それだけじゃない、なにか…血以外の…そうだ、言うなれば内臓……

 

「…迷ってても仕方ない、ねぇ…雨足も強くなってきたし入ろうか」

 

「は、はい…?」 

 

ヴィクトリアちゃんは、腑に落ちないのだろう。

不思議そうな顔をしながらボクに続く。

ボクは屋敷へと続く扉に再び手を掛け、その少し重い扉を開いた。

 

ーーギイィィ…

 

「っ!?」

 

開いた瞬間、ボクは鼻と口を掌で押さえ付けた。

先ほど感じた臭いが、今度はより強く、より濃厚に感じられたからだ。

 

「…何ですか…この臭い………血?」

 

ヴィクトリアちゃんも気付いたらしく、嫌そうな表情で口許を押さえていた。

ボクはその臭いの原因、及び正体を探すためにゆっくりと扉を開き、屋敷の中に入った。

 

 

  

 

 

「…これは……酷いな…ヴィクトリアちゃん、見ちゃダメだよ」

 

 

 

 

ボクは素早くヴィクトリアちゃんの両目を掌で覆っていた。

屋敷に入るとすぐに、その原因が「在った」からだ。

 

グチャグチャに引き千切られ、潰され、喰われたであろう死体、もはや死体とは呼べない肉の塊がそこに在った。

大きさから…大人の男性でも女性でもない…およそ子供であろう。

散乱している服を見る限り小さな少女か…酷い。

 

「…行くよ」

 

「は、はい…」

 

ボクはヴィクトリアちゃんを連れて二階に上がった。

一段、また一段登る度にギィギィと音を立てて軋む階段が恐怖を煽る。

やがて階段を登り、二階に来るとボクはヴィクトリアちゃんから手を離す。

 

「ごめんねぇ、ちょっと見せたくないモノがあって」 

 

「……死体、ですか?」

 

「…ただの死体だったら、彼女も幾分か報われただろうねぇ…」

 

小さい声で話をしながら床に手を置く。

ボクにはやらなきゃいけない事があった、それはこの屋敷の安全確保である。

掌からこの屋敷全域に微弱な電気を流す。

すると一つの大きな生体電気を感じ取った。

 

「…この先に一つ…か……ねぇ、ヴィクトリアちゃん、君は少しだけここで待ってて」

 

「…は、い…」

 

「大丈夫だよ、すぐに戻るから」

 

ボクはヴィクトリアちゃんに笑いかけ、ゆっくりと立ち上がる。

出来る限り足音を立てないようゆっくりゆっくりと歩き、目的の部屋に近付いていく。

 

気付かれないまま、部屋の前に立ち、扉に耳を当てて中の音を聴く。

…中からは男の罵声と少女の悲鳴、何かを食べるクチャクチャという咀嚼音が響いていた。

 

ーーミシミシ…バチンッ!!

 

気付けば扉を雷で吹き飛ばしていた。

ボクは惨劇が繰り広げられているであろう部屋に押し入って行く。

 

「…誰だお前」

 

一人の男が、少女の小さな体を抱き、細い肩にかじりついていた。

口許から血を垂れ流し、既に骨だけになった腕が悲鳴の理由だとすぐに解った。

 

「…たす…けて……」

 

黒と白の服と金髪を赤く染めた少女は小さく、消え入る様な声で呟いた。

 

「……お前まだ喋れたのか…よッ!」

 

ーーガブッ…ブチンッ!

 

「~!!ゲホッ~ゴホッゴホッ~~!!!??」

 

男が少女の首に喰らい付き、その喉を喰い千切った。

口を動かしその肉を咀嚼し、飲み下す、その瞬間にボクら悟った。

さっき見た少女は…コイツに殺られたのだと。

 

ーービシンッ…バチバチバチ…

 

気付けばボクの両手には雷が集まっていた。

それを見て不気味な笑みを浮かべる男、抱いていた少女を投げ捨てると素早く立ち上がり、ボクの前に立った。

 

「……ヤル気か?」

 

「ボクは君を殺さないと気が済まないらしい…」

 

「何故肩入れする?コイツらはただの騒霊(ポルターガイスト)だぞ?」

 

「…例え霊でも、ボクからすればただの女の子さ」

 

「俺は、お前も喰うぜ?」

 

「良いよ、それより先に君に天罰を下すからね」

 

「…俺は獅童(しどう)梨怨(りえん)アンタは?」

 

「…姫神、碧生…なんで名前を聞くの?」

 

「…今から喰う奴の名前を知っておきたかっただけだ」

 

「そう…でもボクは…今から殺す相手の名前をいちいち覚えちゃいないさ」

 

「…腹の立つ奴だな、行くぞ?」

 

獅童は獣の様な眼でボクを見据える。

ボクは右手を獅童にかざし、小さく呟いた。

 

「…神罰だ」

 

刹那、獅童はボクに体当たりを仕掛けてきた。

ボクはそれを軽く避けると小さな電撃を三つ放った。

 

ーーバチンッ!!バチンッ!!バチンッ!!

 

「…そんなもんか?」

 

「っ!?」

 

「次はこっちの番だなァ!」

 

ーードンッ!

 

「ぐはっ…!」

 

獅童はボクの電撃を喰らってもダメージ一つ負わず、逆にボクの腹に強烈な打撃を当てる。

ボクはあまりの勢いに吹き飛び、扉を破壊して廊下に出てしまった。

 

「碧生さん!?」

 

「あ~…イテテ…ヴィクトリアちゃん!来たらダメだよ!」

 

「何時まで寝てんだ、よッ!」

 

ーーバキッ!

 

立ち上がろうとしてたら獅童のパンチが再びボクを吹き飛ばした、窓を突き破り落下しそうになった時。

 

「ぐふっ……君も来いよ!」

 

獅童の腕を掴んで無理矢理引き摺り降ろす。

外は豪雨で冷たい滴がボクの体を打ち付けていた。

 

「どうした!そんなモンか!?」

 

「…せっかちだよ、君は…大丈夫、すぐに君は死ぬよ」

 

「…ボロクソなお前な言われても説得力が無いぞ?」

 

獅童はヘラヘラと笑いながら挑発をする。

まったく、今がどんな天気で、ボクの力がどんな力か解ってるなら安易に想像出来るだろうに。

 

「…ボルトストーム」

 

ーードオォォォン!!!!

 

大気が震えると同時に凄まじい地響き、雷鳴と共に獅童の頭上から雷が落ちる。

小さなクレーターが出来るほどの威力のソレは、獅童を行動不能にさせるには充分な威力だった。

ボクは生死を確認するためにクレーターを覗く。

 

「…生きてる~?」

 

そこには人影がなく、肉片さえも残っていなかった。

どうやら蒸発してしまったらしい、コイツにはお似合いの最期であろう。

 

「…さて、戻ろう」

 

 

 

でも……あの少女は…きっと助からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達はただ、静かに暮らしていたかった。

こんな世界になっても、私達の居場所はここだけだから…幻想郷だけが、この屋敷だけが…レイラと暮らしたこの屋敷だけが私達の宝だから。

なのに、それさえも許してくれなかった。

 

何時もみたいに楽器を演奏してただけなのに、見たこともない男が屋敷に入って来た。

私は必死に制止した、なのにメルランは男に歩み寄ってしまった。

明るく笑いながら男に話し掛けるメルラン、そんなメルランを見て男は笑いながら……メルランの頭を潰した。

 

メルランの体を食べる男を見て、私は体を震わせながらリリカの腕を掴み、二階に駆け上がった。

リリカは何も言わずに涙を流し、私は震えが止まらないまま嗚咽を漏らしていた。

 

リリカを抱き締めながら小さく大丈夫、大丈夫と念仏の様に唱える、じゃないと心が壊れてしまいそうだったから。

でも、リリカは手遅れだったらしい…虚ろな目で私の手を振り払うと男の方へ走って行ってしまった。

私は叫んだ、待って、行かないで…と。

でもリリカは返事をしてくれなかった、いや…あれは返事だったのかも知れない。

 

リリカが最期に叫んだのは、私に対する助けを乞う言葉だったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ルナサちゃんは震える字で、事の一部始終を簡潔に(つづ)ってくれた。

それを見て涙を流すヴィクトリアちゃん、口を開いては酷い、酷いと呟きルナサちゃんの頭を撫でていた。

ルナサちゃんは涙を流しながら再び字を綴る。

 

 

 

……わた…し…は…まち…が…って…た…の…か…?

な…に…が…わる…かっ…たの…?

わ…たし…た…ちは…ただ…こ…のいえ…で……く…ら…して…いた…か……た…だけ……

 

 

 

「ゲホッ!ゲホッゲホッ…ッ!」

 

「っ!!ルナサちゃん!!」

 

「………ヴィクトリアちゃん、これがルナサちゃんの最期の言葉だよ…邪魔をしちゃいけない」

 

口から大量の血を吐き出しながらも、ルナサちゃんは書くことを止めない。

 

 

 

いも…うと…も……み…ん…な…きえ…て…し…ま…っ

…た

わ…たし…も…じ…きに…み…んな…の…とこ…ろ…へ…い…く…の…ね……

ま…た…みん…なで……え…ん………そ…う…を………し………た……………い…わ………

 

 

 

ルナサちゃんの意識が遠くなって行くのが字を見てれば解った。

ルナサちゃんはボクの方を見ると、最期の力を振り絞り、字を綴った。

 

 

……あ…な…たは……つ…よ……い……

あ…な…………た…なら…こ…の…せか…い…を…………す…く…える………は…ず……

あ……な…たに………わ…た…し…から………………お…ね…が…い…………する……わ…

 

こ……の…せか…い……を………わ…たし…た……ちが…あい…した………せ…………………か…………いを…………す…く……………………っ……………て

 

 

ルナサちゃんはペンを置くとボクの手を握る、そして涙を堪えながら光を失いつつある眼でボクを見つめていた。

 

「…約束するよ、ボクに任せて」

 

笑いながら優しく言う。

するとルナサちゃんはボクの手を強く握り、ニッコリと笑いながら涙を流す。

そして声も出ない口でこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

あ………り…が……………と…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがルナサちゃんの最期の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 





はい22話でした!

少し…アレな気分だ…………w

見にくい人の為にルナサの言葉を書きました。

私達は間違っていたの?
何が悪かったの?
私達はただこの家で暮らしていたかっただけ

妹もみんな消えてしまった
私も直にみんなの所へ行くのね
またみんなで演奏をしたいわ

貴方は強い
貴方ならこの世界を救えるはず
貴方に私からお願いするわ

この世界を
私たちが愛した世界を救って




うぅむ…

感想、批判、アドバイス、誤字脱字指摘
お待ちしております!

ではまた次回!


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