アメリカ合衆国は第二次世界大戦後に超大国として世界に君臨しており、セカンドインパクトの後もいち早く復興を遂げて、その覇権は揺らぐことはなかった。その原動力となったのが覇道財閥である。
その覇道財閥は南北アメリカとオセアニアを勢力圏にしており、欧州、アフリカ、中東を勢力圏としているゼーレと世界を二分する存在として敵対していた。
そんな覇道財閥の本拠地アーカムシティの覇道邸に、覇道総帥(一鉄)と国連軍特務部隊デモンベインのメンバーが集まっていた。
余談であるが、国連軍特務部隊デモンベインのメンバーは、
部隊長リーラ・シャルンホルスト特務大尉(30歳)
操縦士エリーゼ・ペルティーニ特務軍曹(25歳)
操縦士アイシャ・ペルティーニ特務軍曹(25歳)
経理 エーファ・ノイビル特務一等兵(25歳)
この四名で構成された部隊だった。
ここで巨大ロボットを運営しているのに整備班とかいないのか?と思う人も多いかもしれませんが、ドゥルガーとカーリーはメンテナンスフリーなので修理や整備の必要がない。この点、動かすだけでも多額の費用を必要とし、修理費用になると国が傾くネルフの決戦兵器とは大違いである。
ちなみにこの四人の年齢はあくまで戸籍上の年齢である。外見年齢20歳のリーラ以外は15歳ほどにしか見えないので、そのままで国連軍に所属して使徒と戦うのは拙い。そこで覇道財閥の伝手を使いアメリカ国籍を取得して2015年の時点で全員が実年齢より若く見える大人という形にすることにしたのだ。
勿論、この四人は大人どころかそこいらの100歳を超えた老人でも若者に見える程の超高齢者であるが、外見でそう見えないから、その辺りは気を付けていたのだ。
また、カーリーの管制をしている明乃(あけの)とドゥルガーの管制をしているマーシャは、外見年齢が幼すぎていくら鯖読んでも大人と言うには無理がありすぎた事と、鬼械神(デウス・マキナ)を動かす時しか使用しない専用AIのような存在であった為に戸籍を用意する必要もないので、隊員扱いになっていなかった。
「一鉄、国連議会はどうなったかしら?」
「はい。大まかにはエリーゼ様のシナリオ通りにネルフの特務権限の大幅な規制に成功しました」
「そうですか。それならネルフが特務権限で鬼械神の徴収や技術提供を要求する事はできないわね」
エリーゼにとってそれが一番嫌な事だった。まぁ仮に提供してもこの世界の技術レベルでは活用などできっこないが、それでも技術流出というのは好ましくない。そこでネルフの異様なまでに強い特務権限を規制させたのだ。
実は国連議会では国連軍特務部隊デモンベインが使徒殲滅に成功した為に国連軍を中心に反ネルフ派が勢いづいていた。
これはネルフがエヴァンゲリオンでなければ使徒に勝てないと言って無茶苦茶強引に馬鹿みたいに予算を取っていく癖に、機密と言って録に監査を受け入れず情報提供もしない。更にやたら強力な特務権限で他の組織に高圧的な態度を取る事が多く、少年兵を採用するなど、色々と問題行動をやっていたからだ。これで嫌われない筈がない。
国連内及び各国の反ネルフ派はデモンベインによる使徒殲滅ができた事で、これまでエヴァンゲリオンでなければ使徒に勝てないと主張したネルフを非難して、ネルフ不要論を主張した。更に第三使徒殲滅直後の国連議会でアメリカの国連大使が爆弾を落とした。それが作戦部長葛城ミサトが行った特務権限の乱用だ。
実は某作戦部長殿はネルフの特務権限で日常的に犯罪をもみ消していた。駐車違反、スピード違反、飲酒運転、人身事故、衝突事故、公共物破損に傷害を度々やっており、これらの結果、特務権限で手が出せない現地警察の真面目な警察官たちはネルフに反感を募らせていたのだ。
そんな現地警察官にアメリカの諜報員が事前に接触して、これらの不正行為の証拠と証人を確保していた。警官たちも最初はアメリカ政府の人間を警戒していたが、「ネルフ(某作戦部長)の特務権限の乱用をアメリカが問題視しており、これを正すために協力してほしい」と説得すると、真面目な警官ほど協力してくれたのだ。それだけ彼らもネルフ(作戦部長)に頭にきていたわけである。
そして、アメリカの国連大使はこのカードを国連軍による使徒殲滅という絶好のタイミングで切った。
ネルフの幹部が日常的にそんな事をしていることを知った各国大使たちは、幹部がそうなら他の職員の多くがそのような犯罪行為をしているのだろうと判断してネルフを犯罪集団として猛烈に非難したのだ。
勿論、これらの諜報員や国連大使の動きには覇道財閥(エリーゼ)の暗躍があったのは言うまでもない。
「これによって、ネルフは使徒との優先指揮権だけは確保したものの、予算の大幅な縮小と特務権限が縮小されることになりました」
ネルフの後ろ盾となっているゼーレにとって使徒殲滅は本来の目的ではないが、これからもネルフではなく国連軍が使徒殲滅をしていくというのは明らかに拙いので、ゼーレがこれだけは確保したのだ。逆に言うとそれ以外はどうにもならなかった。
「それは上々ね」
正直な話エリーゼとアイシャにとってこの世界の命運などあまり興味はない。元々介入したのだって、初めて作り出した世界があっさりと滅びてしまったのが面白くないからと言う理由であるし、使徒殲滅をやることにしたのは鬼械神の実戦テストがやりたかったという理由があったからだ。
「ネルフも頑張るね。でもシン(碇シンジ)がいないネルフでは使徒殲滅には支障が出るでしょうね」
原作でネルフが使徒との戦いを切り抜けたのは碇シンジの功績が大きいし、おまけに彼はサードインパクトの依代でもある。だからこそエリーゼは碇シンジがゲンドウに捨てられた直後に回収した。
現在では碇シンジは〝シン・シャルンホルスト″と名を変えて戸籍上はリーラの息子ということになっている(勿論アメリカ国籍を持つアメリカ人)。
「シンといえば彼は最近『裏死海文書』を使いこなしているようだね。思ったよりも魔術師として適正があったわね」
アイシャが思い出したように言う。
そう、私たちはシンを確保するついでに裏死海文書のマスターとして教育しておいたのだ。
これは私たちが既に魔導書と契約しており、裏死海文書を必要としていなかったというのもあるが、裏死海文書が使い勝手が悪かったという理由が大きかった。
そもそも裏死海文書は使徒の能力を魔術として再現して使用するという目的で私が執筆したものだ。
これに用いられた理論はデモンベイン世界の魔術理論だけでなく、スレイヤーズ世界で魔族から力を借りる黒魔術の理論も応用して実用化したが、残念なことに私たちのチート能力をもってしてもそれらの魔術は宇宙のタマゴの中の世界でしか使用できなかったのだ。つまりタマゴの外の下位世界ではまったくの役立たずというわけである。
私たちのチート能力が上手く働かなかったのは、この世界が真っ当な下位世界ではなく、宇宙のタマゴによって作られた人工宇宙である為に発生した不具合だと思われる。とはいえ、よく考えてみればエヴァ世界の使徒の能力を魔術として行使できる下位世界など存在しないのでこれは当たり前だろう。
そんなわけで、この宇宙のタマゴの中でしか役に立たない裏死海文書だが、だからといって捨てるわけにもいかないので、この世界の人間からマスターを見繕う事にしたのだが、シンが思ったよりも優秀だったのだ。
しかし、14歳であるシンがデモンベインに所属することはない。年齢から問題がありすぎるからね。戦争は大人の仕事で、少年兵の出番はありませんよ(笑)。
ゼーレside
暗い部屋の中で一人座っている碇ゲンドウ。そのゲンドウの他にも黒いモノリスが並んでいた。
「使徒再来か。唐突だな」
「十五年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく起こるものだ」
モノリスから音声が流れる。
「しかし、碇、第三使徒との戦いで君たちネルフは何をしていたのかね。ただ見ていただけではないか」
「さよう膨大な費用をつぎ込んだエヴァンゲリオンだというのに、我々の先行投資を無駄にしないでもらいたいな」
「君のネルフは役に立つのかね。そうでなければ無駄と同じだよ」
「おまけに先日の国連議会では君たちの尻拭いにさんざん苦労したぞ」
これは某作戦部長の特務権限乱用問題の一件である。確かにネルフ幹部の不始末だけにこれはネルフ総司令ゲンドウの管理責任が追及されるべき事である。これにはゲンドウも顔を引きつった。ゲンドウ自身それは知っていたが重要視せずに「問題ない」ですませていたが、その所為で手痛い目に合う事になった。
しかし、ゲンドウにも言い分はあった。そもそも裏死海文書の記述に拘る老人たちがあの葛城ミサトを作戦部長に推挙したのだ。これはゼーレの人選にも問題はあったが、そんな事を選民思想に染まったこの老人たちに言えるわけがないので、ゲンドウは老人たちの説教に耐えるしかなかった。
「ともかく、使徒殲滅の優先権だけは確保したので、次は何としてもネルフが実績を出すのだ!」
と、老人たちは散々ゲンドウに説教した後でそう締めくくった。
その後、ゲンドウが退出した後でもゼーレの話し合いは続いていた。
「しかし、あのロボットはあの覇道財閥が開発した物らしいな」
使徒殲滅の後で、国連軍は各国にある程度の情報公開をしていた。その中にはあのロボットが鬼械神(デウス・マキナ)ドゥルガーという名称である事や覇道財閥が開発したロボットである事も含まれていた。
「覇道財閥、それにあのロボット。これらは裏死海文書には一切書かれていない。とんでもないイレギュラーだよ」
覇道財閥はゼーレ結成以前から世界経済に君臨している存在であり、ゼーレにとって最大の仮想敵であった。最も裏死海文書にまったく記載されていなかったからそのうち潰れるだろうと思っていたが、このような番狂わせとなってしまった。
「しかし、我らとて裏死海文書のすべてを把握しているわけではないぞ」
「例の未解読部分か」
この世界ではゼーレの前身となる宗教団体が死海の洞窟で後に死海文書と呼ばれることになる文書群と、裏死海文書という本を発見した。その際に彼らはより重要な情報が書かれていた裏死海文書を隠し、この裏死海文書が預言書である事を知った彼らはゼーレを結成したのだ。
当然ながら彼らゼーレはこの裏死海文書をすべて解読しようとした。しかし、序文と第一章を除いて解読できなかったのだ。というのも裏死海文書の序文には『魔術師としての能力がない者は第一章以外を読んではならない。もし読めば災いが降りかかるであろう』と注意書きがされていたからだ。
当初ゼーレはそれを無視して第二章以降も解読しようとしたが、解読を行った者たちが次々に発狂して怪死していった。
その後も解読を試みたが少なくない犠牲者が出た事で、止む無くゼーレは第一章のみで解読を終わらせたのだった。
何故こうなったかというと、実はこの世界の裏死海文書はデモンベイン世界の世界観における最高位の魔導書だったからだ。第一章は当たり障りのない預言書もどきの内容に過ぎないが、第二章以降は外道の知識が詰め込まれていた。そんな物をただの学者が解読しようとすればこうなるのは当たり前である。
「こうなると、裏死海文書を何者かに奪われたのが痛い。おかげに未解読部分の解読は完全に不可能になってしまった」
「さよう。未だに見つかっていないからな」
エリーゼは一年前に裏死海文書を回収しておいた。その為、ゼーレの老人たちは奪われた裏死海文書を回収するために探し回ったが徒労に終わっている。
「いずれにしても次の使徒をネルフに殲滅させねばなるまい。その為に手を打っている」
「さよう。国連軍に指揮権を移譲してはいけない」
こうしてゼーレは次の使徒に備えて準備を進めていった。
ネルフside
「それで、あのロボットについて何か分かったのか?」
ネルフ幹部が集まった会議の場で当然ながらドゥルガーの事が話題となった。
「空間転移、使徒の攻撃を防いだバリア、そしてあの攻撃、MAGIも理論が分からないとのことです」
「ふむ、そうか」
「ただ、戦闘データを分析した結果、このロボットのエネルギー係数が無限を指しました」
「何だと!」
エネルギー係数無限。それは使徒のS2機関ですら不可能な事で、日本どころか地球中の電力をかき集めてもそんなエネルギーは計測されない。
「つまり、あのロボットにはS2機関すら凌駕する動力炉が搭載されているということか。馬鹿な。そんな事は例え小型核融合炉を実用化しても到底不可能だ!」
冬月が驚愕していた。
「しかし、データを確認するとそうとしか判断できません。それとあの攻撃ですが、使徒のA.T.フィールドを中和するのではなく圧倒的な攻撃力で使徒もろとも消滅させています。また例のバリアですがこれはA.T.フィードではなく全く別種のバリアとしか分かりません」
「つまり、さっぱりわからないという事か」
冬月がため息をこぼした。
「せめて情報を得られたら話は別ですが、現状では無理です」
「ねぇリツコ。それならこの機体を徴収すればいいじゃない」
と、ミサトがいいアイデアを思いついたとばかりに言った。
「ミサト、ネルフの特務権限は縮小されているからそんな事はできないわよ。第一そんな事をしたらどうなると思うの?」
「何って人類の為になって万々歳じゃないの」
と、本気で言うミサトにリツコは頭を抱えた。
これまでネルフはエヴァンゲリオンでなければ使徒に勝てないと散々主張して強権をふるって来たのだ。それなのに実際に使徒との戦いでは国連軍のロボットが使徒を殲滅してしまったのだ。おかげでネルフは各国から嘘つき呼ばわりされており、かなり拙い事になっていた。
そんな状況で使えるからとあのロボットを徴収しようとすれば、各国からどういう目で見られるか火を見るより明らかである。大体、今のネルフは特務権限を規制されており国連軍の機体を徴収などできない状況なのだ。これにはミサトも愚行が大いに影響していた。
「とにかく次はかならず我々が使徒殲滅をしなければならない。いいな」
と、ゲンドウの言葉にネルフ幹部たちは頷いた。
解説
■リーラ・シャルンホルスト
エリーゼに仕える人造人間のメイド。元々は名字がないただのリーラだったが、アメリカ国籍を取得する際に名字がないと拙いので、原作繋がりでこの世界ではリーラ・シャルンホルストという名前にしている。また外見年齢が四人の中で一番高いので対外的に特務大尉として部隊長に就任させられている。
■エーファ・ノイビル
アイシャに使える人造人間のメイド。彼女もリーラと同じで原作繋がりでノイビルという名字を名乗る事にした。階級は特務一等兵。
■明乃(あけの)
元ネタは雪村明乃(ウイッチズガーデン)で、雪村涼乃の妹だからエリーゼと容姿が似ている。エリーゼの鬼械神カーリーの管制をしているネクロノミコン・機械語写本の精霊。
■シン・シャルンホルスト
この世界の碇シンジの名前。エリーゼはサードインパクト阻止の為に鍵の人(キーパーソン)となるシンジを確保して、ついでに魔術師として教育していた。それと名前を変えているのはネルフから隠す為である。