拝啓 お父さん、お母さん。このたび俺は魔王になりました、助けてください。   作:のろとり

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拝啓 読者様

なんかお久しぶりな気がします


待ってくれ、助けてください。 by雷鳴

「…………」

 

帰っていい?

オッス、今すぐ帰って寝たい雷鳴だ。

いや、あのー……敵と膠着状態なんですけど。

俺は洞窟の一番奥で、ミサを背に偽雪女と対面していた。

偽雪女のすぐ後ろには出口があり、そこから出ればコイツを撒くことが出来るだろう。

しかし洞窟の幅は人が二人並んで通れない程の広さである、つまりは何が言いたいのかって?

 

「雷鳴、どうするの?」

 

「はい、詰んだ」

 

「ええっ!?」

 

いやいやいやいや、どう考えても詰んでるだろ。

洞窟から出ようとしたら偽雪女が引っ掛かるから、倒さないとここから出れない。

俺の実力だとコイツを倒せない、ミサが能力使うと洞窟もろとも木端微塵になる。

だから詰んだ、はい詰んだ。

 

「どうやら諦めがついたようね」

 

そうだぜ、俺は諦めた。

そもそも戦いたくねぇんだよ、俺は非戦闘キャラなんだ。その俺に戦え?ちょっと用事思い出したんで帰らせていただきます。

 

「いや……まだだよ、まだ終わってないよ!」

 

戦わずにどうやって逃げるか考えていると、後ろからミサの威勢の良い声が聞こえた。

おー、とても元気な声。さっきまで怖がっていた人の台詞とは思えないね。ってミサさん?もう終わってんだよ、人生オーバー、ゲームオーバーなんですけど?

 

「私は貴方を吹き飛ばす協力な『一撃』を持ってるよ」

 

「え、ちょ……ミサ?」

 

その一撃ってあれだよな。

どう考えても能力ですよね、止めてください俺にも被害が出てしまいます。

俺が内心オドオドしているのに気付いてるのか知らないが、自信満々に喋った事をキチンと雪女は聞いていたようで、顔をニヤリとさせた。

 

「へぇ、面白いわね……それがハッタリじゃなければね」

 

おい待てお前も挑発に乗るな!

乗るな偽雪女、戻れ!……なんか合わないな。

 

「その一撃、撃ってきなさい」

 

偽雪女はゆっくりと目を瞑った。ミサが攻撃してくるのを待つようだ。

優しいな、オイ。

ハッタリだと思ってるのか、最後くらい命乞いを聞こうとしてるのか……そんなの知らないが、油断してるのは確かだな。よし、コイツが目を開けない内に逃げるか。

 

「ミサ」

 

「分かってる、大丈夫だよ。もう迷わないから」

 

え、ミサも道に迷ってたの。困ったなー、どうやって戻ろうかじゃねぇんだよコノヤロー。

何が大丈夫だ、俺が大丈夫じゃねぇんだよ。止めろよ、能力使うなよ。分かってるよな、分かってるよな!?

 

「スー……ハー……」

 

おーい、ミサさーん。

深呼吸してないで逃げよう、いやだよ痛いの嫌だし戦いたくねぇ。

ビビりだろうが、ヘタレだろうがなんとでも言えば良い。俺は平穏に暮らしたいんだ。巻き込まれたくねぇんだよ!

だけどミサを見捨てて逃げるのはな~

ミサは数回深呼吸を終わらすと、偽雪女の方を睨み付けた。気のせいか空気が何か変わった気がする。

 

「これ以上、足手まといは嫌だ。私だって『覚悟』を決めたんだ!」

 

「ちょ、ミサ待て───」

 

「『能力発動』」

 

ミサがそう言った瞬間、世界が変わった。

俺の視界に映ったのは洞窟の瓦礫すら無に還す程の威力の爆発と、偽雪女の体が光りで消えていく光景であった。

あぁ、ミサ……お前もうその能力使うの止めやがれ。

主に俺に被害が来るから。

 

 

 

 

 

「……やっぱり、こうなるのか」

 

さっきぶりだな、雷鳴だ。

こんなときにあるのが俺の能力「ギャグ補正」だ。

正直な話、発動してくれるか不安だったが、ちゃんと発動してくれたようだ。

この能力の発動方法が分からないから、いつも自動的に発動するのを待つだけだ。

 

「雷鳴、大丈夫?」

 

「問題ない、頭がアフロになっただけだ」

 

俺の頭はミサの爆発……なんだっけ『暴発』だったか。

まぁ名前に関してはいいや。その影響で髪がアフロになっただけですんだ。このアフロは何故か取り外しが可能だ。取ってから、目を離すといつの間にか消えてるけど。

 

「そ、そう……」

 

ミサは体を後ろに下げながら、俺の言葉に返事を返した。

ちょっと引くなよ、悲しくなるだろ。それに原因はお前だし。

 

「それにしても、何も無いな」

 

俺はアフロをそこら辺に捨て、周りを見る。

そこには洞窟も、木も、森も、草も、偽雪も無かった。

あるのはミサを中心にクレーターが出来ていることだ。

おお、凄い威力だな。これならもう一人の魔王も倒せ……おい、ちょっと待て。

周囲に何もかも無くなる威力の技を間近で喰らったんだよな、よく生きてたな俺。

ギャグ補正があって良かったことをこれほどまでに感謝したことは無いぜ。

 

「こんなところにいた!」

 

辺りを見て呆然としていると、目の前の空間が切れてそこから白雲が出てきた。

おぉ、我が救世主……助けに来てくれたのか。

 

「急な爆発があったからビックリしたよ」

 

ミサの能力が目印となったのか、やっぱり俺の計算通りだな、多分。

それよりも早く帰りたいぜ。

 

「白雲ありがとう」

 

「サンキュー」

 

「いえいえ」

 

俺とミサは白雲に家に移動させてもらった。

着いてから、何があったか魔王以外の全員に事情を話して爆発のこととか、色々と納得してくれた。

……ただ、魔王の奴どこ行った?アイツにも一応話しておきたいのに、仲間外れとかはちょっと、な。

 

魔王どこだ、助けてください。




また投稿作品が増えそうだ……

完結後にキャラ設定と裏話の投稿

  • 両方いる
  • 両方いらない
  • キャラ設定のみいる
  • 裏話のみいる
  • 作者に任せる

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