東方四面楚歌   作:ソーヤー麺

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8話目ですー

さて、このお話でとりあえず一人目の男は終わりです。
次話からは二人目の男になります。

では8話目をどうぞ!



一人目の男 氷精と戯れる、そして人里へ…

 

 

 

 

 

魔理沙に聞いたところによると。

今、目の前に居るのは、氷精と呼ばれる妖精の一種らしい。

文字通り氷を操る…と言うか冷気を操る能力を持っているらしく、妖精の中では最強に近い強さを持つとか。

まあ、いくら最強だと言っても妖精の中では、の話なので言うほどの脅威ではないらしい。

あと物凄い馬鹿だとか。

 

「へー、アホの子?」

 

「そうだぜ、アホだぜ」

 

「ちょっと待ちなさいよ!

最強のあたいを前に二人で話し込んでんじゃ無いわよ!」

 

自分で自分を最強だと思い込むあたり、かなり痛い子なんだろうな…

でもあながち間違いではないか、妖精の中では、最強なのだから。

 

「…………」カワイソウナモノヲミルメ

 

「ぶふっ…!」

 

俺が死んだ魚のような目で、氷精に哀れみの視線を向けると、隣にいた魔理沙が吹き出した、そんなに笑われるとちょっと傷付くぜ、魔理沙よ。

 

「ぐぬ…アンタ!

あたいと勝負しなさい!」

 

「へ?俺?」

 

いきなり指を指して宣言されると、俺はすっとんきょうな声で答えた。

 

「そうよ!あたいが最強って事をその体に教えてやる!」

 

ふむ…困った、俺には幼女をぶん殴るド畜生な所業は出来ない。

それにまだ弾幕と呼ばれる弾を撃つ事が出来ないのだから、勝負と言えば必然的に殴り合いになってしまう。

 

「んー、断る」

 

「断らせない!」

 

そう言うと氷精は、先ほど俺の腹に放った氷の塊をこれでもかと撃ち出してくる。

俺は、咄嗟に隣に生えていた木に身を隠す、氷塊が木にぶつかり、木が削れていく。

 

「ま、待て待て!」

 

「待たない!」

 

俺は助けを求めて、魔理沙に視線を送る、だが、

魔理沙は既に空を飛んで避難してやがる、チクショウあの野郎逃げやがった。

 

「ふふん!降参するなら今の内だよ!」

 

……何だと?

俺が、見た目幼女の妖精に降参…?

 

「……仕方無い、な!」

 

そう言うや否や俺は今まで盾にしていた大きな木を、軽く蹴り倒す。

いきなりの行動に口を開いたままの氷精を見ながら、蹴り倒した木を持ち上げ、投げつける。

 

「え、え…!!」

 

ーードゴンッ!ベキベキ!

 

木は妖精に当たること無く、手前の木にぶち当たり、その木をもへし折ってしまった。

 

「……まだ続ける?」

 

俺は腕を組んで、氷精を見下ろしながら告げる。

少し睨みを利かすのがポイントだ。

 

「き、きょきょ今日のところは!こここれこれくらいにしといてあげる!」

 

冷や汗を浮かべながら氷精は、精一杯の強がりを見せる、魔理沙はケラケラ笑っている、ムカつく… 

 

「あ、アンタ中々やるわね!

まああたいには敵わないけど!」

 

「アンタじゃない、浅木だ」

 

「ふーん…あたいチルノ!」

 

「チルノか、ほらそろそろ行け、俺達は急いでるんだ」

 

チルノの頭に手を乗せ、軽く撫でる。

ひんやりとした冷気が確かに感じられた。

 

「ふふん、気安く触らないで!」

 

とか言う割りには満更でもない様子だ、手を払い除けたりもしないし。

 

「ああ、悪かったよ」

 

笑いながら手を引く、何処からか視線を感じて上を見ると、何故か魔理沙が不機嫌そうに此方を見ていた。

 

「……何だよ?」

 

「別に、何でもないぜ」

 

「ホントか?」

 

「うるさい、しつこい男は嫌われるぜ?」

 

更に不機嫌になった魔理沙は、俺から視線を外してチルノの方を見る、頬を膨らましジト目の魔理沙は可愛かった、凄く。

 

「なるほどなるほど…魔理沙、後で撫でてやるからな」

 

「な、なんでそうなる!?」

 

一瞬嬉しそうな標準をするが、すぐに迷惑だと言わんばかりの抗議をしてきた。

 

「じゃあ撫でなくていいな、あー撫でたかったなー、魔理沙の頭」

 

「ぐっ…クソ、勝手にしやがれ///」

 

少し赤くなりながらそっぽを向く魔理沙、これがツンデレか。

 

「さて、行くか、じゃあなチルノ」

 

「勝負は持ち越しね!次は泣かせてやる!」

 

逆に泣かせてやろうか。

とは口が裂けても言えない、紳士だからな。

 

「おう、楽しみにしてるぞ、じゃあな」

 

チルノに別れを告げ、俺はゆっくりと宙に浮かぶ。

ある程度まで高く飛ぶとそのまま人里を目指して魔理沙と共に進み始めた。

 

 

 

 

 

 

暫く飛んでいると、魔理沙がかなり大きな町の様な物を指差し、呟いた。

 

「あれが里だぜ!」

 

「中々大きいんだな」

 

俺は魔理沙に言われた通りに里の入り口に降りる。

少しずつだが空を飛ぶコツも掴んできた気がした。

里の入り口に目を遣ると、一人の人間らしき人物が立っていた。

流れるような長髪は銀色に輝き、そこに大小様々な紅いリボンを結び、その銀髪を更に美しく飾る。

宝石の様な深紅の瞳に、整った顔立ち。

真っ白のYシャツにはサスペンダーの紅が映える、もんぺ…かな?これ、うん、もんぺには色々な札が貼られ、物々しさを醸し出していた。

 

「……何?」

 

「…え?」

 

「ジーッと見てるけど、何?

私の顔に何か付いてる?」

 

「あ、いや、何でもないから…気にしないでくれ」

 

気まずいながらも笑いながら、答える。

すると魔理沙が地面に降りてきた途端、此方に走りよってきた。

 

「妹紅!こんな所で何してるんだ?」

 

「あ、魔理沙…いや、ちょっと厄介事がね…てかコイツ誰?」

 

なるほど、どうやらこの妹紅って子は魔理沙の知り合いらしい。

 

「俺は浅木だ、こっちの世界に来て死にかけてた所を魔理沙に助けてもらった」

 

「ふーん、まあ…取り敢えずはよろしく、私は藤原妹紅ね」

 

あまり興味が湧かないのか、ポケットに両手を突っ込んだまま自己紹介する妹紅、見た感じ不良娘だな。

 

「で?厄介事って何なんだぜ?」

 

「ん、実は今もう一人外来人が来ててね、その外来人と慧音が揉めてるとこ」

 

また新しい名前が出てきた、慧音さんか、どんな人だろ… 

いやいや違うだろ、もう一人の外来人?

俺と同じ時期に、迷い混んで来たのか?

 

「おいおい、慧音を助けなくて良いのかよ?」

 

「何か妹紅がいたら喧嘩になるからーって追い出されたわ」

 

「その人は今何処に?」

 

妹紅が俺の顔を見る、そして怠そうに首を傾げながら…

 

「浅木だっけ?浅木は強いの?」

 

なんの脈絡もなく、いきなり質問された。

 

「……まあ、それなりには」

 

「ん、じゃあちょっと見に行こうか」

 

妹紅は背を向けると、人差し指をクイクイと曲げてから歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

里の中は少しばかりの活気を取り戻していた。

人間に混じりちらほら見掛ける、人間には無い特徴を持つ者が人間を助けていたり、労っているのも見掛けた。

しかし、怪我人が目立つ。

人間の大半は怪我人の様で、酷い者では、腕が無い者、足が無い者、目が無い者などの身体に甚大なダメージを負った者もいた。

 

だが、怪我をしながらも懸命に他の者を助けようとしている人や、妖怪もいて少しだけ安堵する。

思えば俺の先を行き、辺りに目配せをしながら歩く彼女、妹紅だってそうだ、慧音と言う人を心配している。

魔理沙だって、アリスを、霊夢を心配していた。

 

自分にも危機が降りかかるこの世界で、他者を心掛ける事が出来る者が、一体何人いるだろう。

そう考えると、やはり俺はこの世界をこんな現状にした者を許せない。

 

「ほら、此処」

 

ある建物の前で、妹紅は立ち止まった。

 

「此処って、慧音の寺子屋じゃないか」

 

寺子屋、今で言うところの学校か。

ん?中から何か聞こえる…

 

「何か言い争ってるみたいだな…」

 

「まあ、慧音は半獣だから大丈夫だと思うぜ?」

 

半獣、慧音さんも妖怪だったのか。

 

「取り敢えず、入るか…」

 

ゆっくりと扉を開く、そして中を覗くと…

 

 

 

「良いからそれを寄越せって言ってんだろうがクソ女!!」

 

「駄目だ!これは麻薬の類いだろう、こんな物は渡せない!」

 

「ウルセェんだよ!さっさと寄越せ!」

 

「無理だな」

 

「……ああ、そうかい、そう言うことか…テメェ俺を嘗めてんのか?」

 

「違う、私は君の為を思って…」

 

「ならさっさと渡せってんだよ!!それが一番俺のためになるんだからなァ!!」

 

 

 

教室を覗けば、190以上はあろうかと言う大男が女性を怒鳴り付けている。 

血管が張り裂けんばかりに浮かび出るほど固く握り締められた拳には、タトゥーと呼ばれる洋柄の彫り物が所狭しと彫り込まれていた。

 

「!魔理沙…妹紅……あとは…」

 

慧音が此方に気付く、二人の名を呼んだ後に此方を見る。

 

「アァ…?」

 

すると怒鳴っていた大男も此方を見る、そして俺は驚いた。

 

(まさかのイケメンかよ!)

 

そう、結構なイケメンだった。

白髪のようにも見て取れる、くすんだ銀髪に剃刀の様に鋭い切れ長の目、瞳は妹紅と同じく深紅なのだが、何かが違う。

そう、妹紅の瞳が宝石の様な綺麗な紅なら、彼の瞳は血の様に濃く、濁った漆紅だ。

 

彼は体ごと此方に向きなおす。

やはり背はかなり高い、俺よりも一回り大きく、見た感じでは194から197の間くらいであろう。

体格も良い、タンクトップの下から浮かび上がる腹筋がそれを証明している。

首元には、拳と同じく洋柄と呼ばれる彫り物が彫られており、シルバーのネックレスが良く似合っている。

 

服装は、赤と黒を基調としたロックな印象を受けるロングコートに、返り血が付着した白のタンクトップ、

黒掛かったジーンズに真っ黒で泥や埃や血のついたコンバットブーツ。

腰には革製のガンベルトを巻いていて、何と拳銃を所持している。

 

先程の会話からも見た目からも判断して、危険な人物であるのには違いないだろう、俺はゆっくり近付く彼に向き合い、臨戦体勢を取る。

 

「……おいガキ」

 

俺の目の前に立ち、見下ろしながら彼は言った。

 

「………何だ?」

 

俺は少し睨みながら問う。

緊張が走った…

 

「……あの女に俺のヤクを返すように言ってくれ」

 

「断る」

 

「シィッツッ!」

 

彼は机をバンバン叩きながら悔しさを最大限に体現して見せた、すると

 

「……ハァ、仕方無い、元々拾い物だ、持ち主の所に返さないとな」

 

慧音さんはそう言いながら白い粉の入った小さな袋を男に向かって投げた。

 

「イェヤア!!それでいいんだよ!!」

 

その袋を嬉々として手に取り、袋を開けてその中身を鼻から一気に吸い込んだ。

 

「…スッ!!……ハァァァ…あー、最高…」

 

彼は悦に浸りながら呟く、これは中毒者の面だな。

 

「危うくテメェ等全員皆殺しにしちまう所だったぜ、運が良かったな」

 

高らかに笑いながら彼は言う、皆が呆れてしまい何も言わなくなってしまったが、その言葉に反論する者が一人だけいた。

 

「アンタ…そんなに強いの?」

 

反論する者、それは妹紅だった。

 

「……試すか?」

 

彼の顔から笑いが消えた。

やれやれ、仕方無い。

 

「そこまでだ、止めてくれ、どうしてもと言うなら俺が相手になる」

 

男と妹紅、二人を見ながら俺は言った。

二人の視線が俺に突き刺さる、両方から睨まれると、本当に蛇に睨まれてる気分になる。

 

「なあ、ガキ…名前は?」

 

「…浅木だ」

 

「アサギ、変な名前だな」

 

うるさい、日本じゃ普通だ、多分。

此処は俺も名前を聞いてみよう、そして蔑んでやろう。

 

「あんたは?」

 

「俺か?俺はーー

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

ーーグレンだ

 

 

 

 

 

男、もといグレンは不適な笑みを浮かべながらそう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、8話目でしたー
次回からは二人目の男であるグレン視点のお話になります。
感想、批判、アドバイス、誤字脱字指摘
お待ちしております!

ではまた次回!
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