文明の埋葬者   作:ADONIS+

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幕間三 西暦③

 不平等条約を改正してやっとまともな国家として歩き出した日本(この世界では表向きそうなっている)に次のイベントが来た。それが第一次世界大戦である。

 

 史実と同じように日本は日英同盟に基づいてドイツに宣戦布告したが、この世界ではもっと踏み込んで欧州に戦艦を含めた艦隊を送り込んでいた。

 

 これは英国に対する義理立てだった。流石に史実と同じ対応をすると問題なので、最低限の義理は通さないといけなかった。

 

 この艦隊派遣が実現したのは、この世界では監察軍の暗躍によって表向きの海軍力が史実よりも整っていたし、いざとなれば監察軍本部からの救援も得られる状態であったので国防に余裕があったからだ。

 

 ちなみに陸軍は本国との距離を理由に派遣されていない。流石に塹壕戦や毒ガスで消耗戦となっている地上戦までやる気はなかったのだ。まあ、実際地球の裏側まで兵を送るのが面倒だったというのも嘘ではない。とはいえ陸軍も観戦武官を欧州戦線に派遣して戦訓を得る事はしっかりやっていた。

 

 こうして、第一次世界大戦をほどほどに終わらせた後で、日本支部は世界恐慌で大勝負に出た。この時に史実を知る者から見ればインサイダー取引も真っ青な突っ込み処満載の所業で世界中から富をむしり取ったが、それが発覚しなければ正当な商取引であった。

 

 実のところ、この世界の日本は別に金や資源に困っていない。監察軍の超高効率原子変換プラントによって資源などいくらでも用意できるのだ。このような事をしたのはアメリカを挑発する為だ。

 

 多くの仮想戦記では日本は対米戦争を避けようとする。それは日米の力が隔絶し過ぎていて、まともに戦っても勝てないからで、そのためアメリカに譲歩する形になりがちだ。とはいえこれも中々難しいだろう。日本が発展すれば中国市場を狙うアメリカにとって日本は邪魔者になってしまうから、いずれは衝突してしまうし、だからといって発展を抑えてアメリカの属国になるわけにもいかない。

 

 このため多くの仮想戦記では日本は困る事になるが、日本支部の場合は違う。確かにこの世界の日本は史実よりも強化された一方で、アメリカは史実よりも弱体化しているが、これを考慮しても日米では差が存在しているから日米戦争になれば敗北するように目に見えるだろう(防諜のために表向き軍と民間の技術力はこの時代のレベルから逸脱しない範囲にしていた)。

 

 しかし、それはあくまで偽装にすぎなかった。この世界の日本は数多の仮想戦記の中でも類を見ない程のチートぶりだったのだ。正直こんな日本とやり合う羽目になったアメリカは不幸としか言えない。

 

 トリッパー達は何かと邪魔なアメリカをこの際一気に叩き潰すことにしたのだ。そのため日本支部は世界恐慌で苦しむアメリカ企業を日本資本名義で堂々と買収してまわりワザとアメリカの敵意を買う事までしていた。言うまでもないが人種差別が堂々とまかり通るこの時代に自国の企業に有色人種がそんな事をすれば反感を受けずにすむわけがない。また日本に敵意を抱いたアメリカが日英同盟は破棄させようとした時はあっさりとそれを了承するなど、いろいろと仕込みを行って、日本支部は日米戦争のフラグを立てていった。

 

 

 

 こうして第二次世界大戦が始まると、日米戦争が勃発したが、開戦直後にアメリカ合衆国東海岸で謎の大爆発が発生した。これは監察軍が純粋水爆を大量に転送したからだ。この攻撃(表向きの公式発表では謎の大爆発)で東海岸は壊滅。勿論ワシントンD.C.も純粋水爆で廃墟と化した。

 更にアメリカ全土で大地震が次々に発生して他の地域も大損害を被った。これは監察軍が一方通行のベクトル操作でアメリカのプレートに干渉していたからだ。

 

 こうして戦う前からボロボロになったアメリカに史実よりも強化された日本軍が襲い掛かり、破竹の勢いでアメリカ軍を撃破していった。

 

 ちなみにこの世界では日本は中国に進出しておらず日中戦争も発生していないから、まったく消耗していない状態だったために、その快進撃はすさまじいものであった。

 

 劣勢となったアメリカ海軍は本拠地のハワイに集結して日本海軍との決戦を挑もうとしたが、ここで更なる不幸が彼らに襲い掛かった。ハワイやアメリカ本土に多数の隕石が落下したのだ。当然ながらこれは監察軍による隕石落としであった。これによってアメリカ海軍は消滅して、おまけにアメリカ本土も国家崩壊状態になった。

 

 この一連の天災(本当は監察軍による人災)でアメリカは連邦政府が崩壊して、州政府は壊滅状態となっていたが、そこにアメリカに恨みつらみを持っていたメキシコが攻撃してきた。このメキシコの動きは日本の暗躍によるもので、日本はアメリカに奪われた旧領回復をちらつかせてメキシコを動かしていた。このメキシコの動きに便乗する形で後にアメリカは各国から分断支配させる事になる。

 

 ここで、いくら自然災害に偽装してもここまで日本に都合がいい状況が続くと、日本が怪しまれるものだが、そこは占い師の霞御前のこれまでの実績によって“自然災害に偽装して民間人を大量虐殺してまでアメリカを滅ぼした”という事実ではなく、自然災害でアメリカが壊滅することが予知で分かっていたから日本はアメリカに戦いを挑んだのだと判断するのだった。そのため監察軍の大悪事は闇に葬られることになる。

 

 こうしてリアルチート、仮想戦記におけるラスボスであるアメリカ合衆国は呆気なく滅亡したが、この影響でドルが紙切れ状態になり世界は第二次世界恐慌に陥った。勿論日本はアメリカ崩壊後の対策もちゃんとしていたので、第二次世界恐慌で暴利を貪る事ができたが、その他の国々はとんでもない被害を受けたのだった。

 

 更に影響は経済面だけでなく戦争にも出ていて、欧州戦線は膠着状態でずるずると戦争を続ける事になった。

 

 当時の欧州はナチスドイツがイギリスとソ連を相手に激しくやり合っていた。イギリスとソ連は史実ではアメリカの支援を受けていたし、後のアメリカ参戦でナチスドイツは敗北することになるが、この世界ではそアメリカ崩壊によってアメリカからの支援は途絶えてしまい苦戦していた。とはいえナチスドイツもその内情は苦しく、戦争継続は厳しかった事からこの膠着した戦争を終わらせる事になった。

 

 かくして、第二次世界大戦は史実よりも長引いて西暦1948年にやっと終結することになるが、その時には欧州各国とソ連は見る影もなく衰退していた。




解説

■日米戦争
 日本支部のトリッパー達は太平洋戦争や大東亜戦争という名称では敗北フラグがあるからゲン担ぎに日米戦争という名称を好んで使っており、それが戦後も一般化する事になる。

■純粋水爆
 起爆剤である「プライマリ(原子爆弾)」を使用しない水素爆弾の事で、核分裂物質を必要とせず、残留放射能も少なくなる利点がある。

■一方通行(とある魔術の禁書目録)
 監察軍では一方通行のベクトル操作を機械的に再現してテラフォーミングに使用しており、惑星の重力操作や自転と公転すらも調整していた。監察軍はこの技術を使って北米大陸のプレートをベクトル操作して意図的に地震を発生させていた。

■隕石落とし
 この自然災害(それに偽装した攻撃)によってアメリカだけでなく、周辺諸国にも津波などの被害が出てしまった。
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