西暦2015年になり、とうとう第三使徒サキエルが日本に上陸してきた。15年ぶりに現れた使徒に戦略自衛隊が猛烈な攻撃を仕掛けるも全く歯が立たず、とうとう市街地にも関わらずN2兵器使用に踏み切った。この結果、街が吹き飛び付近のシェルターも壊滅した。
これで使徒殲滅が出来ていればまだよかったが、多少のダメージを与えたものの使徒は未だに健在という有様だった。この事態を受けて戦略自衛隊は指揮権を国連軍に移譲させた。
ここで使徒迎撃組織である特務機関ネルフに指揮権がいかなかったのは、事前に使徒迎撃の際に最初に日本の戦略自衛隊が使徒と戦い、戦自が手におえない場合は国連軍に指揮権を移譲させて、国連軍でも手におえなければネルフに移譲させるという取り決めが事前にされていたからだ。
この話が決まったのは覇道財閥のテコ入れによるものだった。国連軍はその母体はアメリカ軍が主力なのでアメリカの影響が大きくなる。そうなるとアメリカの影の支配者たる覇道財閥の意向を受け入れさせることが十分可能になるのだ。
また、ネルフの後ろ盾であるゼーレも国連軍では使徒に勝てないと判断したので、これをあっさりと受けいれたという事情もあった。勿論、彼らはこの判断を後で後悔する事になる。そう、国連軍にはあったのだ。使徒をものともしない強大な力を持つ存在が…。
「…というわけで使徒がもうすぐ自己修復を終えて動き出すわ。そこで今回はアイシャにやってもらうわ」
「わかったわ」
「今回は国連軍特務部隊デモンベインの初仕事だから頑張ってね」
と、私は出撃するアイシャに激励の言葉を伝えておいた。
ちなみに特務部隊デモンベインというのは、私たちがドゥルガーとカーリーを用いて使徒殲滅を実行する為にでっち上げた国連軍に所属する部隊だ。国連軍と言っても正規の部隊ではなく、三年という期間限定の試験部隊にして特務部隊という扱いだったが、この部隊自体は三ヶ月ほど前に発足していた。
その内情は独立愚連隊にして覇道の私兵部隊というもので、それをアメリカから派遣された国連軍特務部隊という形式を整えているにすぎなかった。
このような無茶な部隊が存在するのは、この部隊の費用(人件費などを含む)は国連やアメリカからは一切出ておらず、覇道財閥の資産から出ていたからだ。この辺りは使途不明金だらけで不正流用の疑いが濃厚なネルフとは大違いである。
アイシャside
その場には全長55mもの大きさを誇る赤い装甲に覆われた鋼の巨人が配置されていた。そのロボットの外見はデモンベインのような足部シールドや角とそこから伸びた尻尾のような物は存在せず、むしろアイオーンに近いものだった。
これこそがアイシャの鬼械神(デウス・マキナ)ドゥルガー。破壊神ベヅァーに対抗する為に建造されたスーパーロボットの一機だ。
アイシャはそのドゥルガーのコクピットに乗り込んで、メインコンピュータ(ネオ・トリス・メギストス)のOS〝ネクロノミコン・機械語写本″を起動させた。それによってネクロノミコン・機械語写本の精霊マーシャがコクピット内に出現した。
「アイシャ、お久しぶり」
「ええ、マーシャ早速で悪いけど出撃するわ。ディス・レヴの制御とシステムチェックをお願い」
「うん、分かった」
ディス・レヴ、霊子動力炉、正常稼働。
フレーム及び装甲材のズフィルード・クリスタル異常なし。
呪圏、分子強化、正常稼働。
「アイシャ、システムオールグリーンだよ」
「そう、なら虚数展開カタパルト作動! アイシャ・ペルティーニ、ドゥルガー、出ます!」
立体型魔法陣がドゥルガーを取り囲むように現れて、アイシャとマーシャが乗るドゥルガーを戦場に転送させた。
そして、ドゥルガーは第三使徒サキエルからある程度離れた場所に出現した。サキエルは巨大な魔法陣からいきなり現れたドゥルガーを警戒したのか、目から光線を撃って来た。
「無駄よ」
だが、それはドゥルガーが展開している呪圏によって弾かれた。
この呪圏とはバスタード世界における上位の天使と悪魔が常時展開している超多重結界だ。この凄まじい防御力によりそんなちゃちな攻撃は届かない。更に呪圏の他に分子強化によって機体そのものを分子レベルで強化しているから呪圏がなくてもこの程度の攻撃など全く通用しないのだ。
この分子強化というのは、『ドラゴンボール』の人造人間に使用されている高エネルギーを用いて分子レベルで肉体を強化する技術を発展させたものだ。原型が超サイヤ人とやり合える性能を持つ代物だけあって、今のドゥルガーには地球を破壊して余りあるような攻撃でも傷一つつかないのだ。
「遊びはしないわ。さっさと消えなさい」
ドゥルガーは右手に黒い球を出現させて、サキエルに突撃して、
「レムリア・インパクト!」
そして、ドゥルガーの右手に発生している球体をサキエルに叩きつけた。
「昇華!」
マーシャの言葉に無限熱量の球体は一気に拡大してサキエルを飲み込んだ。それによって凄まじい光が発せられた後には大きなクレーターのみが残されており、サキエルは欠片も残らず消滅していた。
ネルフside
ネルフは使徒が襲来してきたが、実はこの時準備万端とは言えない状況だった。というものゲンドウはサードチルドレン碇シンジを確保し損ねていたので、現在パイロットは重傷を負った綾波レイしかいなかったのだ。
「使徒襲来か。まったくこんな事になるのならあの時サードチルドレンの捜索を打ち切るべきではなかったな。碇」
冬月はため息をついた。
「仕方ない。今はレイに任せるしかないだろう」
と、ゲンドウは淡々と答えた。
ゲンドウがシンジを捨てた直後にシンジが行方不明になったが、ケンドウはその捜索を一か月も経たないうちに打ち切ってしまった。
ゲンドウからすればシンジなど予備にすぎずレイが本命であったのだが、レイではユイが目覚める可能性が極めて低いと最近判明したので慌ててシンジを再捜索したもののすでに手遅れで発見することはできなかったのだ。
「初号機が暴走さえすれば何とかなる」
その為、ゲンドウはレイに賭けるしかなかった。
そう、ゲンドウは思っていたが、事態は彼の想定を遥かに上回っていた。いきなり出現した巨大ロボットとそれによる使徒殲滅。これは彼のシナリオに存在しない事態だ。
「バカな。何だ。あれは…」
こんな事は想定すらしていなかった。
エヴァンゲリオンでなければ使徒に勝てない。それはゲンドウのいやネルフ全体の常識だった。その為、国連軍が指揮権を持っていてもすぐにネルフに指揮権を移譲する筈だった。彼にとって国連軍などこちらの準備が整うまでの時間を稼ぐだけのコマにすぎなかったのだ。
しかし、現実には国連軍による使徒殲滅という事態だ。ゲンドウと冬月はシナリオから著しく逸脱した結果に顔を強張らせた。
解説
■デモンベイン
原作で覇道財閥が建造した鬼械神の紛い物であるが、ブラック・ロッジどころか魔術や怪異も存在しないこの世界では当然ながら建造されることはなかった。しかし、その名はエリーゼたちの部隊名に使用された。
■マーシャ
元ネタはマーシャ・マクレラン(ウイッチズガーデン)で、彼女は原作で緋宮あやりと仲がいい幼女だったので原作繋がりで彼女を参考にした。アイシャのドゥルガーの制御を担当しているネクロノミコン・機械語写本の精霊。
■ドゥルガー
死神が進めた鬼械神計画によって建造された鬼械神の紛い物。見た目は赤いアイオーンに似たロボットという感じである。
■呪圏
バスタード世界の上位の天使や悪魔が常時展開している超多重結界。原作で紹介されている結界の効果は、集音、探知妨害、潜影、財宝探知、勝利、力場、直接攻撃回避、ブレス無効、罠発見、対病防御、対エナジードレイン、事前対応化、魔法耐性、常時回復、精神防御、界移動、反魔術、対パラライズ、嘘発見、対ガス・凝視、慣性制御、対植物防御、対毒防御、危険探知、対不死防御、失敗回避、支配、迷彩、減虫、対生物防御、等。
■分子強化
このSSでは、『ドラゴンボール』の戦士たちは気によって細胞レベルで肉体を強化する事で音速を軽く超える速度で格闘戦をしたり、百倍以上の重力に耐えたりしているのに対して、気を持たない人造人間は永久エネルギー炉などから得られたエネルギーを使って分子レベルで著しく強化をしていると設定しています。というか、そうでもしないと人間サイズの人造人間が超サイヤ人と戦えるわけがないです(汗)。
■レムリア・インパクト
元々はデモンベインに搭載されている近接昇華呪法で、無限熱量によって敵を殲滅する炎熱系究極魔術と言える性質から炎系の魔術を好むアイシャがドゥルガーに採用した。このレムリア・インパクトは破壊力が強すぎるようにみえるが、ドゥルガーは手加減を間違えるとあっさりと地球そのものを吹き飛ばしてしまいかねないので、むしろ被害を最低限度に抑えることができる安全な攻撃と言える。このため原作のレムリア・インパクトはナアカル・コードを送信しなければ使用できないようになっていたが、ドゥルガーの場合はその手のリミッターなどは搭載しておらず無条件に使用できるようにしている。