面倒なゲート問題の後始末を終えたことで佐天令子たち監察軍日本支部は一息ついていた。正直あの世界は関わりたくなかったのでさっさと切り上げたのだ。というか、大日本帝国を含め列強三カ国はいずれも閉鎖的なお国柄で、他所の世界と外交には消極的なのだ。
「それにしてもネタ兵器扱いだったガンダムダブルエックスやターンXが砲艦外交に使えるとはね」
令子からすれば秋山のガンダム部隊はガンダムファンのロマンを追及するだけの高価なコレクション扱いだったが、今回は意外に役に立ったのだ。
「少なくない予算を使っているから少しは役に立ってよかったというべきでしょう」
実のところガンダムは有名なアニメ作品だけに日本支部のトリッパーにもガンダムファンは多くいて、秋山のガンダム部隊に好意的な者が多かったりする。これは秋山が味方を少しでも増やすべくガンダムファンのトリッパーにガンダムの試乗会などをやっているからという理由もあった。
「問題はゲートが発生した原因ね」
実のところ、同じ原作の世界であれば並行世界の移動や時間移動はよくあることだ。その手段が魔術だったり科学だったりするが、別にそれは目くじらを立てる程のものではない。その為、仮にこの世界が別のガンダム作品の世界と繋がってしまったとしても監察軍が脅威に思う程の問題ではなかった。
しかし、このガンダム世界とゲート世界は全くと言っていいほど別の世界なので、理論的には監察軍の保有するユグドラシル・システムか、一部のトリッパーが有している異世界間転移能力でなければ移動は不可能なのだ。
当然ながら日本支部では今回のゲートの発生原因を調査した彼らは想定外の事態に直面してしまう。
「まさか九兵衛が動いているとはね」
「あれだけ叩いているのに未だ健在とは、さすがに元ネタがあれなだけにしぶとい」
九兵衛とは監察軍が敵対している破壊神ベヅァーに作られた奉仕種族である。その為、監察軍にとって彼らは敵の下僕なのでこれまで数千年にわたり発見しだい抹殺してきたが、未だに九兵衛を駆逐できていなかった。
もちろん、監察軍とて九兵衛を駆逐すべく幾度となく大規模な殲滅作戦を展開してきたが、奴らの活動範囲があまりにも広すぎて追いついていないのだ。
「まったく、ゴキブリよりも厄介よね」
ゴキブリは一匹見たら百匹はいると言われているが、九兵衛の場合、様々な下位世界で幅広く活動しているためにそれらを一々駆逐していく作業に多くのトリッパーは嫌気がさしていた。
「それで、今回のゲートは九兵衛の実験かしら?」
わざわざ異世界間のゲートを繋げていることからゲート実験と解釈できる。
「いや、それならわざわざ大日本帝国につなげる必要はないから、俺たちに対する嫌がらせだろ」
確かに、ただの実験なら私たちの目につかない世界でやる筈。それなのに大日本帝国の領土でやるのは嫌がらせ以外の何物でもないだろう。
「質が悪いわね。嫌がらせだと分かっていても無視できない」
今回のように領土問題に発展するようなことをされたら対処せざる得ないのだ。此方が所有する惑星をかってに領有宣言なんてされても無視したらそれこそより大きな問題になる。
九兵衛からすれば多少の手間で監察軍の邪魔ができるなら利になるから、今回の行動は理解できる。
「今回の一件はブリタニア帝国とアトランティス帝国にも対応策を含めて通達済みだから問題ないよ」
既に大日本帝国では今回のケースの対応策としてゲートを発見次第、ゲートを侵入者諸共排除するという対応を取ることにした。今回は一々交渉しようとしたから余計な手間をかけてしまったのだ。さっさと処分すればそんな無用な手間を省ける。
もちろん、それは人道的に見れば問題がある対応だろうが、今後九兵衛がしかけてくるであろう妨害工作を思えば一々人道的に対応できないのだ。どうせゲートの向こうの相手も今回の中国のように面倒な相手なのは分かりきっているのだから。
その後、予想通り大日本帝国を含めた三カ国の領土で異世界とのゲートが発生する事態が多発したが、三カ国はいずれもゲートを破壊して侵入した人間たちを抹殺するという非常に厳しい対処を行ったことで、やがて九兵衛も効果がないと判断したのかゲートを展開しなくなったのだった。
解説
■ユグドラシル・システム
三千世界監察軍が使用している機械的に異世界間を移動できる技術。これによって並行世界だけでなくまったく異なる原作の下位世界に移動できる。
■九兵衛
『マギカではなくリリカル』で登場した。破壊神ベヅァーがエネルギー確保の為にキュゥべえ(魔法少女まどか☆マギカ)を参考に作り上げた奉仕種族。元ネタが元ネタだけに弱いが、やたらと数が多く駆逐が難しい。この世界ではただでさえ数が多いのに様々な下位世界で幅広く活動しているので、監察軍でも非常に手を焼いている。
あとがき
これにて『文明の埋葬者』は終わりです。正暦が終わった後も大日本帝国は超大国として存続していきますが、大日本帝国のお話はここで幕切れにします。