文明の埋葬者   作:ADONIS+

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幕間五 宇宙世紀⑤

 監察軍本部による大日本帝国建国計画。それは単に幕末の日本に干渉して理想の日本を作り上げるという話ではなく、その先の黒歴史をも乗り越えて、長きに渡って国家を繁栄させて、最終的にはブリタニア帝国、アトランティス帝国、大日本帝国による列強三ヵ国体制に移行させる計画だった。その為、当初から天の川銀河から遠く離れた場所に遷都するというのは考えられていた事だった。

 

 言うまでもないが、国を発展させるためにはそれ相応の領域が必要になる。当時のブリタニア帝国が既に帝都が存在する銀河だけでなく他の銀河にまで進出して銀河間国家になっていたのを顧みて、大日本帝国も将来的には銀河間国家に成長させる必要があったが、その領域は安定させる方が望ましいのは言うまでもないだろう。

 

 そこで監察軍は他民族、外国人の切り離し政策を行う事にした。つまり日本を太陽系どころか天の川銀河から一億光年も離れた別の銀河に国家移転させて、その距離の壁を利用する事で外部勢力に邪魔させることなく足場を固めるというものだった。

 

 なら、最初から国家移転させればいいじゃないと思うかもしれないが、監察軍は元々この世界にはそれほど干渉しておらず、当然ながら遷都先の銀河系にしてもテラフォーミング作業など一切していなかった。その為、その銀河のあちこちでテラフォーミングを行う事にしたが、それにはある程度の時間が必要だった。

 

 大日本帝国はその時間潰しの為に第二次世界大戦が終わって宇宙世紀が到来しても太陽系に留まっていたのだ。勿論、トリッパー達の宇宙世紀を楽しむという理由もあったが、それは余談である。

 

 そのテラフォーミング作業が終了した時、地球圏は宇宙戦国時代が到来して地球圏が混乱して火星圏に対する注意がそれていたのを機に、日本支部はこの銀河に先発隊を派遣する事にした。

 

 先発隊は首都になる惑星にする帝都飛鳥を含めた五つの惑星開拓に乗り出した。またその際にこの銀河は大和銀河という名称が付けられるようになった。

 

 これらの念入りの下準備によって後の第三次宇宙遷都が成功し、日本は帝都飛鳥を含めた惑星に入植して発展していくことになる。

 

 

 

宇宙世紀1053年(皇紀3357年=シドゥリ暦3277年=アトラス暦1247年)

大日本帝国 大和銀河 帝都飛鳥

 

 とあるVRMMOの仮想世界で、百名ほどの政治家、官僚、企業家、軍人などの日本を代表する要人が江戸城の大広間に集まっていた。この仮想世界は大江戸浪漫街道という江戸時代の街を再現したゲーム世界で、一見するとありきたりなVRゲームにすぎないが、実は日本支部が秘密会議に愛用している存在だった。

 

 この様なVRゲームを使うのは、スケジュール調整と機密保持のためだ。日本支部のトリッパーは内政チートの為に各界の要人になることが多く、当然ながらそんな彼らは暇ではないのでスケジュール調整が難しかったのだ。

 

 おまけにそうした要人たちが集まるとどうしても人目を引いてしまう。それは機密保持の観点で問題であり、そうした問題をクリアするためにVRゲームを利用した秘密会議が行われた。

 

 勿論、そうした使い道であるためにこのソフトは一般に販売されておらず日本支部のトリッパーしか持っていない。更に個人登録で日本支部のメンバーしかこのゲームをプレイできないようにセキリティもちゃんとしていた。

 

 更に通常のVRMMOと違ってプレイヤーがアバターの外見を好き勝手に弄る事はできない。ソードアート・オンラインのように外見、特に顔の造形は忠実に再現していたし、髪や瞳の色をリアルと同じものにしていた。それはリアルと異なると新しい仲間を憶えにくいという理由からだ。

 

 確かに彼らはゲームをしているが、国の方針を左右する重要な会議をしているのだ。まさに“これはゲームであっても、遊びではない”のだ。

 

 この席に出席している者たちはゲームの世界観に合わせて和服を着ていた。佐天は普通のとは違う豪華そうな着物をきており、まるでサブカルチャーに登場する日本のお姫様のようである。

 

 他の出席者もそれぞれの着物を着ていた。最も彼らの服装はバラバラで侍の服装、商人の服装、おまけに新選組のコスプレなど、和服なら何でもありかよと突っ込みたくなるぐらい滅茶苦茶になっているが、これは別に細かい服装は自由にしていたので各々が好き勝手にした結果だった。

 

 ちなみにこの手のVRゲームは、ソードアート・オンラインの世界に転生したトリッパーがザ・シードを持ち込んだ事で、監察軍内部に流行した。元々、監察軍本部では娯楽の為に同人誌即売会などが行われていたが、このVRゲームブームで同人VRゲームも登場するようになった。

 

 

 

「しかし、これで宇宙世紀も終わりですな」

「意外に長かったですね」

「そうだな」

「しかし、御前。原作と違って太陽系外に飛び出した者たちがいないようですな」 

 

 一人の軍人が畏まった態度で上座に座る佐天に話した。佐天は日本支部支部長で彼らのまとめ役であり、過去に霞御前として活動していた事もあって、佐天を御前と呼ぶ者は多かった。

 

「ええ、歴史改変の影響よ。まぁその方が都合がいいから、そう誘導したのは確かだけどね」

 

 日本支部にとって御膝元である本国が安定していないと困る。その為、日本人以外の人類が太陽系外に進出して星間国家に成長するというのは好ましくない。

 

 確かにそれも考慮して一億光年も離れた大和銀河に遷都したのだが、それでも将来的には大日本帝国と衝突する可能性がないとは言い切れないので、できれば彼らは太陽系内部に隔離しておきたかったのだ。その為、佐天はアカシックレコードを使ってそうなるように歴史を調整した。

 

「しかし、そうなるとターンXはどうしますか?」

「それは私たちが用意して適当な時期に太陽系に送り込めば済む事よ」

「確かにそうですな」

 

 黒歴史において太陽系外勢力がもたらした影響は宇宙世紀7800年頃に彼らが作ったターンXが太陽系に流れ着いた事ぐらいで、それを日本が代わりにやれば帳尻合わせが付く。

 

「次の宇宙時代はリギルド・センチュリーでしたが、千年以上も後ですね」

「そうですね。となると原作介入は無理だから、我々は内政をやるしかないですね」

「別にいいじゃないか。厄介事はない方がいいだろう」

 

 原作介入と言うのは個人でやるならともかく国家だと面倒なだけだ。事実、宇宙世紀では煩わしい事がやたら多かった。国家としては内政に集中できる環境が望ましいのだ。

 

 それに現在では第三次宇宙遷都の際に入植した五つの惑星の開拓はとうに終わり、他の惑星に入植を開始して勢力を拡大中なので太陽系に構っていられないのだ。

 

 こうして、いくつかの確認事項を終えて、日本支部の会議は終了した。




解説

■帝都飛鳥(ていとあすか)
 飛鳥時代は大和国(奈良県)の飛鳥が古代日本の都だった。日本支部その古事に習い、遷都先の銀河を大和銀河に、帝都にする惑星を飛鳥と命名している。

■これはゲームであっても、遊びではない
 デスゲームで有名な『ソードアート・オンライン』の名台詞。

■ザ・シード(ソードアート・オンライン)
 コンパクトなサイズのVRMMORPG作成・制御用のフリーソフト。茅場晶彦がキリトに託した「世界の種子」。VRMMOを動かすのに必須となる幾つかのシステムをはじめ、開発用のツールも同梱しており、3Dオブジェクトとゲーム用のサーバーさえ用意すれば、基本的には誰でもVRMMOの運営が可能となる。
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