FAIRY-TAIL~天候を操る魔導師   作:晴月

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第二話 もう一人のS級魔導師

エクレールがギルドに戻ってきてから数日が経ったある日の事。

 

「エクレール!俺と勝負しろー!!!」

 

ビリッ、バリバリッ!!!

 

「アンギャアアアア!!!」

 

エクレールはナツに電撃を喰らわせ、黒焦げにする。

 

「あぁいいぜ、掛かってこいよ。」

 

明らかに嫌味たっぷりな顔をしながらナツに言い放った。

 

「おらどうしたよナツ、俺はお前が何時もやってることを真似てやっただけだぜ.....ほら立てよ、ほらほらほら。」

 

黒焦げになったナツを蹴りながらニヤニヤしているエクレール。

 

この光景を見ていたルーシィは思った。

 

間違いない、エクレールは超ドSだと、そして絶対に怒らせてはいけないと。

 

「お、おいエクレール.....ナツの奴気絶してるみたいだからさ....もうその辺にしておいたら━━━」

 

グレイがエクレールと止めに入ろうとするが、

 

エクレールはグルンッ、とグレイに向き直る。

 

「ヒッ!」

 

グレイはエクレールの表情に恐怖しつい、変な声を出してしまう。

 

「よぉグレイ、久しぶりだな。」

 

「あ、あぁ....久しぶりエクレール。」

 

グレイが引き吊った表情でエクレールと言葉を交わす。

 

「ところでさ......」

 

エクレールはグレイの肩にポン、と手を置いて一呼吸置いてからグレイに近付く。

 

「まさかお前まで女性にタカったりしてないよな?」

 

良い笑顔でグレイに質問した。エクレールの事を知らない人が見れば可愛い笑顔と言うだろうが、エクレールの事を知っているグレイが見たのでは恐怖しか感じなかった。

 

「い、いいいや...だ、大丈夫だ....迷惑は掛けてない。」

 

「そうか.....なら良いんだ。」

 

グレイの肩から手を離すと、カウンター席に腰掛けたエクレール。

 

「ミラー、激辛メニュー頼む。」

 

「はーい、ちょっと待っててね。」

 

ミラに注文するとふと呟いた。

 

「平和だなー。」と、

 

「いやいや、全然平和じゃないから!」

 

エクレールの呟きについツッコミをいれてしまうルーシィ。

 

「よぉルーシィ、今日も平和日和だな。」

 

「え?えぇそうね......じゃないから!」

 

またもやエクレールの発言にツッコミを入れたルーシィ、今度は乗りツッコミだった。

 

「どうした、ルーシィ?朝から騒がしいぞ。」

 

キョトンとしながら首を傾げるエクレール。どうやらルーシィのツッコミの理由が分かってないようだ。

 

「これの何処が平和なのよ!!!?」

 

ルーシィが指差した方向には黒焦げになったナツそして他にも黒焦げになった魔導師達がそこら辺に転がっていた。

 

「あぁそれ?.......俺が今朝捕まえた討伐対象。.....女性に迷惑掛けてる最中だったから背後から近付いて雷を頭上から落とした。」

 

淡々とエクレールは語るが、普通の魔導師には出来ない芸当である。

 

「これ、大丈夫?死んでない?」

 

「大丈夫、大丈夫。たった10V位しか出してないから。」

 

「ってそれ死ぬから!!普通に考えて!」

 

「冗談だよ....10mA位だから....というかルーシィ、よく電流の強度が分かったな。」

 

エクレールはふと疑問に感じたことをルーシィに聞く。

 

「え!?.....あーまぁ...昔、教えてもらったから。」

 

ルーシィは歯切れが悪そうに答える。

 

「ふーん.....ま、いいか。」

 

エクレールはそれよりも料理まだかな?としか考えていなかった。

 

━━━━━━━━━━

 

「テメェいい加減にしろよこのクソ炎!!!」

 

「なんだとこの変態野郎!!!」

 

「はー、またかよ。」

 

エクレールが激辛メニューを食べ終わり、ナツが復活したその後、ナツとグレイの喧嘩に頭を抱えるエクレール。だがそれも束の間、

 

「おい大変だナツ、グレイ!」

 

突如ギルドを飛び出していったロキが戻ってきた。

 

「なんだロキ?」

 

「エ、エルザが帰って来た!!!」

 

「「!!?」」

 

エルザが帰って来た。その一言でナツとグレイが怯え始めた。

 

「ええっ!....ち、ちょっと二人ともどうしたの?」

 

「あーまぁ、無理もないか。」

 

エクレールが頭を掻きながらそう呟いた。

 

「エクレール、エルザって誰?」

 

ルーシィが訪ねてくる。

 

「エルザは俺と同じこのギルドでのS級魔導師.....なんだが、」

 

エクレールは少し含んだ言い方をする。

 

「真面目すぎるんだよ.....自分のする事全てが正しいと考えていて.........まぁ、簡単に言えば...そうだな...人の話を聞かない自己中心的な風紀委員長ってところか。」

 

「はぁ...。」

 

ルーシィはまだ会ったことがないため、そう返すしかなかった。

 

そして、突如ギルドに巨大な角らしき物を抱えた鎧姿の女性が入ってきた。

 

「今戻った、総長(マスター)はおられるか?」

 

角を横に置いて周りを見渡す。

 

「お帰り!!マスターは定例会よ。」

 

元気よくエルザと言葉を交わすミラ。

 

「そうか.....。」

 

そして周りを一瞥すると周囲の仲間達に説教を始めた。

 

「風紀委員か何かで....?」

 

「エルザです。」

 

「だから言ったろ、風紀委員長だって。」

 

「ん...?エクレールか!久しぶりだな。」

 

エクレールの存在に気付いたエルザがエクレールに近付いてきた。

 

「よぉエルザ、久しぶりだな.....というかその巨大な角、邪魔だから何処かに持っていってくれ。」

 

(言い切った!)

 

(やっぱエクレール凄ぇ!!)

 

(あのエルザに物怖じしないなんて!)

 

周囲の仲間達はエクレールに感嘆の目を向け、心の中でそう呟いた。

 

「む?......そうだな、後で退かそう。」

 

エルザはエクレールの言葉に対して、そう返す。

 

「ナツは居るか?」

 

「此方に。」

 

ハッピーがエルザをナツの元へと誘導する。

 

其処にいたのは....

 

「よ、よぉエルザ....俺達今日も仲良くやってるぜ。」

 

「あい。」

 

ナツと肩を組むグレイとハッピーみたいに返事をするナツの姿があった。

 

「ナツがハッピーみたいになった...!!!」

 

「まぁ.....うん、この二人は......仕方ないか。」

 

エクレールが諦めた様子でナツ達を見る。

 

それもその筈、ナツは昔、エルザに喧嘩を売って返り討ちに会い、グレイは裸で歩いている所をエルザに見つかり、折檻を受けたのだ。

 

それ以来、二人はエルザに対して苦手意識を持つようになったのだ。

 

「....という訳で二人はエルザに逆らえないんだ。」

 

「へぇ.....ナツの喧嘩っぱやさは昔からなのね....。」

 

エクレールの話に納得したルーシィはナツとグレイを一瞥すると直ぐにエクレールに向き直る。

 

「ならちょうど良かった.....三人共(・・・)、手伝ってくれ。」

 

エルザから伝えられたのはある仕事の手伝いであった。

 

「ん?三人共(・・・).....?」

 

エクレールがエルザの言葉に疑問符を浮かべる。

 

「ああそうだ、お前も手伝ってくれエクレール。」

 

「え....はぁぁぁぁぁ!!?」

 

折角休めると思っていたエクレールは、今日計画立てていた休みの予定が全て跡形もなく崩れていく音が自分の中で聞こえた。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

駅前にて、

 

「ハァァァァ.......。」

 

深いため息を吐いて絶望に打ちひしがれるエクレール。

 

「なんだとコラァ!!!」

 

「テメェ、もいっぺん言ってみやがれ!!!」

 

それとは対称的に喧嘩を始めるナツとグレイ。

 

「駅前で喧嘩しないの!!」

 

その喧嘩の仲裁に入るルーシィ、第三者から見た四人の光景は、最早カオスとしか表現できなかった。

 

「.....ケーキ....ミルクレープ....チーズケーキ....クリームチーズケーキ...」

 

エクレールは今日行く予定だったケーキ店の、バイキングメニューで食べる予定であったケーキの名前をブツブツと呟いている。

 

「.....あの、エクレール.....さん?」

 

恐る恐るルーシィがエクレールに声を掛ける。

 

「ん?....ああ...済まない、現実逃避してた。」

 

悲しくなるような台詞を然り気無く呟くエクレール。

 

「....ったくエルザの奴、今度罰として激辛メニュー食べさせてやろう。」

 

子供のような悪戯っぽい笑みを浮かべてエルザへの復讐を計画するエクレール。

 

「あれ....?」

 

エクレールの笑みを見てルーシィは、急に胸が苦しくなるのを感じた。

 

(なんだろう.....この気持ち?)

 

ルーシィがエクレールに対してどう思っているか...その気持ちをルーシィ自身が知るのはまだ少し先の話になるだろう。

 

「済まない、待たせた。」

 

ルーシィの背後からエルザの声が聞こえてきた。

 

「あっ....来たみたい....」

 

ルーシィは唖然としてしまった、

 

その理由はエルザの荷物の量である。

 

「荷物多っ!!!」

 

エルザはキャリーバッグを何十個も積み上げたキャスター付きの大きな台車を引いてやって来た。

 

「....で?ちゃんと説明してくれるんだろうな....俺達を此処に呼んだ訳を、返答次第じゃ....分かってるだろ?」

 

エクレールはエルザに対して怒りを剥き出しにしながら理由を訪ねる。

 

「分かっている、今からちゃんと説明する。」

 

エクレールを宥めながら、エルザは事の経緯を話し始めた。

 

クエストで行っていたとある町の酒場で呪歌(ララバイ)がどうだと話していた集団がいたらしく。これはエルザ自身が後で知った事だが、そいつらは闇ギルド 鉄の森(アイゼンヴァルド)の魔導師だったらしい。

 

「あの時、私が気付いていれば奴らを叩きのめしたのに...」

 

悔しそうに語るエルザ、だがそれは....

 

「それじゃあやってることはコイツらと何も変わらねぇよ。」

 

エクレールはナツを指差しながらエルザを指摘した。

 

「んだとコラァ!!!」

 

ナツがエクレールの発言に激昂し、飛び掛かるが、

 

「アンギャアアアア!!!」

 

またもやエクレールに黒焦げにされ、気絶してしまうナツ。

 

「確かに事件を未然に防ぐことは大事な事だ。」

 

エクレールはエルザに淡々と語り始める。

 

「.....まぁ、何が言いたいかと言えば周りに迷惑掛けるなって事だ。」

 

気恥ずかしそうにしながらエクレールは、列車に向かっていった....のだが、

 

「待てよ。」

 

むくっ、とナツが起き上がりエクレールを呼び止めた。

 

「事情は分かった....今回は付いてってやる...条件付きでな。」

 

何時になく真剣な表情をしてエルザを見ているナツ。

 

「条件?」

 

「バ..バカ..!!オ、俺はエルザの為なら無償で働くぜっ!!!」

 

ナツの条件を取り下げようと必死になるグレイ。

 

「...言ってみろ。」

 

ナツは暫く黙っていたが、口を開いた。

 

「帰ってきたら俺と勝負しろ、あの時とは違うんだ。」

 

「!!!」

 

「オ、オイ!!!早まるなっ!!!死にてぇのか!!?」

 

「やれやれ、相変わらずのチャレンジャーだな。」

 

「それと....」

 

次にナツはエクレールの方を向いた。

 

「ん?」

 

「エクレール.....お前も俺と勝負しろ、それが今回俺が付いていく条件だ。」

 

「え!!?」

 

「ナツ、お前.....!!!」

 

「ほう。」

 

「...............は?」

 

まさか自分が選ばれるとは思わなかったエクレールは固まってしまう。

 

「確かにお前は成長した、私はいささか自信が無いが.....いいだろう受けて立つ.....エクレールは、決まってるだろ?」

 

分かりきった事だと言わんばかりにエクレールに訪ねてくるエルザ。

 

「俺の事情や意見は聞かないんですか....そーですか。」

 

エルザの勝手な物言いに対してまたもや現実逃避をするエクレールは、暫くため息を吐いてその場に座り込んでいたが、

 

「.....分かった....ただし、当日の俺の体調が良ければ...の話だ。」

 

「オイ、まさか逃げる気じゃ.....」

 

エクレールの提案にナツが食って掛かる。

 

「まぁ待てよ....ルーシィ以外は知ってることだけど、俺は体調で魔力の量や魔法の威力に影響が現れる....もし当日、俺の体調が優れずに戦って勝っても...嬉しいと思うか?」

 

「....いや、思わねぇ。」

 

「決まりだな。当日、俺は体調が良ければ参加という事で宜しく頼む。」

 

「.....分かった。」

 

エクレールの話に納得したナツは、我先にと列車に乗り込み、エクレール達も後に続くように列車に乗り込んだ。

 

 

━━━━━━━━━━━

列車内にて

 

窓際の席にエクレールとグレイが対面するように座り、エクレールの隣にはエルザ、グレイの隣にはルーシィとナツが座って次の町へと向かっていた。

 

「気持ち悪い.....。」

 

「相変わらずだな、ナツの乗り物酔い。」

 

「あい、それがナツなのです。」

 

「意味分かんないわよハッピー。」

 

「全く....しょうがないな、私の隣に来い。」

 

「あい..」

 

「退けってことかしら......」

 

「ルーシィ、俺の隣に来な。」

 

エルザに退かされたルーシィをエクレールは隣に座らせ、ナツとエルザの様子を伺う、すると...

 

「....!」

 

エルザはあろうことかナツの鳩尾に拳を叩き込み、気絶させた。

 

「ふむ、これで良いだろう。」

 

何事も無かったかのように振る舞うエルザに対してルーシィとグレイは見て見ぬふりをするしかなかったが、

 

「おいおいエルザ、ナツを気絶させてどうすんだよ。」

 

「ナツの乗り物酔いは知っていたからな....これしか方法を思いつかなかった。」

 

「だからってやり過ぎだ....ナツの奴、白目剥いてるじゃねぇかよ。」

 

エクレールだけはエルザに面と向かって指摘するのであった。

 

(ちょっと!?何でエクレールは物怖じしないのよ!!?)

 

(あいつは昔からああいう奴なのさ...子供の頃、あの二人はよく喧嘩してた位だからな。)

 

(えっ!?エクレールが喧嘩?)

 

ルーシィは普段、喧嘩等全くしないエクレールを知っている為、エルザと喧嘩していたという話に驚いた。

 

(ああ....といっても何時もエクレールが勝っていた、魔法を使った場合でもだ。)

 

(エクレールってそんなに強いの!?)

 

改めてエクレールの強さを思い知らされたルーシィであった。

 

━━━━━━━━━━━━━

 

「だーかーらー、今からでも作戦を立てて奴らの計画を阻止する方法を考えろよ!」

 

「必要ないと何度言えば分かるんだお前は!私が居ればそんなものは無用だ!」

 

先程のエクレールの指摘からヒートアップしてエルザとの口論が始まっていた。

 

「私はS級魔導師だ!大抵の相手なら相手取れる!」

 

「....確かにお前は強い。俺もそこは認める.......だがな、お前は力に任せて行動している.....それはいずれお前が危険に晒されるぞ!」

 

「この分からず屋!」

 

「お前こそ、この頑固者!」

 

ギャイギャイと二人の口論は続き、最早誰も止められる者は居ない、いるとするならそれはこの場に居ない 『FAIRY TAIL』のギルドマスター マカロフだけであろう。

 

「...いつまで続くのよこの口喧嘩。」

 

「二人が納得するまでだ、我慢しろ。」

 

取り残された二人は蚊帳の外で二人がクールダウンするのをただ待つしか無かった。

 

━━━━━━━━━━━━

 

目的地に着いた三人は急いで街の中心部へと向かうが、

 

「あれ?ナツは?」

 

「「「あ。」」」

 

しまった、と思い、急いで列車に戻ろうとするが列車は次の駅に向かって発車してしまっていた。

 

「列車を止めろ!」

 

「無茶言わないでください、次の駅までの時間が決まってるんです。」

 

「それを何とかしろ!」

 

エルザは駅員に列車を止めるように命令口調で言うが、そんな無茶な要求は呑めないとエルザに言う。

 

「常識人は私とエクレールしか居ないのかしら。」

 

「おい、俺は違うからな!」

 

「露出魔が何を.....ってあれ?...エクレールは?」

 

振り替えるとエクレールが何処にも居ないことに気付いたルーシィ。

 

彼は一体、何処へ行ったのか━━━

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場面は切り替わって列車内、取り残されたナツは未だに気絶したままだった。

 

すると前の座席に座る一人の男

 

「『FAIRY TAIL』正規ギルドかぁ....羨ましいなぁ。」

 

男はナツに対して嫌みたっぷりに見下して言い放つ。

 

「キーック。」

 

男は気絶しているナツに対して蹴りを入れる。

 

「あ?」

 

「や~っと反応した。」

 

「何だ....お前。」

 

気絶から目覚めたナツは目の前の男に嫌なものを感じ取った。

 

「はい?よく聞こえないよ。」

 

男はもう隠す気がないのか目の前のナツに対して『FAIRY TAIL』はハエだのなんだのと馬鹿にする。

 

「てめ...」

 

「おーやるのかい?」

 

「くあぁあぁっ」

 

ナツは魔法で男を殴ろうとする。だが、本人も忘れていたであろう事実に直面する....そう、此処が列車の中だということに。

 

「うぷっ」

 

「ヒャハハッ!!何だよその魔法...魔法ってのは.....こう使わなきゃ!!」

 

すると男の影から拳がナツの顔に飛んでくる。

 

「ぐあっ!」

 

「ヒャハハッ!」

 

男はまた下卑た笑いをナツに浴びせる。

 

すると突然列車が急停止した。

 

「な、何だ!?」

 

男は急停止した列車に戸惑い、辺りを見回す。

 

「さっきはよくもやってくれたな.....テメェ。」

 

列車が急停止した事でナツの乗り物酔いが解消され、拳に炎を纏わせていた。

 

「オラァ!!」

 

ナツは炎を纏った拳を男にぶつけ、吹っ飛ばす。

 

「ハエパンチ!」

 

男にハエと馬鹿にされたことから苛立ちを見せながらも、そう言って男を睨むナツ。

 

『先程の急停車は誤報によるものと確認できました、間もなく発車します 大変ご迷惑をおかけします。』

 

車内にアナウンスが流れる。

 

「逃げよ!!!」

 

「逃がすかぁっ!!!」

 

ナツが荷台から荷物を取り出していると、後ろから先程の男が現れる。

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)に手ぇ出したんだ!!!ただで済むと思うなよ妖精(ハエ)がぁっ!!!」

 

「先に手を出したのはテメェだろうが...この雑魚が!」

 

「!?...誰だ!」

 

「此処だ。」

 

ナツ達が声のした方角を見ると雲に乗って此方を見ているエクレールと目が合った。

 

「エクレール!!」

 

「大丈夫かナツ?乗り物酔いは平気か?」

 

どうやらエクレールはエルザが列車を止めるよう駅員を脅s...もとい、駅員に頼んでいる時、既に列車を追いかけていたようだ。

 

「外からお前らの一部始終は見ていた.......其処のお前。」

 

エクレールは男を指差す。

 

「そっちこそ『妖精の尻尾』(ウチ)を馬鹿にしたこと....後悔させてやるよ。」

 

エクレールは笑っていた....表情だけ(・・)は、

 

(ヤベェ....エクレールの奴、マジで怒ってる。)

 

ナツはエクレールの怒りを即座に感じ取っていた。

 

エクレールがキレる時は、大抵決まっておりその一つに『妖精の尻尾』を馬鹿にされることにある。

 

だが、エクレール本人はそれだけの事で怒るような人物ではない...エクレールが怒っている本当の理由はただ一つ。

 

「....だがな、それよりも俺は....テメェがナツを馬鹿にしたことが許せねぇ!」

 

男がナツを馬鹿にし、尚且つ自分が所属するギルド『妖精の尻尾』を馬鹿にしたことであった。

 

「ナツ!此方に来い!」

 

「お....おう!」

 

エクレールの怒りの感情に当てられ、怒りが冷めてしまったナツは一瞬戸惑ったが直ぐにエクレールの言うとおり、窓を突き破って列車から飛び降りる。

 

「ぶふ!!」

 

発車している列車から飛び降りた事で飛ばされる筈だったナツはエクレールの作り出した雲に顔から突っ込み、エクレールによって救出された。

 

「取り敢えず、ナツは無事救出成功....後は、」

 

エクレールが後ろを振り替えると、四輪駆動の車がやって来る。

 

「ナツ!エクレール!」

 

「よぉ、エルザ....随分遅い到着じゃねぇか。」

 

どうやら車にはエルザ、ルーシィ、グレイが乗っているようでエクレールはニヤッと笑いながらナツを救出したことを話した。

 

「エルザ、『鉄の森』(アイゼンヴァルト)の足取りを掴んだ。」

 

「何っ、本当か!?」

 

「ああ、先程ナツが絡まれてた男のカバンに三つ目がある髑髏の笛が入っていた。」

 

「三つ目の...髑髏の笛..」

 

「どうしたのルーシィ?」

 

「ううん..まさかね......あんなの作り話よ......でも....もしもその笛が呪歌だとしたら..子守歌(ララバイ)..眠り....死....!!!その笛がララバイだ!!!呪歌(ララバイ)...."死"の魔法!!!!」

 

「何!?」

 

「呪歌?」

 

ルーシィの言葉に疑問符を浮かべる三人。果たしてルーシィは何を語るのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オマケ

エクレール達がナツと合流した同時刻

『FAIRY TAIL』では、

「はぁ....。」

看板娘のミラがため息を吐いていた。

(エクレール...行っちゃったなぁ...。)

「どーしたミラ、ため息なんか吐いて。」

「カナ。」

ミラの様子を見かねてカナが話しかけてくる。

「別に何も....ただ、エクレールが居ないなぁ....って思っただけよ。」

「へぇー。」

「な、何よ。」

「いや?...やけにエクレールの事気にかけるなぁーって。」

ニヤニヤしながらミラを見てカナは話す。

「そ、それは....///」

指摘された事が恥ずかしいのか、ミラは顔を赤らめながら俯いてしまう。

「あいつの事...好きなんだ。」

「それは、その.....」

「隠さなくったっていいじゃん、何たってあんた達姉弟の命の恩人だもんね。」

「それは....そうだけど....///」

また俯いてしまうミラ。

ミラの命の恩人という事だが、この話はいずれ話そうと思う。

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