魔操兵戦争(ゴーレム・ウォー)は、D・Sが自らの失われた半身を取り戻すために世界制覇に乗り出したために発生した戦争で、D・Sがゴーレムを多用した事からそう名付けられた。
「ゆゆしき問題だな」
「さよう、D・Sの行動は我々の意図しないものだ」
D・Sは魔操兵や魔獣の大軍勢を引きつれて中央メタリオン大陸を席巻する大戦争を引き起こしており、世界の管理を行っている十二賢者にとってこれは放置できないものとなっていた。
「それに四王国を滅ぼされては封印の守りがなくなるではないか!」
「だからアンスラサクスの封印を地上の者たちに任せるのではなく、宇宙空間にバラバラに配置するべきだと言ったのよ!」
と、私は指摘しておいた。
この世界でもアンスラサクスの四つの封印は四つの王国に守護させていた。というよりも私たち十二賢者が王国を作らせたワケである。
実のところ、原作を知る私たちはそれに反対した。四王国は確かに封印を守ろうとはしていたが、如何せん実力が乏しく魔操兵戦争の時には軒並み壊滅状態になったし、その十五年後には四天王によって四王国がことごとく滅ぼされて封印が解放されて、アンスラサクスが復活してしまったからだ。
しかし、そもそもの切っ掛けはアンスラサクスの事をよく知っている筈のアビゲイルが、うっかりアンスラサクスの精神を解放していまい、その隙をつかれてアンスラサクスに操られてしまった事だから、アビゲイルの迂闊ぶりには困ったものですね。というかエウロペアの十賢者なんだからアンスラサクスの封印に手を出すなよな。
そんな理由もあって私と彼らでは封印を守り方には相違があった。
老人たちはアンスラサクスの封印が目が届く場所に配置したかったから原作の様に人間たちに守らせるつもりだったが、私は人間の手の届かない宇宙空間の各地(出来れば太陽系以外の場所に分散配置したかった)に隠しておきたかったのだ。
実のところKCGは宇宙戦艦でもあるから宇宙に出るぐらいは可能であるし、やろうと思えば不可能ではないのだ。
結局、私とアイシャ以外は目が届く地球で管理することに拘った為に却下されてしまったが、後でアンスラサクスが復活すれば彼らはそのことを後悔するだろう。
「今更そんな事を言っても仕方ないじゃろう。それよりこれからどうする?」
「こうなったら、あやつをいったん殺して、一時的に動きを封じ込めてみてはどうだ。丁度いい素材もあるしな」
「確かメタ=リカーナのラーズ王子だったな。四王家の中でも特に竜族の血が濃い者じゃ」
「そうじゃ、そやつに試作竜戦士を与えてみればどうじゃ?」
竜戦士。それはバスタード世界の霊子力を応用した科学技術の粋を凝らして作り上げた対光体用決戦兵器だ。十二賢者はその研究をしており、すでに試作品が完成していた。
「あの試作品竜戦士(プロトルシファー/プロト・ワン)なら問題ないかな。結局あれは本採用されなかったものだし、例え失っても惜しくないもの」
私たちも試作型の製作に関わったが、正直あれには熾天使並の光体とまともに戦えるだけの能力はない。それでもかなり強力ではあるのだが、如何せん目標となる性能に満たすことができなかった欠陥品だ。
原作でも強力だったとはいえ、たかだか魔操兵一体とD・S相手に相打ちになっている。これでは熾天使どころかそこいらの天使にも勝てないだろう。まぁあれは初期の試作品だから仕方ないか。今では原作で登場したウリエルと死闘を繰り広げた竜戦士を開発中だ。
この正式版竜戦士には私たちもかなり興味を持っている。何故なら人間が作り出した機械でありながら、あのウリエルと死闘を繰り広げるほどの戦闘能力を発揮していたからだ。その性能は鬼械神に近いものがあり、私としては本当に興味深い。というよりもそれが目当てでこの世界に来て、この老人たちに協力していた。
勿論、竜戦士は可能な限り原作の物よりも強くなるようにしている。弱いよりも強いほうがいいからね。といってもこの竜戦士は使用するリスクが大きすぎるから、他人に使わせるならばともかく自分で使う気は毛頭ない。某世界に存在する人間の為のデウスマキナのように使用者に負担をかけない物ではないからね。
私はチート能力を持ってはいてもあくまで人間でしかない。人外ではないからその辺りを度外視できない。
「では、試作型竜戦士をラーズ王子に与えてD・Sを討たせるということでいいな」
と、老人たちが聞いてきたので、私とアイシャもそれに同意した。
原作では竜戦士に殺されたD・Sはそのことにへそを曲げてアンスラサクス復活の時に竜戦士と融合するのを嫌がったから後々の事を考えるとそれは良くないかもしれない。とはいえ、ヨーコを含めた仲間たちを天使たちに殺されたD・Sはそのことに怒り結局は竜戦士との融合するようになるから、それでも問題ない筈だ。ならば特に変える必要はないだろう。
その後、ラーズ王子を筆頭とする五英雄が魔操兵戦争を終結に導いた。ラーズ王子は試作型竜戦士と融合してたった一撃で四千の魔操兵を撃破するなど奮戦したが、原作通りD・Sと相打ちになった。
この戦いで、D・Sは一端殺されてしまうが、事前に仕掛けておいた転生の秘術でとある赤子に転生するもののそのことがジオに知られてしまい、ジオによって彼は封印されてしまう事になる。
この辺りまでは、原作通りだ。そうなるとアンスラサクスの復活と天使軍団の降臨も原作通りのスケジュールになるだろう。
そろそろ身の振り方を考えないといけない。いくら私でも天使や悪魔とまともにやり合うつもりはないし、この世界の連中にそこまで義理立てしてやる必要などないからね。
解説
■鬼械神
パソコンゲーム『斬魔大聖デモンベイン』の世界で登場した機械じかけの神様。まがい物とはいえ邪神に迫る程の戦闘能力を有する。
■人間の為のデウスマキナ
覇道財閥が作り上げた鬼械神を模した自動人形(デモンベイン)の事。