世の中にはロストテクノロジーと呼ばれる物がある。それはかつては存在していたが時代と共に失伝してしまった技術の事で、魔女狩りによって失われた欧州の中世魔法技術もこのロストテクノロジーに該当する。
しかし、当時の魔法技術を極めた魔女が現れた事で状況が変わり、オカルト業界ではかつての中世魔法技術の復活を望む声があがった。
「…というわけでして、お二人に弟子入りを希望する方々がいます」
面倒なことに私とアイシャがオカルト関係者からそう言われるのも日常茶飯事となっていた。オカルト趣味の連中なんかがこぞって私たちの弟子入りを希望しているし、それ以外にもイギリスに滞在していた現代の魔女である魔鈴めぐみも希望してきたぐらいだ。
オカルトや魔術が趣味の連中はともかく、曲がりなりにも現代の魔女として名を知られている魔鈴めぐみが弟子入りを熱望してきたのは、それだけ魔女に思い入れがあるのだろう。
この時点が魔鈴めぐみはわずかな文献から失われた魔法を復活させていたが、彼女が復活させる事ができたのは中世魔法技術の中でもほんの一部にすぎない。それだけ失われた知識や技術が多すぎたのだ。
正直、私たちの基準(13世紀の魔女の水準)からすれば、彼女でも魔女と名乗らせるのもおこがましい三流以下の見習い魔女でしかなかった。
「お断りします」
「しかし、魔法技術を復活させるにはお二人のご協力が必要なんです」
「そもそも中世魔法技術が失伝したのは、当時の人間たちが魔女狩りなんかやって、私たち魔女を狩りたてて貴重な知識を抹消していったからでしょう? その所為で私たちは異世界に逃げ込む羽目になったんですよ」
訪問者は失われた中世魔法技術が復活すれば人々の役に立つはずだと主張していたが、私から言わせれば呆れてものが言えない事だ。まぁ魔女狩りなんて現代の人間には歴史上の出来事に過ぎないだろうが、その魔女狩りに振り回されていた私たちにとっては自らの過去の事なのだ。その認識の差は大きい。
私から言わせれば魔法技術が失伝したのは当時の欧州の人々の愚行の所為だ。そいつらの子孫の為に彼らの愚行の尻拭いを何故私がしなければならないのだ。バカバカしくてやってられない。
「それに魔法薬や破魔札などのオカルトアイテムの製作に忙しいから、弟子の育成なんてできませんよ」
「そうですか。残念です」
私がきっぱり断るとオカルト関係者そう言って帰って行くが、これも日常茶飯事だ。ここ数年、私たちはそうした事を繰り返していた。
実のところ、別に中世魔法技術を復活させても私たちには損はないが、それをすればGS世界のオカルト業界に大きな影響を与えてしまうのは分かっている。そうなるとその余波で何が起こるか分からないから、少なくともアシュタロスの一件が終わるまでは原作ブレイクはやりたくないのだ。下手な事をして、滅亡エンドなんてごめんですからね。
しかし、いつまでも断り続けるのは面倒な事になりそうだが、弟子を取るのはもっと面倒だからアシュタロス編が終了したら、中世魔法技術に関する本を出版しようと思う。そうすれば弟子入り希望者が来ても「知りたきゃ出版している本を読めばいいでしょ」と、突っぱねる事ができるからね。
それと先ほども言ったが、私たちはこの世界に帰還してからはオカルトアイテムを制作販売している。これは別に除霊と違って免許とか必要ないからだ。中世では除霊に免許など必要なかったが、現代ではGS免許が必要で、無許可で除霊とかできない。
それならGS免許を取ればいいだろうと思わなくもないが、そうするとGS協会という組織に序属する事になってしまう。組織に所属するのは私としてはそれはあまりやりたくない事なのだ。ランス世界では聖魔教団に入ったが、正直言って組織という枠にはまるのは窮屈だったのだ。
それに原作ではGS免許を持つ主人公たちがオカルトGメンに徴兵されていたように、あの手の免許は非常時には厄介な義務も発生するからね。国家権力に無理やり協力させられるなんて御免です。それならば、GS免許を取得しない方が身軽でいいのだ。
そんなわけで、私たちは除霊活動はやっていない。例外は悪霊や妖怪などに襲われた時ぐらいだろう。さすがに降りかかる火の粉ははらわないといけないし、正当防衛だからこれだけは法に引っかからない。
それとこの時代のオカルト技術はどうも13世紀の水準からかなり低下しています。
破魔札とかもかなり威力が低く、あの当時に使われていた破魔札なんか私たちやカオスぐらいしか作れる者はいないという有様で、これがやたら高値で売れています。
カオスもこの取引で収入を得ていたが、カオス一人ではとてもじゃないが供給が需要に追い付かない状態だったらしく、私たちが作った破魔札もバカ売れしていますよ。
そういえば、原作で中世魔法技術が廃れたのは魔女狩りの所為もあるだろうが、カオスが物忘れをしてしまいそれらの知識を忘れてしまったというものであった。実際、カオスは13世紀には魔女たちの書物などをたくさん持っていたから中世魔法技術も知っていたのだ。彼がきちんとそれらの知識を後世に残そうとしていたら、今でも残っていたかもしれない。
いや、魔女狩りは当時の教会だけでなく当時の人々もやっていたからカオスはわざわざそれを保護しようとはしなかったのだろうね。下手に知識を伝えようとしていたら標的にされていたのは間違いないだろうし、それで魔女狩りがなくなった時には記憶力に問題がでて、その辺りの知識を忘れてしまったのだろう。
それならカオスの記憶が健全なこの世界なら中世魔法技術がある程度残っていても可笑しくないだろうと思うが、魔女狩りを恐れたカオスはそれらの書物を手放していたらしく、その後もわざわざ知識を伝えようとはしなかった為に、この世界でも原作と同じように技術が失伝していた。
ちなみにトリッパーである私たちはその活動から監察軍という組織に所属しているが、監察軍という組織はトリッパー支援組織という役割から、私たちの活動に大いに役に立つ。というよりも監察軍の協力がないと異世界間転移ができないから困るのだ。
このように私たちが監察軍に所属しているのは下位世界を渡り歩くのに便利だからだ。
さて、原作がはじまり原作通り優秀な霊能力者の肉体を奪う為にカオスが来日した。この世界のカオスは記憶容量の問題は何とかなっているが、老化だけはどうしようもない状態だった。
カオスの延命処置は不完全な物だったからそれも仕方ないだろう。むしろ千年持って上出来だと言えるね。何気に私たちよりも長生きしているし。そんなわけで若い肉体を得る為に美神令子の体を奪おうとしたが失敗してしまい、そのまま日本に滞在しているらしい。
さて、そろそろ時期的にいいだろうから、私たちも原作の舞台東京に向かうとしましょう。