双烈   作:文月りんと

2 / 7
3.日本 筑波山中 夕方
4.ペルー アマゾン川河口


3.帰らない鷹 / 4.捕まる野生児

― 3 ―

ヒビキと明日夢は念の為、野営用の準備を済ませていた。ディスクアニマルが出発してから一時間ほどが経過している。

 

「ヒビキさん、どうぞ」

 

明日夢はヒビキにクーラーボックスから取り出したオロナミンCを手渡す。

 

「おう。サンキュー」

 

ヒビキは勢いよくフタを開けグビグビと飲み干した。

 

「ふぅ…。しかし、あいつらの戻りが遅いな」

「ええ、なかなか帰ってきませんね」

「前とは違って、索敵範囲や単独の能力が

向上したとはいっても限度があるからな…」

 

普段なら三十分以内に出発地点まで戻っていたのだが、今回はそれすらない。

不自然なのは明らかだったが二人はむやみに動かず、待機を継続した。

 

更に十分ほど経過したある時、タカ型のディスクアニマルが帰ってきた。ヒビキの手元に回収されたディスクアニマルは自動的に灰色の円盤状に戻る。ヒビキは装備していた音角の中央部を折り曲げ、その間に円盤をはめ込んだ。手で円盤を回すと円盤から倍速再生されたような特殊な音が聞こえ、目蓋を閉じながら聞き取っていく。

全てを聞き終えたヒビキの顔は険しいものに変わっていた。

 

「……明日夢、先に行くぞ」

「え!? ヒビキさん、ちょっと待って下さいよ!!」

 

突然行動し始めたヒビキを追いかけ、明日夢も近くにあったリュックサックを装備し後を急ぐ。ヒビキは行動しながらも、今後の対処をどうするか考えていた。

 

(まさかコイツ以外のディスクアニマルが全滅だとはな…。【ツチグモ】なのは確かだが、本当にそれだけか? あとは鬼が出るか蛇が出るかってヤツか…)

 

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― 4 ―

一人の青年が獣のようなデザインのバイクに跨がり、通常のオフロードバイクでは考えられない速さで密林を駆け抜けていた。

青年の姿はジャングルに来るような装備ではなく、緑色や赤などまだらに染められた上着にパンツスタイルという、ターザンという言葉を体現したかのような出で立ちだった。

 

青年は生い茂った木々をうまく回避しながら、密林を進んでいく。目線の先にあったのは、その場に似つかわしくない【影】の塊だった。

【影】もまた、目的地が森の中にあるかのように急いで動いていた。

 

『フフフ…』

 

不気味な笑い声が森の中に木霊する。

その言葉を耳にした青年は、ギリギリと悔しそうな音で奥歯を噛み締めた。

 

 

半月ほど前、この周辺地域にあった村の人間がほぼ全員、忽然と消えてしまう事件があった。

残っていた村人が口にしていたのは、森の中で発見されたとある果実を食べた村人の様子がおかしくなったという事だった。

青年はアマゾン川周辺で森林パトロールとしての仕事を続けながら、現地の警察と共に調査を続けていた。

 

「ようやく見つけたぞ!!」

怒りをあらわにし、青年はそう叫ぶと【影】との距離を縮めるべくエンジンのギアを切り替える。だが…。

 

『怒りだけではこの私には追いつけんよ…』

 

そう言い放った【影】のスピードが更に加速した。

 

「ジャングラー!!!」

 

これ以上距離を離されると追いつけないと判断した青年は自分が乗っているジャングラーと呼んだバイクに向かって、叫んだ。

すると、ジャングラーの前面部にある獣の口のような部分が開き、【影】に向かって何かを射出した。

 

『!?』

 

射出されたアンカーが【影】に命中し、【影】との距離が縮まっていく。

 

『面倒だが、仕方ない。君には向こう側へ行ける片道チケットを差し上げようか』

 

【影】がそう告げてから手を掲げると、それまで何も無かった空にジッパーのようなモノが現れた。

 

「あれは【クラック】! どうして此処に…」

 

青年が【クラック】と呼んだソレは、日本のとある都市で確認された不思議現象の一つだった。

ジッパーがゆっくりと開いていくと、周囲の森とは違った別の森が見えた。次の瞬間、【クラック】から巨大なツタのようなモノが飛び出してきた。

 

「ぐっ……がっ……」

 

ツタが青年の首に巻き付くと、【影】との距離が離されていく。苦しそうな表情をしながら青年は今の姿勢が維持できないと悟ると、目をカッと見開いた。

そして、青年はハンドルから両手を離しクロスさせると勢いよく叫んだ。

 

「アァァマァァァァゾォォォォン!!!」

 

アマゾンと叫んだ青年の姿は人でも獣でもないモノへと変貌していく。

 

『ケケーッ!!』

 

青年こと山本大介は仮面ライダーアマゾンへと変身し、首に巻き付いていたツタを爪で引き裂いた。そして、遠くにいる【影】との距離を縮めようとジャングラーのアクセルを全開にする。

 

『惜しいな、時間切れだ』

 

【クラック】から先ほどとは大違いな量のツタが放たれ、アマゾンライダーとジャングラーを包みこんでいく。数秒もたたずにツタの塊となったアマゾン達を【クラック】の中に引きづりこんでしまった。

 

その様子を見ていた【影】は立ち止まり、【クラック】を見上げる。

すると【クラック】のジッパーは引き揚げられていき、やがて【クラック】そのものがその場所になかったかのように消失した。

 

『さて、邪魔者はいなくなった。あちらでは【サバト】に必要な人間の選別も終了した頃合いか…』

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