しかし何やら様子がおかしい。
こいつ本当にKeterなのか?
あとペスト医師は性格イケメン。
こんにちは、私はSCP-049"ペスト医師"だ。
早速だが今日はカウンセリングの予約が入っていてね。何でもはるばる極東の国からこちらにこの度運び込まれたとか…未知の国の患者との遭遇とは私にとってこれほどわくわくするものはないよ。
コンコン、と収容室をノックした後
「失礼します…」
慣れないアジア訛りの英語と共に彼は顔を覗かせた。
「どうぞ入って」
彼は鮮やかな赤い髪に赤い上着と、少し目が痛くなりそうな色をしていた。
そしてなかなか背が高い。恐らく私よりも背は高いだろう。
「新しいサイトでの生活は慣れたかな?えーっと…SCP-444-jp…おや、項目名が黒塗りじゃないか」
「それは俺の元の特異上そうなってるだけです。
"ヒイロ(緋色)"って呼んでください」
「ヒイロ?」
「はい。日本の言葉で俺の髪みたいな赤色のことを言うんですよ」
「ハハッ、そっか。ではヒイロ、早速だけど悩みごとについて私に話してくれるかな?」
「はい。今回の認識災害も大きく関係してるんですけど…」
ヒイロの話によれば、今回の認識災害によって彼自身の特異が酷く弱まってしまったそうだ。
「それだけなら別によかったんだけど…きっと俺が欲張ってしまったんだろうなぁ 」
「欲張ったって?」
ちょうどその認識災害が起きる数日前、まだKeterクラスオブジェクトとしての猛威を振るっていたヒイロは元いた"認識の世界"からこちらの世界に出る方法を見つけた。
何でも彼は人の"意識"を食べるそうだが、財団に隔離されたおかげでろくに意識が食べられず酷い空腹だったのだそうだ。
「それで餌は自分で獲りにいかなきゃと思ってこっちに来る方法を見つけたんですよ。やり方は簡単。元々人を捕る為の罠にしていた呪文を逆に俺が書いて唱えるだけ。こっちから認識の世界に戻るのもそうしてたんです」
「…ということは君がその方法を見つけて認識災害が起きるまでは十分に食べられたわけだね?」
「ええ。ほんの数日でしたけど…財団に隔離される前に戻れたみたいで楽しかったなぁ、職員の怯えた顔も久しぶりに見れたし」
「君は生粋のSCPのようだね」
「えへへ…でも調子つきすぎてその呪文を書いたノートを奪われたんです」
情けなさそうにヒイロは言った。
「他の紙に呪文を書いて戻ることは出来ないのかい?」
「それが…試してみたんですけどあのノートじゃなきゃダメみたいで 」
そしてノートを奪われたところをヒイロは職員に捕まえられ、必死に抵抗していた頃に認識災害が彼を襲った。