拝啓 お父さん、お母さん。このたび俺は魔王になりました、助けてください。 作:のろとり
……この話、約3500文字もあるってマジ?
本編は基本的に1000~2000文字だったのに。
狼男編だ、助けてくれ。
「お袋、親父、妻……来たぞ」
底が見えない崖の淵、そこにポツンと大きめの石と食べ物が備えられていた。
その石に向かい、狼男は頭を下げる。
当然のことながら、その石が狼男の家族と言う訳ではない。
これは墓なのだ、元・魔王を目覚めさせるために全魔力を注ぎ込んで無くなった、家族のである。
新・魔王と言う脅威と、異世界の仲間達が帰ってこの世界が平和になってから暫く、もう大規模な争いな起こらないと考えた狼男は家族の墓を立てることにしたのだ。
「…………」
墓の前で手を合わせて家族に何かを伝える。
それは狼男しか知らないことであり、それが伝わるかは狼男自身も知らないことだ。
けれども本人はこの言葉は届くを信じている。
例え誰に否定されようと、馬鹿にされようと……
「三人が言ってた事がようやく分かったんだ。どうして自分すらも犠牲にして魔王様を復活させようとしてたのか」
そうしてゆっくりと思い出す。
苦しい事を思い出すことになりながらも、墓にいる家族に語りかけるように、喋り始めた。
「どういうことだ!」
元・魔王が復活する前、何処かの誰かが憑依する前の出来事である。
狼男は目の前に居る全身が白くて少しばかりヨボヨボになっている両親が言った事を理解出来ずに叫び、胸ぐらを掴む。
妻は止めようとするが、狼男は構わずに両親に詰め寄る。
二人は最初からこうなることが分かっていたのか、冷静に……まるで胸ぐらを掴まれてることなんか気にしてないのではないのだろうか、そう錯覚するほどに驚いていなかった。
「そうお前が怒るのも分かるが、お前は分かっていない」
「少し冷静になりなさい」
「冷静にって……魔力を全て注ぎ込んで死のうとしてる奴が言う言葉じゃねぇだろ!」
この時の元・魔王はずっと眠っていた。
かなり昔……狼男の両親がまだ若かりし頃、元・魔王は「勇者」と名乗る人物と戦い、なんとか倒すことが出来たが体には多くの傷跡が残った。
そして傷を癒すために深い眠りに着き、「王」が居なくなって一時は魔物たちは混乱したが、なんとかみんなで力を合わしてその混乱を抜け出すことが出来た。
しかしそんな中、新しい魔王……新・魔王がこの世界にやってきた。
新・魔王は次々に魔物を支配下に起き、世界を征服していった。
それを良しとしない一部の魔物達が元・魔王に魔力を与えて復活させようとしていた。
「あんたらはそんなに魔王が凄いって言うのかよ」
その一部に入るのが狼男の両親であった。
彼らは元・魔王の強さを、逞しさを、カリスマさを、知っている、だからこそ彼以外にこの世界を征服されることに納得がいかないのだろう。
「彼ならなんとかしてくれる」それは信じてるから、自分の意思を継いでくれると考えているからこそ、簡単に命を投げ捨てられるのだろう。
けれども狼男は納得出来なかった。
本人としては「魔王は凄い」と両親が良く言っていたので、なんとなくだがどんな人物かは知っている。
しかしその目で見たことがないので実際にどんな人物か分からないのだ。そんな見たことがない人物に全てを託そうとする両親の気持ちが、思いが全く理解出来ないのだ。
「まぁまぁ落ち着いて~」
「ッ! 分かった……」
いっそのこと殴ろうと胸ぐらを離して拳を握りしてた時、妻が間に入って止め始めた。
一瞬だけカッとなった狼男だが、既にヨボヨボになっている両親を殴ると最悪殺してしまうかもしれないと考え、腕を下ろす。
「それでは~」
妻は狼男の腕を掴んで急いでその場から離れる。
これ以上怒るような事があると、自分一人では止められないし、新・魔王に嗅ぎ付けられると厄介なことになる。
狼男は渋々ながらも、苦しそうに咳をしている妻と一緒に移動することにした。
「……は?」
数日後、一人になって頭を冷やした狼男は、両親に会いに来た狼男はこの前カッとなってしまった事を謝ろうと、元・魔王が眠っている城に来ていた。
ここに居なかったら家に居るだろし、もしもここで魔力を注げようとしてたら無理にでも止めようと考えていたからである。
すると城から出てきたある人物に言われた事が狼男は信じられなかった。
「お、おい……お前は今、なんていった? 俺の耳が可笑しくなったのかも知れない、もしくはまだ俺はまだ目覚めてないのかもな! だからなぁ、早く覚めてくれよ。聞き間違いであってくれよ……なぁ!」
「死んだよ、あんたの両親」
瞬間、その言葉を言った奴を殴る。
そいつは地面を引きずるようにズズズと音を立てて、背中を擦りながら吹き飛んだが狼男には関係なかった。
急いで家へと向かう。
この前カッとなったことに対するイタズラなのだろう、別に追い詰められてる訳でもないのに命を絶とうとは考えないだろう、嘘だ、嘘だ、ウソダウソダウソダウソダ
「親父! お袋!」
扉を壊しながら家へとズカズカと入って両親を探す。
しかし人っ子一人見当たらず、もしかしたら城に居るのではないかと来た道を引き返そうとする。
すると机の上に一枚、何かが書いてある紙を見つける。
狼男はそれを手に取って読み始める。
「は、ハハハ……は?」
最初の数行だけ読み、紙を持っている腕をゆっくりと下へ下ろす。
目を擦って何回読んでも書いてあることは変わらない。
深呼吸して落ち着いて読んでも変わらない。
ゆっくりと読んでも、早く読んでも変わらない。
『息子へ
きっとここに来ることには私達は居ないでしょう。
体も魔力も限界なんだ、恐らくは明日にはもう……最後の最後でお前と喧嘩で離れちまうのは悲しいが、気にするな。
悪いが先に行ってるぞ。
あ~あとはあれだ、特に妻ちゃんの体調には気を付けろよ、あの子は体が弱いんだからな。最近は体調がよくないみたいだしな。』
そこに書いてあるモノが変わることはなかった。
そしてあることを思い出す。数日前に胸ぐらを掴んだとき、両親が異様に軽かったことを。
怒りで分からなかった事を知り、両手を地面に着く。
「ああ、あああ……なんでだよ、どうして! 何が魔王だよ、何が先に行ってるだよ!」
悔しさ、怒り、悲しみ……様々な感情が入り交じり、床を何度も殴る。
拳から血が出ようと、家が崩れ始めようと、殴ることを止めなかった。
「ただ、いま」
何度も殴り、疲れはてた狼男は力無く歩いて妻の居る場所へと帰ってきた。
もう何もしたくない、歩くことも、喋ることも、生きることも、死ぬことも。
脱力感に襲われ、ゆっくりと妻の元へと歩く。
「おかっえりぃ……」
そこには地面に踞り、咳をする妻の姿があった。
狼男は急いで駆け寄って妻を抱える。
何があったのだろうか、そう考えて最近あった事を思い出す。
「───あっ」
そうえば両親に会った帰りに咳をしていた事を思い出した。
しかしそのときの自分は怒りでいっぱいになって妻の事を考えてなかった。
体調が悪くなっていた事に気付かず、ずっと妻を一人ぼっちにして……
「結局、全部俺のせいなのかよ」
「ちが、うよぉ」
妻は力無く狼男に向かって腕を伸ばして首を掴む。
しかしその力はとても弱く、まるで撫でられてるように感じた。
「これは~わたしがぁ、悪い」
ニコッと笑い、腕をゆっくりと地面に叩きつける……否、腕の力が抜けて地面に跳ねるように狼男の首から落ちていった。
「…………」
スッと狼男は立ちあがり、トボトボと何処かへ歩いていく。
生きる意味も、頑張る意味も失った。
だが死ぬ事はしない。狼男は死ぬ前に一つだけ気になることがあったからだ。
「そんなに、魔王って凄いのか?」
子供のような疑問を呟き、空を見上げる。
空は雲一つ無く、綺麗な月が見えていた。
けれども狼男がいるところは何故かしょっぱい雨が多く降っていた。
「これ旨いな」
暫くして狼男は元・魔王の部下になることにした。
理由としてはただ一つ、元・魔王とはどのような人物か見るためである。
両親が、みんなが命を掛けるほどの人物なのか。それはこの目で確かめたいからである。
だが数日前に目覚めたと言う元・魔王とはまだ会えていない。
強いて言うなら雪女をチラッと見かけた程度である。
最初は城中探してやろうと考えたが、それより腹を満たすのが先だと考え、城に置いてあったお菓子を食べ歩きしながらご飯を食べようと部屋に向かう。
「「あっ」」
そこに居たのは、狼男のご飯を食べている雪女であった。
瞬間、狼男の頭には両親のことや元・魔王のことは消えた。
ただ頭にあるのは一つ、目の前の奴を殴る。ただそれだからである。
「俺の飯を返せぇ!」
雪女に飯を取られた、助けてくれ。
シリアスを書くの難しいですね。
書き方が良く分からないので適当に「あああ」と言わせたり、何回も同じ事を言ってもらいました。
最後のは二話で元・魔王が雪女と狼男に最初に会ったシーンの台詞です。
コイツら仲悪すぎない……?