いやー、大変お待たせしました…41話です!
あまりに間が空いたため、リハビリ期間ですが…
ではどうぞ!
ようクソヤロウ、元気か?
(…ウルセェ)
元気、なワケねェか。死んだもんな。
(…ああ)
思ったより呆気なかったな。お前もうちょい頑張れよ。
(心臓ブッ刺されたら誰でも死ぬだろうが、無茶苦茶言うんじゃねぇ)
んなこたァねェぞ?
少なくとも俺は死なねェからな。
(クソ悪魔のテメェと俺を比べんな)
クソ呼ばわりかよ…ったく、可愛くねェ奴だよお前は。
(…気色ワリィ、黙ってろ。俺はテメェが大嫌いだ)
何でだよ?
お前は可愛い可愛い俺の一部じゃねェか。
(……………)
そうだろ?グレン…お前は俺で、俺もまたお前だ。
人間の親父と、「堕天使」いや「堕女神」の母親の間に出来たガキ、親父の血がお前で、母親の血が俺だってだけの話さ。
(…なぁ、やっぱりヴィナも…俺も悪魔なのか?)
ああ、その通り。
お前の中の非情で、暴力的で、心底腐り切ったイカれた人格。それが俺だ。まぁ、元から狂ってるがな、お前は。
ヴィクトリアの事は知らねェ、母親の血を濃く受け継いでんならソリャ悪魔だろうな。
まぁ少なからずその血が入ってるってのは肝に銘じとけ。
お、誰かお前を呼んでるぜ?
(ん、ああ…チッ、この声…)
愛しの愛しのペットちゃんじゃねェか?
(仕方ねぇ……今回は預ける)
オー、良いのか?お前俺のコト嫌いだろ?
(動けねぇんだから仕方ねぇだろうが…)
ハイハイ了解しましたよォ…行ってきま~すゥ…
(ふざけてねぇでさっさと行け)
ハァイ…仰せのままに~♪
(…椛とヴィクトリアを頼んだ)
……ああ、任せろ。
ーー無縁塚、20時35分ーー
「グレンさん!グレンさん!!」
ピクリとも動かなくなったグレンの身体にすがりつきながら、椛は必死にグレンの名を呼び続けている。
だがグレンの目は開かない、それどころかどんどん顔色が蒼白く変わって行く。
「嘘だ…嘘だッ!!」
その大きな瞳からは涙が溢れ、降り頻る雨に混ざってグレンの頬を濡らす。
椛は受け入れるしかなかった。グレン・ブレスウェートの死を…しかし。
「……Sweet dreams are made of this…♪
Who am I to disagree?」
あまりの出来事に、椛の動きが固まる。
今、確かにグレンの口からハッキリと歌声が聴こえて来たからだ。
聞き覚えの無い、異国の言葉、異国の歌。
呆気に取られる椛に構わず、グレンは歌い続けた。
「Travel the world and the seven seas♪
Everybody's looking for something
Some of them want to use you
Some of them want to get used by you♪
Some of them want to abuse you
Some of them want to be abused♪」
徐々に大きな歌声に変わって行く。
少し離れた場所に居た、トレバーと剣士がその歌声に気付き、グレンの方を見た。
「おいおい嘘だろ……心臓に穴空いてんだぜ…?畜生、トドメ刺してやる…ッ」
苛立ちを募らせ、ナイフを手にグレンへと歩み寄ろうとするトレバー。
だが剣士が、それを止めた。
「…トレバー君、嫌な予感がする。近付か無い方が賢明だ」
「だが…!」
「良いから、謂う通りにするんだ」
「……ああ、解ったよ…剣士さん」
「I wanna use you and abuse you♪
I wanna know what's inside you
Movin' on
Hold your head up♪
Movin' on
Keep your head up
Movin' on!」
「あ、あの…グレン…さん、い、生きて…」
椛がグレンに声を掛ける。
最後のフレーズを口ずさんだグレンは、紅く染まった掌を空に向ける。
「…何てツラしてんだよ…ペットちゃん…」
グレンは心配そうに顔を覗き込む椛に目を遣り、そしてそのまま身体を起こした。
グレンを見詰め、何か言いたげな椛の頭をグシャグシャと撫でると、グレンはトレバーと剣士に向かって叫ぶ。
「…よォ…もうちょっと遊んで逝けやクソ雑魚共ォ!!」
泥と血に塗れたコートを脱ぎ、血で赤黒く染まったYシャツ姿になるグレン。
脱いだコートを椛に被せ、トレバーと剣士の二人に向き直る。
トレバーはグレンを見る、胸の方をを見ると確かにあった刺傷が消えていた。
ギラギラとした瞳は圧倒的威圧感と共に二人を捉え、グレンの頬には血が混じったが雨伝う。
「…トレバー君、アレは異質だ。近付くな」
「…………」
「アレを殺す事が、最重要事項では無い。私達にはこれから大事な用が有るだろう?」
「…そうだよな、さっさと行こうぜ」
トレバーと剣士が、グレンに背を向ける。
そして剣士が空に手を翳し、 下に振り下げると、空間が割れ、謎の空間が現れた。
そう「スキマ」だ。
後ろで喚くグレンを無視し、二人がスキマに入ろうとした瞬間…
「遊んで逝けって、言ってんだろォ…?」
「「!!?」」
二人の背後にグレンが居た。
トレバーはナイフを、剣士は太刀を抜きながら咄嗟に振り返る。
そしてそのまま剣士が太刀を振るうが、それを意図も簡単に避けるグレン。
避けた先にはトレバーが待機しており、グレンの足が地面に着地するのと同時にナイフを背後から突き刺す。
「ざァんねェんでしたァ…♪」
だがその刃はグレンの背中を貫く事は無く、代わりに突き出された掌を貫いていた。
「チッ…!」
力が入った掌からナイフが抜けず、ナイフを奪い返す事を断念したトレバーは腰のホルスターに差された、もう一本のナイフに手を伸ばす。
「喰らえバケモン…!」
ナイフを、がら空きになっていたグレンの脇腹に突き刺す。
深く刺さった刃は、腸にまで到達しており、トレバーは確かな手応えを感じていた。
(殺ったか…?)
「…手間を取らせてくれるね…!」
そして間髪入れずに剣士の斬撃がグレンの背を切り裂く。傷は相当深く、夥しい量の血が地面に流れ落ちて行く。
二人は確信した。仕留めたと。
「……こんなモンか…ァ?」
だがグレンは倒れない。
それどころか、切り裂かれた背中が徐々に再生しはじめていた。
「ッ!?マジかよッ!」
トレバーはグレンから距離を取り、剣士の元へと駆ける。
剣士も険しい表情をしているところを見ると、どうやら危険分子として認識したらしい。
「トレバー君、些か分が悪い」
「ああ、時間も無いしな…」
トレバーの頬を、嫌な汗が伝う。
目の前の男、グレンの豹変振りに戸惑っているのだ。
腹を抉り、骨に到達する程の傷を背中に負ったにも関わらず、グレンは平然と立ち。あまつさえ自分達を攻撃しているのだから。
そして極めつけは未知の能力。
瞬間的に距離を詰めて来る所を見ると、トレバーはグレンの能力が移動補助系の能力だと推測する。
「なァお二人さん」
不意な呼び掛けに、トレバーと剣士の動きが止まる。
「アンタ達の目的って、ナニ?」
その問い掛けに、剣士が答えた。
「…何れ判る」
そして剣士がドンッと足を踏み鳴らすと、地面が割れ、スキマが出来た。
「では、また逢おう」
剣士はトレバーの腕を掴み、そのまま二人はスキマへと消えたのだった。
一人残されたグレンは、空を見上げ、顔に雨を受けながら呟く。
「……なァに、スグに逢えるさ。その前に…」
グレンが林の方を見る。
一見すると何もない、ただの木々が並んだ光景なのだが…
「ショータイムだ」
グレンの口角がグニャリと歪んだ。
ーー無縁塚、グレンから130メートル地点の林ーー
今この場所に、一人の巫女服姿の少女が身を隠していた。
そう、セラスを襲った東風谷早苗である。
彼女はセラスを襲った後、この林から事の一部始終を覗いていたのだ。
(剣士さんとトレバーさんを相手にさっきの立ち回り…あの男、脅威になりそうですね)
トレバーから受け取った小さなスコープを覗き、グレンの状態を確認する。
腹部に突き刺さったナイフを抜こうともせず、白狼天狗の少女と共に、倒れた少女を介抱していた。
(今の内に排除しておいた方が…いや、もう少し様子を見ましょう)
早苗が再びスコープを覗く。
すると少女を介抱していたグレンが、早苗の方に振り返る。その瞬間、グレンの目が早苗の目と合った。
「っ!?」
思わず木に隠れる早苗。
確かにバッチリと目が合った、だから反射的に身を隠したのだ。
「……偶然、そう偶然ですよ…」
小さく自分に言い聞かせ、深呼吸をする早苗。
意を決して再び木陰からスコープを覗く。
「………?」
居ない。
確かに居たはずの男が消えていた。
おかしい、何かがおかしい…
「やァ…お嬢さん」
背後から声がするのと同時に、凄まじい殺気が私を包み込む。
今振り返れば…私は……
「…ぁ…ぅ……」
声を発する事が出来ない。
全身の毛穴と言う毛穴から汗が噴き出し、身体が勝手に震え始めた。
肩に重みを感じる。どうやら彼が私の肩に左手を置いているらしい。
逃げられないように。
「そう固くなるなよ、なァ…?」
地を這うような声が私の思考を止め。
さっきまで彼の腹に刺さっていたナイフ。
今は私の首筋に当てられたソレが、身体の動きを止めた。
心中に激しく渦巻く感情。これこそが…恐怖
「…場所、移そうぜ…?」
私は彼の言葉に、ただ従うしか出来なかった。
はい41話でした。
いやぁ、久しぶりに書いた…
感想、批判、アドバイス、誤字脱字指摘
お待ちしております!
ではまた次回!