「そんなに気になるなら主に直接聞けば? それが一番手っ取り早いだろ」
「……答えてくれないよどうせ。すぐはぐらかされちゃうんだもん」
安定のシンプルな提案に、清光は唇を尖らせる。時折それとなく話を振ってみることもあるのだが、すべてうまくかわされてしまうのだ。あの奇跡のように美しい面立ちの下を無理矢理暴くような罪悪感はそう簡単に拭えるものではない。しかもあの顔で困ったように微笑まれてしまうともう探るどころか身体に力を入れることすら困難になる。聡い彼のことだ、おそらくそういう清光の心理を分かってやっているのだろうが。
思えば緋雨は審神者になって日が浅いとは思えないほど、清光たち刀の扱いに妙に慣れている。ああいう慣れはどこから来るものなのだろう? 幾ら考えても消えようもない疑問は、一度考えはじめると後から後から沸いてきて結局そのどれ一つとして消化できず胸底に重いわだかまりになって残る。それは緋雨に触れられ、優しい言葉をかけられれば一時的に消えてくれるのだが、恒久的な効果はなく時間がたつとまた新しいわだかまりを連れて戻ってきてしまう。最近はずっとその繰り返しだった。
髪紐を見つけたらしい安定は、浮かない顔をする清光を乾いた視線で一瞥した。
「まあ、確かに昔のことあんまり話さないよね主は」
「うん」
「べらぼうに強いし。もはや俺たち刀なんて必要なのかって思うくらい」
「……うん」
「しかも不死身なんてね。ほんと謎。そういえばこの前お前主にかばわれて助かったらしいけど、もし不死身じゃなかったら主死んでたよね。お前の代わりに」
「……」
今までの無関心さはどこへやら、安定が容赦ない言葉を吐く度、うつ伏せになった清光の顔がどんどん枕の中心に沈み込んでいった。まるで安定の言葉がかなづちになって清光の頭を上から打ち付けているかのような動きだ。
「安定のばか。嫌い」
「うるさい女々しい気持ち悪い」
「……」
「で? 結局何が言いたいわけ」
清光の悪態を華麗に一蹴する安定。取り繕うところのないさばさばした相棒の態度に不満を抱きつつ、清光はぼそぼそと喋りはじめた。
「……昔の俺たちを知ってるってことは、主は他人のものだった俺たちの記憶があるってことでしょ」
「そうだね」
「何かさ、それが原因なのかも知れないけど……俺、自分があのひとの刀だなって実感できたことないんだよね。愛されてるはずなのに、どこか虚しいっていうか」
「……」
寝る支度をする安定の手が止まった。何か思うところがあるようだが、清光はそんな彼の様子には気づかず話を続ける。
「カミサマみたいなんだよね、主は。そう、カミサマ。平等に恵みを与える慈悲深い神って感じ。そりゃ俺たちだって神だけど、こう、何か遠い存在って意味でさ。やっぱ、昔の俺たちを知ってるっていうのは何か特別な感覚なのかな……」
この夢主はかなり特殊なタイプなので、キャラと絡ませるのが難しいです。
数百年以上生きるのってどんな感覚なんだろう……とか。人外感出すのが難しくも面白いです。