東方四面楚歌   作:ソーヤー麺

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はい27話です。

今回も流血表現注意です


 
ではどうぞ!





27話 鬼との死合い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女、星熊勇儀は強い、とてつもなく強い。

一撃を受ける度に体がバラバラになりそうになる。

俺は今、人間の肉体強度の限界を無くし、人間の出せるパワーの限界もなくし、人間の持つ自然治癒力の限界をもなくしている。

 

だが、単純なパワーで明らかに俺は負けている。

どれだけ本気で殴ろうが避けられ、カウンターを入れられる。

プロボクサーなんてもんじゃない、明らかに人間とは比べ物にならない強さだ。

 

「ハァ…ハァ……」

 

「ハンッ…アンタが一撃入れる前に私の拳が真っ赤になっちゃったよ…ほら早く来な」 

 

勇儀が鼻で笑い、挑発を交えながら人差し指をクイクイと曲げる。

まるで軽く遊ばれている様だ、心底腹が立つ。

 

「…うるせぇ…よッ!」

 

一気に踏み込み、勇儀との距離を詰める。

完璧な間合い、完璧なタイミングで繰り出すのは空手で言う上段突きだ。

俺の拳が勇儀の顔面に近付く、だが勇儀は笑いながら首を傾げ、俺の放つ攻撃は難なく避けられる。

 

「ガ…ッ!?」

 

脇腹に強い衝撃と鈍い痛みが走る、勇儀のカウンターが脇腹に入ったのだ。

痛々しい音と共に肋骨は砕け、砕けた肋骨の一部が皮膚を突き破ったのだろう、確かに感じる痛みと内臓がシェイクされる苦痛に俺は血を吐き出す。

 

「まだまだァ!」

 

「グッ……!!」

 

続けざまに左頬を強く殴り飛ばされる。

奥歯は砕け、砕けた歯が内頬に突き刺さる。

そのまま壁に吹き飛ばされた俺は頭を強くぶつけた。

 

「ハッ…ハッ……ハァ…ハァ」

 

「まだ立つのかい…根性は認めるけどそろそろ諦めたら?」

 

「…諦める、訳が…………ないだろ…」

 

「ふん、ならそろそろ決めるよ」

 

勇儀が構えた。

どうやら本当に終わらせに来るらしい。

今が、今こそが最初で最後のチャンスだ。

 

勇儀が踏み込んでくる、やはり凄いスピードだ。

人間とは根本的な何かが違う。

 

なら、動けなくしてやればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇儀は考えていた。

この男は、次の一撃で必ず死ぬ。

人間にしては強いが私にとっては敵ではない。

なんの恨みも無いが死んでもらおう、と。

 

勇儀の渾身の一撃が男の腹を狙う。

受ければ体は爆散し、粉々になるだろう。

 

「フンッ!!」

 

 

 

ーードンッ!!

 

 

 

確かな手応えがあった。

勇儀の渾身の一撃は完璧に浅木の腹へと吸い込まれた筈だった。

だが、浅木の体はバラバラにはならない。

それどころか浅木の手が、勇儀の拳を受け止めている。

 

「…なッ…!?」

 

勇儀は咄嗟に腕を引く、だが浅木は勇儀の拳を放す事なく握り締めていた。

勇儀は感じる、永年の勘が、自身の五感が警告した。

 

 

 

 

 

 

今すぐ離れないと…負ける

 

 

 

 

負けは許されない。

負ければあの子を、萃香を…失な…

 

 

 

「これで…終わりだ…ッ!!!」

 

 

 

浅木の上段突きが、勇儀の顎を掠めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達鬼は嫌われものだ。

だがそれをイヤだと感じた事はあまりない。

人間の偉い奴が言った言葉

 

「百人の友達を作るより百人分大切な親友を作りなさい」

 

あながち間違いじゃない、私にもいるんだから。

伊吹萃香、私と同じ鬼の四天王の一人。

永い時間、萃香と私は一緒にいた。

何時しか萃香は私の大切な存在になっていた。

 

唯一無二の親友、同じ徳利の酒を呑む仲。

私は萃香を一生好きでいようと思った。

 

だけどそれは、同じ鬼によって阻まれた。

 

何時もみたいに萃香は霊夢の所に拠っていた、日が沈んでから数刻経った時、萃香は帰ってきた。

四人の鬼と、見知った巫女と共に。

 

萃香は既に息がなく、私の呼び掛けに応える事はなかった。

呆然とする私に一人の鬼が告げる。

 

 

 

「我等が新たな四天王だ」と

 

 

 

私は怒った、怒り狂いコイツらを八つ裂きにしてやろうと躍起になった。

だが力量が違いすぎた、私は完璧な敗北を期す事になる。

満身創痍の私に、巫女がこう言った。

 

 

 

「私達の犬になりなさい、そうすれば彼女を助けてあげるわ」

 

 

 

私には選択肢はなかった。

萃香を助けるためなら…犬になろう。

例え鬼としての尊厳を、意思を捨てたとしても…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろって…」

 

「ん……」

 

浅木に揺さぶられ、勇儀は意識を覚醒させる。

朦朧としながら何とか現状を把握しようと必死に体を起こした。

 

「…約束通り、霊夢ちゃんの情報を聞かせてもらう」

 

「約束した覚えはないんだけどね…まぁあ良いや…」

 

勇儀は浅木の体を見る、勇儀のパンチを受け止めた左腕は、関節が五つほど増え、不自然に折れ曲がり鮮やかな色の肉が露呈している。

衝撃が殺しきれなかったのか、腹は裂け今でも血が滴っている。

死なないのが不思議なくらいの重傷だ。

 

「…そうか、私は負けたのか」

 

「………」

 

「アンタ強いね、気に入ったよ…まさか私が気絶するとは」

 

「………」

 

「ああ!そうだそうだ!博麗の巫女だったね!それなら…」

 

「なあ、星熊勇儀……アンタ何で泣いてるんだ?」

 

「っ!?」

 

勇儀は自分の頬に手を遣る、すると血以外の物で確かに濡れていた。

 

何故涙が出る?何故私は泣いている?

 

自身でも判らない涙が頬を濡らし続けていた。

勇儀は正体不明の涙の意味を、ようやく理解する事が出来た。

 

「…………」

 

「…どうした?何かあったのか?」

 

「…す、い…か…」

 

「……?」

 

「萃香が…っ、萃香がッ!!」

 

勇儀の目から大粒の涙が零れ落ちる。

それを見て、浅木は悟った。

これは、何か裏がある…と

 

 

 

「…何があったか、話してくれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー旧都へ続く大橋

 

グレンは焦っていた。

目の前の男に銃が効かないからだ。

グロックのフルオート射撃を受け、全く傷ひとつなく耐えきるのを見れば誰でも焦るだろう。

 

「チッ、コイツ…これが能力か…?」

 

長く鋭い槍を手に、大柄なグレンよりも一回り大きい体躯で暴れまわる阿形。

そんな阿形の槍撃をなんとか避け、続けざまにグロックを連射する。

 

「我には効かぬ!」

 

一瞬の隙を突き、グレンの脇腹へ槍の薙ぎ払いを繰り出す。

グレンはそれを屈み、避けるとグロックからベネリにチェンジしてベネリの銃口を阿形の顔面へ向ける。

 

ーードォンッ!!

 

銃口から火が上がり、複数の大粒の散弾が阿形の顔面を叩く。

今、発射されたのはスラッグと呼ばれる特殊な散弾であり、撃ち抜くと言うよりは金属を叩き付けると呼ぶに相応しい弾丸だ。

 

金属と金属がぶつかり合う音が響く。

グレンは自身があった、スラッグを顔面に受けて死なない奴はいない。

少なくとも今まではいなかった。

 

「ぬう…今のは中々…」

 

「……ハッ、マジかよ…テメェ」

 

何と無傷だった。

グレンは内心驚愕していた、死ぬまでいかなくても少しばかりダメージを与えたと思ったからだ。

だが阿形は無傷でグレンを睨み付けていた。

 

「死ねオラァ!!」

 

グレンの拳が、阿形の顔面を捉える。

二発三発と連続でパンチを繰り出し、最後にアッパーをヒットさせる。

並の人間なら簡単に崩れ、気絶するような猛攻だ、だが相手は鬼、高が人間であるグレンの素手の攻撃など蚊が血を吸う痛みに等しい。

 

「ぬんッ!」

 

「ゴハァ!!」

 

阿形の蹴りが、グレンの鳩尾を抉る。

胃の内容物を吐き戻しながらグレンは吹き飛んだ。

 

「オェ…チクショウ……you,a…fuckin`Nice!!」

 

思わず英語が出るほどにイラついてるらしく、グレンは立ち上がると真っ直ぐ阿形に駆け寄って行く。

 

「死ね人間ッ」

 

阿形が槍を振るう。

だが目の前グレンはいなかった。

 

突然、阿形の肩を誰かが掴む。

その手は阿形を力強く振り向かせ、自身の方へと向けさせた。

 

「テメェが死ねクソがッ!!」

 

グレンの手に握られた鉄パイプが鈍く輝く、その鉄パイプは轟音と共に阿形の口に叩き込まれた。

 

「グアアア!!」

 

歯が砕け、口が大きく開いたままになった阿形。

その姿を見て、グレンはニヤリと笑みを浮かべた。

 

「コイツ喰わせてやるよ!遠慮すんな!!!」

 

そう叫びながらグレネードを一つ取り出し、阿形の口内に腕ごと捩じ込む。

腕を抜く時、グレネードのピンを引き抜くのも忘れない。

 

「バラバラになっちまえッ!!」

 

「ウガアアアアアアア!!」

 

 

 

ーードガァァァン!!

 

 

阿形の体は、内側から破壊された。

 

 

「俺を殺ろうなんざ…100年早ぇんだよ…ハハッ」

 

 

グレンは再びニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょこまかと動きおってッ!」

 

「止まったら殺すでしょ!?」

 

碧生は吽形の剣撃を必死に避けていた。

碧生の二回り大きい吽形の剣は重く、素早いため避けるのがやっとである。

 

(これは、一撃当たれば致命傷だねぇ…)

 

能力こそ神憑り的な能力であり、自身も神である故にかなりの強者である碧生であるが。

身体的強さは一般の人間と同じである、剣で心臓を刺貫かれれば死ぬし首を落とされても死ぬ。

 

「そろそろ…反撃させてもらうよ!!」

 

碧生は右手に電気を溜め、吽形に向けて放出する。

圧縮された電気は数百万ボルトになり、雷とほぼ同じ出力を持つ雷撃と、化していた。

 

「ぬぅんッ!ハァ!!」

 

その雷撃を、なんと切り伏せてしまった。

これには流石の碧生も驚きを隠せず、隙を作ってしまう。

 

「ま、マジで!?」

 

「好機ッ!」

 

吽形の剣が、碧生の胴にめり込む。

吽形はそのまま力任せに剣を振り抜いた。

 

「あ…」

 

碧生は間抜けな声を漏らし、胴体を真っ二つにされた。

吽形はそれに満足したのか、口許を笑みに変える

 

「な、何なのだ……此れはッ!?」

 

二つに別れた筈の、碧生が青いツタのような形になり、吽形の体に巻き付いた。

怪力の吽形でさえ、そのツタを千切る事は出来ない。

 

「何時からその碧生くんがホントの碧生くんだと勘違いしてたのかな?」

 

吽形の背後から、胴体を真っ二つに切られた筈の碧生の声が聞こえる。

 

「貴様…」

 

「君たちの能力は、皮膚を硬質化させる能力だよね?」

 

碧生は見抜いていた、最初から分かっていたのだ。

吽形は悟った、コイツには勝てない、と。

だがもう遅い、碧生の手が吽形の体に触れた。

 

「…君の血を、蒸発させてあげるよ」

 

碧生の腕に稲妻が走る。

 

 

「ウ…ウォォォ!!!」

 

 

吽形の口から、目から、鼻から耳から、穴から血が溢れだす。

この技は碧生の十八番であり、良く使う技でもある。

最大限の苦痛を与え、すぐには死ねないのだ。

 

 

「アアアアアアアア…アァァ……ァ…」

 

 

やがて吽形の動きが止まる、苦悶の表情を浮かべて息絶えた。

 

 

 

「ボクに勝ちたいなら、生まれ変わるしかないんじゃないかな?」

 

 

碧生は満面の笑みを浮かべていた。

 





はい27話でした!


感想、批判、アドバイス、誤字脱字指摘
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ではまた次回!


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