20.魔女たちの帰還(GS美神編その二)
西暦1994年。私たちがこの世界から旅立ってから丁度700年が過ぎた。
この700年という時間は非常に長かった。かつては私たちを大いに煩わせた魔女狩りはもはや過去の産物でしかなくなっていた程である。その為、この世界で研究三昧の日々を送るというのもありだが、のんびりするのもいいだろう。
今は原作開始の四年位前ですが、私たちがわざわざこの世界に戻ってきたのは、以前この世界にいた時に未来からやって来た美神と横島が私たちを知っていたからだ。
そこで、この世界の原作にある程度関わる事にしたのだ。といっても私たちは原作の流れを大幅に変えるような事をするつもりはない。あくまで、メインキャラたちと知人になる程度にするつもりだ。それでどうなるかは分からないが、それはやってみれば分かるだろう。
さて、この世界は私たちが転生した世界である為、これまで訪れた下位世界の中でも特別な物だ。監察軍でもこの世界における優先権が私たちに認めれれているから他のトリッパーもこの世界には干渉してこない。まぁGS世界の並行世界は無限にあるからここ以外の場所を使えばいいという理由もあるのだが。
さて、久々に来たわけだから知人に会うとしよう。700年ぶりという事もあって知人といってもドクター・カオスしかいないけどね。そんなわけでドクター・カオスの屋敷に参ることにしました。というか原作のカオスは赤貧生活を送っていたが、この世界のカオスは普通の裕福でした。
そういえば、原作では記憶容量の問題から知識を失いまくってしまい、まともな発明ができなくなったから貧乏だったのだ。ならば記憶容量の問題が克服されて実力をちゃんと出せるならばそれなりの生活ができるのも道理だろう。
屋敷のメイドに私たちの名前を伝えると、カオスがすぐに反応して会う事ができた。正直なところ700年ぶりなので忘れられていたらどうしようと不安だったが、原作と違ってこの世界のカオスの頭はしっかりしていたようだ。とはいえ、以前カオスの記憶力の為に骨を折った事もあるから、これで忘れられたらたまりませんよ。
「700年ぶりね。ドクター・カオス」
「そうじゃな。それにしても懐かしいのう。お前たちはあの時のままじゃないか。その姿を見ていると若かりしあの頃を思い出すぞ」
私とアイシャはあえてカオスが見慣れていた魔女の衣装を身にまとっていた。そしてあの頃からまったく外見が変化していない私たちを見たカオスが懐かしく思うのは当然だろう。
しかし、私たちの外見が変わっていないのに、若い美男子だったカオスがすっかりと老人になってしまったのは、やはり年月を感じてしまう。思えば私たちも歳をとったものです。
「しかし、お前たちこの700年どうしておったのじゃ? まったく音沙汰なしじゃったから死んだかもしれん、と思っておったのじゃぞ」
「私たちは魔女狩りがうっとうしかったから、ほとぼりを冷ます為に700年ほど異世界に行っていたのよ」
「異世界じゃと!? そんな馬鹿な…。いや、お前たちならあり得ないとは言い切れないが、それにしても…」
カオスはそう言いつつも考え込んでいた。
GS世界の中世魔法技術をもってしても異界空間ならばともかく、異世界に行くなど絵空事でしかないので容易に信じられないが、その一方で、カオスは私たちの優秀さも知っているだけに戯言と切り捨てる事もできないようだ。
「まぁ信じるか信じないかはどうでもいいけど、私は700年前に行方不明になった状態だから現代では戸籍がないのよね。そこでカオスにその辺りを何とかしてほしいのよ」
中世ならばともかく、20世紀末では戸籍がないとマジで何もできない。例えば質屋で金や宝石を売ろうにも身分証明書がないと駄目だろうし、仕事もできないのだ(この世界で仕事に就くつもりもないけどね)。
とどめに職務質問なんかされたら最悪である。何しろ戸籍がないからどこの国にいても不法入国者扱いになってしまうから面倒極まりない。対策として、戸籍の偽造という方法もあるが、このGS世界ではカオスという伝手があるから、今回はカオスに頼もうと思っていた。
「うむ、確かにそれはできなくはないが、そうなると説明が面倒じゃな」
「その辺りは本当の事を言えばいいですよ」
つまり魔女狩りから逃れる為に異世界に逃げ延びた13世紀最高の白魔女姉妹が、700年ぶりにこの世界に帰還してきたとね。
異世界なんて眉唾者でしょうが、13世紀最高の白魔女という看板があるから当時の魔法技術に詳しくない者たちはもしかしたらと思うでしょう。実際13世紀のオカルト技術は現代よりも遥かに優れているからね。
「まぁそうするしかないが、そうなるとお前たちの周囲が何かと騒がしくなるぞ。お前たちはワシほどではないが欧州オカルト史ではそれなりに名が通っておるからな」
魔女狩りで死に絶えたと言ってもいい魔女が、それも13世紀というオカルト全盛期において最高の白魔女と呼ばれたエリーゼ・ペルティーニとアイシャ・ペルティーニが現代に現れたとなったらオカルト業界を揺るがす大ニュースとなるだろう。
「そうですね。有名人というのは面倒ですね」
「まぁ騒ぐ連中はしばらくしたら収まるじゃろうし、それまではこの屋敷にいてはどうじゃ?」
「そうですね。私たちも貴方といろいろと話しておきたい事もありますから、そうしましょう」
こうして、カオスがオカルト業界の伝手を使って私たちの戸籍を復活させる際に起きた騒動をやり過ごす為に、私たちはカオスの屋敷にしばらく滞在することになった。
そして二人の魔女の帰還はオカルト業界を驚愕させる事になった。勿論、オカルトGメンやGS協会などのオカルト業界の重鎮たちが私たちに会いに来て相手をしなくてはならなかったりして、何かと面倒な事になったのは言うまでもないだろう。