FAIRY-TAIL~天候を操る魔導師   作:晴月

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第七話 呪歌(ララバイ)の音色

 

先に行ったナツとハッピーを追いかけるエクレール達。

 

「これ······あたし達がレンタルした魔動四輪じゃない!!!」

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)の用意周到さには頭が下がる。ご丁寧に破壊されてやがった」

 

「弁償かぁ······」

 

金の話になり、落ち込むルーシィ

 

「ケッ···それで他の車盗んでちゃ世話ないよね」

 

と、カゲヤマが毒を吐く

 

「壊した側のお前が言うな」

 

と、操縦席からツッコミを入れるエクレール。

 

「な···なぜ僕を連れてく···?」

 

と、此処でカゲヤマがエクレール達に疑問をぶつける。

 

「しょうがないじゃない、町に誰も人がいないんだから。クローバーのお医者さんに連れてってあげるって言ってんのよ、感謝しなさいよ」

 

「違う!!!何で助ける!!?敵だぞ!!!」

 

するとハッ、となったカゲヤマがぶつぶつと何かを呟き出す。

 

「そうか···わかったぞ···僕を人質にエリゴールさんと交渉しようと···無駄だよ···あの人は冷血そのものさ僕なんかの····」

 

「うわー暗ーい」

 

あまりのマイナス思考に呆れるルーシィ、

 

「死にてぇなら殺してやろうか?」

 

と、提案するグレイ

 

「ちょっとグレイ!!」

 

それに待ったをかけるルーシィだが、グレイは更に言葉を続ける。

 

「生き死にだけが決着の全てじゃねぇだろ?もう少し、前を向いて生きろよお前等全員さ···」

 

「······」

 

グレイの言葉が胸に刺さったのか、カゲヤマはグレイをじっと見たまま何も言わずにいた。

 

「もう少しでナツに追いつく、それまでは辛抱してくれよ!」

 

エクレールの言葉を聞いた仲間達は皆、緩んでいた気持ちを引き締めるのだった。

 

――――――――――――

 

一方、ナツは、線路の上でエリゴールと対峙していた。

 

「来い!!物騒な笛ごと燃やしてやる」

 

(魔風壁は···カゲヤマどもはどうしたんだ!!?あと少しでジジイ共のいる場所に着くというのに···!!!)

 

するとエリゴールは左手で五芒星を描くようにして魔法を発動させる。

 

(本当に邪魔な····妖精どもだぜ)

 

「い···て···」

 

「消えろ」

 

エリゴールが発動した魔法による風はかまいたちの如くナツを切り刻み、そして、

 

「やばっ、ハッピー!!!」

 

線路の上から崖下へと転落させようと吹き荒ぶ。

 

ナツがハッピーに救援を求めるもハッピーは目を回して動かない。

 

「そっか!!!全魔力使っちまったんだ!!!」

 

「ザコが」

 

追い打ちとばかりにエリゴールが攻撃し、ナツを叩き落とす。

 

「落ちるー!!!」

 

そのまま落ちていくように見えたが、

 

「んがー!!!」

 

ナツがやけくそ気味に放った炎が線路の上に”貼り付いた”(・・・・・)···!

「何!!?火が貼り付いた!?」

 

そして、まるで伸びたゴムが戻ってくるかのように、ナツは線路の上に戻ってきた。

 

「危ねー、火の”質“を変えてみればいいのかぁ···やってみるモンだなぁ」

 

「な···何だ今のは···」

 

エリゴールが驚いていると、ナツは自身の両脚に火を纏わせる。

 

「おまえ、裸じゃ寒ぃだろ。あっためてやろっか?」

 

するとナツは、ロケットの如くエリゴールへと飛んでいき、腹部に一撃を叩き込む。

 

(速い!!!)

 

火竜(かりゅう)鉤爪(かぎづめ)!!!!》

 

エリゴールに一撃を喰らわせ、追撃しようとするが、

 

「調子にのりおって!!!」

 

「なっ···!」

 

エリゴールの魔法により、行く手を阻まれる。

 

暴風波(ストームブリンガー)!!!!》

 

巨大な鎌鼬の竜巻に呑まれたナツは全身を切り刻まれ、動けなくなってしまう。

 

「終わりだ」

 

トドメとばかりに、大鎌を振り下ろす。

 

しかし、ナツは左腕で刃を止める。

 

「腕で止めたァ!!?」

 

「火竜の···」

 

「まさか、口から火を!!?」

 

「咆哮だァ!!!!」

 

続けてエリゴールを狙って口から炎を吐き出し、攻撃するもエリゴールは空中へと回避する。

 

「くそっ、ふらふら飛びやがって!!!ズリィぞ!!!降りてこい!!!」

 

(なんて野郎だ···やる事全部デタラメじゃねぇか···これが妖精の尻尾の魔導士か···)

 

「貴様の力···少々侮っていたようだ···ここからは本気でいこうか···お互いにな」

 

と、今まで舐めてかかっていたナツに対してそう言い放ち、ナツも

 

「燃えてきたぞ」

 

と、闘争本能剥き出しで獣のような笑みを浮かべる。

 

暴風衣(ストームメイル)

 

エリゴールは自身の身体に纏う形で魔法を発動する。

 

「おお」

 

「いくぞ」

 

エリゴールはまるでドリルの様に、ナツへと攻撃するが既の所で回避する。

 

「火竜の···鉄拳!!!!」

 

それに負けじとナツも攻撃するが、エリゴールに受け止められると同時に拳に纏わせていた炎が消えてしまう。

 

「あれ?」

 

何が起こったか分からないナツは続けて同じ魔法を放つも、

 

「くっそぉ!!!」

 

またもや受け止められ、炎が消えてしまう。

 

「やはり炎を纏ってなければあの破壊力は出せんか···まるで効かんな···」

 

「どうなってんだ!!?炎が消えちまう!!!」

 

「暴風衣は常に外に向かって風が吹いている。分かるか?炎は向かい風には逆らえねぇ、炎は風には勝てねぇんだ」

 

そう言ってエリゴールは徐々にナツへと距離を近付けていく

 

「すげぇ風だ、台風みてーだな」

 

ナツもなんとか吹き飛ばされないように踏ん張っているがもはや時間の問題だろう。

 

「これでは流石に炎は届くまい···死ねぇ!!!!

 

エリゴールは鎌鼬を何度も飛ばしてくる。

 

「ちっ」

 

「はーっ!!!!」

 

「くそっ」

 

ナツは鎌鼬を何度も紙一重の所でかわし続ける。そして隙を見つけると、

 

「おらあああっ!!!!」

 

両脚に炎を纏わせると、ロケットの様に、エリゴールへと近付き、拳を叩き込もうとするも、

 

「うおっ」

 

強風によって炎が掻き消されてしまい、吹き飛ばされてしまう。

 

「炎どころか······俺が近付けねぇ!!!」

 

そのタイミングで目を覚ましたハッピーは事の行く末を見守っていた。

 

「くらえ!!!全てを切り刻む風翔魔法(ほうしょうまほう)

 

翠緑迅(エメラ・バラム)

 

「翠緑迅だって!!?そんなのくらったらバラバラになっちゃうよ!!!」

 

ハッピーの言葉にナツは身構えるが、エリゴールから吹いてくる強風によって浮かされてしまい、回避が出来なくなる。

 

「死ね!!!!燃えカス小僧!!!!」

 

その瞬間、ナツが足場にしていた橋を巻き込み、巨大な風の刃が全てを切り刻む。

 

「ナツーーーーーーーー!!!」

 

「···その肉体が残っただけでもたいしたモノだ」

 

肉片だけになると思っていたナツの身体が原型を留めていた事に驚きつつも言葉を溢したエリゴール。

 

「起きてーーーー!!!ナツーーーー!!!」

 

「若ぇ魔導士にしてはなかなかだったぞ」

 

ハッピーはナツに呼びかけるも返事はない。

 

「安心しろじじい共もすぐにそちらへ送ってやる。呪歌の音色でな」

 

そう言って、クローバーの町の方へと向きを変えた時、

 

「何が···呪歌だ···」

 

「!!!」

 

ナツは風の刃によって切り刻まれた衣服を破り捨てながら立ち上がる。

 

「じっちゃんの首が欲しいなら正々堂々戦え!!!」

 

「バカな···!!!まだ生きてるのか!!?」

 

「戦う勇気がねぇなら手ェ出すんじゃねぇ!!!!」

 

「なんてしぶてぇガキだ」

 

殴り掛かろうとしたナツを再び強風で吹き飛ばし、距離を空けるエリゴール。

 

「ちくしょオォオォっ!!!!」

 

ナツの全身を覆う様に巨大な炎が現れる。まるでナツ自身の怒りを体現するかの如く。

 

「ふん」

 

対するエリゴールは余裕の笑みを浮かべるが、全身に纏っている風が少しだけ“揺らぎ”を見せた。

 

「!!」

 

その瞬間をハッピーは見逃さなかった。

 

「何で近付けねぇんだ!!!!納得いかねーーーーーー!!!!」

 

一方のナツはエリゴールに近付けない事に苛立ちを見せ、レールを無理やり線路から引っ張り、曲げていた。

 

「それにしても不気味な魔法だな、感情がそのまま炎へと具現化されてるようだ。」

 

(な···なんだ!?エリゴールの纏ってる風が変な方向に流れてる····)

 

「んがーーーーーっ!!!!」

 

そしてそのまま、ナツは引っ張っていたレールの鉄骨を熱で変形させて千切ってしまう。

 

「待てよ···感情の炎···!!?た···確か、古代の魔法にそんな魔法が····いや······こんな若造が古代の魔法など···」

 

エリゴールはナツを尻目にナツの使う魔法を考察している。

 

「ああああああああ!!!!」

 

「!!!何っ!!?風が···奴の方に······」

 

ナツの怒りがどんどん肥大化し、同じ様に炎も巨大化してくると、エリゴールが纏っていた暴風衣がナツの方へと流れていってしまう。

 

「そうか!!!」

 

それを見ていたハッピーは何かに気がついた。

 

「くそぉおぉおっ!!!」

 

「ナツーーー!!!」

 

「!」

 

ハッピーがナツに何かを伝えようと呼び掛け、ナツはハッピーの方へと振り返る。

 

「無理、ナツじゃ勝てないよ。グレイに任せよ」

 

と、此処でまさかの煽り。

 

「何だとぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

これにより、ナツの怒りが爆発。そして、

 

「バ···バカな!!!暴風衣が···流されて···」

 

エリゴールが纏っていた暴風衣の風が全てナツの方へと流れてしまい、もはや無防備な状態となってしまう。

 

「よし!!!」

 

ハッピーは作戦どおりと右手でガッツポーズをしながら笑みを浮かべた。

 

「ぬおおおおおおっ!!!」

 

「風の鎧が剥がれたっ!!!」

 

ハッピーはこれを狙ってナツをわざと怒らせたのだ。

 

(ナツの超高温で温められた周りの空気が急激な上昇気流によって低気圧が発生したんだ。風は気圧の低い方へと流れる!!!)

 

「これほどの超熱魔法···!!!まさか!!!?」

 

「俺が倒してやるよォオォ!!!!」

 

するとナツは、エリゴールへと頭突きをするような姿勢で突っ込んでいく。

 

「火竜の···」

 

「いたのか!!!?滅竜魔法(ドラゴンスレイヤー)の使い手が!!!?」

 

劍角(けんかく)!!!!!」

 

ナツが纏っていた超火力、超高温の炎によって天高く飛ばされ、全身を炎で焼かれたエリゴールは、気絶しながら宙を舞い、そのまま線路へと落ちてくる。

 

その際、持っていた呪歌の笛がその場に転がる。

 

「どうだ!!!ハッピー!!!」

 

と、ハッピーの煽りに対する返答の様にそう言い放つ。

 

「あい。さすが火竜(サラマンダー)のナツです」

 

「お前、さっきなんて言った?」

 

「猫の記憶力はしょぼいモノなので···」

 

と、ナツに対して言い訳を始めるハッピー。

 

「俺じゃコイツに勝てねぇからエルザ(・・・)がどうとか言ってただろ!!!!」

 

「うわー、猫よりしょぼい記憶力···」

 

片手にエリゴールの首根っこを掴んだナツの言葉にさすがのハッピーも呆れてしまう。

 

「でもナツは勝ったよ」

 

「······ま、いっか。つーか何で最後攻撃当たったんだろ」

 

「ナツがすごいからです」

 

「そっか!!?かかかかかかかっ!!!」

 

エリゴールを倒したナツは、エクレール達が到着するのを待つことにし、一先ずは身体を休めることにしたのだった。

 

しかし、この時ナツとハッピーは気付いていなかった。

 

エリゴールの落とした笛の髑髏の口から紫色の煙が噴き出し、

 

小さく「ヒヒヒ···」と、声を上げていたことに···

 

――――――――――――

 

「ナツー!!!」

 

それから数分後、漸くナツ達と合流することが出来たエクレール達。

 

「お!遅かったじゃねえか、もう終わったぞ」

 

「あい!」

 

線路の上には、上半身はマフラーを身に付けているだけの出で立ちのナツとハッピー。そしてその傍らには、ナツに敗れ、倒れたエリゴールがいた。

 

「さすがだな」

 

「ケッ」

 

「そ、そんな···!!!エリゴールさんが負けたのか····!!?」

 

その様子を一瞥した後、エクレールは魔動四輪に繋がれている腕輪を外した。

 

「っ···!とと···」

 

「エクレール、大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫。問題ない。」

 

慣れていない為か危うく転びそうになったが、何とか持ち直し魔動四輪から下りる。

 

そんなエクレールとルーシィ達の前でナツとグレイが話している。

 

「こんなの相手に苦戦しやがって、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の格が下がるぜ」

 

「苦戦?何処が!?圧勝だよ、な?ハッピー」

 

「微妙なトコです」

 

するとどんどん空気が不穏な物へと変化していき、

 

「おまえ···裸にマフラーって、変態みてーだぞ」

 

「おまえに言われたらおしまいだ」

 

「二人共、其の辺にしとけ」

 

今にも喧嘩になりそうな所でエクレールが二人を止めに入る。

 

「ルーシィ、服貸してくれ」

 

「何であたしなの!!?」

 

「おい、せめてそこは俺に言えよ···」

 

と、またルーシィに迷惑を掛けようとするナツに呆れつつ、エクレールが着替えとして持ってきた服を一着貸し出す。

 

「何はともあれ見事だ、ナツ。これで総長(マスター)達は守られた。」

 

エルザがナツにねぎらいの言葉を掛けると、それぞれ達成感を感じ、自然と頬が緩んでいく。

 

「ついでだ···定例会の会場ヘ行き、事件の報告と笛の処分について、総長に指示を仰ごう」

 

「そうだな、クローバーはもうすぐそこだからな」

 

と、エルザの意見にエクレールが賛成した直後、

 

ドゴォォオ!!!!

 

カゲヤマが魔動四輪を動かし始める。

 

「カゲ!!」

 

「危ねーなぁ動かすならそう言えよ!!」

 

「いや違う···!あいつ、笛を···!」

 

カゲヤマの思惑にいち早く気付いたエクレールは仲間達にそう伝えるが、時すでに遅し。

 

「油断したな妖精ども。笛は···呪歌(ララバイ)は此処だ―――!!!ざまあみろ――――!!!」

 

エクレール以外、全員驚きのあまり一瞬啞然としてしまうが、直ぐ様動き出す。

 

「あんのヤロォォォ!!!!」

 

「何なのよ!!!助けてあげたのに―――!!!」

 

「追うぞ!!!」

 

―――――――――――――――――

 

数時間後、時刻は夕刻を差す頃

 

カゲヤマはクローバーの町にある定例会の会場へと、息を切らしてやって来ていた。

 

(よし···定例会はまだ終わってないみたいだな)

 

そう確信すると、会場へと歩みを進める。

 

(この距離なら十分、呪歌の音色が届く···ふふふ···遂にこの時が来たんだ···)

 

更に近付こうとした時、背後から誰かに肩を叩かれる。

 

「!」

 

ゆっくりと振り向くと、そこには

 

「なっ···!」

 

「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

 

『妖精の尻尾』総長 マカロフが其処にいた。

 

「ゲホッゲホッ」

 

どうやらカゲヤマにした悪戯でツボに入ってそのまま噎せた様子。

 

「いかんいかん、こんな事してる場合じゃなかった急いであの三人の行き先を調べねば」

 

と、身体を震わせながらそう呟くと、

 

「お前さんもはよぉ帰れ病院に」

 

カゲヤマを気遣ってナツたちの行方を探しに行こうとする。

 

(マカロフ······こいつ、妖精の尻尾のマカロフだ···!!チッ···つくづく妖精に縁がある一日だな···)

 

「あ···あの···」

 

「ん?」

 

「一曲、聴いていきませんか?病院は楽器が禁止されてるもので···」

 

カゲヤマの言葉に疑問符を浮かべるマカロフに対してカゲヤマは続ける。

 

「誰かに聴いてほしいんです」

 

「気持ち悪い笛じゃのう」

 

「見た目はともかくいい音が出るんですよ」

 

「急いどるんじゃ一曲だけじゃぞ」

 

「ええ」

 

(勝った···!!!)

 

内心勝利を確信したカゲヤマはそのまま呪歌の笛を吹こうと構える。

 

「よぉく聴いててくださいね」

 

そんな時に思い出すのはギルドでの出来事

 

『正規のギルドはどこもくだらねぇな!!』

 

『能力が低いくせに粋がるんじゃねえっての!!』

 

『これは俺達を暗い闇へと閉じ込め、生活を奪いやがった魔法界への復讐なのだ!!!手始めにこの辺りのギルドマスターどもを皆殺しにする!!!』

 

そして次に思い出すのはエクレール達の言葉

 

『そんな事したって権利は戻ってこないのよっ!!!』

 

『“流す"んじゃねぇ....."見なかった"事にするだけだ、臭いものに蓋して....全て水に流すなんて事....出来るわけねぇだろ。』

 

『もう少し前を向いて生きろよお前ら全員さ』

 

『カゲ!!!おまえの力が必要なんだ!!!』

 

『同じギルドの仲間じゃねえのかよ!!!』

 

カゲヤマの中で葛藤が芽生え始める。

 

それと同タイミングでエクレール達がクローバーへと辿り着いた。

 

「いた!!!」

 

「じっちゃん!!!」

 

「総長!!!」

 

エクレール達がカゲヤマを止めようと近づいた時、

 

「しっ」

 

『!!』

 

これ以上行かないようにと牽制する人物が一人

 

「今イイトコなんだから見てなさい♡てかあんたたちかわいいわね、ウフ♡」

 

見るからに女性者の服を着た男性であった。

 

「な···何、この人!?」

 

「『青い天馬(ブルーペガサス)』の総長だ」

 

「あら、エルザちゃんにエクレールちゃん大きくなったわね」

 

と、明らかな顔見知りの反応を返したが、直ぐにマカロフの方へと視線を戻した。

 

「どうした?早くせんか」

 

「······」

 

見た所、カゲヤマはまだ葛藤しているのか笛を吹こうと構えたまま動かないでいた。

 

「いけない!!!」

 

「黙ってなって面白ェトコなんだからよ」

 

と、今度は四つ首の猟犬(クワトロ・ケルベロス)の総長であるゴールドマインが制止する。

 

「さあ」

 

「····!!!」

 

マカロフの言葉に焦りを覚えるカゲヤマ。

 

(吹けば···吹けばいいだけだ···それで全てが変わる!!!)

 

その様子をボブ。ゴールドマインは笑みを浮かべて見守る。

 

「何も変わらんよ」

 

と、突然カゲヤマの思惑を見透かしたようにマカロフが言葉を発する。

 

「弱い人間はいつまで立っても弱いまま。しかし、弱さの全てが悪ではない···もともと人間なんて弱い生き物じゃ」

 

「一人じゃ不安だからギルドがある···仲間がいる」

 

「強く生きる為に、寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし遠回りするかもしれん···しかし明日を信じて踏み出せばおのずと力は湧いてくる、強く生きようと笑っていける」

 

「そんな笛に頼らなくても、な」

 

と、話すとニヤッと笑みを浮かべた。

 

(さすがだ···全てお見通しだったか···)

 

この人には勝てない。そう悟ったカゲヤマは笛を落とし、そして、

 

「参りました」

 

そう、頭を下げるのだった。

 

「総長!!!」

 

「じっちゃん!!!」

 

「じーさん!!!」

 

「ぬぉおぉっ!!?なぜこの三人が此処に!!?」

 

事が終わるのを見計らってナツ達がマカロフに駆け寄るが、当のマカロフは此処に居る筈の無い三人に驚いてしまう。

 

「流石です!!!今の言葉目頭が熱くなりました!!!」

 

エルザがマカロフを自身の胸に抱き寄せようとした所、

 

「おっと」

 

エクレールがエルザからマカロフを引き剥がす。

 

「···なぜ邪魔する」

 

「鎧付けたままマカロフを抱きしめようとしたからだ、そのままだと怪我するだろ。せめて上外せ」

 

と、またもやエルザとエクレールが一触即発状態になったり、

 

「じっちゃん凄えなぁ!」

 

「そう思うならペシペシせんでくれい」

 

「一件落着だな」

 

「ホラ···あんた医者行くわよ」

 

「······」

 

「よくわからないけどアンタも可愛いわ~♥」

 

と、このように周りは周りでカオスな事になっている。

 

『カカカ···どいつもこいつも根性のねぇ魔導士どもだ』

 

ん?と全員が声の聞こえた方に目をやると、そこには呪歌の笛があり、髑髏の口からはモクモクと紫色の煙が出て来ていた。

 

『もう我慢できんワシが自ら喰ってやろう』

 

「笛が喋ったわよっ!!ハッピー!!!」

 

「あの煙···形になってく!!!」

 

そして其処には、

 

『貴様らの魂をな···』

 

「な!!!」

 

『怪物―――――!!!』

 

身体が樹木で構成されたような見た目の巨人が此方を見据えていた。

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