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【ヘルへイムの森】から帰還したアマゾンはすぐに近くある村へ村人を連れて向かった。
「みんな、もう大丈夫だ」
【ジュウメングモ】に捕らえられていた村人達も意識を取り戻すと大喜びで家族と再会した。
その様子を確認してから、アマゾンは休む間もなく【影】の追跡を再開する。
しかし、【影】の姿は周囲からいなくなっていた。
(【ジュウメングモ】に捕まっていた人の数と村で行方不明になった人の数が合わない。
おそらく他の村人達は【影】が連れ去った。…だとすれば、次にヤツが動く場所は……)
何かの結論に至ったのか、アマゾンは
ジャングラーに乗ると、他のライダーに向けて通信を行う。
(シゲル! 応答してくれ! シゲル!!)
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ー11ー
「よっと!」
【クラック】から脱出し、無事に元の世界へと戻るヒビキ。
【ヘルへイムの森】での戦いから一日が経過していた。
「まだ変身は解けないから、ひとまず明日夢と合流しないとな」
その時、目の前の森から誰かが飛び出してきた。
『あれ? ヒビキさん!? なんでここにいるッスか!』
ギターを担ぎ、呆然と立ち尽くす鬼こと轟鬼が現れた。
「いやまぁ、色々あってな。戻ってこられたワケ。なんとか【ジュウメングモ】は退治してきたよ」
『おお、マジッスか!
そりゃ良かったッス!』
両手をあげ、轟鬼は安堵の声をあげ、すぐに顔の変身を解除する。
「オレも心配したんスよ、明日夢くんの様子が尋常じゃなかったし!」
弟子である明日夢の状況がすぐに思い浮かんだ。
「そりゃ悪かったな。ちなみにその明日夢はどうしてる?」
「明日夢くんなら、無事っス! ここからすぐの野営地で待機してるっス!」
「そうか、それじゃこのまま向かおう」
「はいッス! ちなみに、弾鬼さんや鋭鬼さんも移動中っスよ!」
聞き慣れた鬼の名前をトドロキが言ったのを耳にしたヒビキは頭を抱えた。
「えぇーそりゃあ悪いコトしたな…。今度、お詫びの飲み会でも開かないとマズそうだ」
「おっ! 飲み会いいっスね!」
笑顔のトドロキをよそに、ヒビキは今日の様子を改めて振り返る。
(俺一人じゃ【ジュウメングモ】は倒せなかったし、あそこでアマゾンさんに再会してなきゃワリと危なかったな…)
「ヒビキさん、どうかしました?」
立ち止まったヒビキを見て、トドロキは声をかけてきた。
「いや、なんでもないさ」
ヒビキは青空を見上げる。
今は弟子や仲間の元へ急ごう。そして、今日の出来事を明日夢達へ伝えよう。アマゾンと再会した事はにごすか素直に話すかはその時の自分と相談だ。
アマゾンの話から【影】なる存在に世界が脅かされている事を知った。それでも、すぐに世界には飛び出せない。
自分にとってはこれまで続けてきた鬼としての活動もある。魔化魍と自分達との戦いは多かれ少なかれ、今後も続いていく。魔化魍との戦いに多分、終焉はないからだ。
でももし、アマゾンにまた会えたなら…。
(そう、次の機会にアマゾンさんに会えたなら…。自分としても笑って過ごせるように)
「アマゾンさん。俺もまだまだ鍛えていきますから、シュッ」
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ライダー達と【ジュウメングモ】が戦った場所に【影】はいた。【ジュウメングモ】の破片から、状況を悟る。
「【サバト】も無事に完了し、必要な駒は揃った。次なる高みへいく頃合いだな。
【サバト】に参加出来ない人間を集め、魔化魍という現象に混ぜた形で再現してみたが、練度不足なのは否めん。遊びも大概にせんといかんな…。あまりこの森で動き回るとどこぞの【神】に目をつけられかねんか。
フフフ……それもまた一興か」
そう呟いた【影】は徐々に消えていく。
「次なる場所では人間達にどんな苦しみを味わわせてやるか、楽しみだ…」