そして伊波ちゃんがひょろっとした見た目と裏腹に脳筋だった
ロッカーの鍵を開けようとシャイガイとあたしは鍵を探したけど見つからない。どうやらオールドマン自身が持ってるようだ。
それから懲りずにシャイガイはロッカーを随分長くガチャガチャさせていた。
「チッ…退いて。こんなの鍵無くても開くわよ」
とうとう見ているあたしはじれったくなってシャイガイを押し退け、無理矢理ロッカーをこじ開けた。
「…ガリガリのくせにどこにそんな力があるんだ」
「人間の首の骨に比べたらこんなの柔よ」
「この脳筋…」
「何て?」
「…何でもない」
ロッカーからシャイガイが取られたものを回収すると、急いで収容室から出ようとした。
けど出口にはドス黒く床が腐った後があった。
…マズイ。オールドマンが帰ってきた。
扉を開けようにも腐っていて触れない。
オールドマンもあたし達と同じように認識災害の影響をうけたけど、その特異の腐食は変わっていない。
つまりこの黒い腐った扉を触った途端にあたしも腐ってしまう。
「…詰んだ」
しかし肝心の本人は出てこない。
この部屋にいるはずだけど…まるで慌てるあたし達を見て楽しんでいるようだ。
こっちは全く楽しくないのだけど。
「こうなったら新しい出口を作ってやろうかな?」
やけが回って後から考えれば自分でも訳がわからないことを言った。
だけど最悪収容室に帰れないかもしれない今、これでもしなければ助からないだろうと思ったのだ。
「?!伊波、いくらなんでもそれは…」
「シャイガイの力ならその程度出来なくもなさそうよ。アンタ顔見られたら密室のなかはともかく水のなかにだって文字通り死ぬまで追い回すじゃない。その馬鹿力でほら」
「いつもあんな力が出ると思ってるのか?そんなわけないだろ」
「ああそう。じゃあマロに言ってアンタの写真ネットに拡散させるよ?」
「それはやめろ!っていうかマロは関係ないだろ!!
…ああもう、やればいいんだろやれば。絶対無理だと思うけど」
ちょうどその時オールドマンが入り口の腐った床から姿を現した。
シャイガイは顔を見られた時と同じように悲鳴をあげていた。いや、あれより酷かったな。
「収容室に穴開けてもらっちゃ困るなぁ~?」
「アンタもいい趣味してるね?どうせオブジェクトを閉じ込めといて慌てる様子見て笑ってたんでしょ?」
「相変わらず誰が相手でも強気だねぇ」
「うるさい」
「ギャアアアアアア!!」
「シャイガイも黙って」
オールドマンは子供みたいにケラケラ笑った。
「いやぁ楽しかったなー、久しぶりにここまで笑った気がする」
「それはいいからあたし達を収容室に戻してくれる?ここにいると匂いで頭が溶けそう」
「わかってるわかってるー。じゃ、君らがいうこの腐蝕を落とそっか♪」
そう言ってオールドマンは収容室の奥からモップと水が入ったバケツを持ってきた。
…んん??まさかこれ……。
水を含んだモップで腐蝕だと思っていた部分を擦ると難なくきれいに腐蝕は落ち、元の白い床が出てきた。
そしてオールドマンの方を見ると、ニヤニヤと片手に黒の水性絵の具を持っている。
…ああ、久しぶりに笑ったって、そういう。
ねえ、
BATIM実況動画でインクベンディー君オールドマンとか言われてて盛大に吹いた