ベヅァーとの戦いが終わって一年が過ぎた。
あの時発生した大規模次元震に巻き込まれてしまったカーリーとドゥルガーは『魔法少女リリカルなのは』の世界の一部であるとある無人世界に漂着した。その為、エリーゼとアイシャはそこで住み付くことにした。というものこの世界は三千世界監察軍が存在しない並行世界であり、監察軍のユグドラシル・システムによるリンクしている下位世界ではない為に自力での帰還が不可能になったからだ。
こうなると監察軍の仲間が見つけてくれるのを気長に待つしかないし、宿敵であったベヅァーを倒した今となってはそこまで無理をして帰らなければならないわけでもなかった。
幸いにもエリーゼたちがたどり着いた無人世界はそれなりに居住環境は良かった。温暖で食べ物にも困らないし、家や服装などは系統魔法(ゼロの使い魔)の錬金でいくらでも調達できるのでどうとでもなる。
勿論、その生活は極めて高度な文明を誇るブリタニア帝国の水準から見ればとんでもない田舎暮らしに思えるが、文明レベルが低い下位世界で長く生活していたエリーゼたちは、最低限度の質さえ確保されていれば問題ないし、そうした田舎暮らしも慣れ親しんでいた。
この世界の時間はゆっくりと流れている。特に今日の様な天気のいい日は、エリーゼとアイシャはファンタジー小説とかに出てくる村娘の様な服装で、のんびりとひなたぼっこ(日光浴)を楽しんでいた。
千年以上も生き続けた偉大なる大魔女にしては意外な楽しみかもしれないが、この世界ではそれも悪くないものですね。
千年以上も修行や研究の日々ばかりを送っていた私たちにとって、こうしたのんびりした時間は本当に久しぶりであった。
案外こうした生活も悪くないもので、このまま仲間が見つけてくれなければ気楽な隠居生活を決め込むのも悪くない。
まあ、これまでいろいろと頑張り過ぎただけかもしれない。ベヅァーとの戦いに備えて準備を整える事ばかりしていたから、どこか精神的に余裕がなかったからね。こんな風な生活をしてみるとこれまでと違った考えも出て来るみたいです。
そうして、エリーゼとアイシャが穏やかな時間をまどろんでいると、不意に異世界間の転移反応を感知した。
エリーゼは気になって視線を向けてみると、上空に見慣れた空中都市が出現していた。それはまぎれもなくエリーゼの闘神都市ソドムであった。
「ソドム!」
『はい。エリーゼ様にアイシャ様、只今お迎えに参りました』
闘神都市ソドムの出現に驚くエリーゼの元に、ウィンドウ(空中モニター)が展開された。そのウィンドウには私のメイドであるリーラが映っていた。
「そう、貴女がここに来たという事は監察軍はちゃんと私たちを捜索してくれていたのですね」
『その通りです。ベヅァーとの戦いの後で、皆さんにお願いしてお二人の捜索が行われました。とはいえここまで時間がかかってしまい申し訳ありません』
エリーゼたちは知る由もないが、第二次ベヅァー戦争の時にベヅァー消滅と共にエリーゼたちが行方不明になったのを受けて死亡説もあったものの、ベヅァー討伐に成功している事から生存説が強かった事から監察軍はエリーゼたちの捜索を行っていた。
しかし、エリーゼたちが様々な下位世界を飛び越えながら戦っていた上に、それらの下位世界で未曾有の大災害が発生していた事からエリーゼたちの捜索が難航してしまい。二人を発見するのに時間がかかってしまった。
「ふふっ、どうやら私たちは隠居するのはまだ早すぎるみたいだね」
「そうだね。これからも頑張らないとね」
私たちは笑いあいながら、そして軽やかに闘神都市ソドムへと向かっていく。
こうして、二人の魔女の戦いは終わった。だが、トリッパー達にとって破壊神ベヅァーとの戦いはこれで終わりではなく、下位世界が存在し続ける以上常に付きまとう問題であった。
平和とは戦争と戦争の間にある期間に過ぎないという言葉があるように、彼女たちにとっては平和とは一時のものでしかないのかもしれないが、それでも彼女たちは歩み続けるのであった。
完
あとがき
これで、やっと『二人の魔女』が終わりました。様々な作品世界を渡りながら成長していく魔女たちという多重クロスSSは結構書くのが大変でしたが、こうして無事完結を迎えられてよかったです。エリーゼとアイシャの二人の魔女はその後も監察軍で活動することになりますが、それはまた別のお話です。それを書く機会があるかはADONISにもわかりません(爆)。