漫画の中に入れたら   作:佐藤秋

10 / 13
10 ダーウィンズゲーム

 

 サイレンの世界で鼻血を出しつつ超能力の力を手に入れたので、それを使いこなす練習をすることにする。

 練習するのはカイジの世界にて。この世界はもはやギャンブルとは無縁であり、現実世界の時間を無視して練習ができる、都合のいい空間と化していた。ドラゴンボールの精神と時の部屋以上の使い心地である。

 

 超能力でできるのは、離れた物体に干渉ができるサイコキネシスと、相手の表層意識をちょこっとだけ読み取れるテレパシーもどき。それと身体能力を高めることもできるようだった。サイレンの用語を使うとするなら、バースト、トランス、ライズである。

 

 いずれも、使いこなすには強い集中力や想像力が必要らしい……とサイレンの修業シーンに書いてあった……のだが、アホリズムで得た黄葉くんの変身能力を使っていたためか想像力が培われていたようで、最初からある程度使うことができた。これは嬉しい誤算である。

 とはいえ使いこなせるにはまだまだだと思ったので、毎日カイジの世界に入っては一日中練習するという日が続いた。一日現実で過ごしたら、一日漫画内で超能力の練習するの繰り返しだ。

 

 カイジの世界の時間で二週間ほど練習して、ある程度どの超能力も使えるようになってきた。

 ここで少々気がかりになってくるのが、サイレンの原作で主人公の夜科アゲハは暴王の月(メルゼズ・ドア)という能力に目覚めることだ。自分でもコントロールできないすべてを飲み込む黒い月は、やがて自分をもその中に飲み込んでしまう。らしい。

 

 しかし俺は、その能力は自分には発現しないだろうと考えていた。いくら主人公になり替われようとアゲハと俺は別人であり、そこから身につく能力は別物であると思えたためだ。

 実際その考えは当たっていたようで、アゲハが持っていたのとは違う能力、キュアという回復能力が俺には発現している。漫画の中で怪我をしたくないと考えていたためだろうか。そういう意識がもとでキュアの能力が目覚めたのかもしれない。

 

 ただしこのキュアの能力、他人の傷は癒せても、自分が負った傷などはどうやら治せないようだった。先ほど書いた、自分が怪我したくないからこの能力に目覚めたという自分の考えはなんだったのか。自分の傷が直せないなら意味が無い。やっぱり、俺がキュアの能力を得た理由は、全くの偶然だった可能性がある。 

 

 ともあれ、新しい能力に目覚めたのだから、このキュアの力も一通り使い方を練習しておくことにする。

 漫画の中に入れるようになっていろいろな能力を手に入れようと考えている俺であるが、手に入れるだけで満足してしまってはいけない。

 昔、漫画やゲームを集めるほうに意識が行ってしまい、消化せず机の上に積んでいたことがあったのだが、あれは自分でもバカだったなと思う。手に入れたのなら使わなければ。

 

 新しい能力を得たい気持ちをグッと押さえて、持っている力を使いこなせることに今は意識を注ぐ。キュアの使い方もある程度分かってきたところで、次に入る漫画のことを考える。

 

 次に俺が入ろうと思った漫画は、『ダーウィンズゲーム』というデスゲーム系能力バトル漫画。更に認知度の低い漫画で例えるのもどうかと思うが、ダズハントという漫画に能力バトル要素を足したものといったところか。まあ、この際どういう漫画かというのはどうでもいい。

 

 一度この漫画は、簡単に能力を得られるということから、入る漫画候補に挙げたことがあった。しかし得られる能力が、触れたものをコピーして作り出すことができるというものだったため、入るのを先送りしていた漫画である。

 

 しかし、サイレンの世界から帰ってきてキュアの能力を手に入れた俺にとって、思うことが一つあった。

 それは、この漫画で主人公が能力を得るための過程にある。

 この漫画では、主人公の須藤要がダーウィンズゲームというソシャゲを始めようとしたところ、スマホから出てきた蛇にかまれて異能(シギル)の力に目覚めるのだ。

 得られる異能は人によって様々。つまり、サイレンでは俺が主人公とは違う能力に目覚めたように、ダーウィンズゲームの漫画で得られる俺の異能(シギル)も、主人公とはまた違う能力である可能性が大いにある。

 

 どうしてサイレンのときはその発想があって、過去ダーウィンズゲームのことを考えたときにはその発想が無かったのか。自分の間抜けな一面がよくわかるが、それはともかくダーウィンズゲームの中に入るとする。

 

 漫画に入ると、舞台は教室。スマホのメール画面を開いてみると、友人からダーウィンズゲームへの招待状が届いている。

 すぐさま参加手続きをすると、画面から蛇が飛び出してきて俺の首筋に噛みついてきた。こうなることは予想済みだったが、実際蛇にすごい勢いで襲い掛かられるととても怖い。教室で叫び声を上げないよう声を噛み殺していると目の前がだんだん暗くなる。

 

 起きたら保健室だった。

 スマホを取りだし、ダーウィンズゲームのページを開く。詳細画面のプロフィールのところに目を通す。

 

 見ると、自分の所持シギルのところに、『確率操作者(パーセンター)』という文字があった。予想通り、主人公とは違う能力を得られたようだ。

 

 目的は達したので、早くも漫画の中から出ていくことにする。ここまで早く漫画内から脱出するのは初めてで、あまりの簡単さに最初に来ればよかったなと考えた。

 

 ともあれ無事に能力も得られたということで、次はこの確率操作者とかいう口に出したら噛みそうな能力がどのようなものかを、検証していくことにする。確率操作者という能力は漫画には出てきていない能力のはずだ。

 さてこの能力、いったいどんなことができるのか。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。