滑り込みィ!
…寒いなぁ」
朝早く、ブレイダは寒さで目を覚まし、部屋のカーテンを開けた。
外はまだ暗く、デバイスの画面に映された時刻はまだ朝の五時半を表示していた。
ブレイダは私服に着替え、リビングに出た。
リビングはまだ暗く、百合もまだベッドで寝ている。
「うぅ~寒っ…」
すると、相川から着信がかかり、ブレイダはその電話に出た。
『もしもしブレっち~?起きてた?』
「うん、さっき起きた。どうしたの?」
『やっぱりブレっちも起きたんだ。ちょっと外出てみ』
「?分かった」
相川に言われ、ブレイダは部屋を出た。
「…!凄ーい!」
外は一面銀世界で、雪が積もっていた。
『びっくりしたか?ブレイダ』
どうやら橘も一緒にいるらしく、電話から彼女の声も聞こえてきた。
『私も翔子に叩き起こされて一緒にいるんだが、凄く積もっているぞ。どうやら、昨日の雨が雪に変わったらしい』
「ニュースでも言ってたね。変わるかもって」
「そうだよブレっち~!今ブレっちのマンションの下にいるからおいで~!」
目を凝らすと、マンションの入口の方で下からブレイダに向かって手を振っている二人組が見えた。
「うん!すぐ行く!」
ブレイダは部屋に鍵を掛け、白いコートを着て手袋をはめ、耳当てを着けてブーツを履き、二人の元に向かった。下には暖かそうな格好をした二人がポケットに手を入れてブレイダを待っていた。
「おはようブレイダ」
「おはようブレっち。二人とも朝早いのにごめんねぇ」
「毎年毎年雪が降る度に同じことをやってるんだ。今さら気にすることでもない」
「確かに、それもそうだね。いまさらだね」
「それを相川さんが言っちゃダメなんじゃ…」
「まあまあ、そう気にしない気にしない。とりあえず適当に散歩しようよ」
「そうだな」
相川の提案で三人は街をぶらつく事にした。
街の建物や家にはきらびやかなイルミネーションが施されており、クリスマス一色に染まっていた。
「そっか、もうクリスマスなんだね」
「もうそんな時期か、早いな」
「この間ハロウィンが終わったと思ったらもうクリスマスだもんね」
「クリスマスと言ったらプレゼントだけど、二人は何か欲しいものとかあるの?」
「プレゼントかぁ…私はやっぱり新しいゲームが欲しいなぁ」
「私も、新しい鞄が欲しいな。昔から使ってたやつももうボロボロになってきたしな」
確かに、橘の持っている鞄はかなり古いもので、あまり店頭にも並んでいないような物だった。
「橘さんは、その鞄の新しいものが欲しいの?」
「いや、別にこれじゃなくても良いんだ。新品の鞄ならなんでもいい。そう言うブレイダは何かないのか?」
「私は…そうだなぁ…うーん」
ブレイダは腕を組んで小さく唸った。
「…前々から狙ってた高い財布が欲しいかな、なんて」
「高い財布?どれくらいするの?」
「五万円位するんだけど、やっぱりダメだよね…」
「五万か…それはかなりの額だな」
「随分高いもの選んだね…」
「で、でもけっこう入るし、模様とかも凄く良いんだよ!ほら!」
そう言ってブレイダはデバイスに画像を表示し、二人に見せた。
財布は革で出来ており、表はマゼンタ、裏はシアンブルーの色になっており、白と黒の線が交差して表と裏の両方に入っていた。
「これはまた派手なものを選びましたな」
「ああ、凄く派手だ」
「そんなに派手かなぁ?」
「逆にこれがバッグから出てきたら店員さん驚くと思うよ~?」
「そんなに?」
「そんなにだよ。それくらい派手なんだよ」
「そんなにかぁ…」
暫くしてから朝日が登り、街では色々な店が開店準備をしていた。
「それじゃあ、そろそろ戻りますか。また後で集まろ」
「ああ。また後でな」
「また後でね~」
そう言って三人は一度散開し、各々の家に戻った。
家では既に百合が朝食を食べている所だった。
「あ、おかえりブレイダ」
帰ってきたブレイダに気付いた百合が食べようとしたトーストを皿に置いた。
「ただいま、百合さん。外は凄い雪だよ」
「だと思った。朝起きたらもういないんだもの」
「まあ、毎年やってるからね」
「流石に慣れっこよ。お腹空いてるでしょ?」
「うん」
「分かったわ。すぐトースト作るから、ゆで卵でも食べてて」
「はーい」
ブレイダはコートや手袋を外し、席に座って朝食を食べ始め、百合はすぐにトーストを焼き始めた。
「外行ってきたんでしょ?イルミネーションとか見てきた?」
「見てきた見てきた!今年も綺麗だった!」
「本当?私も後で行こうかしら」
そう言いながら百合は焼きあがったトーストを皿に置き、ジャムを塗って、ゆで卵を塩につけて食べているブレイダの前に置いた。
「また後で橘さんと、相川さんと集まってどっか行ってくるよ」
「分かったわ。私もお昼からまた仕事があるから、帰るのは六時くらいになっちゃうけど」
「三人で適当に何か食べておくよ」
「うん、了解。あ、でも六時には帰ってきてね。出来れば二人も連れてきて」
「?分かった」
朝食を食べ終わったブレイダはもう一度コートや手袋を着けて外に出た。
「行ってきまーす!」
「いってらっしゃーい」
ブレイダはマンションの階段を降り、敷地を出たところで丁度二人と会ってお互いに軽く会釈をした。
「またプラバで新メニュー出たから食べに行こうよ」
「今度はどんなメニューなの?」
「ほれ、こんなの」
相川はそう言って携帯の画面を見せた。そこには三つの一切れのケーキのセットの画像が表示されていた。
「赤、黄色、緑?」
「信号機みたい」
「これは七種類の味のケーキを楽しめるみたいで、一個頼む事に五百円の安さ!しかもプラバのケーキは超美味い!」
「な、なら行くしかないな!」
「うんうん!今すぐ行こう!」
三人のケーキを見る目はとても輝いていた。三人とも甘い物には目がないのだろう
「ま、まあ、今日はクリスマスイブだし、少しくらいは良いだろう。なぁ?」
「今日くらい大丈夫だよ!うん!」
そう言いながら三人は足早にプラネットバックスに向かっていた。
まだ開店前にも関わらず、既に列が出来ていた。
「流石プラバ…」
「まあ、待っていればすぐだ」
そして、数分後に店が開き、ブレイダ達も店に入った。
「そう言えば、ケーキは何の味があるんだ?」
「えーとね、ストロベリー、マンゴー、メロン、ショート、ブルーアップル、ブルーベリー、オレンジってとこだね」
「何で青リンゴ?」
「さあ?まあ、細かいことは気にしなくていいでしょ」
そして、ブレイダ達の番になり、ブレイダはストロベリー、橘はブルーベリー、翔子はメロンのケーキを頼み、適当な飲み物を頼んで空いている席に座った。
少ししてからケーキと飲み物が運ばれ、三人は飲み物が入ったカップを手に取った。
「メリクリ~!」
三人は乾杯してから同時に飲み、フォークを手に取ってケーキを食べ始めた。
「美味しい!」
「中のブルーベリーが凄く良い…!」
「メロンも美味しー!」
ケーキを堪能した三人は店を出て、街をぶらつく事にした。
「あれは美味かったな…帰りにもう一度寄って持って帰ろう」
「おっ、良いねぇ。私もそうしようかな」
「そうだ、二人とも、今晩家に来れる?百合さんが二人に来て欲しいって」
「そうだな…私も特に予定は無いしな。行くか」
「私も行くよ。暇だし」
「決まりだね」
三人は夜まで適当に時間を潰し、プラネットバックスで例のケーキを六つ程買ってブレイダの家に帰った。
「ただいま~」
「お邪魔します」
「お邪魔しま~す」
ブレイダはケーキの入った箱を下駄箱の上に置き、三人は靴を脱いで入った。
「ああ、おかえりなさいブレイダちゃん」
「メリークリスマース!」
リビングには百合の他に玲司、神凪が席に座っており、テーブルの上にはチキンやらホールケーキやらジュースやら色々置かれていた。
「ただいまー…ってこれは…」
「おかえりブレイダ。もう察しの通り、クリスマスパーティよ!橘ちゃんも相川ちゃんも座って座って」
「は、はい…」
「凄いですねこれ…」
「ガードナーの料理部や食料部、家庭部らが総力をあげて一週間前から全職員にクリスマスケーキを作ってたんだ。もちろん全て冷凍保存していたから問題は無いよ」
「ガードナーの調理担当ってどれだけいるんだろう…」
「全力をあげる所はそこじゃないんじゃ…?」
「まあまあ、こうしてクリスマスを祝えるんだから良いじゃない、ね?」
「まあ、それもそうですね」
「細かいことは気にしちゃダメだね」
「そうだな。気にせず食べよう」
そして、三人も席に座り、百合は全員のグラスにジュースを注いだ。
「メリークリスマース!」
『メリークリスマース!』
百合の合図で一同は乾杯し、ジュースを飲んでそれぞれチキンやらケーキやらを切り分けて食べ始めた。
「百合さん、私達もケーキを買ってきたよ。プラバのケーキ」
「本当?気が利くじゃない。ありがとう」
「これを提案したのは誰あろう咲ちゃんだよ」
「お、おいおい」
「橘ちゃんなの?ありがとね」
そう言って神凪は微笑んだ。
「い、いえ、そんな」
「まあ、ここのケーキ美味しいもんね」
「百合さん達も食べて食べて」
「じゃあ、お言葉に甘えて頂こうかしらね」
そう言って百合達もプラバのケーキを食べ、パーティーは楽しい雰囲気のまま終わった。
「それじゃあ、私達はそろそろ帰るわね。ありがとね百合ちゃん、ブレイダちゃん」
「じゃあな、四人とも」
そう言って玲司は神凪を連れて自分の部屋にもどった。
「二人は私が送っていくよ」
「本当に大丈夫?もう十時回ってるし、無理に行かなくても良いのよ?」
「たまには良いでしょ?ちゃんと身を守る術もあるんだしさ」
「その身を守る術が強すぎるんだよな…」
「まあまあ、心強くて良いじゃない」
「まあ…良いわ。早く帰ってきなさいよ」
「はーい」
そう言ってブレイダはマンションを出て二人と歩き始めた。
すると、10メートル程の黒い帽子と黒い服の巨人が三人の前に立ちはだかった。
巨人は白い袋を背負い、雄叫びをあげていた。
「不審者よりもっとやべーやつ来たじゃんよ…」
「こんなクリスマスの日に来なくたっても良いでしょうよ!」
「ブレイダ、頼む!」
「よしきた!トランスオン!」
ブレイダは端末を操作し、眩い光を纏って超光戦姫ブレイダに変身した。
「一体何がヤミマジュウになってるか分からないけど…さっさと倒させてもらうよ!」
そう言ってブレイダはブライトサークルを作って飛び上がり、剣を構えて突進した。
「ウオオオオオオオオッ!」
巨人は袋を振り回し、ブレイダに叩きつけた。
「きゃぁぁぁっ!」
ブレイダは物凄い勢いで落下し、それを見た橘と相川は急いでブレイダを受け止めた。
「痛たたた…ありがとう二人とも…」
「大丈夫?ブレっち」
「しかし、あいつの袋をなんとかしないと勝ち目がないな…あいつの袋、どんな感じだった?」
「何だか…中にトゲトゲしたものが入っていたような…」
「トゲトゲ?…あ!」
「なにか分かったのか?」
「確証はないけど…とにかく中身のトゲトゲは壊しちゃダメだよ!さっさと決めて!」
「分かった!」
そう言ってブレイダは立ち上がり、巨人の周りにブライトサークルをいくつも展開し、地面から飛び上がってブライトサークルの間を反射して速度をつけ、剣にエネルギーを溜めて行った。
「はあああああ…!」
『BANNING SMASH!』
音速の速さでブレイダは巨人に接近し、剣で巨人の頭部を強くぶっ叩いた。
すると、巨人の口からヤミノチカラの結晶が飛び出し、ブレイダはそれを空中でキャッチして回収した。
そして、巨人はどんどん小さくなっていき、服も赤くなって一人の老人になった。
「えっ!?」
「嘘…!」
ブレイダは地上に着地し、二人の元に近付いた。二人の前には一人の老人が立っていた。
「あなたは…!」
「(やあ、お嬢さん達。クリスマスの日に迷惑を掛けてしまってすまない。)Merry Christmas.」
真っ赤な帽子と真っ赤な服、白い袋に黒いベルトに革靴をはくその老人は紛れもないサンタクロースだった。
「サンタクロース!?」
「本当にいたんだ…」
「毎年お父さんがとぼけてるとずっと思ってたけど…」
「私も…お母さんがずっと違うふりしてると思ってた…」
「(子供達からはよく言われるよ)」
そう言ってサンタクロースは愉快に笑った。サンタはブレイダの方を見て、ブレイダもサンタの方を見た。
「(君が助けてくれたのかい?)」
「は、はい」
「(どうもありがとう。しかし、このままでは世界中の子供たちにプレゼントを届ける事が出来ない。そこで、君達に手伝って欲しいんだ。手を貸してくれないか?)」
「ブレっち、サンタは何て?」
「このままだと子供達にプレゼントを届けられないから、手伝ってくれないかって」
「…よし、やろう!サンタと一緒なら大丈夫だ!」
「うん!私も手伝う!」
「二人とも…ありがとう!サンタクロースさん!私達もプレゼント配りを手伝わせてください」
「(助かるよ。さあ、聖夜に奇跡を起こすとしよう)」
そう言うとサンタクロースの前にトナカイとソリが来て、サンタは手から聖なる光を出してブレイダはバトルジャケットの上からサンタの帽子と服を、そして橘と相川の衣装をサンタの衣装に変えた。
「(これで君達も立派なサンタクロースだ。さあ、子供達に夢とプレゼントを届けに行こう)」
「はい!」
サンタはソリに、ブレイダ、橘、相川はブライトサークルに乗ってプレゼントの袋を持ち、空へ舞った。
「おおー!凄ーい!高ーい!」
「ちょ、ちょっと高くないか?」
相川と橘は街を見下ろしながら夜景を見ていた。
「(これこれ、お嬢さん、気持ちは分かるが、子供はくれぐれも起こさないようにな)」
「はーい、ごめんなさーい」
「そうだな。今日はクリスマス。子供達には寝てもらわないとな」
「今宵は聖夜だもんね」
四人は世界中に飛び、急いで子供達にプレゼントを届けに向かった。
「Merry Christmas…喜んでくれるといいなぁ」
そう言ってブレイダは女の子の頭を撫でた。
「メリークリスマス~…おー、良い子だ。相川サンタからプレゼントじゃ」
そう言って相川は男の子の枕元にプレゼントを置いた。
「メリークリスマス…おやおや、風邪をひいてしまうぞ」
そう言って橘は二人の子供の布団を掛け直してからプレゼントを枕元に置き、頭を撫でて家を出た。
「Merry Christmas…(良い子達ばかりだね。今年も安心して終えれそうだ)」
そう言ってサンタクロースは男の子の枕元にプレゼントを置き、少し微笑んで家を出て、トナカイの首の鈴を鳴らしながら次の家へ向かった。
そして、明け方、ブレイダ達はマンションの敷地の入口に集まり、サンタクロースもブレイダ達の元に来た。
「(本当にありがとうお嬢さん達。今年も無事子供達にプレゼントを届ける事が出来て、とても嬉しいよ。それじゃあ、私はこれで。)Merry Christmas」
そう言ってサンタクロースはソリに乗り、トナカイと共に空に昇った。
「ありがとうサンタクロースさん!メリークリスマース!」
「こちらこそありがとー!」
「サンタさーん!メリークリスマス!」
サンタクロースは手を振り、やがて見えなくなってしまった。
「それじゃあ、私達も行こうか」
そして、三人はまずは橘の家へ向かった。
「今日はありがとな、二人とも。メリークリスマス」
「じゃあね~。メリクリ~」
「それじゃ。メリークリスマス」
そして、二人は相川の家に向かった。
「それじゃあ、ありがとねブレっち。メリクリ~」
「メリークリスマス。じゃあね」
二人を送り届けたブレイダは、自分の家に向かった。
三人の枕元には、サンタクロースからの手紙とプレゼントが置かれていた。
今回はここまでです。
サンタクロースがいる世界って素敵だよね