拝啓 お父さん、お母さん。このたび俺は魔王になりました、助けてください。   作:のろとり

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拝啓 読者様

2525動画にある携帯獣をモチーフとしたTRPGを一気に見てたら書くの忘れてました。


またいつか会えたら、助けてくれないかな。 by空良

「…………」

 

長かった、とても長かった。

だが、とうとう……終わったんだな。

俺は新・魔王が動かないことに安堵すると地面に倒れたが、体を起こしてみんなの方を見る。

 

「終わったの?」

 

「つ、疲れた~」

 

「しび、痺れ……」

 

「痛みの気配が……消えた?」

 

約二名ほど変な事を呟いているが、ミサと空良も地面に座って一息着く。

これでやっと戦いが終わって、みんな帰れる……帰る、のか。

分かってはいた。ちゃんと頭では理解していたし、前の時も新・魔王を倒したら雷鳴は帰っていった。

これで全員、元の世界に帰って今までと同じように過ごすと言うことに。

 

「……帰るんだよな」

 

無意識に、なんだか寂しくなってその言葉を呟いていた。

その呟きは全員に聞こえていたようで、目を逸らして暗い顔をする。

 

「そうだな、ちゃんと帰れる。俺が証人だ」

 

「みんなとはさようならだね」

 

雷鳴が顔を下に向けて喋る。

顔が見えないので、どんな顔をしているかは見えないが、なんとなく分かってしまった。

ミサもそれを感じたのか、悲しい顔で全員を見た。

 

「あの最大級の痛みを喰らうことも無くなるのか」

 

相変わらずの平常運転だな。

いつも通りに見える海楽も言葉では、変わらないが顔はどこか虚無感が漂っていた。

 

「魔王くん、白雲くんにあっちに戻ってもこれを大切にするって言っといてくれないかな?」

 

空良はバッグから折れた剣と、赤い石と青い石を取り出して見せてきた。

白雲……いつの間にプレゼントを用意してたんだ。だけど剣が折れてるのはどうしてだろうか、そういうデザインなのだろうか。

 

「あっ空良ズルいぞ、俺らは何も貰ってないのに!」

 

「私は貰ったよ」

 

「俺も」

 

空良だけプレゼント(お土産)を貰っていることに劣等感を感じたのか、立ち上がって空良に指を指し、二人に声をかける。

だが二人は既に貰っていたようで、懐からミサは緑の石、海楽は黄色い石を取り出した。

俺も真っ黒な石を貰ったなと思い出して、同じく雷鳴に見えるように懐から取り出した。

 

「俺のは!?」

 

どうやら雷鳴だけ貰ってなかったらしく、四つん這いになって嘆き悲しみ始めた……が、雷鳴のズボンのポケットから何かが転がり落ちた。

 

「……おい、雷鳴」

 

それはガラスのように透明で綺麗な石だった。

その石を見つけ、何かを思い出したのか頭の上にビックリマークを出現させる。

 

「あ……そうえば寝る前に貰って、そのままポケットに入れてたんだった!」

 

コイツ殴っていいかな?

ギャーギャー騒いだ挙げ句、ポケットに入ってたなんてなぁ……やっぱり、この光景がいつの間にか「普通」に感じていたな。

最初はなんだこいつらとは思ったけど、なんやかんやで楽しかったからな。

 

「……そろそろ、か」

 

もう時間が来たようで、みんなの体が黄金に輝き始めた。

あと数分もしないうちに元の世界に帰れる、みんな帰ってしまうだろう。

 

「……忘れ物するなよ」

 

「そうだ、私の剣!」

 

「母親か!」と雷鳴が言いそうな台詞を吐くと、空良は剣を置きっぱなしにしていることを思い出した。

空良は取りに行こうとするが、疲労で上手く歩くことが出来ない。

 

「なら私が取ってくる」

 

ミサは立ちあがり、地面に刺さっている剣を持ってくると空良に渡した。

そんなやり取りをしていると、みんなの脚から少しずつ光に包まれ、消えて始めていった。

 

「…………魔王、最後に殴ってくれ!」

 

「やだ」

 

唐突にコイツは何を言ってるんだ、最後の最後でコイツはぶれないな。

それが海楽の良いところでもあり、変なところでもあるが。

 

「さすが海楽、最後まで変な奴だな!」

 

「雷鳴もね」

 

海楽の言葉に親指を立てて、良い笑顔で笑う雷鳴。

そこにミサの不意打ちが炸裂する。

 

「辛辣! そんな毒舌なキャラだっけ!?」

 

「ミサちゃんは最初からこうだったよ?」

 

「そんな見え見えな嘘を言われてもなぁ」

 

ミサってこんな事を言うやつだったか……?

それに空良も乗らなくていいだろ、雷鳴に嘘だってバレてるじゃねぇか。

 

「……ホントだぞ」

 

「魔王まで!」

 

そういう俺も乗っかるんだけどな。

最後なんだ、少しぐらい悪ふざけに付き合ったりしてもバチは当たらないだろう。

雷鳴の驚きと共にみんな笑い、俺は消えている体に目を向ける。

既に下半身は完全に消え、もう残っているのは首より上の部分だけである。

 

「……雷鳴、ミサ、空良、海楽」

 

俺がそう言うと全員がこちらを向いてくる。

最後くらい、魔王だとか仲間だとか気にせず、「友達」として一言言ってもいいよな。

 

「……ありがとう、楽しかった」

 

「─────」

 

みんなは顔を見合わせると、全員が同じ言葉を言い、それと同時にみんなは完全に消え、この場には俺一人となった。

 

「…………」

 

みんな、帰っちまったな。

みんなが帰ったってことは商人も元の世界に帰ったのだろうか……どんな世界に住んでるのか気になるが、もう会いたくないから別にいいか。

 

「……また会おう、か」

 

その言葉を呟くと、地面に転がって空に浮かび上がる月を見た。

今度会ったら、ゆっくりとみんなで月でも見れるかな。

 

またいつか、助けてください。




作中で空良以外がプレゼントを貰ってるシーンは描かれてないです、簡単に言うと後付け設定です。
そのためいくら探しても見つかりません。

寂しくならないように、無理して最後までいつも通りに過ごすみんなを書いてみました。
これもうただの茶番やってるのと変わりませんね。

次回、最終回。

完結後にキャラ設定と裏話の投稿

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