正暦2345年(皇紀13501年)
大日本帝国 大和銀河 帝都飛鳥
ある施設に配置されていた時間凍結装置が解除された。その中にいた一人の青年が長きにわたる時間凍結から目覚め、ゆっくりとその身を起こした。
「目覚めたわね」
そんな彼に声を掛けてきたのは佐天令子。三千世界監察軍日本支部の支部長であった。
「俺を起こしたということは『∀ガンダム』の原作が始まったわけか」
「そうよ。今は正暦2345年で、先日ディアナ・ソレルが地球帰還作戦を実行、北アメリアのビシニティにてミリシャとムーンレィスの間で戦闘が起こったわ」
「原作通りというわけか。なら俺の仕事はいつも通りというわけだな」
「そういうことね」
その青年の名は秋山祐一(あきやま ゆういち)。外見は20歳前後の青年であるが、実際は第三次宇宙遷都以前、つまり宇宙世紀時代の大日本帝国に転生しており、日本支部では佐天令子に次ぐほど長く生きているトリッパーだった。
そう聞くとかなりの高齢者に聞こえるだろうが、大日本帝国には不老長寿の技術がある上、彼自身は一万年を超える期間の9割以上を時間凍結で過ごしていたため、実際には60年程度しか活動していない。
実のところ、秋山は暗部の存在でその存在を知る者は極めて少ない。何故なら彼こそがターンユニコーンガンダムのパイロットであり、これまで幾度となく太陽系の文明を埋葬してきた実行犯だからだ。
言うまでもないが、戦争を行っている敵国でもない勢力に問答無用で攻撃を仕掛けて文明を破壊するという行為はどう考えても正当化できない。
しかし、大日本帝国としてはこの宇宙を独占しておきたいので、はっきり言って日本人以外の人間が大規模な宇宙進出を行うのは何かと都合が悪いのだ。かといって日本人以外の人間を皆殺しにするわけにもいかない。
それらの妥協点として地球圏の文明がある程度発達したら彼らが太陽系の外に進出しないようにターンユニコーンを送り込んで文明を破壊してきたのだ。
勿論、それらは極秘作戦であり、徹底的な機密の壁によって一般人どころか日本支部の大幹部でなければ知ることのない裏事情であった。
そしてこれまで幾度となく太陽系の文明を崩壊させてきた秋山に最後の任務が回ってきたのだ。
「攻撃のタイミングはこちらに任せてかまわないな」
「ええ、でも∀ガンダムとターンXは確実は破壊してね。あの二機はこれ以上彼らに使わせるのは好ましくないからね」
「そうか」
大日本帝国は『∀ガンダム』の原作に合わせるためにあえてターンXを太陽系に送り込み、当時の太陽系の文明がターンXを参考に∀ガンダムを作り上げることすら妨害しなかった。
しかし、『∀ガンダム』の原作が開始したからには最早容赦は無用なので、後は最適なタイミングで介入してターンXと∀ガンダムを破壊し、返す刀で文明そのものを埋葬すればいい。
さて、仮にも日本支部に所属するトリッパーである秋山がそんな国家規模の汚れ仕事をやっているのは実績が必要だったからだ。
秋山にはトリッパーにしてニュータイプというかなり稀有な人材であったが、それだけに様々なニュータイプ専用ガンダムを揃えたガンダム部隊というべきマニアックな部隊を作り上げたいという夢があった。
しかし、いくらトリッパーであってもそれを実現するのは難しかった。というのも大日本帝国は宇宙世紀にはすでに可変戦闘機が主流になっていたからだ。
これはブリタニア帝国で使用されていた可変戦闘機ルシファーがあまりにも高性能すぎて今更MSを開発配備する必要性がなかったのが大きかった。
こうなると、今更MSそれも量産機ではなくカスタム機や試作機にあたるガンダムを開発しようなどと思う者はロマンを追及するガンダムファンぐらいなもので、日本支部の上層部にはそんなロマンを追及する者はほとんどいなかったのだ。
それは折角ニュータイプになった秋山にとっては不満な事で、何とかしたいと思っていた彼は日本支部の上層部と掛け合い、功を立てることと引き換えにそれを認めさせたのだった。
実のところ、日本支部上層部としてはこの世界の太陽系文明は邪魔であり、それを定期的に潰す必要があったが、そんな汚れ仕事を誰にやらせるかという問題があったのだ。それを秋山が積極的に受け入れてくれるなら、多少のロマンの追及位は認めてもよかった。
そしてターンユニコーンに乗った秋山は∀ガンダムとターンXが相打ちになるタイミングを狙って介入し、∀ガンダムのコア・ファイターとターンXのXトップを破壊した。∀ガンダムとターンXの構造からこれらを残していると時間がかかるものの機体を再生することが可能だからだ。
この二機さえなければターンユニコーンの障害となりえるものは存在しない。その為、秋山は容易く月光蝶を展開して地球と月その他を一掃していったのだった。
かくして、正暦の文明は完全に崩壊してしまう。月の人類は死に絶え、人類は文明が崩壊した地球で細々と生きていくことになるのだった。
あとがき
これで『文明の埋葬者』の本編は終わりです。後は番外編を少し書いてみようとおもいます。