「…ずっと気になってるんだけど、ブレイダちゃんって変身出来るようになってからそんなに経ってないよね?」
百合と奈央の二人はガードナーの基地内の第一研究室におり、奈央はお茶を飲みながら百合に聞いた。
「?ええ、そうよ。それがどうしたの?」
「あの子の戦闘能力について少し気になってね。二年、三年も経ってあれだけ慣れている、なら納得はいくんだけど、まだ半年も経ってないのにヤミマジュウを倒すのはおろかヤミノチカラだけを叩き出す事を目指して戦っているし、あの青い子に邪魔された時以外は全部成功している…」
「まあ、そうね」
「…いくらなんでも戦闘慣れしてない?」
「言われてみれば確かにそうだけど…あの子はれっきとした人の子よ。本当の親こそいないけど、ずっと普通の女の子として育ってきた…ただそれだけのことよ」
「…まあ、百合ねえがそう言うならそれでいいんだけどさ、どうしてこんなに戦闘に慣れているのかもいつかははっきりさせないと。それこそ天性の才能で片付けられるようなものじゃないし」
「…そうね」
学校の終業のベルが鳴り、ブレイダ達三人はいつも通りの帰路についていた。
「ねえねえブレっち、ちょっと聞いていい?」
相川はブレイダの方を向いて言った。
「ん?良いよ」
「ブレっちってさ、なんでヤミマジュウと戦うのにそんなに慣れてるの?」
「言われてみれば気になるな。前々からそう言う特訓でもしてたのか?」
「どうなんだろう…私も普通に育ってきたし、そんなヤミマジュウと戦うような練習なんてしてないし…」
「ふむ、分からんな。次にヤミマジュウが出てきた時に考えずに動けているのか、それとも考えながら動いているのか…それを見てみないとな」
「そうだね。まあ、考えずに動けてたらそれこそ凄いけどね」
「そんなのが出来たら苦労しないよ。…あ、じゃあここで」
「おう、またな」
「んじゃね~」
「また明日~!」
そう言ってブレイダは二人と分かれ、家のドアを開けた。
「ただいま~。あれ?いないのかな…」
制服でいても仕方がないのでブレイダは自室に行って普段着に着替え、リビングのコタツに入ってテレビをつけた。
「あー…何も起きないって良いな…」
テレビ番組を眺めている内に睡魔が襲いかかり、ブレイダはクッションを枕代わりにして眠ってしまった。
少ししてから百合と奈央が帰宅し、鞄を置き、二人は寝ているブレイダに気が付いた。
「あっ、こやつ寝てら」
「ったく、こんなとこで寝たら風邪ひくわよ。ほら、起きなさい」
百合はブレイダの肩を揺り起こした。
「んー…?あ、おかえり」
「ああうんただいま。そうじゃなくて、コタツで寝てたら風邪ひくよ」
「あ、ご、ごめんなさい」
そう言ってブレイダは身体を起こした。
「まあまあ、百合さんもこないだ寝てたじゃん」
「それ言われると弱るわね…」
苦笑いしながら百合は言った。
(こう見るとやっぱり普通の女の子なんだよね…戦闘中に人格が変わる事もない…やっぱり、体内にあるヒカリノチカラが関係している…?)
二人のやりとりを見ながら奈央は顎に手を当てて考えていた。
「どうしたんですか?奈央さん」
奈央に気付いたブレイダは彼女の方を見た。
「ん?ううん、なんでもない」
奈央は首を振って言った。
「?」
ブレイダは首を傾げた。
その晩、ブレイダが寝静まった後、奈央は百合にとある相談を持ちかけた。
「これからしばらくブレイダをトレーニングさせたい?」
「うん。多分だけど、特訓によっちゃあ凄く強くなれる」
「でも、そんなトレーニングに最適な場所なんてあるの?」
「あの時から十何年も経ってるんだよ?それくらいずっと前に出来てるよ」
「出来てるんだ…で、どんな部屋?」
「うん、少し詳しく話をすると、その部屋とこの世界の時間の流れ方が違ってて、その部屋の中だと二年なんだけど、この世界だと一日しか経たないって訳。しかも、重力の操作も出来るし、大怪我を負ってもすぐに治療出来るアイテムもある。それで、時間の流れも違うから年も取らないからブレイダちゃんの学業には問題ないって訳」
「そんな部屋がいつの間に…」
「結構前からあったんだ。だけど、使う人も鍛えるべき人もいなかったから存在感は薄かったけどね」
「そうだったのね…まあ、いつどんなヤミマジュウが現れるか分からないし、やらせて見ようかしら…」
次の日、ブレイダが学校から帰ってきた後、百合とブレイダと奈央の三人は早速ガードナーの基地に行き、奈央はブレイダにその部屋を紹介した。
「とまあ、こんな部屋なんだけど…どう?入ってみる?」
「え、えーと…」
「まあ、入るか入らないかはブレイダの自由だから、入らないなら入らないで良いのよ」
「うーん…少し考えさせて下さい」
「ま、そうだよね…」
すると、地響きと地震が起こり、外からヤミマジュウの咆哮が聞こえた。
「とりあえず答えはヤミマジュウと戦ってからね」
ブレイダは外に出てヤミマジュウの元に走って向かい、百合と奈央は基地でブレイダのサポートに回ることにした。
「今度でブレイダちゃんの真価が分かるわ…」
奈央はモニターでヤミマジュウの元に向かっていくブレイダを見ながら言った。
「グオオオオオ!」
ヤミマジュウはブレイダに向けて数本の触手を伸ばした。
「トランス オン!はぁぁっ!」
ブレイダは飛び込んでくるヤミマジュウの二本の触手を飛び上がって変身し、空中でデバイスを胸に装着して変身を完了させ、足元にブライトサークルを出現させてブライトサークルを蹴り飛ばしてヤミマジュウの触手を二本根元から切り落とした。
「グルルル…」
しかし、切られた触手は瞬く間に再生し、元に戻った。
「やっぱり、そう簡単にはいかないみたいだね…」
ブレイダはブレイブレードを手に構えながら言い、十メートル程の大きさの貝の様なヤミマジュウと対峙した。
『もしもしブレイダ、聞こえる?こちら奈央』
「こちらブレイダ。大丈夫です」
『丁寧な対応ありがとう。やつの本体はその外殻の中にあって、ヤミノチカラもその中に入ってる。外殻は固くてとても壊せる様なものじゃないから、触手をかいくぐりながら中の本体を倒して』
「了解!」
ブレイダは早速ブライトサークルを発生させ、二本飛び込んできたヤミマジュウの触手を両方切り裂き、ヤミマジュウに飛び込んだ。
「ガァァァァァ!」
ヤミマジュウは更に触手を増やし、ブレイダを捕らえようとしていた。
「くっ!そんなの!」
ブレイダはブライトサークルを連なる様に出現させ、サークルの上をスライディングして触手をすり抜け、少しだけ出ていたヤミマジュウの顔に重い剣の一撃を食らわせた。
「グルルルルル…」
「はぁぁぁ!」
ブレイダは続けて飛び上がりながらヤミマジュウの触手をかわして顔に蹴りをいれ、剣で縦と横に二回ずつ打撃を入れた。
しかし、どうにも怯んでいる様子はなく、ブレイダはヤミマジュウから一旦距離を置こうとして後ろに飛び上がった。
「ガァァァ!」
すると、ヤミマジュウは両目から赤い光線を放った。
「ああああっ!」
ブレイダはヤミマジュウの光線に撃ち落とされ、ヤミマジュウは触手をムチのようにしならせてブレイダを地面に叩きつけた。
「くっ…!」
ヤミマジュウはしめたと言わんばかりにブレイダに触手を叩きつけ始めた。
「グルルル…!」
「うっ…く…ああっ!」
そして、ヤミマジュウが大きな一撃を喰らわせようと振りかぶって自分に叩きつけようとしたのをブレイダはこれ見よがしに横に転がって避け、力を振り絞って立ち上がった。
「く…」
ブレイダは肩を抑えながら息を切らせ、コアクリスタルを点滅させながらもヤミマジュウを睨みつけた。
「ガァァァ!」
気付くと、ヤミマジュウは触手を巨大な塊にし、ブレイダに叩きつけようとしていた。
「はっ!くっ!」
ブレイダはそれをなんとかして避けようとしたが、足が言うことを聞かず、思うように動かなかった。
「こんなところで…くっ!」
覚悟を決め、ブレイダは目を瞑ったその時だった。
「はっ!」
斬撃音と共に重い音が鳴り響き、ブレイダはおそるおそる目を開けた。
「やはり貴様はその程度だな」
目の前に浮いていたのは、鎌を振りかざした後のサリエールが立っていた。
「貴方は…」
「お前はそこで見ていろ」
サリエールはヤミマジュウの触手が修復されるよりも早くヤミマジュウの懐に飛び込み、ヤミマジュウの顔に肘打ちを決めてヤミマジュウを怯ませ、素早くヤミマジュウの殻の中に飛び込んで行った。
「早い…」
そして、ヤミマジュウの殻の中が青く光ったかと思うと、サリエールはヤミノチカラの水晶を持って殻を突き破り、鎌の刃を伸ばしてヤミマジュウの殻を本体ごと斬り裂き、大きな爆発が起きた。
「あ、ああ…」
爆風の中からヤミマジュウだった生物の死骸がブレイダの足元に転がって来て、ブレイダのつま先にぶつかった。
「そ、そんな…」
「やはり弱いな…所詮下級戦士、無様なものね」
「く…」
「この場でお前を消しても良いが…それではつまらない。何よりまだ消す時でもない」
「……!」
「三日後、私はまたここに来る。そこでお互いのヤミノチカラを賭け、決闘と言うのはどうだ?」
「そ、そんなの…」
「受けないのならばお前の仲間を全て消す」
「な…!皆は関係ない!」
「これは勿論ハッタリでもなんでもない。お前が決闘を受けないと言うのなら、私は本気でお前の家族や友達全てを消す事だって躊躇すること無く消す。これでもまだ受けないと言うの?」
「…分かった!決闘でもなんでも受ける!だから皆は殺さないで!」
それを聞くとサリエールは不敵な笑みを浮かべた。
「そうだ、それでいい。では三日後を楽しみにしている」
そう言うとサリエールは青いオーラを発しながら飛び去って行った。
「くっ、はぁ…はぁ…」
サリエールが去った途端、ブレイダは膝から崩れ落ちた。
『ブレイダ!大丈夫!?』
「こ、こちらブレイダ…大丈夫です」
『良かった…とりあえず基地に戻ってきて』
「は、はい」
ブレイダは変身を解除し、まだ震えている手足を動かしてガードナーの基地に戻った。
「とにかく、ブレイダちゃんが無事で良かった」
「…でも、あの子とは三日後に決闘だって…お互いのヤミノチカラを賭けて…」
「そう言えばそうだったわね…どうする?」
「まあ、決闘をせずに自分達のヤミノチカラを渡す、ってのも一つの手だと思うけど…」
「ブレイダちゃんは、どうしたい?」
司令室にいた玲司、神凪、奈央、百合はブレイダを見た。
「…修行させてください!私、みんなを守るために強くなります!」
「…よし!分かった!俺も精一杯ブレイダちゃんの修行を手伝おう!」
「玲司さん…よし、私も!」
「奈央まで…分かった。私も」
「皆やる気なんじゃない。私もやれることはするわ」
「よし、決まりだな。明日からブレイダちゃんを全力を尽くして鍛えあげるぞー!」
「「「「おおー!」」」」
満場一致でブレイダの修行が決まった。
「じゃあ、まずはブレイダちゃんの怪我を治さないとね。ほら、これ飲みな」
奈央はブレイダに液体の入った小さなカプセルを渡した。
「なんですか?これ」
「まあまあ、飲んでみて」
「はぁ…」
ブレイダは奈央に言われるまま、その液体を飲み込んだ。
すると、身体中の傷が治り、ブレイダの身体は完全に回復した。
「こ、これは…」
「ガードナー特製の回復カプセルよ。これ一つあれば腕がとれようが身体が吹きとぼうが生きてれば全部治るって訳」
「ガードナーってそんなものまで作れるんですね…」
「結構前から作れてたしね。ま、難しい話は今はやめときましょう」
「さ、それじゃあ早速家に帰ってゆっくり休んでから修行ね。気合い入れて行くわよ!」
そう言って百合はブレイダの頭を撫でた。
「はい!」
「良い返事だ」
そして、ブレイダは百合と共に家に向かった。
その道中、相川と橘の二人にその事を話したところ、二人もブレイダの修行を手伝うと言い、何かしらのトレーニング機器を持ってくるという約束で承諾した。
そして、次の日、怜司とブレイダはガードナーのロゴが入ったジャージを着て例の部屋へ入り、他の五人は重力緩和スーツを着用して部屋の中に入った。部屋の中の時間は朝の6時を指していた。
「まず、俺は主に実戦などの戦闘訓練担当だ。まあ、簡単に言えば模擬戦をやる。百合は主に体力作りなど担当する。走り込みとか、体幹を鍛えるんだ。それで、奈央は剣術の練習やスパーリングの特訓担当だ。そして、橘と相川の二人にはストレッチやその場の判断力など、色々な技術や能力を身につける特訓の担当だ。」
「あと、百合ねえとブレイダには言ってなかったんだけど、ここは設定次第で地形も変形出来るから、それも活かしてね」
「そう言う訳だ。皆、分かったか?」
「はい」
「おう!」
「よし!」
全員強く頷き、玲司もそれに応えるように強く頷いた。
「土日合わせて二年とは言え時間が惜しい。早速始めるぞ!」
早速、ブレイダと玲司達はトレーニングに取り掛かった。
まず、早朝の三十分は橘がブレイダの身体をほぐしたり、柔軟をしたりと準備運動をし、その次に百合が山、谷の地形をブレイダに走らせるのを二時間、その後に腹筋、背筋など、身体中のトレーニングを二時間、その後に奈央との剣術の練習を一時間、その後にスパーリングを一時間し、昼休みを一時間挟んで、ガードナーの科学で作ったバーチャルヤミマジュウ操縦機を相川が使ってヤミマジュウの模擬戦を三時間、その後に玲司との模擬戦及び実戦を三時間行い、夜は普段は山の上で瞑想させ、落ち着かせて力のコントロールを身につけ、元の世界での勉強を忘れないように定期的に復習を行うと言うスケジュールを立てた。
模擬戦が終わる毎にブレイダに回復用のカプセルで回復させ、死の淵から復活することで更に強くなるヒカリノチカラの特性を利用する、いわば一種のドーピングも使用して修行をつけていくのである。
最初の三週間ほどは何も縛りを設けずに行い、ブレイダが慣れてきたところで十キロの重りを身体につけて行うのを二ヶ月、そしてまた慣れたところを二十キロの重りに変えて一ヶ月、またまた慣れたところを四十キロに変えて一ヶ月、そして慣れたところで重力を一ヶ月毎に十倍ずつ上げていった。
ブレイダにとっては地獄の様な時間であり、時には三途の川の幻を見たり、天国に行きかけたが、サリエールの忠告や皆の応援を思うと、決して投げ出さずに真面目に取り組んだ。
そして、二年経ち、部屋の重力装置を止め、ブレイダ達は部屋から出た。
「よし、よく二年間、最大二百倍の重力に耐えた。正直、五十倍位で根を上げるもんだと思っていたが…よくやった」
「ど、どれだけ強くなったのかな…?」
見た目にはあまり変わりはないものの、部屋から出る前と比べてかなり余分なものはなくなり、よりシャープになった印象だ。
「ふーむ、スパーリングやらで力はどれくらい付いたかは分かってるけど、どれ、一回変身してみ」
「はい。変身!」
ブレイダは奈央に言われてデバイスを操作し、変身した。
ブレイダの身体は眩い光を身に纏い、その光がドーム状に大きくなり、光の中から超光戦姫ブレイダが歩いて出てきた。
「はあっ!」
ブレイダは腕を払って光のドームを消し、辺りには凄まじい突風が吹き荒れ、一同は顔を手で覆った。
「なんて凄いヒカリノチカラの量だ…いや、地球人でもここまで強くなれるもんなのか…?」
「に、人間の戦闘レベルを完全に超えている…一体どんな修行をしたと言うんだ…!?」
「いや、私達はずっと見てきたじゃない…」
「こ、これが私…!?」
「ああ。二年の努力の賜物だ」
「す、凄い…!皆さん、二年間ありがとうございます!翔子も、咲もありがとう!」
「良いのよ。私たちも興味本位で行ったらなんか凄い事になったし、成り行き上というか…ね?」
「ああ。ブレイダのヤミマジュウの戦いはずっと見てきたからな。私達に出来ることが出来て良かった」
「二人とも…本当にありがとう!」
ブレイダは涙ぐみながら二人に抱きついた。
「よ、よせやい、照れるじゃないの」
相川がそう言って一同は笑った。
そして、ブレイダは変身を解き、一同は帰路に着いた。
「でもあれだね、ブレっちが飛びついて来た時、めちゃくちゃ痛いかなーって思ったけどそうでもなかったね。寧ろ前と同じというか」
「そう言えば…なんでだろうな?」
「おそらく、自然に力のコントロールが出来ているんだろう。おまけに、変身した後でもほとんど力を放出せず、落ち着いていた」
「おお…やっぱ日々の瞑想の成果だね」
「瞑想パワーすげぇ…スカウターがあったら戦闘力を見てみたいな」
「多分ぶっ壊れるぞ」
「玲司さん凄い自信だね…」
「ああ、まだまだ俺に及ばないとはいえ、極限まで鍛え上げたからな」
「流石模擬戦をやってきただけあるなぁ」
「だろ?まあ、後はブレイダが例のあのヒロインとどこまで戦えるか、だな。強くなったとは言え、あいつもどこまで力を出してるかわからんからな」
「そうだね…頑張ってよ、ブレっち」
「私達も応援してるからな」
「うん。やれるだけの事はしてみるよ」
そう言うブレイダは、サリエールと別れた直後とは違い、明鏡止水の如く落ち着いていた。
今回はここまでです。
次回はサリエールとブレイダちゃんの一騎打ち!