文明の埋葬者   作:ADONIS+

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幕間一 西暦①

 そもそもの始まりは『魔法少女リリカルなのは』の次元世界の一つであるブリタニアで勃発した第一次ベヅァー戦争(シドゥリ暦2000年)であった。当時ブリタニアには三千世界監察軍本部が存在していたため、この戦いで多くのトリッパーが命を落とすことになった。監察軍によってその損失は計り知れない物であった。

 

 そもそもブリタニアを含めた下位世界は上位世界人によって創造された世界群だ。

 しかし、これらの世界創造は反作用も同時に発生させて、創造の対極に位置する破壊の権化たる破壊神ベヅァーという存在を意図せずに誕生させてしまっていた。

 

 上位世界人によって創造された下位世界は破壊神ベヅァーは発生するたびに多くの下位世界を並行世界ごと消滅させた。その被害は甚大であり、これに憂慮した死神たちはその対策として下位世界に存在するだけでベヅァーの力を中和することができるトリッパーという存在を作り出し、こうしてトリッパーたちが数多の下位世界に点在するという状況が生まれた。

 

 更に死神は各世界のトリッパーたちが下位世界で上手くやっていけるように相互扶助組織“三千世界監察軍”という組織を作り出させた。これらの活動でベヅァーの力は抑えられ、ベヅァー出現を長らく阻止し続けていった。

 

 しかし、これに苛立ったベヅァーは不完全体のままで無理やり出現して、邪魔なトリッパーたちを排除に乗り出した。

 

 こうして発生したベヅァー戦争で、トリッパーが激減してしまった事にトリッパーと死神たちは青ざめた。

 

 現在のトリッパーの数では不十分であることは明白で、トリッパーの早期補充が急務となるが、トリッパーの補充はそう易々とは行かない。多くのトリッパーたちが求める転生特典を与えることは死神をしても手間がかかる事だったのだ。

 

 トリッパー補充が遅々として進まない現状に焦りだした監察軍にカリン・エレメントはある提案をして、それを元にトリッパー増員計画が立てられた。

 

 この計画は二つのプランからなっており、一つはカリンが主導するアトランティス帝国の建国、もう一つは監察軍が全面的に取り計らう大日本帝国の建国であった。

 

 前者はともかく、後者の大日本帝国の建国は監察軍が直接主導するプランで、それは『∀ガンダム』の世界の日本に多くのトリッパーを憑依させて歴史改変をするという物だった。

 

 これらのトリッパーたちは転生特典を持たず、前世の記憶以外は現地の人間と変わりない。その為、監察軍では彼らを纏め上げサポートする人員として佐天令子を送り込むことにした。

 

 

 

 日本史において幕末と呼ばれる江戸時代末期は、黒船来航(西暦1853年)から始まったと言われている。

 

 西暦1851年という幕末直前の長州藩に来た佐天令子は早速知識チートと軍資金(大量の金塊)を活かして商会を立ち上げて莫大な財を築き上げて、得た財を元に毛利家と繋がりを持った。毛利を資金で支援するだけでなく、予知として未来情報を与えた。

 

 最初は年端も行かぬ少女(佐天令子は外見年齢は14歳)に不信を抱いた毛利であったが、令子の百発百中の予知に次第に令子を頼るようになる。

 

 そして黒船来航という一大イベントが発生すると、姫神みこが幕末の日本人に多くのトリッパーを憑依させていった。

 

 当初、いきなり幕末の人物になっていたトリッパーたちは大いに困惑した(姫神みこは説明などはしておらず、前世の記憶の保持だけしかしていない)。

 

 しかし、彼らも状況を受け入れてそれぞれに行動していく。そんなトリッパー達の中でも幕末の偉人たちのファンだった者などはそれらの偉人たちに接触したり助けたりするものもいて、中でも坂本龍馬のファンだったあるトリッパーなどは暗殺される筈だった彼を助けていた。佐天令子はそんな彼らを纏め上げていくことになる。

 

 ちなみに長州藩の藩主だけでなく重臣たちに憑依したトリッパーもいたので、彼らを通じて長州を牛耳る事に成功して、長州藩にいるトリッパーたちによって『三千世界監察軍日本支部』が立ち上げられることになった。

 

 この監察軍の暗躍により、長州藩は史実とは違って京都でテロリスト紛いな天誅をやらかして治安を悪化させる事や無暗やたらと攘夷をする事はなく、改革を進めていき近代化していくことになる。

 

 そんな史実よりも穏健な長州であったが、徳川幕府にとって目障りな存在となっていた。というのも当時の日本は幕府の失政により経済的に混乱状態となっており、長州はそんな幕府を非難するロビー活動を積極的にやっていたからだ。

 

 その上、長州はそもそも日本が外国に大きく遅れてしまったのは幕府が鎖国をやったせいで、おまけに藩の軍備を制限したり、参勤交代などで財政に負担をかけたせいで日本全体が弱くなったのだとまで主張していた。

 

 長州が仕掛けたあからさまな挑発であったが、ここまでやられて幕府が黙っていられるわけもなく、史実のように幕長戦争が勃発した。とはいえこの世界では史実のように朝廷から逆賊にされることはなく、普通に幕府およびそれに従う諸藩と長州の戦いであった。

 

 この戦いで、長州に比べて数に勝る幕府軍であったが、実際に戦ってみると幕府軍は長州に連戦連敗する羽目になった。

 

 確かにこの戦いで動員された兵員数だけなら幕府が多かったが、長州軍は表向きの兵器だけでもアームストロング砲やガトリングガンなど、この時代の技術水準から逸脱しない範囲でありながらも幕府軍よりも優れた兵器を装備していた。その上、秘匿兵器として監察軍から送り込まれたミラージュコロイドを搭載した爆撃機やガンシップが人工衛星の管制を受けて幕府軍を攻撃していたからだ。

 

 ここで、この時代に爆撃機やガンシップなどの航空機を使っていいのか?と思われるかもしれないが、監察軍はその為にミラージュコロイドを使用して隠蔽工作もしっかりしていた。そのため航空機を使用しても幕府軍はそれを認識することはできず、幕府軍は何も分からないまま軍が壊滅したとしか認識できなかった。

 

 こうして長州の狙い通り、この戦いに大敗した幕府の権威は失墜してしまい、後に薩長同盟が成立して倒幕の動きが加速することになった。なお、この際に、薩摩や土佐にいたトリッパーは日本支部と合流している。

 

 ちなみにこの世界の徳川と武家は史実よりも徹底的に叩きのめされており、大政奉還や江戸城無血開城もなく、長州と薩摩によって武力で滅ぼされて、徳川慶喜が爵位を得る事もなかった。

 

 これは史実において中途半端に徳川が残ったことで武家の反乱が頻発してしまい唯でさえ列強に比べて大きく遅れていた日本の発展が更に遅れてしまったからだ。それは言うまでもなく日本支部にとって好ましくなく、彼らは史実の過ちを繰り返さないように情け容赦なく徳川潰しをやることにした。

 

 日本支部にとって幕府や士族など最早無用な存在だ。いや新しい時代を築こうとしている今となっては彼らのような旧体制の特権階級は邪魔者だった。だからこそ幕府が大政奉還させないように工作(大政奉還の情報を保守派であった会津藩に意図的にリークして幕府の動きを牽制した)もしたし、被害が出るのを覚悟の上で江戸城にミサイルを撃ち込んで破壊した(勿論目撃されないようにミサイルは夜間に打ち込んでいる)。

 

 かくして徳川幕府は完全に滅び、日本は明治という新たな時代を迎えた。それは日本が近代国家として歩き出した第一歩であり、遠い未来において三千世界の列強国家となる大日本帝国が誕生した時代であった。




解説

■佐天令子
 当サイトのSS『とある少女の支配領域』のオリ主。アカシックレコードという反則染みたチートだけでなく、卓越した戦闘能力がある事から日本支部の取りまとめ役に選ばれた。

■姫神みこ
 唯一の訪問型のトリッパー。あらゆる能力を自由自在に作れるという反則的な能力から最高のトリッパーと呼ばれている。トリッパーを作り出せるのは死神を除けば彼女だけである。

■ミラージュコロイド
 ブリッツ(機動戦士ガンダムSEED)に搭載されたステルス機能。可視光線や赤外線を含む電磁波を遮断する特殊なコロイド状の微粒子で、これを機体に纏う事で完全な光学だけでなく赤外線やレーダーも遮断するステルス性を発揮できる。
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