二人の魔女   作:ADONIS+

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33.人造神

 私たちは原作に関わる事を避けて帝都東京に居座り続けたが、ループの終了地点である大十字九郎とアル・アジフがヨグ=ソトースの門を潜った事でその状況が変わった。

 

 ちなみに今回の大十字九郎は魔導探偵ではなく、ミスカトニック大学の学生でしかない。つまりまだループを終わらせる原作の九郎に至っていない。これはシャイニング・トラペゾヘドロンを呼び出していない事からも正しい筈だ。

 

 そうなると今回の大十字九郎はマスターテリオンに敗北して、過去のアリゾナに到着する。その後、九郎はアリゾナ州の荒野で野垂れ死にしていた覇道鋼造に成り代わって覇道財閥を作り上げる事になるが、その辺りはどうでもいい。

 

 私たちにとって重要なのは、ナイアルラトホテップが次の世界に移動した事だ。これまでは邪神に目を付けられる事を恐れて自重しなければいけなかったが、その枷が外れたのだ。その為、私たちはアーカムに戻り積極的に行動した。

 

 当時のアーカムはブラックロッジによって廃墟と化してしまい、その再建に追われていた。その為、アーカムシティは結構大変な状況であったが、アーカムにとって最大の脅威となっていたブラックロッジが壊滅したために治安は劇的に改善されており、覇道財閥の主導の元で急速に復興が進んでいた。

 

 そんな復興計画が進んでいるアーカムで、私たちはミスカトニック大学の面々と交流をもったりしながらも悠悠自適の生活をしていた。

 

 大十字九郎はお金がなくて生活に困窮していたが、私たちの場合はお金に不自由していないので働かずに遊んで暮らせる。といっても本当に遊んでいただけでなく、魔術や錬金術の学習もちゃんとしていましたよ。

 

 アーカムに来た時についでにドクター・ウェストとエルザのコンビとも接触したが、はっきり言って付き合いきれなかった。能力だけならドクター・カオスに匹敵すると思える程にあるが、人格に問題があり過ぎた。真正の○○○○だったからまともに会話するのも嫌になったほどです。なまじ能力があるから私たちをライバル視して絡んでくるようになったので、本当に鬱陶しかった。

 

 そう考えるとGS世界でドクター・カオスと仲良くなれたのは、彼の能力もあるが何より人格が良かったからだと再認識する羽目になりましたね。というか私は何気に友達が少ないですね。

 

 私たちは様々な下位世界を旅するトリッパーだから友達が作りにくいという事情もあるから仕方ないですね。それにいくら友達がいないといってもウェストと友達になる気は毛頭ありませんよ。

 

 そんなこんなでマイペースにのんびりと生活していたが、この世界の世界情勢に変化が出て来た。これまでの一連の出来事で破壊ロボやデモンベイン関連の技術が世界に流出してしまい、各国がそれらを積極的に軍事利用したからだ。

 

 こうして破壊ロボやデモンベイン関連の技術を応用した兵器が出没して、それが戦場に投入されるという場面も出て来た。量産されたドラム缶状の破壊ロボが戦場で活躍する風景は何とも言えない物だった。

 

 しかし、これは悪い事だけではない。ブラックロッジは壊滅したが、この世界には未だに脅威となりうる魔術結社や邪神崇拝集団が存在しており、それらは野放しにしていたら世界を滅ぼしかねない厄介な連中だった。各国がそれらと戦える戦力を持つことは世界の安定に寄与する事になった。

 

 実際、各国もそれらの対策はそれなりに力を入れていたので、これまでのような邪神ハンターによる草の根的な活動ではなく、軍隊などの国家機関による地球規模の安全保障体制が整う事になった。

 

 そんな世界だからその歴史も上位世界の史実とは大きく違っていて、日露戦争はあったが太平洋戦争は発生していなかったりしている。というのも覇道財閥の影響でアメリカの力は史実よりも大幅に上回っており、「アメリカと戦う?何それ馬鹿じゃないの(笑)」という状況だった事と、日本も極端な軍国主義に陥っておらず資源にそこまで困窮していなかった事が上げられる。それだけ覇道鋼造の影響は大きかったのだ。

 

 そういう事で太平洋戦争は回避されたものの、帝国主義の時代の終焉によって大日本帝国は穏便に日本国と国体を改める事になった。

 

 そんなこんなでループ終了地点から百年ほどこの世界ですごしていたが、そろそろ飽きて来たからこの世界から引き上げることにした。

 

 

 

リーラside

 

 監察軍のスペースコロニー内部にある無人の工場を二人のメイドが歩いていた。彼女たちの名はリーラとエーファ。それぞれエリーゼ・ペルティーニとアイシャ・ペルティーニに仕えるメイドたちだ。

 

 ここは監察軍の秘密研究所となっているスペースコロニーがある世界だ。監察軍では危険な研究は本部や支部が存在する世界ではなく、それらとは全く関係のない下位世界に研究施設を用意してそこで研究する事にしていた。

 

 それは核実験を本国から離れた離島でやったりするように、その危険性から万が一の事態になっても自分たちが被害を出さないようにする為だった。

 

 当然そこで研究される物は細菌兵器などの危険きわまりない代物や、オカルト関係でも特に危険性の高い物だったりする。

 

 つまりバイオハザード(生物災害)やオカルトハザード(魔術災害)が発生しかねないアレな場所で、そうした事態になればこのスペースコロニーの動力源となっている相転移エンジンを暴走させてこのスペースコロニーを自爆させるか、あるいは大量破壊兵器を撃ち込んで消滅させる手筈が整えられていた。

 

 リーラは工場の中で組み立てられている物を見上げる。それは巨人の骸という印象を与える代物だ。ズフィルード・クリスタル製のフレームだけで50mは超えているそれはリアル系ではなく、スーパー系であるのが一目瞭然であった。

 

 恐らく完成すればアニメに登場するスーパーロボットのような感じの機体になるであろうが、それは骨格に当たるフレームこそ組み込んでいたが、まだ二割程度しか装甲を取り付けていない状態であった。

 最も自動機械によって次々にフレームと同じくズフィルード・クリスタル製の装甲が取り付けられている為にそれも時間の問題だった。

 

「ああっ。ようやくエリーゼ様の華麗なるドレス(鬼械神)が完成するのですね」

 

 普段は冷静沈着である筈のリーラがそれを眺めながら感極まった声を上げた。彼女にとって敬愛するエリーゼの長年にわたる悲願が完成する時なのだ。

 

「リーラさん、そういえばこの機体の名前は決まっていますか?」

 

 エーファが同僚のリーラに話しかけた。エーファとリーラは同格の存在であったが、彼女にとってこの完璧すぎるリーラは尊敬する存在であり、自然と態度も目上の者に対するものになっていた。

 

「ええ、紹介します。こちらは鬼械神カーリーです」

 

 リーラが鋼の巨人の名を口にした瞬間、その場の空気が震えた。それは未だ稼働していないにも関わらず、まるで生きているかのような力を感じた。

 

「これ、生きているのですか?」

「いえ、まだ生まれていません。ですがこのカーリーはアイシャ様の鬼械神ドゥルガーと対をなす、エリーゼ様の究極の鎧にして、彼の破壊神ベヅァーを討つ至高の剣、そして人によって作られた不滅にして無敵の人造神です」

 

 リーラは今まさに誕生するカーリーを祝福するかのように高らかに宣言した。




解説

■オカルトハザード(魔術災害)
 デモンベイン系の魔術を初めとしてオカルト系の存在によって発生する災害の事。監察軍ではそれを警戒してその手の危険な研究は僻地の世界に用意したスペースコロニーでやらせている。

■ズフィルード・クリスタル
 ゼ・バルマリィ帝国(スーパーロボット大戦シリーズ)の機動兵器などに使用される自立・自覚型の金属細胞。「自己進化」「自己増殖」「自己進化」「情報解析・共有能力」という特徴を持つ。ドゥルガーとカーリーはこれらをフレーム材と装甲材に採用する事でメンテナンスフリーを実現している。

■カーリー
 エリーゼ専用の鬼械神(正確にはその紛い物)で、アイシャの鬼械神ドゥルガーと同系統の機体である。このドゥルガーとカーリーの由来は『MAZE☆爆熱時空』の聖甲機(ロムアーマー)ドゥルガーとカーリーである。
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