拝啓 お父さん、お母さん。このたび俺は魔王になりました、助けてください。   作:のろとり

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拝啓 読者様

ギリギリセーフで今週投稿です。

この話は一章と二章の間、つまりは元・魔王が寝てる間の話です。


雪女編よ、助けてくれないかしら。

彼女にとって「魔王」は憧れの存在であった。

仲間を引っ張るカリスマ力、全ての敵を圧倒的にねじ伏せる力、使えなかったり要らない仲間を殺す残酷さ、どれをとっても凄い。その一言で尽きる程の存在であった。

彼女は願った、いつか「魔王」の部下になりたいと。

彼女は願った、いつか「魔王」の隣に立ちたいと。

彼女は願った、いつか「魔王」を支えたいと。

彼女は願った、いつか「魔王」が復活してほしいと。

そして……そして、彼女は願った。

「本物の魔王を返してほしい」と、魔王の皮を被った「誰か」ではなく本物の、彼女の憧れた「魔王」に会いたいと……

 

 

 

 

 

「コーラン、少しいいかしら」

 

彼女は……雪女は長い間悩んでいた。

これは元・魔王が新・魔王を倒してから十数年後。力を蓄えているのか、はたまた死んでしまったのか……彼女らにはまだそのことを知らない。

そして元・魔王も知らない、本人がまだ眠ってる間にあった出来事である。

 

「どうしたの?」

 

「実は……」

 

雪女は悩みに悩み、あることを相談するために昔魔王達と建てた家に居るコーランの元へ来ていた。

相談内容は……そう、今までの自分の行動についてだ。

最初は「誰か」から「魔王」を取り戻すために戦った。

しかし結果は惨敗、そしてもう一度戦ったがあれは途中から操られたので雪女の中ではカウントしない。

「魔王」以外の部下にはなりたくない、自分が認めた相手には従いたくない。

けれど「魔王」の体を使っている「誰か」なら本物の「魔王」を取り戻す方法を探るために仲間になった。

利用するつもりだった、初めは新・魔王を倒したと同時に「誰か」を殺して「魔王」を取り返そうと思った。

けれど、雪女の脳裏には仲間達と一緒に「誰か」を新・魔王の攻撃から庇ったことがフラッシュバックされる。

 

「私は今でも魔王様が戻ってきてほしい思いは変わらない。けど、けどアイツを……魔王をどうして庇ったのは分からない」

 

「雪ちゃん……」

 

コーランは雪女の頭を撫でながら何か言葉をかけて励まそうとするが、何も言葉が思い浮かばず伸ばそうとした腕を引き留める。

今の雪女に必要なのは情けでも励ましでもない。感情の共有、そして理解だと感じた。

自分の行動が考えと合わなくてどうすればいいか分からない、それが今の雪女の状態だ。

そんな状態で励ましの言葉を言っても意味はない。

だから、だからこそ

 

「雪ちゃん、私ね……」

 

「けど」

 

コーランは「自分も気付いてた」ことを話そうとしたが、雪女の言葉に遮られる。

遮られたことに頬を膨らましながらも、話を聞く。

 

「けど、私は魔王様に会えた。魔王を庇って意識が遠退いていく中、ほんの一瞬だけ魔王様が見えたの」

 

ゆっくり、ゆっくりとあの光景を頭に思い出す。

魔王を庇い死にかけになったとき、庇った魔王すら新・魔王には勝てず絶望したとき……

魔王様に会った。体はそのままで雰囲気が変わった。

あれは紛れもなく昔見た魔王様だと確信した。

 

「私は魔王様に会えて喜んだ、嬉しかった……そして、なんだか寂しかった、悲しかった」

 

「?」

 

雪女の言葉に疑問を抱く。

雪女は魔王に帰ってほしく、そしてそれが叶った。

それなのに一体何が悲しかったのだろうか。

 

「どうしてかは分からない。魔王様との力の差を知って隣に立てないことなのかしら、それとも……」

 

続きを言おうと口を開くが、声を出さずに口を閉じる。

そしてコーランに背を向けてゆっくりと何処かに歩いていく。

 

「……そういうことね」

 

「雪ちゃん!」

 

コーランは何がなんだか分からず雪女を止めようとするが、歩みを止める気配はない。

しかしその顔はさっきまでの悩んでいる表情と違い、スッキリとした顔であった。

 

(やっと分かったわ。私が「魔王」をどう思っているか。短い時間だったけど、私はアイツを認めた。そして魔王様が居なくなったと同時にアイツが居なくなったのが悲しく、そして寂しかったのね)

 

頭の中が整理でき、外に出ようとする雪女。

そこに食べ物を持っている狼男が目に入る。

いつもならここで喧嘩が起きるのだが、今日の雪女は期 機嫌が良いので特別に見逃すことにした。

 

「おーお前か」

 

その手に持っているものを見るまでは。

 

「あんた、それ……ッ!」

 

「ああこれか。なんかテーブルに置いてあったから食った」

 

狼男が手に待っているもの、それは雪女が楽しみにしていた物であった。

それを食べると口の中が冷え幸せが訪れると共に、よく頭が痛くなってしまう氷の粒で出来たもの……かき氷だ。

 

「勝手に食べるなと何度言ったら分かるのよー!」

 

「置いてあったら普通食べるだろうが!」

 

さっきまでの悩みや考え事、それが解消された気持ちなんか全て吹き飛び、目の前にいる奴を倒すことのみに神経を注ぐ雪女。

この戦いで建物が壊れてしまうのが、それはまた別のお話。

 

こいつ許さないわ、助けてくれないかしら。




某言葉が訛ってる犬Vtuberの圧が好きです。
なんかこう、心にグサッと来てたまりません。

次は順番的にコーランかなー
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