16.霊子力(バスタード編)
ランス世界から引き上げた私たちはバスタードの世界に行くことにした。その時期は原作開始から約四百年前の1980年だ。この年代は大崩壊の28年前で、この時期からこの世界に潜り込むことにした。
ここで面倒だったのが戸籍だ。これまでの世界では戸籍はしっかりしていなかったが、この世界のこの時代は違う。しかも、戸籍がしっかりしているのにコンピュータを導入していないという中途半端な時期であるためにハッキングして戸籍を偽造するという手段も取れないから、本当に面倒でした。
この偽装工作は死神が完璧にやってくれたからよかったもののそうでなかったら断念していましたよ。
そんなわけで28年の時間を使って可能な限り文明を向上させた状態で、大崩壊に挑もうと思います。勿論、ある程度文明を向上させただけでは旧世界の崩壊は避けられないし、私も避けようと思ってはいない。
ただ優秀な科学者として実績を上げて、私たち自身が旧世界の科学をより発展させるつもりなんですよ。その狙いは勿論、霊子力(れいしりょく)を応用した科学技術と魔法科学技術を得る為ですね。
そこで、私は速やかに霊子力理論を公式発表した。原作では1996年にディータ・ダークスが発表していたが、それよりも16年も早くした。更に、莫大な資金を投入して霊子力の研究所を建てて次々に新技術を公表していった。
その予算は錬金(ゼロの使い魔)で金を大量に作って流した事で確保した。その内情を知る者がいれば反則だと言いたくなるほど容易く資金を確保できましたね。
こうして公表された新技術のその中でも、霊子動力炉は世界に驚愕を与えた。何しろ魂の力というオカルト的な力が当時最高のエネルギーであった原子力をも圧倒する凄まじいエネルギーを得られるのだ。当然ながら新エネルギーである霊子力に注目が集まっていった。
ちなみに霊子力というのは霊力とも呼ばれるエネルギーで、ようするに魂の力の事だ。その為、GS世界のオカルト技術と親和性が高い。というよりも使用するエネルギー源は同じで、霊力を利用したこの世界の魔法は、GS世界の中世魔法技術に通じるものがある。
実はGS世界の中世魔法技術は複雑な魔法陣を描いて呪文を唱えることで、霊子力(霊力)をコントロールするもので、これはバスタード世界の魔法と同じだから、その応用でこの世界の魔法の基礎を作り上げるのは簡単であった。
しかし、これは著しく才能に左右されるために魔法が使える人間は限られてしまう上に、その能力に個人差がありすぎるのが難点だ。これはGS世界の霊能力も才能に依存しているから仕方ない事であろう。元から科学の様に誰でも使えて、誰でも同じ結果が出せる代物ではないのだ。
この様な実績を上げて行くと、私とアイシャは「霊子工学の権威」とか「始まりの魔法使い」などと言われて一躍時の人になりました。
それにともないこの世界の科学は飛躍的発展を遂げることになったが、そうこうしている内にあっという間に2008年7月になった。
「派手だね」
と、呑気に感想を述べつつ、私は映像に映る激しい戦闘を眺めていた。
後に大破壊と呼ばれるアンスラサクスの暴走と、その後の天使軍団と悪魔軍団の激突。私はそれらを太陽系外で待機させている巡洋艦の中から観察していた。流石に大破壊は地球どころか太陽系にいる事すら危険すぎるから別の星系に移動したのだ。
通常ならば、ここまで距離が離れていると観察に支障が出るが、そこは事前に監視機器(ステルス式の監視衛星や各地に設置した観測機など)を配置しており、その情報を受信することで問題なく対処できた。
やや安全策にすぎないかと思いはしたものの、いくら幾多の世界を旅して力を付けた私達でも天使軍団や悪魔軍団の戦いに巻き込まれたくはない。流石に命がいくつあっても足りないからね。
臆病かもしれませんが、ダーク・シュナイダー(以後D・S)のような力は今の私達にはありません。
そのうち、バスタード世界の天使軍団なんか足元にも及ばない、あの破壊神ベヅァーに対抗しうる力を手に入れなくてはいけない事を考えれば情けないかもしれませんが、無理な物は無理ですね。勇気と蛮勇は別です。
この大破壊で40億人以上の人間が死んでいますが、そんな事は私達にはどうでもいい。とにかく今は情報収集を優先する。
そうして、天使軍団と悪魔軍団による予言戦争は終了したので、そろそろ動くとしましょう。
「なんじゃ、お前たちは!?」
その場にいた科学者たちは瞬間移動でいきなり現れた私たちに驚いていた。
「私の名はエリーゼ・ペルティーニです。そしてこっちが私の妹のアイシャ・ペルティーニよ」
「エリーゼ・ペルティーニに、アイシャ・ペルティーニじゃと!」
「確かにあの二人だ!」
その場の科学者たちが驚いていた。そりゃそうだろう。私たちは彼らの研究していた霊子力の権威だからね。彼らの研究はすべて私たちの発表した理論を元にしていると言えば、その凄さは分かるだろう。
当然、彼らは私たちの名ぐらいは知っている。おまけに私たちが美少女という容姿であったこともあって尚更認知度は高かった。要するに私たちの顔を知っている科学者は多かったのだ。
「貴方達ですね。あの化け物を作り出したのは?」
と、私は責め立てるように言う。
実のところアンスラサクスは某国の超生物兵器として開発されていた物で、その某国は優秀な科学者を集めてそれを開発させていたのだ。
ちなみに私達にもスカウトは来ていたが、さすがにアンスラサクスなんか作る気にならなかったから断っていた。
「わ、ワシらを処断するつもりか!」
自分たちの仕出かした事は理解しているのだろう。彼らは顔を青ざめていた。実際彼らの仕出かした事を考えれば生き残った人々に重罪人としてリンチにされても文句は言えないだろう。
最もバスタード世界で、人間が霊子力の研究をすれば神を怒らせると分かっていたのに霊子力理論を発表した私たちが言うのも何ですが(笑)。
「今更そんな事をしても仕方ないわ。これからの事を考えないといけないわ」
「これからの事じゃと?」
そう怪訝な顔をする彼ら。
「確かに地球のすべての国家は崩壊して人類社会も壊滅したわ。でも人類が滅亡したわけじゃない。貴方達は罪滅ぼしとしてこの荒廃してしまった世界の再建に力を注ぐべきです。生き残った人々の為にもね」
「確かにそうじゃな」
と、彼らは私の言葉に頷く。
原作でもエウロペアの十賢者がそうしていたから、そう言っても彼らが反発はしないのは原作知識で知っていた。当時の彼らはここでそれを拒むような人でなしではなかったのだ。あくまで当時はですが。
「ええ、ここまで荒廃してしまうと大変ですが、それでもやらねばならないのです」
こうして、私たちは世界の再建の為に大破壊をもたらした科学者たちの生き残りと協力することになりました。
解説
■戸籍の偽造
二次小説ではオリ主による戸籍の偽造が良くありますが、ある程度戸籍がしっかり管理されている世界の場合はこれが中々難しい。ここで戸籍情報がコンピュータ処理されていれば監察軍の超技術でハッキングという手段も使えるが、それ以前のアナログ方式だと逆に難しくなる。
■錬金
土の系統魔法(ゼロの使い魔)の一つで、かなり使い勝手がよく、二次小説ではオリ主が重宝している魔法である。