今回は残酷注意。
ではどうぞ!
ーー妖怪の山、にとりの家ーー
「俺が、悪魔だ…?」
場の空気が一気に淀む。
碧生は知らぬ存ぜぬの調子で、浅木に至ってはアワアワと手を動かし続けていた。
「…あれ?本人も知らない感じ…?」
アハハと笑いながらにとりが呟く。
グレンの表情はより一層険しいものに変わり、にとりを睨んでいる。
「どう言う意味だ…テメェ…」
グレンは未だ全快とは言えない体を、ベッドから起こす。
その様子を見て、にとりは悟る。
「ああ、やっちまった」と。
「あ、いや…だからッ…その…ね?」
冷や汗を額一杯に浮かべ、ニコニコと不自然な笑みを浮かべながら打開策を練る。
「ね?じゃねぇよ…キチンと説明しやがれ」
「うぅ……分かったよ…もう…」
やがてにとりは観念したのか、自身が考える憶測を語り始めた。
「グレンの体には…微弱な魔力が宿ってるの、でも本当に微弱でさ、普通どんなに弱い悪魔だったとしても、もう少し強いはずなんだけど…」
「…要点を話せ」
「……だから、グレンは…悪魔と人間のハーフ、もしくは悪魔と人間のハーフと人間の間に出来た子、つまり悪魔のクォーターだと私は思う」
「…マジかよ……」
グレンはショックを受ける。
まさか自分がそんな存在だったとは、夢にも思わなかっただろう。
だが事実、グレンはアレだけの致命傷を負いながらも死なず、人間には持ち得ない「魔力」を宿しているのだから言い訳出来ない。
「…グレン、大丈夫か?」
「…大丈夫だ、てかこんなトコで無駄話してる場合じゃねぇだろ…さっさと戻らねぇと」
にとりが治療の為に脱がした服を探す。
足取りは若干覚束無い、フラ付きながら部屋を彷徨くグレンの背後に碧生が近寄る。
「はいバチッとな」
「グァッ!」
グレンの首筋に、碧生が電流を流す。
短い悲鳴を上げ、グレンは倒れてしまった。
「碧生、何もそこまで…」
「だって、今行っても仕方ないでしょ?口で言っても聞かないしね、それよりグレンくんをベッドに戻してあげてよ」
「……全く、少し手荒過ぎるぞ?」
浅木がグレンを抱え、ベッドへと戻す。
その一部始終を見ていたにとりが、思った事を口にした。
「ねぇ、お前たちは何で彼処で死にかけてたの?」
突然質問され、碧生は口をつぐむ。
「…ちょっとね…」
その言葉を聞き、にとりの脳裏に一つの可能性がチラ付く。
「…まさか、地霊殿に行こうとしたの?」
「ああ、その通りだ…」
答え難そうにしていた碧生に代わり、浅木が答えた。
だがその言葉を聞いて、にとりの表情が一気に怒りへと変わる。
「この馬鹿!」
「うわっ!」
にとりがいきなり叫ぶ、その声に驚いたのか碧生がベッドから転げ落ちた。
浅木は意外な出来事に唖然とした表情だ。
「あんな危ないトコ行くなんて…お前たちどうかしてるッ!!」
物凄い剣幕で怒鳴り続けるにとり。
それを見て、またも焦る浅木。
碧生は両耳を掌で押さえ、聞いてない。
「あ、ああ、そうだな…確かに皆に反対されたよ…」
浅木はバツが悪そうな顔で言う。
その言葉を聞いて、再びにとりがキレた。
「なら行くな!折角の命を…もっと大事にしてよ…」
にとりの瞳から涙が溢れる。
そして浅木は悟る、「この子も、か…」と。
「にとり、一体…何があったんだ?」
ーー冥界、白玉楼ーー
「此の度は、私の為に馳走を御用意頂き、誠に感謝するよ」
無名剣士、改め青年の前には沢山のご馳走が所狭しと列べられていた。
青年はニコニコと笑いながら、その料理の数々を見比べる。
「…いえ、お気になさらず」
幽々子も同じように笑いながら、青年な前に座っていた。
その傍らに立ち、料理を作っては黙々と運ぶ妖夢。
やはり未だ許せないのか、頻りに青年を睨む。
「さて、頂きます」
青年が料理に手を伸ばす。
それを見て妖夢がニヤリと笑う。
そして青年が料理を口に運ぶと、青年には見えないように小さくガッツポーズをした。
「……確かに美味しい、だが毒で私を殺せると思ったのなら…其は大間違いだ、魂魄妖夢よ」
「チッ…劇薬なのに」
「露骨に舌打ちをし無いで欲しいね、君の観楼剣なら先程元通りに戻しただろう?」
「楼観剣です、観楼剣ではありません」
真っ二つに折れた楼観剣だったが、妖夢に食事の用意をさせる前に、青年が元通りにしていた。
だが元通りとは言え、青年が妖力を込めて繋げただけなので、元通りとは言え無い物である。
「嗚呼、そうだったね、済まない」
青年が笑いながら酒を煽る。
二人のやり取りを見て、それまで黙りを極め込んでいた幽々子が口を開いた。
「…それで、一体どうするつもり?」
「どうする、とは?」
「加担したい、そう言ったのは貴方よ。だから訊いてるの…これからどうするつもり?」
青年は酒の入った盃を畳に置き、幽々子に向けて左手を伸ばす。
何をされるのかと怯える幽々子、それも気にせず青年は幽々子の細腕を掴み、グイッと引き寄せる。
「…そうだな…一つ提案が有る」
「…ッ…な、何かしら…?」
強制的に、青年の胸に飛び込む形になる。
幽々子は腰に回された腕を払い除ける事もせず、青年の顔をジッと見上げていた。
「君は死霊を操れる、そう聴いて居てね…」
「誰に、聴いたの?」
「其は謂えない…其の件は今は置いて措こう、其より…」
幽々子の顔に、青年が顔を近付ける。
いきなりの行為に眼を見開く幽々子。
そんな幽々子の耳許で、青年は小さく囁き掛ける。
「…君の力で妖怪達に死霊を憑かせるんだ、そして死霊が憑いた妖怪達に人里を襲わせる…面白い物が視られるだろう」
幽々子の体が震える。
正しく悪魔の様な所業、鬼畜と呼ぶのに相応しい。
だが、幽々子は彼に逆らえない。
本能がそうさせるのだ、何故だか解らないが…彼の言葉に従ってしまう。
「…そう、ね…愉しそう…だわ」
無理矢理に、笑みを作る。
彼の気を損ねてはならない。
恐怖と、本質が求める邪な甘言が、彼女の心を支配する。
「決まりだ」
青年が幽々子に盃を持たせる。
幽々子は青年の膝の上で、盃を手に小さく震え続ける。
「魂魄妖夢、君も盃を」
「………」
無言で盃を持つ妖夢。
そして室内に居る全員が盃を持った所で、青年が言い放った。
「凡ての苦難と血に…」
ーー人里ーー
人々の悲鳴が至る所から聴こえる。
刀や槍を持った妖怪が人間を斬り刻み。
魔法を使う妖怪等が家々に火を放つ。
百にも満たない自警団は何の役にも立たず、蹂躙され、惨殺される。
生きたまま火を点けられ、悶え苦しみながら死ぬ人。
手足を切り落とされ、血を失う恐怖を味わいながら死ぬ人。
目の前で子供を殺され、泣き叫びながら自ら腹を切り裂き、死ぬ人。
幾数もの妖怪に犯され、なぶられながら殺される人。
紅く染まって行く人里は、正に地獄を体現した物へと姿を変えた。
そんな中、ただ呆然とその惨状を見ている一人の女がいた。
「…何と言う、事だ…」
既に満身創痍の女、名は上白沢慧音。
彼女と藤原妹紅は必死に戦うも、その数と戦力の前に、敗れたのだ。
地面に倒れる二人の元に、人間と違わぬ外見をした妖怪が集まる。
「ようやく終わったな、後はコイツら二人を殺れば終いだ」
「何だよ、ただ殺るだけか?」
「コイツらを喰らえば、少しは力がつくな」
「おい、コイツ確か蓬来人だぜ、バラして埋めちまおう」
ゲラゲラと笑いながら、妖怪達は二人を取り囲む。
二人は自分の無力さを恨み、ただその時を待つのだった。
はい33話でした。
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