具体的な例だとヘリオスも総統閣下も基本自分の事を”光に振り切りすぎた破綻者”で、なおかつそれがいいことだとは思っていないしむしろ唾棄すべき塵屑だとすら思ってるところ。
糞眼鏡との戦いで閣下が極楽浄土を否定した時も、「みんながみんな善悪で分けられるわけじゃないんだし、お前の言ってる正しい者だけの理想郷じゃどっちつかずの中間者まで死んじゃうし、それは許されねえだろ(意訳)」って言ってるわけだしね。少なくとも閣下は遅咲きの花(善にも悪にも傾けない無辜の民)を見守るスタンスなわけで。
光の亡者の糞眼鏡と本気おじさんは、光のメリットにばかり目がいって、それが齎す被害(デメリット)は「最終的に報いるから必要な犠牲だ」とか「本気を出せないからそうなる」とかいって自覚なしに押し付けるところが糞。
その点で言ったらこの主人公は今は光の亡者以上光の奴隷以下って立ち位置かな。原風景というか、憧憬の元は閣下だから光に憧れたってところは亡者と同じだしね。
有体に言って、そこは地獄だった。
死体が無造作に打ち捨てられ、どこに踏み出しても肉を踏みつける感触がする。腸を踏みつけてぶちゅり、という音を立て中身が飛び出るが、それを不快に思うことなどもはやない。
あまりに無惨、あまりに凄惨。此処に至って倫理観など持ち合わせたものなどもはや一人もおらず、そんなものを持つやつから死んでいく。そして事実、初めは数百人いたものも、いまや二人を残して物言わぬ死体へとなり果てた。
だというのに、まだ敵は生きている。それは即ち、数百対一の絶望的差を覆し続けたということに他ならず、その戦闘論理には敵ながら天晴れと言わざるを得ない----わけがない。
人を殺して、なにが凄い、だ。なにが天晴れ、だ。ふざけるなよ塵屑が。極論ただの殺人鬼でしかないだろうが、そんなことが誇らしいとか馬鹿じゃないのか貴様らは。
赫怒の炎が揺らめいて空間を歪めていく。激烈な意志それ自体が現実世界へ黒雷として現出する。慈悲も逡巡もありはせず、ただただ殺意に痺れていた。
「さぁ、後は僕と君だけだ。グレンはどうやらリタイアらしい。」
「そのようだな。だが俺一人だろうが、やることは変わらん。貴様を殺す。ただそれのみだ。」
「---あぁ。愚問だったね、失礼。」
片や人工天使を従えた
片や刀を携え、その身に炎を纏った
正義を謳う錬金術師は笑う。あぁどうかその輝き(正義)をぼくに示してくれと声高々に叫んで止まず、五体が絶頂して止まらない。彼は真実狂していて、もはやどうしようもないほどに彼は自分が正義だと信じて疑うこともしない。そしてそれ故に、彼はどこまでも救えない。
断罪を謳う地獄の審判は猛り狂う。知るか黙れよ貴様の正義など心の底からどうでもいいんだと、声高々に吠えて止まず、流れる血が沸騰して紅い蒸気が止まらない。彼もまた、ただただ憤怒に身を窶して怒りに狂っていると言っていい。
両者の背後に広がる轢殺の轍。それは即ち敗者の残骸で、あるいは英雄譚の礎だ。どうしようもないほどに救えない二人の男と時と場所を同じくしたという不幸。言ってしまえば、彼らはただただ不幸でタイミングが悪かっただけの被害者でしかなかった。
---いついかなる時代も、犠牲なくして英雄は生まれず、悲劇なくして正義は謳えず、敵無くして勝利もまたない。古来連綿と受け継がれてきた残酷なまでの戦場の理は、この瞬間をも絡め取っている。計算による未来予知すら可能とする錬金術師も、意志一つで現実を超越する光の奴隷も、その理からは逃れられない。
だがそんなことすら今の二人には些細なことで、彼らはただただ眼前の敵を滅ぼさんと息を巻く。天使が剣と盾を構え、主の敵を討滅せんとその身に威光を滾らせる。地獄の審判もまた刀を構え、眼前の畜生を断罪せんとその身に冥府の雷を迸らせた。
殺意と赫怒が世界を満たす。あとはもう、ただただ己が殺意で自らの敵を殺し、潰し、消し去るのみ---
「勝つのは俺だ---」
「いいや、僕さ---」
☆ ☆ ☆
「また、あの夢。」
現実へと回帰する。
柔らかな毛布から身を起こし、頭を二、三度振るう。そのたび、血のように赤い赤髪が視界を塞ぐが、今は目に優しくない自分の髪がありがたかった。おかげで、夢の事を幾分か忘れられた。---もっとも、それも完全な忘却には及ばないが。
「ほんと、勘弁してほしいよ。」
言いながら、表情に浮かんでいるのは嫌悪感を含んだ苦笑いだ。
自我を保とうとしてはいるが、なにせ競う相手はあの義兄だ。不撓不屈が肉体を持ち、正しいことを正しい時に正しいやり方で当然のように出来る人。義理とはいえ兄弟としてなら兄以上の優良物件など存在しないと断言できるが、しかし同時に
あの人は終わっている。人として正しくない生物のくせして、地上に生きる人間の誰よりも正しいことを出来てしまうのだから、そのやるせなさもひとしおだ。
「もし、ファウスト義兄さんがああじゃなかったら---」
ああじゃなかったら、どうなのだろうか。答えは決まっている。私は今、生きてはいないだろう。
あの日実験場で義兄に救われないまま、その他の子供たちと同じように、塵のように消費されていたはずだ。故にこそ、私は彼を尊敬しているし感謝もしている。その気持ちは本物だ、嘘などでは断じてない。
だがそれでも---
「私じゃ、義兄さんみたいにはなれないよ。正しいことは痛いし、辛いし、報われる保証なんてどこにもない。頑張れば何とか出来るなんて、そんなの義兄さん達みたいな人たちだけだよ。出来ない人は、どうやったって出来ないんだから。」
声音に滲むのは自身への嘲笑。ああまたそうやって言い訳を並べ立てて、無理だ出来ない諦めよう?それが気持ちいいことだから、欲に流されるのは人間だから仕方がない?我ながら、本当に反吐が出るくらいに卑屈で矮小で堕落してる。
こんな女があの人の義妹?やめてくれよ恥ずかしい、同じ姓を名乗るなんて情けなさと申し訳なさと恐ろしさで脳味噌が弾けてしまいそうだ。私のような塵屑は、やはりあの日に死ねば良かった---
「あぁ、もう。また変な方向に。」
言って、思い切り頬を叩く。余りの痛みに跳び上がったが、思考はどうやら落ち着いた。きっと頬は林檎みたいに赤くなっているだろうけれど、コラテラルダメージというやつだろう。さっさと起きて朝御飯の支度をしよう。きっと義兄も、もうすぐ日課から帰ってくる。
「よっこらせっと。」
そうして、中年男性のような声と共に毛布を蹴飛ばし、ベッドから抜けだした。
---窓の隙間から私を照らす太陽は、今日も忌々しいくらいに、私を焦がす勢いで、燦然と輝いていた---
主人公の名前出す(主人公が出るとはいってない)
うちの義妹ちゃんは拗らせ無気力ガール。お兄ちゃんとしては好きだけど、人としては終わってるから複雑な気持ティってかんじ。
先に言っておくと、この義妹ちゃんは狂い哭いたり天に飛翔したりはしません。光の眷族でも闇の眷族でもありません。実験を受ける直前に実験場壊滅に巻き込まれた、星辰奏者でもなんでもない普通の女の子。
(書いててジャティスと主人公が聖戦始めたのは残当なので反省も後悔も)ないです。