「ブレイダ…」
「…」
両親の遺体をブライトサークルに乗せ、先程まで自分を抱きしめていた四本の腕を抱きかかえてブレイダはブライトサークルに乗り、基地に向かっていた。
「あっ…」
サリエールもブレイダを追って基地に向かった。
「…」
基地にいた零達も口を開くことはなかった。
百合と神凪は二人に声をかけようとしたが、零と玲司はそれを制し、何も言わずに首を振った。
「…ごめん…一人にさせて」
そう言ってブレイダはコアクリスタルを机に置いて帰路に着いた。
「ブレイダ…ごめん…。すみません、私も…一人にさせてください…」
サリエールもコアクリスタルを机に置き、基地の休憩室に行った。
「…」
「…誰が悪いかとか、そんなのは今はよそう。俺達までバラバラになれば本当にお終いだ」
玲司が口を開き、その言葉に一同は頷いた。
「…今日は帰ろうか…」
「…ええ」
「はい…」
零達もそれぞれの帰路についた。
次の日、ブレイダとサリエールはベッドから出ようとしなかった。
「…ブレイダ…」
百合から顔を背けたまま、ブレイダは部屋の中で布団を被っていた。
「…朝ごはん、置いておくから…好きな時に食べてね」
そう言って百合は扉を閉めた。
その後に、玄関の扉を開ける音が聞こえ、足音が遠ざかっていくと共に扉が閉まる音が聞こえ、辺りには暗闇が訪れた。
「…ごめん。百合さん…わたし、今どうしていいか分からないの…」
「二人はどうした?」
「さあ?二人仲良く風邪でもひいたんじゃない?」
通学路を歩きながら橘と相川はいつもの調子で話していた。
「重い病気じゃないと良いが…」
「まあまあ、帰りにお見舞いに行こうよ。プリンか何か買ってさ」
「そうだな。早く元気になって欲しいしな」
そう言って二人は学校の教室の中へと入っていった。
「おはようございます、如月先生」
「おっはー!」
「おう、おはよう、二人とも。そうだ、柊と二階堂について何か知らないか?」
「ブレっちとサリっちの事?」
「いえ…私達も特には…」
「そうか…ならいいんだ。悪いな、呼び止めて」
「いえ…何かあったんですか?」
「それが、二人の親御さんからしばらくの間休むって連絡が来たんだ。理由も言ってくれないから、心配になってな」
「そういう事でしたか…分かりました。今日お見舞いに行くんで、休む理由も聞いてきます」
「おう。二人によろしく言っといてくれ。何か力になれるなら俺も出来ることはするからよ」
「ありがとう如月せんせー!」
「おう!何か力になれることがあれば言ってくれ!」
そう言って如月は笑顔で職員室へと向かっていった。
「私らも私らでやれることやんないとね。二人もきっと頑張ってるしさ」
「そうだな。今やれることをやらないと」
そう言って二人は教室に入り、それぞれの机に鞄を置いて席に着いた。
そして、学校が終わり、二人はコンビニに寄ってデザートコーナーを物色していた。
「どれがいいかな~」
「ふむ…これなんかどうだ?」
そう言って橘は一つのプリンを手に取った。
「じゃ、私もそれを持ってきますかね」
相川も同じプリンを取ってレジに持って行った。
「ブレっち~?」
相川はブレイダの元へ、橘は相川の元へと向かい、それぞれの部屋へと入った。
「あれ、鍵が空いてる…」
相川はドアノブを回し、部屋の中へと入った。
テーブルの上には手付かずの朝食がおかれ、どの部屋にも電気が灯っていなかった。
「ブレっち~、出ておいで~」
相川はブレイダがいる部屋の扉を開け、暗闇の中に一筋の光を差し込ませた。
「…ああ、翔子ちゃん…ごめん、今だけは一人にさせて」
「おや、珍しい事もあるんだね。でもさせない」
そう言って橘は暗い部屋の中に進み、ブレイダがいるベッドに腰掛けた。
「…なんで…」
「なんでってそりゃあわけもなく休んだら心配になるでしょうよ。それで?今度は一体何をやった訳?」
「…言いたくない…」
「あっそう。じゃあ言ってくれるまで帰らないわ」
「…」
相川はビニール袋からプリンとスプーンを取り出し、蓋を開けてビニール袋の中に放り込んだ。
「ブレっち、ちょっと顔出しな」
そう言って相川はブレイダの方に呼びかけた。
「…?」
ブレイダはおそるおそる布団から顔を出し、相川の方を向いた。
それと同時に相川はプリンが乗ったスプーンをブレイダの口の中に入れた。
「…プリン…?凄く美味しい…」
「そ。多分あんたの事だから何も食べてないんでしょ?それに、最近甘いものも食べてなかったからさ、買ってきたんだ」
ブレイダの目の前には、笑顔でプリンをすくう制服の相川がいた。
「…正直、ブレっちやサリっちが何をして、どんな悲しいことや苦しい事があったかなんて私達には分かんない」
「翔子ちゃん…」
「でも…全部は分かってあげられなくても、支えてあげることは私達にしか出来ないと思うんだ。伊達に二年付き合ってないしね」
「…ありがとう…」
少しだけブレイダに笑顔が戻った。
「礼なんて良いよ。力になりたいから来たってだけの、私らのわがままだから」
「…」
「サリっちみたいに、一緒にヤミマジュウと戦うことも出来ないし、零さんや百合さん達みたいに後ろからバックアップする事も出来ないけどさ。ブレっちが辛い時や苦しい時、悲しい時は呼んでくれればいつだって寄り添うよ。愚痴だって、ブレっちが嫌という程聞く。私はいつだってブレっちの味方だよ、もちろん咲も。何もない時だって遊びに行くし、一緒に遊びたいんだ」
「どうして…」
「ん?」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「そんなの言うまでもないじゃん。私達、友達でしょ?」
その言葉を聞いて、ブレイダははっとすると同時に涙が溢れ出した。
「翔子ちゃぁぁん…」
泣きながらブレイダは相川に抱きついた。
「よしよし。いっぱい泣きな」
そう言って相川はブレイダを抱きしめ、頭を撫でた。
「プリン食べる?」
「…うん。ありがとう」
そう言ってブレイダは相川からプリンを受け取った。
「…いつもありがとうね、翔子ちゃん」
「ん?どしたの急に」
「思えばさ、私が高校に入って初めて声をかけてくれたのは翔子ちゃんだったよね」
「そうだったね。まあ、あの時は私も一人も友達がいなくってさ。友達を作ろうと必死だったんだ」
「そうだったんだね」
「うん。中学校の時の友達は、こんな危ないとこいられない!って言って皆離れちゃったからさ…凄く寂しかったんだ」
「翔子ちゃん…」
「それで、高校入ったら絶対友達作る!って決めたんだ。んで、入ってみたらブレっちがいた。綺麗な髪色をしてて話しかけたら…」
「咲ちゃんも一緒に話しかけて来たんだっけ。あの時は笑っちゃったな」
「そうそう!あん時三人でめっちゃ笑ったんだよね!」
「ふふふ。翔子ちゃんも咲ちゃんもぎこちなくってさ。皆どう話していいかもわかんなくて…全員一斉に黙っちゃったもんね」
「あったあった!それで全員吹き出してさ~!本当に笑ったなぁ」
「それがあの時無かったら、こんな風に関わり合う事もなかったんだね」
「だね~。いやぁ…こっちこそ、ありがとうブレっち。いつも守ってくれて」
そう言って相川はニッと笑った。
「翔子ちゃん…」
それに釣られてブレイダも少しだけ笑った。
「さてと、白雪姫の目も覚まさせたところだし、私は行きますかね」
相川はそう言いながら立ち上がって伸びをした。
「あ、そうだ。ブレっち」
「?」
「ゆっくり落ち着いてからでいいから、学校一緒に行こうね。もうすぐテストもあるし、サリっちとも一緒に勉強会しようよ」
「…うん!」
ブレイダにはまたいつもの明るい笑顔が戻った。
「お父さんもお母さんも本当にいなくなっちゃったけど…翔子ちゃんも、咲ちゃんも、サリエールちゃんも…皆がいるから大丈夫。明日からは学校行くよ」
「…そっかそっか!よかった!じゃあ、また明日!」
「うん!また明日!」
そう言ってブレイダは玄関から相川を見送り、相川もブレイダに手を振りながらマンションから出た。
「もしもし?そっちはどう?」
『ああ、こちらも何とか元気を取り戻してくれた』
「よかったよかった。それじゃ、また明日ね~」
『ああ。また明日』
そう言って相川は電話を切り、鞄の中にスマホをしまって帰路についた。
「また明日…ね」
相川は落ちて行く夕陽を眺めながら呟いた。
「お母さん、明日に会おうね。それまで泣かないから」
相川はそう呟いて家に向かって走り出した。
という訳で今回はここまでです。
思えば、僕も友達や仲間がいるから今こうやって生きているんですねぇ。
いつもありがとな!…なんて、こんな所でお礼を言ってみたり。
ではまた次回でお会いしましょう!