東方四面楚歌   作:ソーヤー麺

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はい29話です!


今回はちょっとだけエグいので注意。



ではどうぞ!




29話 翠の河童と悪夢の過去  前編

 

 

 

 

 

 

 

ーー昭和45年、7月23日ーー

 

 

肌を灼く様に太陽の光が降り注ぐ季節。

 

蝉の鳴き声が鼓膜を震わせる。

 

脇には鬱蒼とした木々が並ぶ、舗装されて間もない道路の上に一人の若い男が立っていた。

彼は焦点の定まらない目を宙に泳がせながら、唇を小刻みに動かしている。

 

「ブツブツ…ブツ…………ブツブツ……」

 

額に大粒の汗をビッシリ浮かべ、意味不明な言葉の羅列を口にする男。

口許は真っ赤に染まり、滴り落ちる血を拭いながら譫言を吐く彼を見れば、誰もが彼が正気だとは思わないだろう。

 

やがて彼は、血を吐きながら倒れる。

彼は最期まで譫言を吐き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー河城にとりの住処ーー

 

「…っ…?」

 

「あ!起きた?大丈夫…?」

 

瞼をゆっくりと開く。

碧生は混乱していた、最後に感じた感覚は酷く冷たい雪の感覚だったのが、現在は暖かい布団の中にいる。

声のした方を見ると、翠の髪をした少女が心配そうに碧生を見ていた。

 

「……?」

 

碧生は翠髪の少女に声を掛けようとする。

だがその口から声が発せられる事はない。

碧生は更に混乱し、自分の喉を触る。

 

「出来る限りの処置はした、でもお前は二度と話せないと思うよ…」

 

「………」

 

碧生は自分の喉に右手人差し指を置く、すると眩い光と共に電気が細胞を刺激、再構築し、喉の傷が治った。

 

「ふぅ、ごめんねぇ…助けてもらっちゃって、本当にありがとう」

 

「…えっ、えっ!?今のどうやったの!?」

 

「ああ、もう説明するのめんどくさいなぁ……」

 

「ねぇ!科学!?科学なの!?科学の力!?」

 

「うるさい…」

 

「科学!科がk」

 

「静かに!」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、碧生は自らを治したのと同じ方法で、腹を抉られた浅木を治し、深い傷を負ったグレンの肩も治した。

浅木はすぐに目を覚ましたが、グレンは目を覚まさない。

 

「…えっと…状況は?」

 

「おはよう浅木くん、不幸中の幸いって感じかな?」

 

「そうか…畜生…」

 

「まぁまぁ、命があっただけでも見っけもんだよ、ねぇ?」

 

「うんうん……えっ?私!?」

 

「はははw」

 

「…碧生、その子は?」

 

「ボクたちの命の恩人だね、瀕死のボクたちをここへ運んでくれたらしいよ」

 

「そうだったのか…ありがとう…俺は浅木、コイツは碧生、そんでまだ寝てるあのデカイ奴がグレンだ」

 

「ふーん、私は河城にとり…別にそんなにお礼言われるような事はしてないし」

 

にとりの頬は少しだけ赤くなっていた。

どうやら人に褒められる事に慣れてないらしく、それを見抜いた碧生はクスクスと笑う。

 

「な、何で笑うんだ!///」

 

「別に~♪」

 

「全く、これだから人間は…//」

 

人間の言葉を不思議に思い、浅木は碧生を見る。

碧生は最初から判っていたのか、静かに首を縦へ振った。

 

「にとりも妖怪なのか?」

 

「ん?私は河童だけど?」

 

「……河童!?」

 

「うわっ!いきなり大声出さないでよ…そうだよあの河童だよ」ドヤァ

 

「…もっと恐い物だと思ってた」

 

「勝手にイメージしないでよ…」

 

浅木の中の河童は、緑の肌、頭に皿、黄色いくちばし、大きな甲羅などのイメージがあった。

 

だが目の前の河童は、青い服を着て、頭には緑の帽子、顔立ちは人間と変わらず、甲羅の代わりに大きなリュックを背負った美少女そのものだった。

 

「何て言うか、幻想郷って凄いよな…」

 

「それはどういう意味?

まぁ良いや、それよりお前達二人は人間だけど、そこで寝てる奴、あれは人間じゃないんだね」

 

その言葉を聞いた瞬間、二人は固まった。

 

「……は?」

 

「グレンくんが…?」

 

「うん、さっきから微弱だけど魔力を検知してるし。

それだけなら人間だって魔力何か出せるけど、最初にグレン?の処置した時、心臓止まってたけどしばらくしたらまた動き出したの」

 

「ってことは…?」

 

「グレンは多分悪魔の血を引いてるんじゃないかな?」

 

「「ファッ!!??」」

 

「え、二人とも知らなかったの?」

 

「あ、ああ…」

 

「グレンくん、純人間じゃなかったんだ…」

 

「あ、そうそう…これ一応運んだんだけど」

 

にとりは何食わぬ顔で、大きな黒い革のバックをテーブルに乗せる。

ドサッと重量を感じさせる音がした。

 

「中、見てみたらかなり興味深い物だったから持って帰っちゃった」

 

そう言いながらニンマリ笑うにとり、二人はそのバックに見覚えがあった。

そう、グレンのバックである。

 

「これは…」

 

「グレンくんのバックだねぇ」

 

「へー、じゃあ持って来て良かったんだねー…」

 

バックがグレンの物だと判ると、にとりは再びバックを漁り始める。

中には沢山の工具、銃火器、各種弾丸、レーションや救急キットがぎっしりと詰まっていた。

 

「おいおい、勝手に触るとグレンがキレる…って、これは…」

 

浅木はグレンのバックを覗く、すると革張りの丈夫そうな、だが使い古された一冊の日記帳が目に入った。

 

「これはグレンの?ハハ、何かイメージと違うな…日記付けてたのかアイツ」

 

「へー、グレンくんがねぇ?ちょっとだけ見てみようか?」

 

碧生と浅木は互いの顔を見合わせ、ニヤニヤと笑い合う。

そして日記帳を手に取り、一ページ目を捲った所で浅木は首を傾げる。

 

「……英語か、読めないな」

 

「あー、ボクも英語は…」

 

二人はガックリと肩を落とす、普段は傲慢で、乱暴で粗暴でガサツで少しイカれてる彼が、どんな日記を付けていたのか凄く気になっていたからだ。

 

「ん?英語なら私読めるよ?」

 

グレンのベネリを分解していたにとりは、作業を止めると二人に言った。

にとりの言葉を聞いて、二人は喜ぶ。

そして日記帳をにとりに手渡した。

 

「えー、何々~…じゃあ読むよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月21日、曇天ーー

 

今日から日記を付ける事になった。

前々からヴィナに、お前はだらしないから日記を付けろと口ウルサク言われ続けてたからな、良い機会だ。

 

俺が19歳になって1日が過ぎ、ヴィナから貰ったこの日記帳を使う理由が出来た。

アイツ、無理矢理過ぎるだろ、全く誰に似たのやら。

 

何はともあれ、今日から日記スタートだ、3日坊主で止めたらヴィナなまた怒鳴られそうだな。

 

 

 

                   グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月22日、快晴ーー

 

今日は天気が良い。

昨日までのウザったい雲が嘘みたいだ。

これもヴィナが徹夜でてるてる坊主を作り続けたお陰だな、ホントにバカなヤツだ。

 

とりあえず今日は仕事だ、久しぶりに日中の仕事になる。

今日も寒い、身も心も凍えそうだ。

こんな日は酒を飲むに限る、飲み過ぎたらヴィナにまた怒鳴られるな。

 

 

 

                   グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月24日、雨ーー

 

結局昨日は帰って来れなかった。

丸1日家に帰れず、帰っても鍵が掛かっていて部屋に入れなかった。

どうやらヴィナがキレちまったらしく、なんとか家には入れてもらえたが一言も口を利いてくれない。

 

仕方ないからケーキでも買ってやろうと街に出掛けたら店先で強盗に出くわした。

なんかムカついたからとりあえずブッ飛ばしてポリに突き出してやった。

 

警察に感謝される日が来るとはな、夢にも思わなかったぜ。

結局帰りが遅れてまたキレられた、すまんなヴィナ、ニイちゃんは今からまた仕事だ。

 

 

                  グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月25日、雪ーー

 

今回の仕事は長引く、って事で日記を持参しての仕事だ。

仕事の内容は…まぁクソみたいな内容だから書くこともないだろ。

なんか日課になりつつあるな、この日記も、まぁ書くことも少ないし書いてるってだけで意味があるとヴィナも言ってたし気にしない。

 

今日はあまり血を見なかった。

見たのは銃のメンテナンスしてるときに切った自分の指の血くらいか。

 

明日もあまり見ないように祈る。

 

                  グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月26日、吹雪ーー

 

寒い。

ただこの一言に尽きる。

元から寒いのが苦手な俺に、今回の仕事はキツすぎる。

誰だよロシア行けなんか言いやがったのは、次見たらブッ殺してやる。

 

ああ、ダメだ、手がかじかんで上手く書けない。

 

                   

                   グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月27日、雪ーー

 

一日中、雪の中に体を隠していた。

対雪服と防寒着に溶けた雪が染み込み、俺の体を容赦なく襲いやがる。

 

寒い、熱があるみたいだ。

凍傷が痛い、クソッタレ、また指がかじかんで来やがる。

 

                  グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月28日、吹雪ーー

 

今日は血を見た。

自分の体が悲鳴をあげる。

凍傷が酷い、体中が赤黒くなってやがる。

 

そして目の前には赤黒い中身を晒したクソッタレが寝てる。

十字は切ってやらねぇ、信仰家じゃないからな。

 

                 

                   グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          

ーー1月29日ーー

 

ザマァミロ、俺を裏切るからだ。

とりあえずバラして豚に喰わせてやる。

 

テメェら全員だ、覚悟しやがれ、キマッてる時の俺を止められるだなんて思うんじゃねぇクソ雑魚が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月30日、晴れーー

 

久しぶりに我が家へ戻った。

帰るなりヴィナが抱き着いてくる、どうやら心配してくれてたらしい。

持つべきは素直でかわいい妹に限る。

 

ヴィナの作った温かい飯を食い、熱いシャワーを浴びる、心身共にリフレッシュされた。

気分が良い、今日は深酒せずに眠れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー ーー

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死……クソ雑魚がッ!!

死ね!死ねよ!クタバレクソ○○○がッ!!

 

死ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー1月31日、曇りーー

 

どうやら昨日はまたキメちまったらしい。

記憶が殆どない。

だが日記を見て確信した、ダメだ。

 

ヴィナがなにかを言いたげに俺を見る。

暴走したらしい、今日は気を付けよう。

 

この前の仕事で貰った金を全部ヴィナに預けた、困ってたがこれが正解だろう。

 

今日は酒も飲まない。

 

 

                  グレン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






はい29話でした!

長くなりそうなのでとりあえずこの辺で。


感想、批判、アドバイス、誤字脱字指摘
お待ちしております!


ではまた次回!

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