次回めちゃくちゃ頑張るから許して(懇願)
二人が仮眠室を出ると、扉の前に百合や 玲司、神凪が立っていた。
「あ、百合さん…その…」
サリエールは思わずくちごもり、俯いてしまった。
「…ま、文句の一つでも言ってやりたいとこだけど…」
そう言いながら百合はサリエールに近付いた。
「…」
「ブレイダを守るためなら許す!」
そう言いながら百合はサリエールの頭に手を置いた。
「百合さん…」
「いいのか?今まで集めたヤミノチカラを全部持って行かれたんだぞ?」
「ブレイダやサリエールの命が危なくなるくらいなら持ってかれた方がマシよ」
「百合ちゃん…」
「どんなものでも命に変えられないわ。例えそれがどれだけ大切なものでも、大切な人の命には変えられないもの」
「百合…分かった。また俺から上に上手く言っておく」
「ありがとう、玲司くん…さて、二人とも、時間空いてる?」
「?はい」
「そりゃ空いてますけど…」
「ちょうど良かった。玲司くん、神凪ちゃん、お願い」
「分かった。二人とも、付いてきてくれ」
「あのガディナって子にも勝てるかもしれないものが出来たの」
「?」
二人は顔を見合わせて目をぱちくりし、二人に言われるがまま着いて行った。
四人はエレベーターに乗り込んで三階の開発室に向かった。
部屋のテーブルの一つにアタッシュケースが置かれ、四人はそこに近付いた。
玲司はアタッシュケースに近付き、中身を取り出して二人に見せた。
「これは…」
「USBメモリ?」
「ああ。中にパワーアップのプログラムのデータが入っている」
「パワーアップ…と言いますと?」
「どう強くなるの?」
「ああ、これは無限に生物を進化させ、どこまでも強くなるプログラム…通称『インフィニティ・エクシーズプログラム』。このプログラム自体はずっと前からあったんだが、副作用が強すぎて人間には早すぎると結論が出て永久凍結されていたんだが…今こそ使う時だと思ってな。おそらくお前達なら大丈夫だ」
「大丈夫って言われても…その副作用は何なんですか?」
「そうだな…順を追って説明しよう。並の人間にブレイダやサリエールと同じ武装をさせ、そのプログラムを使うと、その人間が望んだような進化を遂げるようになっている。例えば、火や熱さに強くなりたいと思えばその通りに身体が変化し、思った通りに進化をする。だがその反面、水や冷たさに弱くなる、といったような副作用が出る」
「え、でもそれなら水に強くなりたいって思って進化すれば良いのでは?」
「ああ、それ自体は出来るが、身体がその矛盾の状態に絶えることが出来なくなり、身体ではなく精神や脳に異常を来たしてくる。そして、やがては廃人の様になり、ただ戦うことだけしか考えられなくなり、その頃には進化をし過ぎて人間とも生物とも言えない何かに変わってしまうんだ…」
「そんな…」
二人の表情は段々とこわばっていった。
「しかも、進化だから元に戻ることは理論上不可能だ…だが、お前達なら正しい判断をして進化を遂げる事が出来ると思う。どうだ、使ってみるか?」
二人は怪訝そうな顔で見合わせて考えた。
「…まあ、こんなオーバーテクノロジーを使えって言う方も大概だな、すまん」
そう言って玲司がメモリをアタッシュケースにしまおうとした途端、窓ガラスが割れ、変身したガディナが入ってきた。
「いいものみっけ!」
ガディナはそう言いながら颯爽と玲司の手からメモリを奪った。
「メモリが!」
「く…!ガディナ!」
「あら?誰かと思ったらサリエールちゃんじゃない。どう?今ここで見逃してくれたら今の待遇をもっと良くしてあげるけど?」
ガディナは上から見下しながらサリエールに言った。
「く…そんなのいらない!メモリを返して!」
「あ、そう。そんなにその子が大切なのね。じゃあ、こうしてあげる」
そう言った次の瞬間、ガディナは玲司の腹に膝蹴りを入れ、一瞬動きを止めて背中に肘打ちを入れて気絶させた。
「玲司!」
「玲司さん!」
「これでもまだ手加減をしてるのよ?たったの一%しか力を出してないわ」
「くっ…!」
ブレイダは恐怖で足が竦んで動くことが出来なくなっていた。
「じゃ、これは貰ってくね~。ばいばーい」
そう言ってガディナはメモリを持って割れた窓から飛んで行った。
「ブレイダ…大丈夫か?」
「サリエールちゃん…」
サリエールを見つめるブレイダの目からは光が消え、彼女の身体は恐怖で震えていた。
「…ブレイダ…」
「…怖い…」
サリエールはブレイダの肩に手を伸ばそうとするとブレイダの身体が一瞬ビクッと震え、サリエールも戸惑いながら手を引いた。
「…神凪さん、ブレイダをお願いします。私は玲司さんを医務室に連れていきます」
「え、ええ…」
サリエールは玲司をおぶり、開発室を出た。
ブレイダは何も言えないまま、膝から崩れ落ち、床に手をついた。
「ブレイダちゃん…大丈夫?」
「…」
神凪はため息をつき、弱々しい手で車椅子を動かしてブレイダの元に近付き、ブレイダの肩に両手を置いた。
「ブレイダ…聞いて。今まで貴方は凄いことをやって来たの。でも、きっと戦ってる中で怖いことも沢山あったと思う。けど、あなたはそれでも戦ってこれた。それはなんでだと思う?」
「…皆を守りたいと思った…から?」
「そうね、確かにそれもあるかもしれないわ。だけど、それとは少し違うのよ」
「…?」
「あなたは皆と普通に一緒にいて、一緒にいれるものだと心のどこかで思っていた。だけど、ヤミマジュウが出て、あのガディナって子にもやられて、貴方がこんなに怖がっているのは死ぬのが怖いんじゃない。本当に貴方が怖がっていたのは皆と一緒にいれなくなることよ」
「皆と一緒にいれなくなる…?」
「ええ…それを極端に怖がっていて、ブレイダは戦ってきた。橘ちゃんや相川ちゃんがいなくなったらどうしようとか、百合さんや私達がいなくなったらどうしようなんて考えた事ないでしょう?いや、考えるのを避けていた…違う?」
「…」
ブレイダは何も言い返せずに俯いた。
「その反応は図星ってところかしらね。それでも、いつかは私達や橘ちゃん達とも分かれる時がいつかは来る。サリエールちゃんともずっと一緒にいられるかは決まってる訳じゃないでしょう?」
「…サリエールちゃんとも…」
「だから、貴方が今考え方を改めるの。貴方に必要なのは勇気」
「勇気…」
「ええ。少し根性論みたいになってしまうけど、あなたには技術や力ではなく、勇気が必要よ。そうすればきっとあの子にも…」
「…うん。頑張ってみる。皆を守らなくちゃいけないから…!」
ブレイダは拳を握って身体の震えを一生懸命止め、力強く立ち上がった。
「ありがとう、神凪さん。私はもう…」
神凪はブレイダに向かって頷き、ブレイダも神凪に笑い返して部屋を出た。
「…立ち直りが早いところも、零くんそっくりだよ」
ブレイダはエレベーターで一階に降りてサリエールを走って追いかけた。
廊下を曲がるとサリエールが医務室を出てきたのを見つけ、サリエールも足音に気付いてブレイダを見つけた。
「ブレイダ…」
「サリエールちゃん、ごめん。次は私がサリエールちゃんを守る。絶対に」
「…分かった。頼りにしてるよ」
サリエールはそう言って微笑み。ブレイダの目にもいつの間に光が戻っていた。
次の日の早朝、ブレイダとサリエールは二人並んで歩き、ヤミマジュウの元に向かった。
どうやらエネルギー切れらしく、ヤミマジュウは疲れて眠っていた。
「これは願ってもないチャンスだな…寝ている隙にたたき出そう」
「うん、サリエールちゃん。行くよ!」
二人はデバイスを取り出して操作し、構えた。
「「トランス・オン!」」
そう言って二人は胸にデバイスを装着し、一瞬で変身を完了して武器を構えた。
そして、二人は前回と同じようにヤミマジュウの元に飛び立ち、背中の首のあたりまで近付いた。
朝早いのが幸いしたのかガディナもおらず、今度は邪魔されなさそうだ。
「よし…いくよ」
「ええ」
二人は息を合わせ、ヤミマジュウの背中を強く蹴飛ばして口からヤミノチカラを吐き出させた。
上手く口からヤミノチカラの水晶が噴出し、ヤミマジュウはどんどん小さくなっていき、小さな動物へと戻った。
サリエールはヤミノチカラを回収し、一段落かと思ったその時、想定していた最悪の事態が起きた。
「ちょぉーっと待ったぁーー!そのヤミノチカラ、貰うよ!」
ガディナが二人の元に勢いよく降り立ち、サリエールに近付いた。
「ほら、さっさとちょうだい」
そう言ってガディナはサリエールに手を差し出した。
しかし、サリエールは何も言わずヤミノチカラを後ろに隠した。
「?何やってるの?ほら、早く」
すると、ブレイダがガディナの間に割って入り、ガディナを睨みつけ、手を強く払い除けた。
「貴方にあげるものなんて何も無いわ。さっさと立ち去りなさい」
ブレイダは強くガディナを睨みつけ、静かに言った。
とりあえず今回はこんなところです。
キャラ紹介して終わります。
ガディナ/大森めぐみ
通称「究極進化生命体」。遠い並行世界からブレイダのいる世界に来たサリエールと同じヤミノチカラを使って変身をする。その力は零や玲司を凌ぎ、究極進化の名に相応しいほどの力を持っているが、その反面精神は小学生低学年程のものとなっているため、自分の気に食わないものや不快なものは自分の力でねじ伏せ、言うことを聞かせてきた。子供のような精神のため、理不尽な事が多く、本能的に行動することが多い。