文明の埋葬者   作:ADONIS+

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プロローグ コズミック・イラ

 この世界において最初の宇宙時代の到来は現在から約50万年前のことである。

 

 当時の地球は再構築戦争(Reconstruction Warまたは第三次世界大戦)の終結によって国家統合と再編が進んでいた事を受けて、国連主導により新暦として統一暦「コズミック・イラ(C.E.)」が制定された。

 

 尚、元年と設定されたのは「最後の核」(中央アジア戦線で使用された核兵器)が使用された年であり、制定時がC.E.9年となるためC.E.1~8年は歴史上にしか存在しない。

 

 このコズミック・イラの時代は従来と異なる宇宙時代の到来であり、地球という一つの惑星から飛び出すに至った人類に更なる発展が訪れるのではないかと人々に期待させる時代でもあった。

 

 しかし、C.E.15年に当時天才として世界で活躍していたジョージ・グレンの告白がすべてを変えた。彼は自らの成果は自分が遺伝子を操作されたコーディネーターだからできた事を暴露し、そのコーディネイター製造技術を世界中に公表した。

 

 このジョージ・グレンの告白は地球の人々にコーディネイターの是非を巡る混乱を引き起こしたものの当時の世論はコーディネイターに否定的であり、いくらコーディネイターの製造技術が広まったからといってコーディネイターが大っぴらに作られることはなかった。

 

 この状況が変わったのがC.E.30年のパレスティナ公会議であった。この時に各宗教界の権威者たちがコーディネイターに関する議論を行ったがまとまらず宗教界の権威が失墜してしまう。これによってコーディネイター寛容論が世界に蔓延してしまい、第一次コーディネイターブームが発生してしまった。

 

 歴史にもしもは存在しないが、仮にこの時の人々がもっと慎重であったならば後の悲劇は阻止できただろう。だが、結果としてこの時の行動が後の血塗られたコズミック・イラの歴史を作り上げる原動力となってしまう。

 

 C.E.40頃には秘密裏に誕生していたコーディネイターたちが、学問・スポーツ・芸術などの各分野で成果を出していき、従来の人であるナチュラルとの能力差が誰の目にも明らかになるとナチュラルの反コーディネイター感情が悪化していく。以後ブルーコスモス等の反コーディネイター運動が過激化していく。

 

 こうして、ナチュラルとコーディネイターの問題は年々深刻化していき、とうとうナチュラルとコーディネイターとの大規模な戦争となるヤキン・ドゥーエ戦役(C.E.70-72)とユニウス戦役(C.E.73-74)が勃発してしまう。

 

 

 

 この二つの戦役後、表面上ではナチュラルとコーディネイターとの争いは収まったが、未だ地球圏は火薬庫という状況に変わりはなかった。そして、この火薬庫はC.E.80年に爆発した。

 

 当時のプラントは出生率の低さが深刻な社会問題となっていた。これはプラントが遺伝子を操作されたコーディネイターで構成される国家であった事から必然的な問題であった。

 

 そもそも人間に限らす生物はさまざまな遺伝子が組み合わされている。それは良い遺伝子だけでなく、悪い遺伝子もそうで、これらの様々な遺伝子が多様性と発展性となっていたのだ。

 

 しかし、コーディネイターは意図的に天才の遺伝子を組み合わせている。その結果、病気になりにくく丈夫な体、優れた知能や運動能力などを含めた様々な才能、整った容姿などを持つようになった。

 

 これによってコーディネイターは遺伝子の多様性が極めて乏しく、世代を重ねるごとに出生率が極端に落ちてしまうのだ。その為、婚姻統制をやっても第三世代の出生率の低さは改善できなかった。これを何とかするにはナチュラルたちに新たに第一世代のコーディネイターを作ってもらうしかないが、昨今の情勢からそれは期待できない。

 

 このままではプラントは極端な少子高齢化社会となり、将来的にはプラントは滅び、コーディネイターも消え去る事になるのは誰の目にも明らかだった。

 

 結局のところ、コーディネイターとは新人類でも進化した種族でもなく、ただ遺伝子を操作した強化人間を大量生産しただけの存在にすぎなかった。

 

 ここで客観的に物事を判断できる理性的な一部のコーディネイターは、そもそもヤキン・ドゥーエ戦役のように武力行使によってプラント独立を目指したことが過ちであったと痛感した。あのエイプリルフール・クライシスを初めとした戦禍で数億人もの被害者を出してしまった為に、ナチュラルの反コーディネイター感情はすさまじいものになっていたのだ。それさえなければナチュラルと関係を改善して、何とか平和的にナチュラルと共存してコーディネイターという存在を維持していく可能性はあった。

 

 もっと言えばプラントの独立という事そのものが早計だったと言えた。確かにブルーコスモスのテロは脅威であったが、こちらが軍事力を持とうとせずにプラント理事国に貢献する労働者としての立場を貫いていれば、ブルーコスモスをただのテロリストとして非難して世論の同情を得る事も可能だったはずだ。それにプラント理事国もコーディネイターたちがテロ被害にあうと収益が悪化するからテロを抑えてくれただろう。

 

 しかし、それは最早不可能だった。かくなる上は大人しく消えるか、ナチュラルとの婚姻で徐々にナチュラル化して自然に帰るという選択肢を取るのが賢明と言えただろう。だが、当時のプラントがとった選択はそのいずれでもなく最悪に近いものだった。プラントは地球各国に対してコーディネイター製造の合法化と第一代のコーディネイターを作るように強要する。

 

 これまでコーディネイターに散々苦しめられた各国は当然ながらそれを拒否した。彼らにとって凶悪極まりないコーディネイターを新たに作り出すなどとんでもない話だった。だが、プラントは強硬な姿勢を崩すことなく事態は極端に悪化しき、その結果ナチュラルとコーディネイターの戦いが勃発してしまう。

 

 この時の戦いは大量破壊兵器が頻繁に使用された為に各陣営は壊滅してしまい、地球圏の文明は崩壊した。また、火星もNジャマーキャンセラーの材料となるベースマテリアルが存在していた為に、この戦争に巻き込まれて壊滅してしまうのだった。

 

 かくして、最初の宇宙時代は終わる事になるが、その後も西暦(機動戦士ガンダムOO)、アドバンスド・ジェネレーション(機動戦士ガンダムAGE)と、文明の再興と崩壊が延々と繰り返されて行く事になる。




解説

■C.E.80年に勃発した戦争
 コズミック・イラの公式年表はユニウス戦役で終わっている為に、このSSにおける文明崩壊の原因として設定したオリジナルの戦争です。

■ガンダム世界の黒歴史がまた1ページ
 アニメ版『銀河英雄伝説』の次回予告で使われている〆台詞「銀河の歴史がまた1ページ」のパロディ。



あとがき

 コズミック・イラでは火星はあまり余裕はありませんが一応入植に成功しています。その為、地球圏の文明が崩壊しても火星は生き残る可能性が十分にあります。そうなると黒歴史の設定と矛盾してしまうので、このSSでは火星は戦禍に巻き込ませて崩壊した事にしました。
 後、正直言うとプラントはあそこまで甚大な被害を出してまで独立戦争をする必要があったのか心底疑問です。どう考えても極端な少子高齢化で百年も経たずに崩壊するのが目に見えています。まぁコーディネイターが自分たちを過信してナチュラルの下に付くことに我慢出来なかったというのはありそうですね。やたら自信過剰なところがあったし(笑)。
 さて、次回は時代が大きく飛んで江戸時代の監察軍の暗躍を書こうと思います。ガンダム世界の黒歴史がまた1ページ。
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