二人の魔女   作:ADONIS+

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44.混乱時空

ルリside

 

『超時空世紀オーガス』の世界で、ホシノ・ルリ率いる三千世界監察軍特務基幹艦隊がベヅァーと交戦していた。この特務基幹艦隊とは何かというと、監察軍がベヅァーの足止めの為に用意した特殊艦隊であった。

 

 これが用意されたのは前回の第一次ベヅァー戦争で旧式の無人艦隊群がベヅァーの足止めにある程度の成果を上げた事が原因であった。

 

 当初はブリタニア帝国軍でベヅァーの足止めを行う事も検討されたが、その戦力を整える為に必要とされる予算はブリタニア帝国政府高官たちですら顔を引きつらせるほどの金額であった事から即座に却下された。

 

 勿論ブリタニア帝国の国力を持ってすればその気になれば不可能ではないものの、戦時でもない平時においてベヅァー復活に備えて足止め用と言うあまりにも後ろ向きな戦力の為に膨大な国費を費やす事はできない。

 

 こうした結果、低コストで必要とされる戦力を整える手段としてバイド艦隊が採用されたわけである。このバイド艦隊は第一次ベヅァー戦争で残存した無人艦隊の生き残りや、これまでブリタニア帝国軍の旧式艦艇などを取り込んだ上に、その増殖能力で膨大な戦力を整えていた。

 

 ルリはこのバイド艦隊をゼントラーディ軍を参考に、巨大な宇宙要塞1基と500万隻の宇宙艦隊で構成された基幹艦隊として編成し、その基幹艦隊を一千個以上用意するなどゼントラーディ軍並の物量を揃えていた。この一千個もの特務基幹艦隊をもってすればブリタニア帝国軍と正面から戦って撃破できるほどである。

 

 これは先ほどの平時から過剰なほどの軍備を整えることが出来ないという理由から、いくらブリタニア帝国軍であっても質が拮抗していたら物量で押しつぶされてしまうからだ。

 

 本来ならば国軍でもない監察軍がこのような軍備を有することは認められないが、では「帝国軍がその戦力を整えろ」と言われたら上記のように財政などの問題からそれはできない以上、それを黙認するしかなかった。

 

 そんな曰くつきのバイド艦隊は役割に従ってベヅァー出現の情報をキャッチするなり、虚無魔法(ゼロの使い魔)の世界扉(ワールド・ドア)を使ってこの世界に展開していた。

 

 通常ならば、この虚無魔法は『ゼロの使い魔』の魔法が使えない世界では使用不可能だし、そもそも世界扉(ワールド・ドア)では『ゼロの使い魔』の世界ならともかく他の原作の下位世界には移動できないが、ルリは転生特典やバイドの進化能力でそれらを克服していた。

 

 こうして、監察軍のユグドラシル・システムに頼る事なく進化させた世界扉(ワールド・ドア)で艦隊規模の異世界間転移を自由自在に行えるバイド艦隊はベヅァーに対する足止めとして有効に機能していた。

 

 当初は時間がないために少数の艦隊を送り込んでいただけだったが、次第にその数を増やして現在では巨大宇宙要塞一基と500万隻の宇宙艦隊で構成される基幹艦隊規模で戦いを仕掛けていた。

 

 特務基幹艦隊はベヅァーに対して強力な要塞砲や艦艇からの相転移砲、重力波砲、ビーム砲などを雨あられのように打ち込んでいく。

 

 更に虚無魔法の爆発(エクスプロージョン)をリーヴスラシルの能力と、基幹艦隊の物量を用いた賛美歌詠唱によって通常の数億倍にも増幅して発動させた。その威力は地球規模の惑星すら一撃で原子の塵に変える程であるが、ベヅァーにはそれすらも通用しなかった。

 

 確かにバイドで構成された特務基幹艦隊は強い。通常の人間相手ならば最強であっただろうが、ベヅァーにそんな物は通用しない。ベヅァーの腕の一振りで巨大要塞が撃破されて無数の艦艇が破壊された。

 

 このように特務基幹艦隊の攻撃が通用せずに一方的に撃破されていくが、その度に別の基幹艦隊を世界扉でこの世界に送り込んでひたすら物量戦をしかけていた。

 

「分かっていましたが、とんでもない化け物ですね」

 

 ルリにとってこの戦いはかなりきついものがあった。

 

 今のルリは人間と言うよりもバイドという集団がルリであった。ルリは膨大な数のバイドによって構成されるネットワークによってバイドたちを統制していて、いくら個々のバイドを潰されても体細胞の一つを破壊された程度にすぎない。

 

 つまり、すべてのバイドが失われない限り死ぬことはないが、それでも圧倒的な相手に対してひたすら耐えるだけの戦いというのは精神的に負担が大きかった。

 

 戦闘を開始して数時間。すでに百個もの特務基幹艦隊が壊滅しており、いくら容易に補充できると言っても一方的にやられて面白いはずがない。そんな中で友軍機が転移してきた。

 

「やっと真打が来ましたか」

 

 ルリはやっと現れたカーリーとドゥルガーを見て安堵した。

 

 

 

エリーゼside

 

 ベヅァーの姿を見た私はその姿に眉をひそめた。今のベヅァーはジュデッカの姿をしていたからだ。私たち監察軍が作り出した物をベヅァーにいいように利用されているようで不愉快だった。

 

 私たちの出現に合わせてバイド艦隊は撤退していくが、これは事前の打ち合わせ通りだ。バイド艦隊は足止めには使えても共闘には使えないのだ。

 

「姉様、ジュデッカから発生されているベヅァーのエネルギー値は前回よりも下回っています」

 

 明乃の報告は幸先がいい物で、スペックではカーリーはベヅァーを大きく上回っていることになるが、さりとてそれを真に受けて楽観するわけにもいかない。ベヅァーは前回と違ってジュデッカに取りついている為にその戦闘力が図りにくい。とはいえ、ここであれこれ考えていても仕方ない。とにかく一度戦ってみるしかないだろう。

 

「アイシャ、いくわよ!」

「ええ!」

 

 こうして私たちは待ちに待った戦いにカーリーとドゥルガーで挑んだ。

 

 

 

 カーリーは超光速でベヅァーに殴りかかり、ベヅァーはそれを四本ある腕の一つで受け止めると同時にドゥルガーの攻撃も別の腕で受け止めた。

 

 カーリーとドゥルガーは続けざまに拳や蹴りなどを交えて凄まじい速度で攻撃を仕掛けるが、ベヅァーは二機の猛攻を難なくさばいていく。これにはエリーゼも内心舌打ちした。彼女自身も楽に勝てる相手だとは思っていなかったが、二機がかりでも軽くあしらわれているとは想定よりも遥かに強い。

 

 この三機の超絶なエネルギーのぶつかりはその世界の時空すらも軋ませていくが、エリーゼやアイシャはそんな事を気にしていられる状況ではなかった。

 

「レムリア・インパクト!」

 

 そこにドゥルガーが右手に発生させた闇色の光球を叩きつけようとしたが、それによって生まれたスキを突かれてドゥルガーが蹴り飛ばされてしまった。

 

 大技というものは当てるのが難しいというのは常識で、それはレムリア・インパクトも例外ではない。これまでは圧倒的に格下ばかりを相手にしていたから問題にならなかったが、この戦いでは致命的だった。

 

「触れれば消滅必至の奥義」

 

 私は蹴り飛ばされたドゥルガーを気にせずにカーリーの右掌に破滅の術式を展開させた。このハイパーボリア・ゼロドライブならばレムリア・インパクトとは違ってスキが生まれにくいはずだ。

 

「「ハイパーボリア・ゼロドライブ!」」

「第一地獄、カイーナ!」

 

 私と明乃の声が重なりカーリーの奥義が発動すると同時に、カーリーの右手とベヅァーの右の上腕の獣の頭の様な腕がぶつかりあって、その衝撃によって時空が激しい振動を起こした。

 

「こ、これは時空震!」

「姉様、巻き込まれます!」

 

 この時に発生した時空震はベヅァーとカーリーを飲み込み、二機はその場から消失した。

 

 エリーゼは知る由もないが、この戦いで『超時空世紀オーガス』世界の時空は混乱して世界はあらゆる多次元世界の入り混じった混乱時空となってしまうのだった。




解説

■世界扉(ワールド・ドア)
『ゼロの使い魔』で異世界に移動する事すら可能とする虚無魔法であるが、あくまで『ゼロの使い魔』の世界に所属する世界でないと移動できないという制限があったが、ルリは三千世界監察軍の異世界間転移に適応して世界扉を進化させた。

■リーヴスラシル
 自身の生命力を消費して虚無の使い手の魔力を増幅させる能力。生身に人間がこの能力を多用すれば生命力が枯渇して死に至るが、バイドであるルリはその制限がない。

■賛美歌詠唱
『ゼロの使い魔』の世界で、聖堂騎士が得意とする合体魔法。普通は過酷な訓練と統率の果てに使用が可能になる物で、人数が多ければ多いほど難易度が上がるが、多数の肉体を一つの意志で統制しているルリの場合は容易に実行できる。

■混乱時空
『超時空世紀オーガス』の世界は主人公が使用した時空振動弾によって混乱時空になってしまうが、この世界ではエリーゼたちの戦いの余波で発生している。
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