FAIRY-TAIL~天候を操る魔導師   作:晴月

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第八話 ゼレフ書の悪魔

 

「な···何だ!?こんなのは知らないぞ!!」

 

「あらら···大変」

 

「こいつァ···ゼレフ書の悪魔だ!!!」

 

エクレール達の眼前に現れた存在。

 

それは巨大な樹木の体を持つ悪魔だった。

 

一同は突然の事で驚き、動きを止めてしまう。

 

『腹が減ってたまらん、貴様等の魂を喰わせてもらうぞ』

 

「なにーーーーっ!!!」

 

ナツが悪魔の言葉に反応を示し、漸くエクレール達は気持ちを切り替えた。

 

「魂って食えるのかーーーーー!?うめぇのか!?」

 

「知るか!!!」

 

「一体···どうなってるの?何で笛から怪物が···」

 

ナツの疑問にグレイが突っ込みを入れる中。ルーシィは悪魔を見上げ、冷や汗をかきながら疑問を口にする。

 

「あの怪物が呪歌(ララバイ)そのものなのさ、つまり生きた魔法···それが“ゼレフ”の魔法だ」

 

ルーシィの疑問に答える形でゴールドマインが言葉を口にする。

 

「生きた魔法···」

 

「ゼレフ!!?ゼレフってあの大昔の!?」

 

まさかここに来てその名を聞くとは思っていなかったグレイは驚き、エルザは生きた魔法という言葉に何かを感じ取っていた。

 

黒魔導士ゼレフ魔法界の歴史上最も凶悪だった魔導士···何百年も前の負の遺産がこんな時代に姿を現すなんてね···」

 

「ゼレフ···!」

 

ゼレフの名を聞いたエクレールはひとり、拳を強く握った。

 

『さあて···どいつの魂から頂こうかな···決めたぞ···全員纏めてだ

 

「ひーーーっ!!!」

 

呪歌が口から咆哮を放とうとしたその時、ナツ、グレイ、エルザそしてエクレールが動いた。

 

エルザは即座に天輪の鎧を換装し、ララバイへと近付いていき右脚に斬撃を与える。

 

次にナツがララバイの脚にしがみついたかと思ったら即座に駆け上がり、顔面に蹴りをお見舞いする。

 

『小癪な!!!』

 

「おっと」

 

怪物がナツに向かって口から球状のエネルギー弾を放つが、ナツはそれを難なく躱す。

 

「アイスメイク··”(シールド)“」

 

グレイが自身の右手を握り、左手の平に押し付けるとそこから氷が現れる。

 

「氷の造形魔導士か!?」

 

「しかし間に合わん!!くらうぞっ!!!」

 

その瞬間、氷はまるで扇の様に広がり、逃げようとしたマスター達を守った。

 

「速い!!!」

 

「あの一瞬でこれほどの造形魔法を!!?」

 

「造形魔法?」

 

「魔力に“形”を与える魔法だよ。そして形を奪う魔法でもある。」

 

ハッピーの説明を聞いたルーシィは背筋が寒くなる感覚に襲われる。

 

「アイスメイク”槍騎兵(ランス)“!!!」

 

両手を交差しそこから放たれた魔法は、ララバイの左胸を目掛けて放たれる。

 

「かるく···酔う···」

 

『が···』

 

その威力は、ララバイの左半身を殆ど消し飛ばしてしまう程であった。

 

「な···なんて破壊力なの!!!」

 

「今だ!!!」

 

ララバイが体勢を崩した事で、エクレールが動く。

 

小雲群(クラウディーズ)···!」

 

”白い“パーカーのエクレールは両手で何かを包むような構えを取ると、そこから“雲”が現れてララバイの周囲に広がっていく。

 

高積雲(ひつじぐも)···!!」

 

ララバイを囲む様に雲の壁が積み上がっていき、逃げ場を無くす。

 

そこに現れるのは、新たな鎧に換装したエルザ。

 

黒羽(くれは)の鎧!!!一撃の破壊力を増加させる魔法の鎧だ!!!」

 

背中には大きな黒い翼を携え、全身が黒く露出度の高い鎧となっている黒羽の鎧。それを纏ったエルザは飛翔し、ララバイへと向かっていく。

 

「右手の炎と左手の炎を···合わせて···”火竜の煌炎(こうえん)“!!!!

 

ナツの魔法が直撃すると同時に、エルザの斬撃がララバイへと襲い掛かる。

 

『バ···バカ···な···』

 

ララバイはナツ、グレイ、エルザの三人によって撃破され、そのまま倒れていく様に見えたが、エクレールの魔法によって展開された雲の防護壁により、前へと倒れていく。

 

その様子に誰もが唖然としており、誰もが開いた口が塞がらない様子であったが、ただ一人マカロフだけは

 

「見事」

 

と、口にし、称賛の言葉を送った。

 

「ゼレフの悪魔がこうもあっさり···」

 

「こ···こりゃたまげたわい」

 

一方、カゲヤマは

 

「す···すごい···こ···これが···これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チーム

 

砂埃の中から現れたエクレール、ナツ、グレイ、エルザを見て、歓喜に震えていた。

 

「どうじゃーーーー!!!すごいじゃろぉぉぉっ!!!」

 

「すごーい!!!超カッコいい!!!」

 

周りの反応が嬉しかったのか、マカロフは誇らしげに喜びを露わにし、ルーシィも嬉しそうである。

 

「···ふぅ」

 

エクレールが一息、ため息を吐くと展開されていた雲の壁が消えていく。

 

「いよっしゃああああああ!!!!」

 

その時、ナツが嬉しさのあまり感情が昂ったのか口から炎を吐いた。それだけならまだ良かったのだが、

 

「うおりゃああああああ!!!!」

 

ララバイから落ちた体の一部の破片を思いっきり蹴り飛ばし、それが定例会の会場となっていた建物を貫通した。

 

『あっ』

 

ナツ以外の誰しもが声を漏らし、そちらを見ると、建物はそれが原因で崩れていってしまった。

 

「あっ······」

 

此処で漸く最悪の事態に気付いたのかナツの口からもそんな言葉が漏れ出た。

 

「ナ・ツ・く・ん?」

 

「はっ···ひゃい···!!!」

 

「俺が、絶対に壊さないように···高積雲を使用して 壁まで作ったのに···お前は何をした···?」

 

「あ···あわわ······」

 

声が聞こえたと同時にナツの肩に手が掛けられる。震えながらナツが振り返ると、其処には“満面の笑み”を浮かべたエクレールが立っていた。

 

ただし、その時のエクレールのパーカーはもはや“赤”を通り越して真っ”黒“であった。

 

 

「ヒィッ!?エクレール!?何であんなに怒ってるの!?」

 

「あの野郎····やべぇぞ···!」

 

「ナツのやつ···とうとう怒らせてしまったか···」

 

「えっ!?何この反応!?まさか、周知の事実なの!?」

 

「オイラが説明するよ····間もなくナツの命も消えるだろうけどね···」

 

「ハッピー!?」

 

エクレールのパーカーはその時の感情によって色が変化する仕組みだということは説明したが、彼の怒りが限界を突破した時、どうなるかを説明していなかった為、説明しよう。

 

”赤“を通り越して“真っ黒”となり、他の人から見ても恐ろしいと感じる程にガチギレしている。

 

要は”真っ黒“というのはエクレールの怒りが限界突破した時、分かりやすく言い換えるならガチギレした時、この色となり、表情は“満面の笑み”に固定される。

 

しかし、ルーシィは最近妖精の尻尾に加入した為知らなかった事ではあるが、他の所属メンバーはこの事を知っている為『絶対にエクレールを怒らせてはならない』という暗黙のルールがあるのだ。

 

もし、これを破ってしまった場合は·····

 

「それじゃあ、あっちの方でO・HA・NA・SHI···いや、お・死・お・きといこうか····!楽には殺さんからそのつもりでな···覚悟しておけ····!」

 

「い、嫌だ!止めろ!止めてくれえぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

ズルズルと森の方へとエクレールに引き摺られていくナツをグレイ、エルザ、ハッピーは顔を反らして見ないようにしている。

 

「ぎゃあああああああああああ!!!!!!」

 

もし、この作品が漫画であったなら絶対に描けないほどの凄惨な光景が今森の中で広げられていた。

 

その近くにいた、とあるギルドマスターは後に語る。

 

人間の関節ってあんな角度まで曲がるんだな····と

 

――――――――――――――――

 

それから暫くして、

 

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

と、これまた長い溜息を吐いたエクレール。

 

その場にしゃがみ込んで面倒くさそうにしていた。

 

「あの馬鹿の性でこうなっちまった···俺の休日···返せよ馬鹿野郎···」

 

「エクレール···」

 

その様子を見たルーシィは何も言えなくなっていた。

 

休日にも関わらず、エルザに無理矢理此処まで連れてこられただけに飽き足らず、闇ギルドの思惑を打ち破り定例会の会場となっていた建物をなんとか壊さずにララバイを撃破しようと頑張ったのに、最後の最後でナツがやらかしてしまい、その気持ちは察するに余りあるものであった。

 

「······仕方ない、やるか」

 

「回復早っ!?って何をするの?」

 

泣き言を言っていたエクレールが立ち上がり、口にした言葉が気になったルーシィが彼に尋ねる。

 

「決まってるだろ···建物を作り直す。」

 

「えっ、出来るの!?」

 

「おう。100年クエストとか行ったらよくそこに住んでる人の為に家とか建築するからな····こうなったら、前よりもずっと居心地の良い屋敷にしないとな···という訳でマカロフ、俺は屋敷作り終えるまで帰れないから宜しく!」

 

「全く···まぁ、やってしまったのは儂らの責任じゃからなぁ···」

 

と、仕方ないといった様子でエクレールの提案を受け入れた。

 

「ホントはナツの野郎にも責任とらせるつもりだったんだか···その···つい、”やりすぎちまった“」

 

テヘペロしながらエクレールは軽めに言うが、あの状態のエクレールは容赦が無い事をよく知ってる面々は恐ろしさのあまりに戦慄した。

 

「悪いけど引き取っていってくれ、そこら辺に転がしてある。····あぁ、命に別状は無い···ただ見た目がエグいだけで」

 

「了解、うわっ···これまた派手にやられたなw」

 

ナツを回収しようとしたグレイはライバルのやられっぷりに嘲笑する。

 

「ルーシィ、悪いんだが鍵を一つ貸してくれ。」

 

「えっ、エクレール星霊魔導士でもあるの!?」

 

「細かい事言うと少し違うんだが、まぁそんなとこだ。それで、頼めるか?」

 

「それは構わないけど、日によっては呼べないわよ。」

 

「今日は確か···土曜日だったな···ルーシィ、金牛宮の鍵を頼む。」

 

「タウロス?確かに今日なら呼べると思うけど···」

 

そう言いながら渋々エクレールへと金牛宮の鍵を手渡す。

 

「ありがとう···明日には必ず返す。」

 

そう言うと、マカロフ達からは少し離れた場所で鍵を手にし、ルーシィと同じ様に構える。

 

「ここならいいか···開け、金牛宮の扉···タウロス!」

 

エクレールが召喚時の口上を口にした瞬間、鐘の音が鳴り響き魔法陣が現れる。

 

そして地中からタウロスが現れた。

 

「ルーシィさん今日はどういった用件で····!あ、貴方様は···!?」

 

呼び出した瞬間、エクレールを見てタウロスは分かりやすく狼狽した。

 

「···その件はまた後日だ、タウロス。今は時間が惜しい···俺の手伝いをしてくれ、頼めるな?」

 

「仰せの通りに···!」

 

 

「さて、ギルドマスター殿、崩れる前の屋敷の見取り図や設計図はあるだろうか?出来ればそれを元に建築していきたい。」

 

「あ、あぁ直ぐに手配しよう。」

 

「それと、これを機に何か要望があれば聞こう。」

 

「なら、そうだな···」

 

何時ものタウロスとは違った様子を見ていたルーシィは驚きを隠せない。

 

(エクレールって···一体何者なの··!?)

 

その疑問を口にすることなく、エクレールのやろうとしていることをただ、見守るしかないルーシィであった。

 

その後、マカロフ達は、ギルドへと戻り一部を除いた他のギルドマスター達も帰ったあとエクレールの下に手配された設計図を元に一から建築作業が開始され、タウロスが木材を斬り、クラウディーズがそれを運び、エクレールが切り出して組み上げるといった作業工程となっていた。

 

そして夜が明ける頃には破壊される前の屋敷と変わらぬ建築物が完成したのであった。

 

――――――――――――――

 

そして、

 

「行けーっ!エクレール!」

 

「ナツ!負けんじゃねぇぞ!」

 

「エルザ!頑張って!」

 

「さて、やるか」

 

「あぁ。」

 

「へっ、燃えてきたぞ···!」

 

三人の一騎打ちが始まる。

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