二人の魔女   作:ADONIS+

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45.時空震

 時空震に巻き込まれたエリーゼは次の瞬間別の宇宙空間に移動していた。

 

「こ、ここは?」

「姉様、ここは『ギャラクシーエンジェル』の世界です」

「異世界間転移ですか、でもユグドラシル・システムを使っていないのに」

 

 先ほどまで『超時空世紀オーガス』の世界にいたのに『ギャラクシーエンジェル』の世界に移動してしまったとなると異世界間転移したとしか考えられないが、いくら時空震に巻き込まれたといっても別の下位世界に移動するなど本来ならありえない。

 

「推測ですが、ベヅァーが戦いに際に発生したエネルギーのぶつかり合いを利用して異世界間転移をしたと思われます」

「そうですか、そうなると異世界間のラインはないでしょうね」

 

 通常、異世界間転移を行う場合は行き来が可能なように異世界間で特殊な回線を用意して異世界間の繋がりを維持しなければならない。何しろ下位世界は一つの原作だけでも無限の並行世界を抱えており、その中で該当する世界を探すのは、広大な砂漠の中に紛れて込んだ一粒の砂を探すに等しい。それ故そうしないと二度と元の世界には戻れないのだ。

 

「やってくれましたね」

 

 ろくでもない状況にエリーゼは怒りを露わにした。現状は仲間とはぐれてしまい戻る事ができない。こうなると監察軍が私を捜索してくれるまで合流するのは不可能だろう。

 

 

 

「姉様!」

 

 明乃の声にエリーゼは気を取り直すが、急接近したベヅァーが殴りかかってきた。

 

「ぐうっ!」

 

 カーリーはそれを咄嗟に右腕で受け止めたが、右腕が破損してしまう。呪圏による防御結界や分子強化による強化をもろともせずにダメージを与えた。いや、カーリーだからこそそれだけで済んでいるのだ。

 

 続けてベヅァーの攻撃を受け止めていくが、そのたびにカーリーはダメージを蓄積していった。

 

「明乃、機体の修復を」

「はい、修復魔術をかけています」

 

 カーリーの装甲材とフレーム材質はズフィルード・クリスタルであるので自動修復されるが、更に修復魔術をかけることでより早く治すことができる。といってもベヅァーの猛攻の前では破損と修復のイタチごっこになってしまった。

 

 カーリーがベヅァーの攻撃を受け止めるたびに破損して、エリーゼがそれを修復させるという繰り返しであったが、エリーゼもこれには溜まらず逃げるようにベヅァーと距離を取った。

 

「何てパワーとスピードなの。このカーリーを完全に上回っているわ」

 

 エリーゼは戦慄した。これは明らかに可笑しかった。そもそもベヅァーは世界創造の反作用が蓄積されて出現するエネルギー体である為、その強さは蓄積されたエネルギー量に比例する。

 

 監察軍は多数のトリッパーによるエネルギー中和作用を用いて、ベヅァーのエネルギーを減少させて弱体化させる事に成功していた。これは前回の第一次ベヅァー戦争で無理やり出現したベヅァーが本来よりも著しく弱体化していた事からも間違いない。

 

 確かに第一次ベヅァー戦争直後こそトリッパーが激減して危なかったが、その後のトリッパー増員と彼らによるエネルギー中和によって今回のベヅァーは前回よりもエネルギーが少なくなっていた。その為、決して勝てない相手ではない筈なのに、実際に戦ってみるとベヅァーは前回よりも強くなっており、このカーリーですら歯が立たない有様だった。

 

 エリーゼたちは対ベヅァー兵器としてカーリーとドゥルガーを制作する際に前回のベヅァーの戦闘力を参考にそれを上回る性能を与えた。それは上記に理由からそれで十分だと判断したからだ。この計算違いはエリーゼにとっても痛手だったが、どうしてそうなったのか何となく想像がついた。

 

「ジュデッカを取り込んだからでしょうね」

 

 今回のベヅァーは上記の理由からそれ単独ではカーリーよりも強くないし、ジュデッカはスーパーロボットの技術が使用されているとはいえカーリーよりも劣るスペックでしかない。だが、ベヅァーが滅びの箱を媒介にしてジュデッカを取り込み、更に自らのエネルギーを用いてジュデッカを大幅に強化したとすればこの異常な強さにも説明がつく。

 

 滅びの箱はその仕組みからしてベヅァーとの魔術的なつながりを持つため、それを利用すればハッキングをするような感じで侵食する事も不可能ではないのだ。

 

「私たちはベヅァーに最高の依代を与えてしまったというわけね」

 

 何とも皮肉な現状にエリーゼは自嘲した。とはいえ、自嘲していても仕方ない。アイシャを初めとする仲間たちとはぐれて強大な敵と単独で戦わなくてはいけないという状況に変わりはないのだから。

 

「明乃、超絶破壊砲(ディモ=リション)を展開しなさい」

「はい、姉様」

 

 エリーゼたちはカーリーの両手の掌をベヅァーに向けて巨大な魔法陣を展開してエネルギーを溜める。格闘戦では勝ち目はないから必殺奥義でケリを付ける。いくらパワーで勝っていてもこいつをまともに食らえばただではすむまい。だが、こちらの動きに合わせてベヅァーもエネルギーの溜めに入った。そのエネルギーはこちらに匹敵するほどだ。

 

 負の無限力ディス・レヴを動力とするカーリーと、ジュデッカを取り込んだベヅァー。この二機が蓄積していくエネルギー総数はすさまじいものだった。

 

 その力のぶつかり合いとなると一体どれだけの被害が出るか予想もできないが、エリーゼはここで引くわけにはいかない。

 

 エリーゼはこれまで危険を避けて聖魔教団やエウロペアの十賢者などの味方ですら切り捨てて利益を追求してきた。それはどう見ても冷酷非情な行動だっただろう。

 

 しかし、エリーゼには下位世界を守るためにベヅァーに対抗しうる力を得なければならないという使命があった。だから目先の情を捨てて徹底的に合理主義を貫いた。

 

 それもすべてはベヅァーとの戦いに備える為だ。そして、その戦いの場において保身に走るわけにはいかない。もし、そんな事をすれば今までの行動をすべて否定することになってしまうのだから。

 

「超絶破壊砲、発射!」

 

 こちらが超絶破壊砲を発射するのと同時に、ベヅァーも強力な攻撃を放った。

 

 双方が放った超エネルギーがぶつかり合う。そのあまりに膨大なエネルギーの衝突によって周辺の時空がガラスのように崩壊してしまい、大規模な時空震が発生した。

 

「また時空震か!」

「姉様、また巻き込まれます!」

 

 時空震はまたしてもカーリーとベヅァーを巻き込んで二機ともこの世界から消失した。

 

 余談であるが、この時に発生した時空震(クロノ・クェイク)は当時この『ギャラクシーエンジェル』の世界において巨大星間文明であったEDEN文明を完全崩壊させる未曾有の大災害となってしまった。




解説

■ユグドラシル・システム
 三千世界監察軍が異世界間転移に使用している装置。これによって機械的に安定して各地の下位世界に行き来できる。

■超絶破壊砲(ディモ=リション)
 元々はバスタード世界で竜戦士ルシファーが両肩の竜頭を前方へ伸ばして、その口から発射する必殺技であったが、エリーゼはそれを改良してカーリーの両手によって展開される魔法陣から発射できるようにした。また、その威力もディス・レヴによって桁違いに強化されている。エリーゼが超サイヤ人4(ドラゴンボールGT)の十倍かめはめ波のかわりに用意した必殺技。

■時空震(クロノ・クェイク)
 ギャラクシーエンジェル世界で原作の約600年前に発生した大災害。これによって当時繁栄を極めていたEDEN文明は崩壊してしまった。原作とは異なり、この並行世界ではカーリーとベヅァーの戦いによって発生しています。
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