間に合え平成!
四月になり、ブレイダ達は高校三年生へと進級した。
それに伴い、サリエールもブレイダ達のいる高校に編入した。
以前玲司と神凪の養子になったこともあり、姓は二階堂になっていた。
それでもまだ二人に慣れないらしく、終わった後はガードナーの仮眠室にいるようだったが、本人もいずれ二人のいる家に住まわせてもらうと言っていた。
クラスはサリエールも含め四人同じクラスになり、全員が安堵していた。
担任は昨年と同じ如月先生が受け持ち、クラスメイトの中にも何人か見慣れた顔がいた。
そして、一ヶ月近く経った頃である。
橘、相川、サリエールの三人が卒業後の進路を決めた中、ブレイダだけはまだ進路を書けていなかった。
「ブレっちどうすんの?今日提出期限でしょ?」
「もうガードナーに所属しているようなものなんだからガードナーで良いんじゃないのか?」
「ま、まあ、ブレイダの人生だから…戦いが終わった後の事でもいいと思うよ」
「うーん、それは分かってるんだけど…」
ブレイダは苦い顔をして頭を書きながら用紙とにらめっこしていた。
用紙の欄はどれも真っ白で、自分の名前しか書かれていなかった。
「どこかの大学に行きたいとかないの?」
「無いかなぁ」
「こんなことして働きたい!とかは?」
「それも特に…」
「やっぱりガードナー?」
「うーん…」
「…まあ、とりあえずガードナーだけでも書いとけばいいんじゃない?今も所属してるようなもんなんだし、ガードナーに入れば色んな仕事が出来るから、気になった部署に入ってそこで働けばいいんだからさ」
「そうだね。とりあえずガードナーだけでも書いとくよ」
そう言ってブレイダはガードナーの文字を書き記し、担任の如月に渡した。
「先生、お願いします」
「おう。なんとか間に合ったな」
そう言って如月はブレイダの用紙を受け取った。
「お、ブレイダもガードナーか。頑張れよ!応援してるぞ」
如月はとてもいい笑顔で笑ってブレイダを励ました。
「あ、ありがとうございます。あの、私もって…」
「ん?ああ、このクラスでブレイダと同じようにガードナーに進路希望をした生徒が三人いるんだ。ほら」
そう言って如月はあごで教室の後ろを指した。
振り向くと、その先には橘達がいた。
「本来は言っちゃいけないんだけどな。ま、同じ職場なら構わないだろ」
「咲ちゃん達もガードナー希望だったんだ…」
話を聞いていたらしい相川が白い歯を見せて笑った。
「ああ。あと、他のクラスにも一人いたな、ガードナー希望の女子が」
「?それは誰なんですか?」
「桐崎って言う女子生徒だ」
「桐崎…さん」
「ああ。一度受け持ったことがあるけど、結構良い奴だったな。特撮ヒーローが好きで、そこを気にしているけど、それも個性だしな」
「桐崎さんか…いつか会ってみたいな」
「ああ。見かけたら話してみるといい。噂になってる二人の戦士にも興味津々だそうだ」
「へぇー、ありがとうございます」
「おう。また会ったらよろしく伝えておいてな。確かに用紙も貰ったぞ」
「はい!」
そう言ってブレイダは橘達の元に戻ってきた。
「皆もガードナー希望だったの?」
「まあね。先に言ってちゃ驚かないと思ってね」
「充分驚いたよ…」
そう言うブレイダの顔もどこか嬉しそうだ。
「じゃあ、ブレイダも用紙を提出した事だし、帰るとしよう」
「うん。帰ろっか」
そう言ってブレイダは自分の鞄を持ち、四人は教室を出た。
「そう言えばさ、ブレっちのデバイスってさ、前の装着者がいたんでしょ?」
帰る道中、橘はブレイダのデバイスを見て言った。
「うん。そこからわたしに適応して色とかが変わっちゃったけどね」
「前の変身者ってどんな人だったんだろうな」
「じゃあ、今日これから聞いてみる?」
「お、それいいね。私も気になってたんだ」
「じゃあ、行ってみようか」
早速四人はガードナーの基地へと向かい、玲司と神凪の元へ向かった。
「すみません、玲司さん。わたしです。ブレイダです」
ブレイダ達四人は科学技術研究部室の扉をノックし、声をかけた。
『ああ、入ってもいいよ』
中から返事が聞こえ、四人は部室の中に入った。
中では玲司と神凪だけがポツンと座っており、他の部員は帰っているようだった。
「よう、ブレイダ。今日はどうしたんだ?」
「このデバイスの前の装着者の話が聞きたくて」
そう言ってブレイダは鞄からデバイスを出して見せた。
「…そうか。この時が来たか」
「え?」
「全てを話すには良い機会だし、全部話すわ。その前の装着者の事も含めてね。まあ、そこの空いてる席に適当に座って頂戴な」
「は、はい」
そう言って四人は鞄を机の下におき、椅子に腰掛けて二人の方を見た。
「まずはブレイダ達が気になっている前装着者だが…これは俺の大親友でもあり、百合の夫でもある柊零と言う人物だ」
そう言って玲司は携帯電話を取り出し、青く長い髪をした男の写真を見せた。
その横には百合と思わしき緑の短い髪の女性が満面の笑顔で並んで立っていた。
「俺も百合も、そして零も神凪も一度死んで、転生して生まれ変わった…神様としてな」
「転生して生まれ変わったって…ラノベの主人公みたいに?」
「ああ。その解釈で良い。俺は偶然転生出来たが…零と百合は事情が特殊でな」
「特殊…ってどういう事なんですか?」
「零と百合はゼノ細胞と呼ばれる細胞から生まれた半人造人間でな…十三歳になるとその年に死ぬことが運命付けられている。事故死、病死、あるいは自殺…日付や時間、原因は定まっていないが、十三歳のどこかで転生し、様々な異世界へとその身を投じ、その力で様々な悪から世界を救ってきた」
「救ってきたって…例えば何をして来たんですか?」
「そうだな…光の巨人、ゼノになってヤミマジュウよりも巨大な怪獣や宇宙人と戦ったり、戦闘用ロボットを装着して同じようなロボットと戦ったり、提督になって武装した少女達と共に戦ったり、あるいは歴史そのものに介入して世界を守ったりもしたな」
「歴史そのものに介入なんて出来るんですか?」
「ああ。信じてもらえてないかもしれないが、零は時空間を移動する能力を得て様々な世界に飛び、時空犯罪者を捕まえたりしている」
「へぇ~…何言ってるのかさっぱりわかんない!」
「まあ、こんな話を信じろって方が無理な話だ。証拠を見せてやりたい所だが、俺達は今は力をほとんど失い、残されているのは元の世界に帰るだけの力しか残っていない」
「力を失ったって…」
「あなた達が生まれた三年後の2004年にダーク・デイが起きたのは知っているよね?」
四人は同じタイミングで頷いた。
「あの日、零くんと百合ちゃんが時空犯罪者であるガディサイトを追い、ブレイダちゃんやあなた達がいる世界に来てしまった。そう、私達も外から見ていていつも通りどうにかなるんだと思っていた…けれど…」
神凪と玲司はその時のことを鮮明に語りだした。
~~十五年前~~
青い髪をなびかせ、零と呼ばれた男は百合と共に飛行しながら時空生命体ガディサイトを追っていた。
「待て!」
「!」
ガディサイトはなおも逃げ続け、空間の壁に穴を開けてその間を通って逃げた。
「くっ!待ちやがれ!」
零と百合もその穴を通ってガディサイトを追い、百合はその穴を修復してガディサイトを追った。
「ーー!!!」
ガディサイトは声にならない奇声を発しながら零に飛びついて身体を包み込み、零は慌てて顔を腕で覆った。
そして、恐る恐る目を開け、腕を下げると目の前には零と全く同じ姿をしたガディサイトがいた。
「…ふむ、中々いい身体だな。そしてとても強い…」
「な…!?」
「そんな…」
「だがそれだけではつまらん。まずはこの世界を滅ぼし、その後に貴様を倒してやろう…はぁっ!」
そう言うとガディサイトは身体から闇のオーラを出し、零の中にもあったヒカリノチカラをヤミノチカラに変え、辺りに様々な魔獣が無数に現れ、雄叫びをあげていた。
「さあどうした?俺を倒すのか?そんなことをしていたら人間共が滅ぶぞ?」
「…くそっ!」
零は玲司に渡されたデバイスを胸に装着して変身し、剣を握って街の方に向かった。
「零!く…!」
百合も仕方なく零に続いて変身し、銃を構えて魔物達と戦い始めた。
すると、瓦礫の中に一人倒れている小さな女の子を見つけ、零は抱きかかえた。
今にも死んでしまいそうなほどに弱っており、零は自分の中のほとんどのヒカリノチカラを女の子に入れ、変身が解けてしまった。
「零…あなたまさか…」
「…この子が最後の希望だ。百合、後は頼む。俺が戻るまで…この子を守り抜いてくれ」
そう言って零は自分のデバイスと抱きかかえていた女の子を百合に渡し、一人ガディサイトの元へと飛んで行った。
「零!くっ!」
百合は片手で女の子を抱き、片手で銃を乱射して周りの魔物を撃ち抜いて魔物を倒した。
「…!」
零はガディサイトの元に向かい、空中で対峙した。
自分の中の力が少ないのか、零は肩で息をしていた。
「俺も舐められたものだ…良いだろう、それが望みなら望み通りにしてやろう!」
「お前を倒して…さっさと帰らせてもらうぜ!はっ!」
二人は闇のオーラと光のオーラを放ち、強く激突した。
しかし、力が少ない零が自分と同等の力を持つ者に勝てるはずも無く、一方的に無惨に倒され、瀕死の状態になってしまった。
「時空を司る神…か。貴様の力はまだまだ使わせてもらおう…」
そう言ってガディサイトは落ちそうになった零の服を掴み、その力で瓦礫から自分の移動方法となる時空城を作り出した。
「そんな…」
百合は地上から零が倒される様子を見ていた。
「ーーーーッ!うわあああ!!!」
百合は無我夢中で飛び出し、ガディサイトに向かって接近しながら銃を乱射した。
「この女は…そうか、境界を司る女神…貴様も使わせてもらおう」
そう言うとガディサイトは零を放り投げ、百合の身体を包んで力をコピーして零の姿に戻り、零を片手で掴んだ。
「そ…んな…」
「ふ…そのガキもろとも死に絶えるがいい」
百合はその言葉を聞きながら変身が解除され、翼を失った女神は堕天していき、ただの人間になってしまった。
「…ッ!」
最後に力を絞り出し、少し浮いて衝撃を和らげて着地したが、もう変身は出来なくなり、完全に力を失った。
そうしている内に人々が闇に飲まれ、どんどん消えていった。
腕の中にいた女の子も泣きだし、百合にはただ謝ることしか出来なかった。
「ごめんなさい…ごめんなさい…あなたのお父さんもお母さんも…守れなかった…」
そう言う百合の目からも大粒の涙が落ち、その場にしゃがみ込んでしまった。
すると、女の子のスカートのポケットに紙が入っているのに気付き、百合はその紙を取り出した。
その紙には「ブレイダ」とだけ書かれていた。
「…ブレイダ…ブレイダちゃんね。分かった。私は絶対にブレイダを守り抜く。だから…」
百合はそう言って立ち上がり、その場から逃げるように走り出した。
すると、零のピンチに駆けつけていたのか、玲司と神凪も人々の避難を手伝っていた。
「百合!」
「百合ちゃん!」
「玲司くん!神凪ちゃん!」
二人も百合に気付き、百合の方を向いた。
「…お前、その子とそのデバイスは…」
「…ごめん」
「く…分かった…!百合と神凪は皆を避難させててくれ!俺もやれる事をやってやる!」
「玲司くん!待って!」
「玲司!」
神凪は叫んだからか激しく咳き込んだが、玲司は気にせずガディサイトの元へ飛んだ。
「お前が…ガディサイトか!」
「ああ。だから何だ?…そうか、君も神様なのか。しかも最高神…いいじゃないか!」
「うおおおおおお!」
玲司は叫びながらガディサイトに殴りかかったがガディサイトは上体を反らして攻撃を避け、一瞬の内に玲司の後ろに回り込んだ。
「スピードならばこの身体の方が上だ」
そう言ってガディサイトは玲司とその力をも取り込んだ。
「ふふ…こりゃあいい。力がどんどん溢れてくる…」
「くそッ…!」
「じゃあね…もう神にもなりきれない君にはもう用はない」
玲司もゆっくり落ちていき、最後の最後に少しだけ浮いて着地し、百合達の元に向かった。
「玲司くん!」
「すまん…百合…零を…取り戻せなかった…」
玲司は倒れそうになったところを百合が慌てて支えた。
「そんな…零…」
百合、神凪、玲司は灰色の空の下、ガディサイトの方を見上げていた。
「哀れな人類共よ…十五年猶予をやろう。その間に我を倒せる強力な武器でも兵器でも作っておくんだな…」
そう言ってガディサイトは零を掴んだまま時空城に乗り込み、空間に穴を開けて時空城ごと通り、闇と共に消えてしまった。
~~現在~~
「…これが、ダーク・デイの真実…って訳。ごめんなさい…ブレイダちゃん」
「そんな…わたしのお父さんとお母さんは…」
ブレイダは肩を震わせ、涙を流していた。
それを見兼ねて隣に座っていた相川がブレイダの背中をさすってやった。
「…すまない…」
「私達はブレイダちゃんの家族を守れなかった…その事でブレイダちゃんに憎まれても仕方ないわ…」
「ブレイダ…」
「ブレっち…」
「…ごめん、ブレイダ…」
「…ううん、サリエールちゃんも、玲司さんも百合さんも謝る事は無いよ…皆必死になって皆を守ろうとしてたのは分かったから」
「ブレイダ…」
サリエールはブレイダを見つめてやる事しか出来なかった。
「…とにかく、今年にガディサイトが襲ってくる。それまでに最終調整をしておかなければならない。ガディナも倒さなくてはならないしな…皆、今日はもう帰って休みな…」
「…」
ブレイダは鞄を持って一人部室を出た。
その背中は悲しみに覆われていた。
「ブレイダっ…!」
サリエールは慌ててブレイダを追いかけた。
「ブレイダ、待って!その…」
「…サリエールちゃん」
「その…なんて言うか…」
「…いいよ、もうずっと前の事だし、サリエールちゃんは関係ないよ」
「関係あるよ!大事な友達のことを放っておけないよ!」
「サリエールちゃん…」
「貴方の悲しみは分かってあげられないけど…今だけは全力で泣いて良いよ」
そう言ってサリエールはブレイダを強く抱きしめた。
「…」
ブレイダは大声をあげて、赤ん坊の様に泣き出した。
サリエールはただ抱きしめてやる事しか出来なかった。
今回はここまでです!
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間に合わんかった!!!!!
さらば平成!