アイドルのハーレムなんてありえない   作:おるとろす

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深夜のテンションだから……。
感想くれた方、ありがとうございます。


第3話

 昨日ぶりに入る社長室は様子が違った。いや、どこがどう違うっていうのは分からないけど、なにか違うような。

 うーん。何が違うんだろう。そういえばこの部屋こんなに観葉植物置いてあったっけ?

 少し近くで見ようとしたら、椅子に偉そうに座る社長が口を開いた。いや、実際偉い。

 

「それで、何かな。私に用とは」

「あー、いや、何か噂で聞いたんすけど、社長、というか皆が俺になんか秘密にしてることがあるらしくて。その」

 

 慎重に探る。

 言葉選びを間違えると大変なことになる。ないとは思いたいが、社長の思いつきでクビになる可能性だってあるのだ。

 『ん、ティンときた。君クビね』

 ありえないと否定できないのがつらい。

 

「それで、社長にそれを聞きに来たんです」

「ほぅ………………」

 

 しゃちょう の にらみつける

 P の ぼうぎょ が さがった!

 

 社長は何も言わない。必然的に部屋が静まる。

 

 無言の時間がめっちゃ辛い。社長なんか言ってくれよ。イエスでもノーでもいいから。

 なんか変な汗が出てきた。

 

「ふぅ……。流石に敏腕プロデューサーの君は騙せないか……」

「っ! ええ、ウルトラプロデューサーである俺は騙されないっすよ!」

「いや、敏腕……まぁいいか」

 

 なんかそれっぽいこと言ってたら釣れた。

 

「それで、何を隠してたんですか?」

「うむ……。とても言い辛いのだが……」

 

 そういって、社長は一枚の紙を取り出した。

 開かれた紙には何やら数々の項目と、それに対する評価が書き込まれている。

 

「これって……」

「うむ。私の今年の……健康診断の結果だ」

「っ。な、なるほどー」

 

 危ない。『知らねえよ!』って言って、紙を床に叩きつけるところだった。今はアイドルと話してるわけじゃない。気を引き締めよう。

 改めて社長が手渡してきた見てみる。

 渡された紙は真っ赤だった。いや黄色もあるけど。カラフル過ぎて目がチカチカする。

 

「社長、これ……」

「言うな。言わんでくれ。分かってる。最近は酒も控えてるし、運動もしている。だから、余り口外しないでくれよ」

「えっ、はい。……え、隠し事ってこれ。だけですか?」

「そうだが、まさか君は別のことをいっていたのかな?」

「あ、いえ、はい。これですこれ」

「ふむ。そうか。……くそっ千川君め。あれだけ秘密にしろと言ったのに」

 

 あ、社長のちっひに対する好感度が下がってる。ごめんなさいちひろさん。後悔はしてません。

 

「……そういえば、昨日からちひろさんの姿見てないっすね。二日連続で丸々休むなんて珍しい」

 

 自分で言ってて悲しくなる。二日連続で休むと不思議に思われる会社って……。まあ、俺やちひろさんは酷い時は丸一日の休みがない月があるくらいだから。あれ、おかしいな。目から汗が。

 

 前に新しいマネージャーを雇うって話があったけど、それもおじゃんになったし。

 アイドルたちが全員反対ってどういうことよ。誰か一人くらい、俺的に拓海とかなつきち辺りは賛成すると思ったのに、奴らも反対してた。

 

 それでも、俺と社長で強引に話を進めて、取りあえず三人ほど新しいマネージャーを雇った。でもいざ新しいマネージャーが着任する日になると、三人が揃いも揃ってばっくれたのだ。

 

 その時来たメールは以下のとおり。

 

『運よく宝くじが当たったから働く理由がなくなりました』

『運よく私の絵が認められたので、画家になる道をまた目指します』

『運よく拾った百円玉で自販機の水を買ったら、道端でせき込むおばあさんを見つけて、彼女に水を差し出したら、お礼にと彼女が経営する会社の役員に抜擢されました』

 

 メール見てはげるかと思った。特に最後の奴。

 

 まあそれで、結局新しいマネージャーの件は保留、と言う名の永久凍結。

 現在も俺のワンオペレーション。ま、やりたいようにできるから楽っちゃ楽だけど。

 

「ち、ちひろくんかい? あ、ああ。確か三日後まで休暇だそうだよ」

 

 五連休、だと……? ごれんきゅうなんて聞いたことない。どこの国の話?

 

 くそ、俺だって。俺だっていつか休んでハワイとか行ってやるんだからっ! お土産買ってきてあげないからっ!

 

「じゃあ、俺行きますね」

 

 もう社長に用はない。言っちゃ悪いが社長と一緒に居たくない。なんだかんだで緊張するからな。

 

「そう言えば、先日のライブの結果報告はどうなってる?」

「昨日メールで送ってます」

「そうか……なら、今君は手すきなのかね?」

「え、ええ。まあ急ぎのはないっすね。何か用でもありました?」

「いや、用というのはないが……。これからどこへ行くのかな?」

「えっ。ちょうどライブ上がりでオフだった奴らが近くにいるらしいんで、そいつらの様子を見に」

「ん、なるほど。よろしく頼むよ」

 

 なにこの反応。なんか胡散臭い。なんだ、俺サボるとでも思われてたのか? まあオフの奴らの様子見に行くってサボりみたいなものだけど。

 なんか様子が少しおかしい社長を尻目に、俺は社長室を出た。

 

 ◯

 

 社長の様子を見るに、アイドルたちがドッキリを仕掛けているという可能性は低くなった気がする。

 いや正直、あんなに可愛い子らに好意を寄せられるなんて、嘘でもめっちゃうれしいけど、仕事的な意味では最悪だ。面倒極まりない。これからの事考えると憂鬱だ。

 

「あの、プロデューサー? そろそろ注文をお願いします」

「ん、ああ。じゃあブレンド」

「はい! 砂糖一つにミルク多めですよね!」

 

 ぴょこんとウサ耳を揺らす17歳ウエイトレス。

 もうアイドルでかなりの収入を得ているはずなのに、ウサミンは偶にここでバイトしている。

 ここ、というのは事務所と同じビルにあるメイド喫茶。と、いっても本場にあるような本格的なものでなく、店員がメイド服を着ているだけ。なんでもマスターの趣味らしい。ウサ耳メイドは店主的にありなのだろうか?

 

 

 俺はメニュー表を置く。必然的に前の少女が目に入る。そこには速水奏が座っていた。なんか意味ありげに微笑んできた。ストロー片手に。『欲しい?』と尋ねてくる。

 いや、使用済みのストローはいらんよ? それに俺注文したのブレンドだし。口の中大変なことになるわ。

 

「それで、珍しいわね。あなたがここに来るなんて」

「お前らがここに居るって写メ付きのメッセージ送ってきたからな。それにしても、二時間前のメッセージだったからもう居ないと思ったが、まだ居てよかった」

「会議は踊る、されど進まずってやつね。せっかくのオフをどう過ごすかって会議でせっかくのオフが一つ潰れそうよ」

 

 フレちゃんの方見たらおもっそ目を逸らした。こいつのせいか?

 

「…………踊ってないよ?」

「いや、フレちゃんは本当に何回か踊ってたから」

 

 周子がフレちゃんに突っ込みを入れる。喫茶店にはリップスのメンバーが集まっていた。

 席は両隣に志希と周子。向かいに後三人。先日うちの事務所の複数ユニットで合同ライブがあったので、今日は五人ともオフになっていた。あと確かトラプリとセクパンとみくななちえりだったか?

 まあ、そんなことはどうでも良い。

 

「志希ちゃん、そろそろ、離れ、ようねー!」

「あーん。もう少しー。あと三ハスハスー。スンスン……」

「なあ周子。この二人どうにかしてくれない? 落ち着かない」

 

 とりあえずこの状況をなんとかしたい。

 俺にひっついた志希を引っ張る美嘉。志希が俺を離さないものだから、間接的に俺が引っ張られている。

 

「フレちゃんにパス」

「奏ちゃんにパース!」

「私には無理よ」

 

 そういって飲んでるアイスティーに口づける奏。

 どいつもこいつも頼りにならない。

 はあ、リップスって一人一人相手にする分には普通なのに、集まるとなんで面倒さが増えるのか。こう、少年漫画的なノリで。ひとりひとりの力は大したことないけど、集まると無限大的な。

 いや、レイジーレイジーもリップスと同じくらい面倒くさいから、原因は志希とフレちゃんだな。

 

「美嘉、いいから座ってくれ。志希のこれ半分病気だから」

「……プロデューサーが言うなら」

「そうそう。あたしはしばらく会えなかった分プロデューサーの匂いを堪能するのだー」

 

 うん。これで引っ張られることはなくなった。嗅ぐのもやめて欲しいんだけどね。

 てか、しばらく会ってないって二日くらいだよね。二日でこれなら五連休とかしたらどうなるんだよ。

 

「それで、あなたはどうしてここに来たの?」

「ん、ああ。お前らにちょっと聞きたいことがあってな」

「あー! それだったら事務所でしようよ。ここカメラ回ってな……」

「フレちゃんシャラップ!」

「ん? 今フレちゃんなんつった?」

「いやいやいや。なんでもないなんでもない。だから、ほらっ。プロデューサーの話続けて?」

 

 何か周子がフレちゃんの口ふさいでるし、美嘉が慌ててるし……美嘉が慌ててるのはいつものことか。奏もすました顔してるけどなんか額に汗かいてる。志希は……まだ匂い嗅いでる。

 なんかおかしい。カメラがどうとか言ってたような。ううむ、分からん。

 

「まあ……いいけど。それで、お前ら。男と女ってどうやったら付き合ってるて言える?」

 

 あっ、なんか美嘉と奏が吹き出した。こいつら……許せん! こっちは本気で悩んでいるというのに。何だ、そういう経験でもあるのか? 確かに二人はこの中でも経験人数が多そうではある。

 実際聞いてないけどどうなんだろう。事務所にはやんわり恋愛禁止的な空気があるけど、きっちり禁止にしている訳ではないからな。彼ピとか居たらどうしよう。もしそうなら俺の心労がまた増える。

 

「いや、普通に告白したらじゃない?」

「いや告白無しだとしてさ。どこまでしたら、もう付き合ってるって言える?」

「……うーん。セッ――」

「止めろ周子。アイドルがそんなこと言っちゃいけない」

「じゃあ、こういうことは? これはカップルしかできないでしょー」

 

 そう言うと周子は俺の肩にしだれかかって、腕を自らの胸に寄せた。黄色ランプ点滅。色々やばいです。意外とあるんですね。何がって、いやアレが。

 

「お前こういうこと、他の共演者とかにもやってねーだろーな」

「…………少し頭きた。プロデューサーさんはあたしが誰にでもこんなことすると思う?」

「ワンチャン……?」

「ないっつーの」

 

 周子が俺の腕をつねる。い、いでで。地味に痛い。一番リアクションに困る奴だこれ。

 

「プロデューサーさんだけだからね」

 

 そういって周子が俺を指さす。おい、お前。そんな思わせぶりなことばかり言ってると将来苦労するぞ。

 

「かっ、かな、奏! ちょっとあれズルくない!?」

「くっ、席の有利を生かしてきたわね」

「……お前らの意見も聞きたいんだけど。おーい。いや、ねぇ、聞こえてる?」

「はいはーい! アタシ答えていーい?」

「お、いいね。フレちゃん頼む」

「……あれっ、なんだっけ?」

「半月ロムってろ」

 

 フレちゃんはロムロム言いながらおしぼりでエッフェル塔を折り始めた。ちょっと言い過ぎたっぽい。ごめんねフレちゃん。

 つか、いい加減志希離れてくんないかな。ずっとくっついてるから蒸れてきたんだけど。

 

「それで、美嘉と奏はどう思う?」

 

 そもそも、フレちゃんと志希からまともな回答を期待していない。フレちゃんはフレデリカだし、志希は天才過ぎて何言ってるか分からないからだ。なんだっけ。ふぇ、ふぇにるえちるあみんとか。

 

「……そうね。私はキスだと思うわ。フレンチの方の」

「お、おう。奏らしいな」

 

 奏の感覚で言うなら、俺は付き合っている人はいない。

 

「それで、美嘉は?」

「フレンチ? あっ、え、うん。アタシは、んー。…………手を繋いだらかな」

 

 手を、繋いだら……? おい、俺は殆どのアイドルと手をつないでいるぞ。つまりもう全員と付き合っている……? だってカリスマギャルがいうんだから、恐らくこれが世間一般の感覚に違いない。

 周子と奏が美嘉を見て爆笑してるけど、そうに違いない。カリスマギャルだもん。きっとそういう経験も豊富に違いない。

 

 美嘉の話を根拠にするなら、過失は全て俺にあることになる。

 社長はこの問題を知った時、当然どちらが先に手を出したのか聞くだろう。いや、聞かないで問答無用で俺が悪者になる可能性も十分あるが、それは置いておく。

 俺がアイドルを勘違いさせた、ということになると、俺の責任は重大だ。

 ……いや、どっちにしろ首になるだろうから、考える必要は無いか。

 

 

 問題はどう隠し通すか、だな。

 うーむ。……どうでもいいけどコーヒー遅いな。

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