アメリカ合衆国を滅亡させるという仮想戦記でもめったに存在しない形で日米戦争に完全勝利した大日本帝国であったが、監察軍からすれば消化試合のようなものにすぎなかった。日本支部はアメリカという障害を取り除き、残りの列強諸国は世界大戦で消耗しきっている状況をうけて、これまでの自重をやめて次の時代に備えて派手に動くことにした。
まず、西暦1943年に日本本土に『機動戦士ガンダムSEED』で登場するようなマスドライバーを建設して、月にシャトルを打ち上げた。これによって人類初の有人での月面着陸は日本の功績となり、この偉大なる一歩は世界に大きな衝撃を与えた。特にナチスドイツのヒトラーは日本が世界にばら撒いたこの時のニュース映像に思いっきり悔しがっていた。
いうまでもないが、マスドライバーなど当時の欧州諸国が逆立ちしても建設できる物ではない。それを備えた宇宙港は厳重な警備がされていたが、例えスパイが紛れ込んでいたとしても模倣は不可能だった。
続いて西暦1948年には日本はいつまにかラグランジュ・ポイントの一つ(サイド3)にスペースコロニー群を建造して宇宙移民を開始したのだった。この非常識極まる日本のチートぶりに各国首脳部が頭を抱えた。勿論、これは監察軍が異世界で建造したスペースコロニー群をサイド3に送り込んだだけであるが、そんな裏事象など他国は知る由もなかった。
こうして第二次世界大戦が終結してやっと一息ついた西暦1950年代には、地球各国は日本領土となったサイド3のスペースコロニー群と、それを守るガンダムで出てくるような宇宙艦艇を中心とした日本宇宙軍に天空の高みから威圧されるようになった。まぁ実際には日本がこの宇宙軍で砲艦外交を仕掛けたわけではないが、それが存在しているという事実だけでも各国には強力なプレッシャーになっていた。
日本支部はこのようにチートを繰り返して他国を引き離していき、西暦1955年に大日本帝国は東京からスペースコロニー『天照』に遷都した。これが第一次宇宙遷都と呼ばれるもので、これが速やかに行われたのは一年戦争の被害を避ける為だった。それに日本列島は国土が狭くて資源がない上に、地震や津波などの天災が頻繁にあるので、国家を繁栄させるのに不向きだったからだ。
地球への愛着も何もあったものではないが、日本支部にとってはそんなものよりも国益の方がよっぽど大切だった。
こうして東京を含めた日本列島は過疎地域となっていくが、各国の大使館などは東京におかれたままで、スペースコロニーに他国の施設を設置することは防諜を理由に許可しなかった。
これは外交的にみると非常識な行動であったが、日本支部はスペースコロニーにかなりの技術を持ち込んでいたので外国人の出入りを認めて技術流出する羽目になるのを避けたかったし、ここまで来ると各国と協調路線をする必要など全くなかった。その為かつての大英帝国のような栄光ある孤立を問題なく実行できる状態、というよりも世界中を敵に回しても勝てる状況になっていた。
こうして半ば鎖国体制に入った大日本帝国であるが、後に地球各国が統合されて地球連邦政府が樹立すると、日本はその地球連邦と国交を結ぶことなく、サイド3にあったスペースコロニー群ごと地球圏から退去して火星に移動した。これが第二次宇宙遷都で、これによって日本は地球と完全に交流を立つことになる。尚この際にスペースコロニー群が空間跳躍して瞬時に火星に移動した事から、地球連邦は大日本帝国との技術力の格差に愕然とすることになる。
ちなみに監察軍が遷都先に火星を選んだのは、火星は木星と違って宇宙世紀の歴史ではそれほど重要でないからだ。日本支部のトリッパーたちは宇宙世紀を高みの見物を楽しみたいので、地球からある程度距離があって物語にあまり影響のない場所を自分たちの領域に選んだのだ。
さて、ここで一端話を西暦1950年代に戻すが、この当時の日本以外の国々は、異常としか言いようのない日本の爆発的発展に恐れおののいていた。
特に大戦で疲弊しきった欧州諸国はその傾向は強く、どう贔屓目に見ても対抗できる相手ではない日本に対して、彼らがその気になれば世界は日本のものになるのでは? と日本脅威論が巷で蔓延することになる。
そのような恐怖は欧州各国だけでなく、他の地域の各国も多かれ少なかれ持つようになり、その脅威に対抗するために各国をまとめるべきだという意見が盛んに交わされるようになる。これが後々の地球連邦成立に繋がっていく事になる。
実のところ、この地球各国の懸念は全くの的外れな物であった。というのも日本支部は次の宇宙世紀の動乱に備えて早めに宇宙進出していただけで地球各国に領土的野心などもっていなかった。それを知らず、日本に対抗する為に必死に宇宙開発を進めている各国の姿は滑稽ですらあった。
しかし、こうした国々によって西暦1999年に地球連邦政府が樹立されて、日本に大きな遅れをとりながらも何とか宇宙開発を軌道に乗せていった。
解説
■マスドライバー
日本支部としては軌道エレベーターでもよかったが、宇宙施設は地球圏離脱に際に爆破する予定であったからマスドライバーを使う事にした。勿論、マスドライバーを含めた宇宙港は機密保持の為に第二次宇宙遷都の時に爆破処理されている。
■サイド3
後のジオン公国が誕生する場所で、第一次宇宙遷都で日本がこの場所に遷都したのは後のジオン公国とのつながりを持つ為である。
■天照
大日本帝国の宇宙遷都で新たに首都になったスペースコロニー。第一次宇宙遷都の時に首都機能と皇居がここに移り、また国宝、美術品、文化財なども持ち出せるものはすべて天照などのスペースコロニーに移動させた。
■空間跳躍
日本のスペースコロニー群にはフォールドエンジン(マクロスF)が搭載されていたので、第二次宇宙遷都の時に火星までフォールドしている。
あとがき
西暦時代はこれで終わりです。流石にチートを繰り返すとこうなりますね。地球連邦樹立がちょっと強引過ぎたかもしれませんが、アメリカが滅んでソ連や欧州諸国が青息吐息の状態なのに日本があれだけチートをやっていれば警戒されない筈がありませんよね(笑)。
次回はとうとうファーストガンダムの宇宙世紀になります。ガンダム世界の黒歴史がまた1ページ。