ポンコツキャラにしていいのだろうか否か
「ん…う~ん…」
眠っていたブレイダは目を覚まし、身体を起こして腕を伸ばして脱力した。
まだちゃんと開いていない目を擦りながら辺りを見回すと、横でサリエールが寝ているのを見つけた。
サリエールを起こさないように静かにベッドから降り、自分のデバイスを取って時間を確認した。
どうやらかなり長い時間眠っていたらしく、表示された時間は夜の九時を示していた。
すると、起きていたブレイダに気付いたサリエールも起き、身体を起こした。
「あ、起きたんだ」
「ええ…まだ少し眠いけど」
サリエールはあくび混じりにそう言った。
「身体はもう大丈夫なの?」
「うん、サリエールちゃんは?」
「私も大丈夫。少し関節が痛むけどね」
サリエールもなんとか立ちながらベッドを降り、ブレイダは仮眠室の電気をつけた。
「大丈夫?今日はここがサリエールちゃんの寝る場所だから、もう少しゆっくりしてても良いんだよ?」
「いや、良い。それより、お前は帰らなくていいのか?」
「うん、わたしはもう帰るよ。それじゃ、またね」
「ああ。またな」
「うん、また明日」
そう言ってブレイダは仮眠室から出た。
そして、橘と相川の二人を見送った百合と合流し、家に帰った。
「…帰ったか…」
そう言ってサリエールは部屋の電気を消し、ベッドの上に座って窓から星を眺めた。
今日は雲もなく、月も綺麗で星を見るのには最適だ。
「こんなに綺麗に星が見えるなんて…」
夜空の星は漆黒の空の中で輝いており、とても美しい空だった。
いつぶりだろう、こんなに綺麗に星を見たのは…。
すると、扉がノックされた音でサリエールは我に返り、電気をつけて扉を開けた。
「よう、サリエールちゃん」
「あなたは…確か…」
扉を開けた先には玲司と神凪がいた。
「俺は二階堂玲司」
「で、私が二階堂神凪。よろしくね」
「…サリエール。よろしく」
「ああ、よろしく。これからしばらくの間はこの基地の中で過ごす訳だけど…何か聞きたい事はあるか?」
「今は特に…」
「そうか、分かった。また何か聞きたいことがあったら基地の職員に聞いてみるといい。俺達は大体基地の中の研究室にいると思う」
「基地の中の自販機はみんな無料だから、使いたい時に使ってね」
「はい。分かりました」
「それじゃ、また明日。お風呂は大浴場があるからそれを使えよ」
「ありがとうございます」
そう言って玲司も神凪を連れて去っていった。
「………」
なんだか興醒めしてしまい、サリエールは早めに風呂を済ませ、いつの間にか用意されていた下着とジャージを着用し、ほとんど人がいない食堂で夕食を済ませて仮眠室に戻り、眠りについた。
次の日、ブレイダと橘と相川の三人はいつもの様に学校に行く途中で話していた。
「ブレっち、今日もサリエールんとこいくの?」
「うん。流石に一人だと寂しそうだし」
「じゃあ、何かしらの手土産でも持ってくか」
「お、いいね。帰りにコンビニ寄ってこ」
すると、学校の鐘の音が鳴り、三人は急いで教室に駆け込んだ。
一日の授業が終わり、ブレイダと相川は弓道場から出てくる橘を待っていた。
「悪い、待たせた」
汗をかきながら橘は弓道場から走ってきた。
「大丈夫だよ。いつもこんなもんだしさ」
「すまないな、毎日…」
「いいんだってば。さ、行こ」
「ああ」
三人は早速校門から出て学校から最寄りのコンビニに向かった。
「…へっくしゅん!」
歩いてる途中で橘はくしゃみをした。
無理もないだろう。彼女は汗をかいたまま、制服を着てしまい、しかも風も吹いているのだ。寒くてたまらないのだろう。
「大丈夫?咲ちゃん」
「ああ、大丈夫だ。…へっくしゅん!」
「よくそれで大丈夫とか言えたね咲…ほら、これ」
そう言って相川は自分の巻いていたマフラーを橘の首に巻いた。
「あ、ありがとう」
「返すのは明日でいいから、今日はそれ巻いてな」
「翔子…」
相川は橘にサムズアップしてウインクした。
「じゃ、行こっか」
「うん」
「ああ」
橘の言葉で三人はコンビニへと歩を進めた。
そして、コンビニへと入り、早速適当なお菓子を買うことにした。
「なんかここ最近女子が多いね」
コンビニの店内はいつもより女子が多く、お菓子売り場のチョコレートもいつもより少なくなっていた。
「やっぱりバレンタインが近いからだろうな」
「あー、そう言えばもうバレンタインだもんね、二人はあげる相手いるの?」
そう言って相川は二人の方を向いた。
「私は百合さんと、玲司さんと、神凪さんと…後は奈央さんと…そんなもんかな」
「私もお母さんくらいかなぁ。翔子もお父さんにあげるのか?」
「うん。気になる先輩も同級生もいないからねぇ」
「青春もへったくれもないな…」
「咲ちゃんは後輩の子とかに告白されたりしないの?」
「それがあったらいいんだが…皆私に厳しいイメージしか持ってないらしくてな…来る気配が全くないよ。ブレイダは?」
「私もさっぱり。クラスの男子も、他の男子も来ないよ」
「ま、作る手間が増えなくていいんだけどね」
そう言いながら三人は適当なお菓子を選んで購入し、ガードナーの基地に向かった。
基地の仮眠室でジャージを着てテレビを見ながらくつろいでいるサリエールを見つけ、三人はサリエールに近寄った。
「やあ、サリエールちゃん」
「ん?ああ、あなた達か」
サリエールも三人に気付き軽い会釈をした。
「とりあえず適当にお菓子買ってきたけど…食べれないものとかはない?」
「ああ…あ、いや、甘すぎるチョコは少し苦手だな…」
「そっか。まあ、苦いチョコもあるから適当に食べて」
そう言って相川は袋からいくつかお菓子を出してテーブルの上に広げた。
「サリエールちゃんはどうしてたん?」
「そうだな…午前中は自習して、午後はグラウンドで適当に身体を動かしてたよ」
「真面目だなぁ…」
「やっぱり翔子も少しは動くべきなんじゃないか?このお腹はごまかせないぞ?」
橘はニヤニヤ笑いながら相川の少し柔らかいお腹をつついた。
「それとも、今から動く?」
ブレイダも少し笑いながら冗談半分に言った。
「せめてお菓子は控えようかな…」
「もう遅いじゃない」
サリエールがそう言って橘、ブレイダが笑いだし、サリエールもつられて吹き出した。
「あなた達いつもこうなの?」
「うん。こんな風に笑いながら過ごしてる」
「…いつか私にもこんな風に笑える日が来るのかな」
サリエールは笑いながら冗談を言い合う相川と橘を眺めて言った。
「来るよ、絶対」
ブレイダは自信満々に言った。
「あなたのその自身はどこから来るの?」
「根拠はないけど…けど、さっきちょっと笑ったじゃん。だから、いつか来るよ」
「ふふ、あんたにはかなわないわ」
そう言ってサリエールはお菓子を一つつまんで口の中に入れた。
「っと、こんな時間。それじゃ、そろそろおいとまするよ」
相川は携帯で時間を確認して立ち上がった。
「もうそんな時間か…じゃあ、また明日な」
「また来るね、サリエールちゃん」
そう言って二人も立ち上がり、仮眠室を出た。
「ああ、途中まで見送ってくよ」
そう言ってサリエールも立ち上がった。
「ありがとう、サリエールちゃん」
そして、四人は基地の入口まで向かい、そこでサリエールと別れた。
「じゃ、また明日~!」
「またね~」
「また来るよー」
「ああ」
サリエールと三人は手を振って別れ、ブレイダ達も途中で解散してそれぞれの家へ帰った。
その夜、サリエールは今日も窓から星空を眺めていた。
今日は月が少し欠けているが、昨日とさほど変わらない天候だった。
「今日も綺麗だな…そうだ」
サリエールは仮眠室から出て階段をあがり、基地の屋上に出て空を眺めた。
やはり、高い場所の方が眺めがいい。
『やっぱり綺麗よね、星空』
「…こんな時にもか」
そう言ってサリエールは目を閉じ、数秒後に目を開いた。
『やっほー、サリエールちゃん』
「やっほーじゃない。一体どうした」
『んー?大した用じゃないよ。呼んだだけ』
「全く…いつもお前はそうなんだ。用があるかと思えば身体を返せだのなんだの…呼ばないと思ったら思いつきで呼ぶだの…」
そう言ってサリエールはため息をついた。
『いいじゃない、たまには。…あなたも、変わってきたわね』
「変わってきた?」
サリエールは階段から降りてくる彼女を見上げながら言った。
『ええ。心のあり方、考え方が少しずつ変わってきてる、そんな気がする』
「変わってきてる…」
『ま、あんたがこれからどうするかは全部あんた次第。好きにすればいいわ。身体はいつか返してもらうけどね』
そう言いながら彼女はサリエールの横を通り過ぎた。
「…!」
何か言い返そうと後ろを振り向いたが既に彼女の姿はなく、虚空だけが広がっていた。
仕方なくサリエールも目を閉じ、数秒経って目を開けると元の世界に戻っていた。
「…いつか…返す時が…」
そう言いながらサリエールは胸の辺りを掴んで言った。
すると、街の方で地響きと共にヤミマジュウが現れ、サリエールは屋上の柵からヤミマジュウを見つけた。
「本当に変わっているのなら…私が変わりたいと願うなら…!トランス オン!」
『Let's!Transformation!』
デバイスを操作して胸元に装着し、サリエールは青黒い闇に包まれ、変身を完了した。
「出る!」
そう言ってサリエールは宙に浮き上がり、ヤミマジュウの元へと飛んだ。
「キシャァァァァ!」
夜空の下で赤い炎と煙が舞い上がり、夜の街と四足歩行のヤミマジュウを照らしていた。
「はっ!」
サリエールは鎌を握り、ヤミマジュウの伸ばした触手を鎌で切り裂き、ヤミマジュウの前に立った。
「逃げて!早く!」
サリエールは逃げ遅れていた人々を背にして立ち、ヤミマジュウの方を睨みつけた。
「キシャァァァァ!」
ヤミマジュウも憤怒したのか、身体を大きく上げて両前足でサリエールを踏み潰そうとした。
「甘い」
サリエールは大きく飛び上がり、ヤミマジュウの攻撃を避けた。
「キシャォォォォ!」
ヤミマジュウはサリエール目掛けて口から炎を吐き出した。
「!くっ!」
サリエールは咄嗟に飛行を解除して飛び降りた。
「はぁぁっ!」
サリエールはすかさずヤミマジュウの懐に入り、ヤミマジュウの顎を蹴り飛ばして口を無理矢理閉じさせ、炎を止めた。
「キシャァァ…!」
ヤミマジュウは一歩下がり、サリエール目掛けて片足を振り下ろした。
「捉えた!フルパワー解放!」
『FATAL END!』
一瞬の内にサリエールはリアクトキューブを展開し、ヤミマジュウの足がサリエールに当たる瞬間、鎌の刃にエネルギーをため、ヤミマジュウを一閃のもとに斬り伏せた。
「キシャァァァァ…」
ヤミマジュウは横に倒れながら元の動物のサイズに戻り、力を失ったヤミノチカラの水晶が浮かび上がって来た。
「…完了」
サリエールはヤミノチカラの水晶に駆け寄り、回収しようとしたその時だった。
「はぁっ!」
サリエールの前にいくつもの隕石のような光弾が降り注ぎ、サリエールは慌てて後ずさり、光弾が降ってきた方を見上げた。
「!あなたは…」
そこには、一人の人影が浮かび上がっていた。
「サリエール…帰ってこないと思ったら…貴様何をしていた?」
「が、ガディサイト…様…」
サリエールはただ立ち竦んでいるだけだった。
すると、そこにヤミマジュウ出現を聞きつけたブレイダがブライトサークルに乗って飛んできていた。
「サリエールちゃーん!」
「!来るな!ブレイダ!」
「え?」
次の瞬間、ブレイダの身体は光弾に押され、地面に叩きつけられた。
「ブレイダ!」
「私の元に帰ってこい、サリエール」
そう言ってガディサイトは手を差し伸べた。
「く…誰が!」
「随分偉くなったなサリエール…そんな悪い子になったお前には罰を与えなくてはな…」
次の瞬間、サリエールの腹部にガディサイトの膝蹴りが入り、怯んで動きが止まったところを拳で殴り飛ばされた。
「がはっ…!」
「どんな力を手に入れようと所詮は人間…この私には勝てない…」
そう言いながら亡骸がなくなったヤミマジュウのヤミノチカラの水晶を手に取った。
「く…」
地面に叩きつけられたブレイダは気絶しているのかピクリとも動く気配がなかった。
「もう私は貴様には頼らん…私自身で道を切り開く…」
そう言ってガディサイトは不敵に笑った。
「私が全てのヤミノチカラを手にするまでの間の余生をゆっくり過ごすがいい…」
そう言ってガディサイトは姿を消した。
「ぐ…」
サリエールはなんとか立ち上がり、ブレイダを引っ張りあげてガードナーの基地へと戻った。
今回はここまでです!
よろしければ感想お願いします!