魔法科高校の無信仰者   作:苺ノ恵

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episode7.

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああ!!!!死ぬううううううううううウウウウウウウウウウウ!!!!」

 

『踏ん張れグランツ!!あと少しで6000mだ!!死ぬ気で飛べ!!』

 

「嫌です!!!俺は!!死ぬのならせめて地上がいい!!」

 

『大丈夫だグランツ!!___死ぬときは一緒に【墜落死】だ』

 

「嫌だあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

俺の名前はヴォーレン・グランツ。

 

階級は少尉で、どういうわけか軍内有数のブラックな部隊、第二〇三魔法師大隊に所属している軍人だ。

 

大隊長ターニャ・デグレチャフ少佐は若干9歳で銀翼突撃章などの様々な功績を誇る当に軍人の鏡であり、隊員の中に大隊長殿の実力を疑う者など一人もいない。

 

そう、疑うことなど許されない。

 

それは死よりも過酷な目に遭うことと同義だからだ。

 

その証拠に、あの天使みたいな見た目からは想像もつかないような命令を幾度となくされてきた。

 

ある日は、三日三晩砲弾が降り注ぐ中、スコップ片手に必死で簡易的な塹壕を掘り、その中で寒さに凍えながら身を縮こませて震えながら耐え抜いた、陣地防衛訓練。

 

雪山を軍用犬に追い回された挙句、雪崩に巻き込まれて一瞬幽体離脱した、長距離移動訓練。

 

屋外でいきなり衣類を剥がれ、耐えがたい苦痛に晒された、対拷問訓練。

 

因みに俺はベッドの下に隠してたお宝を大隊長にゴミを見る目で一字一句違わず朗読された…。

 

そんな数々の試練を潜り抜けてきた俺達は最早、ちょっとやそっとのことでは動揺することのない、鋼の精神を身に着けていた。

 

しかし、しかしだ。

 

どんな人間にも弱点は存在する。

 

冒頭の情けない声で分かるだろ。

 

そう、俺は____高いところがダメなんだ!!

 

 

 

 

 

ここまでに至った経緯を簡単に説明する。

 

先ず、大隊長殿に俺と次席指揮官のヴァイス中尉が呼ばれて技術開発局に足を運んだ。

 

そこでよく分からないまま、全身にハーネスを付けられ、右足に謎のブーツを嵌められ、これまた謎の箱のような物を抱えさせられ、貨物輸送用のジェット機に乗せられた。

 

ジェット機に乗って数分後、突然緊急脱出口が開いて機内から突き落とされた。

 

落下し始めて数秒後、装着していたイヤーカフから大隊長より指令が下る。

 

『喜ぶといい。貴官ら二名は【飛行術式】のテスターとして選ばれた者達だ。優秀な貴官らの実力であれば術式の展開は造作もないことだろう?ただ、どうにも地上でのテストだと性能の限界値を図りかねる。そこでだ、貴官らにはこれより高度6000mまで上昇したのち、極めて実践的な高度順応訓練を行ってもらう。ああ、心配するな。事前に私が1万メートルまで行ってみたが何も問題は無____ああ…私としたことが大事なことを伝え忘れていた。【パラシュートは予算の都合上装備できなかったため飛ばなければ死ぬ】以上だ。死にたくなければ、精々死ぬ気で飛ぶと良い』

 

 

 

 

 

ふざけんなって思った。

 

幸いにも魔力を通せば飛行術式は問題なく作動したようで、気がつけば俺は宙に浮いていた。

 

俺は世界で初めて、いや大隊長の次だから二番目に飛行魔法を使用した人物になったわけだ。

 

間違いなく、魔法師の歴史を変える出来事。

 

でもな____今はそんなことどうでもいい!!!

 

正直に言って高度6000mまで飛ぶ前に意識が飛ぶ。

 

換えのパンツ用意してないのにどうしてくれんだよ。

 

股間がフワっとなる感覚に色々な箇所を縮ませながら、一刻も早く地上に戻ろうと、命令を無視してゆっくり降下していく俺。

 

遠くの方でヴァイス中尉が必死に何かジェスチャーで伝えようとしているが、それを読み取る余裕は今の俺にはなかった。

 

だからこそ気付くのが遅れた。

 

金色の妖精が____死神のような笑みを浮かべながら上昇してきていることに

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「___以上、隊員による試験飛行の結果からも高度6000mで3h以上の作戦遂行が可能になり、我が隊の機動性は飛躍的に上昇すると愚考致します」

 

「…いや、驚いたよ。デグレチャフ少佐。貴官に飛行術式の開発を指示して一年足らずでここまでの成果を出すとは…流石としか言いようがない」

 

「身に余るお言葉、光栄にございます。レルゲン中佐。全ては今回の開発案をゼートゥーア閣下に具申してくださった中佐殿のお陰であります」

 

「一つ気になるのだが…テスターの一人が病院送りになったとの報告を受けているのだが?」

 

「その一人は高所恐怖症でして…何度も止めたのですが、初の飛行術式の運用を前に気が動転し過失していたのやもしれません。ですが、ご安心を。作戦運用に支障が出ないよう、念入りに教育しておきますので」

 

「そ、そうか。ほどほどにしてやれ?」

 

「了解致しました」

 

「___ただ、それ故に此度の日本との共同開発にはリスクが伴う」

 

「なにしろ、BS魔法師の私が先天的に飛行術式を享受しており、それを現代魔法における魔法式として【ターニャ・デグレチャフ】が解読・変換する。それを元に、かの有名な【トーラス・シルバー】が起動式、魔法式の最適化を行い、魔法師による飛行術式の体系化を実現する___そのような筋書きですからね」

 

「各国がこぞって技術奪取に走ることが目に見える…」

 

「が、争いのフィールドは日本。その間に祖国はより力を蓄えることができる」

 

「戦乱の只中に在る貴官の提言だ。無粋なことは言うまい。ただ、これだけは訊いておく。デグレチャフ少佐。___貴官は日本で何をするつもりだ?」

 

目の前の幼女は蕾の綻ぶように可憐な幸せそうな笑顔でこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神様を殺したい___なんて言ったら嗤いますか?」

 

 

 

 

 




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次回の更新も頑張ります。

それではまた戦場で
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